論語詳解304子路篇第十三(2)仲弓季氏の宰°

論語子路篇(2)要約:孔子先生の弟子の中で、人格者として評価された仲弓チュウキュウ。なかなか仕官の口がありませんでしたが、筆頭家老家・季氏が執事にと希望します。そのはなむけとして先生は、仲弓に適した政治のコツを教えるのでした。

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論語:原文・書き下し →項目を読み飛ばす

原文

仲弓爲季氏宰、問政。子曰、「先有司、赦小過、舉賢才。」曰、「焉知賢才而舉之。」曰、「舉爾所知。爾所不知、人其舍諸。」

校訂

湯浅邦弘「漢代に於ける『論語』の伝播」

『上海博物館蔵戦国楚竹書』「仲弓」:仲尼【曰】、老老慈幼、先有司、舉賢才、宥過赦罪。

定州竹簡論語

……為季氏□,問正。子322……「焉知賢財a而舉之?」曰b:「舉壐所知;壐所不知,人其舍□?」323

  1. 財、今本作”才”。古文與才、財通。
  2. 曰、今本作”子曰”。

→仲弓爲季氏宰、問正。子曰、「先有司、赦小過、舉賢財。」曰、「焉知賢財而舉之。」曰、「舉壐所知。壐所不知、人其舍諸。」

復元白文(論語時代での表記)

仲 金文弓 金文為 金文季 金文氏 金文宰 金文 問 金文論語 正 金文 子 金文曰 金文 先 金文有 金文司 金文 赦 金文小 金文過 金文 居 挙 舉 金文賢 金文 才 金文 曰 金文 安 焉 金文智 金文賢 金文 才 金文而 金文居 挙 舉 金文之 金文 曰 金文 居 挙 舉 金文爾 金文所 金文智 金文 爾 金文所 金文不 金文智 金文 人 金文其 金文舍 金文者 金文

※舉→居・財→才・焉→安・壐→爾。

書き下し

仲弓ちうきう季氏きしをさり、まつりごとふ。いはく、つかさるものをさきだて、ちひさとがゆるし、さかしきかどげよ。いはく、いづくにかさかしきかどこれげむや。いはく、なんぢところげよ。なんぢらざるところは、ひとこれかむや。

論語:現代日本語訳 →項目を読み飛ばす

逐語訳

論語 冉雍 孔子
仲弓が季氏の執事になり、政治を問うた。先生が言った。「役人たちを先に立て、小さな間違いは許し、有能な者を昇進させよ。」仲弓が問うた。「どうやって才能を見分けて昇進させるのですか?」先生が言った。「お前がそう思うなら昇進させよ。お前の知らない才能は、人々が捨てておかない。」

意訳

冉雍ゼンヨウ(仲弓)が、魯国筆頭家老家・季氏の執事になった。
冉雍「政治の要点とは?」
孔子「仕事は部下に任せなさい。部下のしくじりは、少々の事なら大目に見なさい。デキる者を引き立てるのを忘れないようにな。」
冉雍「どうやってデキるかどうか見分けるのですか?」

論語 孔子 楽
孔子「お前がデキると思うならそれでいい。知らない人物も、デキるならまわりの者が放っておかないよ。」

従来訳

論語 下村湖人

仲弓が魯の大夫季氏の執事となった時に、政治について先師にたずねた。先師がいわれた。――
「それぞれの係の役人を先に立てて働かせるがいい。小さな過失は大目に見るがいい。賢才を挙用することを忘れないがいい。」
仲弓がたずねた。――
「賢才を挙用すると申しましても、もれなくそれを見出すことはむずかしいと存じますが――」
先師がいわれた。――
「それは心配ない。お前の知っている賢才を挙用さえすれば、お前の知らない賢才は、人がすててはおかないだろう。」

下村湖人『現代訳論語』

現代中国での解釈例

仲弓當了季氏的總管,問政。孔子說:「使下屬各司其職,寬容小錯,提拔賢才。」仲弓問:「怎知誰是賢才而提拔?」孔子說:「提拔你所知道的,你不知道的,別人會埋沒他嗎?」

中国哲学書電子化計画

仲弓が季氏の執事になって、政治を問うた。孔子が言った。「部下にそれぞれの仕事を分担させ、小さな間違いは許し、賢く有能な者を引き上げよ。」仲弓が問うた。「どうやって賢才を見抜き、抜擢するのですか?」孔子が言った。「お前の知っている者を抜擢しなさい。お前が知らなくても、他の人が才人を埋もれさせておくだろうか?」

論語:語釈 →項目を読み飛ばす

仲弓

孔子の弟子。新興武装士族・冉氏の俊才だったと思われ、一族の長老・冉伯牛に促され、孔子の門に入ったのだろう。詳細は論語の人物・冉雍仲弓を参照。

季氏

論語 季桓子 論語 季康子

魯国門閥三家老家=三桓の筆頭、季孫家のこと。通説では孔子と三桓は終始対立した政敵とされるが、デタラメ。孔子を社会の底辺から拾い上げたのは、三桓の一家孟孫家であり、季孫家も孔子を雇用したり、本章のように弟子を雇ったりと協力的だった。

孔子と同世代の当主が季桓子、その次の当主が季康子。

論語 宰 金文
(金文)

論語の時代には一家の執事や、地方都市の代官を指した。原義は”家内奴隷のかしら”。詳細は論語語釈「宰」を参照。

政→正

論語の本章では”政治の要点”。「政」の字は論語の時代からすでに存在するが、漢代の儒者は「正」の字を使った。おそらくは秦帝国時代に、始皇帝のいみ名「政」を避けた名残と思われる。意味は”政治”で変わらない。詳細は論語語釈「政」論語語釈「正」を参照。

先有司

論語 司 金文
「司」(金文)

論語の本章では、”部下に仕事を任せる”。「有司」とは「司(しごと)の有る者」と読み、役人の事。とりわけ現場仕事をする下っ端をそう呼ぶ。

「先有司」とは、「有司を先とし」と呼んで、仕事を部下に任せなさい、あるいは、部下選びをまずしなさい、と解する。論語の前章を合わせ考えると、”下役の先頭に立って仕事を指揮監督せよ”と率先垂範の教えと解することも出来るが、論語雍也篇1との整合性がとれない。

弟子の仲弓には、実に王者の風格があるなあ。

孔子が理想とした君臣像は、約一世紀昔の斉の桓公と管仲で、君主は全てを部下に任せるのをよいとした(論語憲問篇16)。孔子が放浪先でいつも仕官に失敗したのも、「政権をごっそり寄こせ」と求めたからである。王者の風格がある冉有仲弓にも、孔子は同じ事を求めたわけ。

「先」の詳細は論語語釈「先」を参照。

『学研漢和大字典』によると「司」は会意文字で、「人+口」。上部は、人の字の変形、下部の口は、穴のこと。小さい穴からのぞくことをあらわす。覗(シ)(のぞく)や伺(うかがう)・祠(シ)(神意をのぞきうかがう→まつる)の原字。転じて、司察の司(よく一事を見きわめる)の意となった、という。詳細は論語語釈「司」を参照。

赦小過

赦 金文
「赦」(金文)

論語の本章では”小さな間違いは許せ”。チマチマと部下を見張って罰するようなことはするな、ということ。

「赦」は『学研漢和大字典』によると形声文字で、「攴(動詞の記号)+(音符)赤」。赤(あか)には関係がない。ゆるむ、のびるの意味を含む。舒(ゆるくのびる)・捨(手を放して放置する)と同系、という。詳細は論語語釈「赦」を参照。

賢才→賢財

論語 賢 金文 論語 才 金文
(金文)

論語の本章では、”仕事の出来る有能な人”。

定州竹簡論語が「財」で書き換えた理由は不明だが、「財」の字は「才」「材」と同音だが、論語の時代に存在せず、帝国儒者のもったい付けに思える。貝=貨幣を意味する部品を含んだ漢字は、ほぼ論語の時代に存在しない。貨幣経済より前の時代だったからだ。

詳細は論語語釈「才」論語語釈「財」を参照。

爾→壐

論語の本章では”お前”。「爾」が原字で、原義は印章。音を借りて二人称を表すようになった。その結果、印章を意味する派生字として「璽」が作られた。定州竹簡論語が「壐」の字を用いるのは、これもまた儒者のハッタリ。「璽」の異体字である。

詳細は論語語釈「爾」論語語釈「壐」を参照。

論語 舍 金文
(金文)

論語の本章では”捨てる”。原義は”家屋”だが、論語ではてへんの付いた派生字「捨」として用いられる。「捨」の字の初出は後漢の説文解字で、それまでは「舎」が”すてる”の語義を表した。詳細は論語語釈「舎」を参照。

人其舍諸

上掲の書き下しの通り、伝統的にも反語に読む。「人舍諸」だけなら「人これ(=諸=之於)をく」と読んで、”人々は見向きもしない”の意となるが、「其」に反語の意味があり、多くは句末に「乎」などを伴うが、本章の場合はそれ無しで反語の意味を表している。詳細は論語語釈「其」を参照。

「諸」は「之於」がつづまった語とされる。詳細は論語語釈「諸」を参照。

論語:解説・付記

上記の検証にかかわらず、論語の本章は漢帝国の儒者による偽作の疑いがある。同じ冉雍仲弓を相手にした言葉で、論語雍也篇6に「犁牛之子、騂且角、雖欲勿用、山川其舍諸。」と、人材の浮き沈みをテーマに、「舎」の使い方まで同じの話があるからだ。

また論語の当時を記す史書は『春秋』だが、そのうち最も充実した『左伝』には、冉雍も仲弓も出てこない。『穀梁伝』『公羊伝』も同様。後世の成立になる『史記』も冉雍の仕官ばなしは全く記していない。子路が季氏の執事になったことは『左伝』が記すのに、何かが変だ。

自分が表に出ず、部下に仕事を任せろという教えも、論語雍也篇1で「仲弓には君主の品格がある」と評したことをタネに作った話と思われ、極めて創作力の乏しい儒者の作文として(→論語顔淵篇22付記参照)、ものすごくあり得る話。ただし、これと言って証拠が無い。

だから今は、疑問を提示するに留める。

警告

漢文業界の者は嘘つき中国人そっくりで、微塵も信用ならぬ(→理由)ので、数言申し上ぐ。


出典明記の引用は自由だし、訳者に連絡のお気遣いも不要だが(ただしネット上では可動リンク必須)、盗用・剽窃は居合を嗜む有段者の訳者が、櫓櫂の及ぶ限り追い詰める。

言い訳無用。訳者が「やった」と思ったら、全国どこでも押し込む。頭にきたら海外にも出かけ、バッサリやってすぐ帰る。訳者は暇であるし、惜しむものを持っていないし、面倒が苦にならぬゆえ、こうして古典を研究している。

刀の手入れは毎日している。そして未だ人を斬ったことが無い。

盗作・剽窃の通報歓迎。下手人を成敗した後、薄謝進呈。他人にやらせた者も同罪、まずそ奴から追い回してぶっ○○る。もし長生きしたいなら、悪いことはせぬものだ。それでもやるなら、覚悟致せ。

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