論語語釈「ユ」

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兪/俞(ユ・9画)

甲骨文から存在し、カールグレン上古音はdi̯u(平)。去声の音は不明。など、多数の派生字を持つ。
兪 字形

論語 兪

学研漢和大字典

会意。左に舟を、右にくり抜く刃物の形を添えたもの。▽「説文解字」に「木を中空にして舟となすなり」とある。偸(トウ)(抜きとる→盗む)・癒(ユ)(病根を抜きとる)・踰(ユ)(中間の段階を抜いて進む→越える)・輸(物を抜きとって車で運ぶ)などの音符として含まれ、抜きとる意を含む。

語義

  1. {感動詞}「はい」と承諾する返事。「兪允(ユイン)(よろしいと聞き入れる)」「帝曰兪=帝曰はく兪と」〔書経・尭典〕
  2. {名詞}木をくり抜いた丸木舟。
  3. 「兪穴(ユケツ)」とは、漢方医学で障害を抜きとるつぼ。
  4. {副詞}いよいよ。ますます。前の段階をこえて進むさま。《同義語》⇒愈。▽上声に読む。

字通

[会意]舟と余(よ)。舟は盤、余は手術刀、これで刺して膿漿を盤に移しとる。これによって治癒するので、兪は瘉(癒)の初文。その痛苦が除かれて、心が愉(たの)しく愉(やす)まることを愈という。兪・愈・愉・瘉は一系の字。〔説文〕八下に「空中の木もて舟と爲すなり」と刳(く)り舟の意とし、字形を「亼(しふ)に從ひ、舟に從ひ、巜(くわい)に從ふ。巜は水なり」とするが、巜は膿漿の象。金文の字形によって、字が膿漿を盤に移す意を示すものであることが確かめられる。ゆえに輸送の意となる。金文の〔𦅫鎛(そはく)〕に「兪改(ゆかい)すること或(あ)る勿(なか)らん」とあるのは、渝改の意。心渝(がわ)りすることをいう。〔書、尭典〕に「帝曰く、兪(しか)り」と肯定して答える辞に用いる。

大漢和辞典

兪 大漢和辞典

臾(ユ・9画)

論語 臾 金文
師臾鐘・西周中期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はdi̯u(平)。

学研漢和大字典

会意。「臼(両手)+┃(引っぱる)+横へ引きぬくしるし」。萸(ユ)・諛(ユ)などの字に音符として含まれる。▽叟(ソウ)は、別字。叟(ソウ)と混同しやすいので注意。

語義

  1. {動詞}ぬく。そっと横へ引きぬく。
  2. 「須臾(シユユ)」とは、ほんのしばらくの間。あっというま。▽もと、須(ひげ)がするりとぬけることから。「道也者不可須臾離也=道なる者は須臾も離るべからず」〔中庸〕

字通

[象形]人が腰に両手をかけている形。〔説文〕十四下に「束縛して捽抴(そつえい)するを臾と爲す」とあり、捽は頭髪をつかむ、抴はおし倒すというほどの意である。須臾(しゆゆ)はしばらくの意であるが、〔漢書、賈山伝〕「願はくは少(しばら)く須臾して死すること毋(なか)れ」の須臾は従容の意であり、左右の手を腰にあててくつろぐ姿をいう。すなわち腴(ゆ)の初文とみてよい。〔説文〕に字形を「申に從ひ、乙に從ふ」とするが、申は電光の象である。臾は人と臼(きよく)とに分かちうるが、その全体を象形とみてよい。

庾(ユ・11画)

初出は後漢の『説文解字』。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はdi̯u(上)。

学研漢和大字典

会意兼形声。臾(ユ)は、申(伸ばす)の字に横に引きぬく印を加えて、横に引き伸ばすことを示す。捨(ユ)は「广(いえ)+(音符)臾」で、作物を下ぶくれに積んだ稲むら。また、稲むらを家屋式のくらにしたもののこと。腴(ユ)(下ぶくれ)と同系。廋(ソウ)(かくす)は、別字。

語義

  1. {名詞}こめぐら。刈り入れた作物を野積みにした稲むら。また、転じて、米ぐら。《類義語》倉。「倉捨(ソウユ)(食糧庫)」。
  2. {単位詞}中国古代のますめの単位。一庾は一六斗(上古の一斗は約一・九四リットル)。「与之庾=これに庾をあたふ」〔論語・雍也〕

字通

[形声]声符は臾(ゆ)。臾は人の肥満して、腴(ゆた)かなさまをいう。〔説文〕九下に「水漕の倉なり」とするが、もと野積みする倉をいう。〔詩、小雅、楚茨〕「我が庾維(こ)れ億」の〔伝〕に「露積(ろし)を庾と曰ふ」とみえる。高く積みあげて、末広がりの状となる意である。

喩/喻(ユ・12画)

論語 喻 金文大篆
(金文大篆)

初出は後漢の『説文解字』。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はdi̯u(去)。同音多数。はその一つ。

学研漢和大字典

は、「↑+舟+刀」の会意文字で、中身をくりぬいて作った丸木舟。じゃまな部分を抜きとる意を含む。喩は、「口+音符兪」の会意兼形声文字で、疑問やしこりを抜き去ること。▽癒は、病根を抜き去ること。

意味

  1. {動詞}さとす。さとる。疑問を解いてはっきりとわからせる。はっきりとわかる。《同義語》⇒諭。「君子喩於義=君子は義に喩る」〔論語・里仁〕
  2. {動詞}たとえる(たとふ)。例を引いて疑問を解く。《同義語》⇒諭。「請以戦喩=請ふ戦ひを以て喩へん」〔孟子・梁上〕
  3. {名詞}たとえ(たとへ)。たとえごと。《同義語》⇒諭。「隠喩(インユ)」「引喩失義=喩へを引きて義を失ふ」〔諸葛亮・出師表
  4. {名詞}文章様式の名。例を引いて相手に理由を理解させることを目的にした文章。《類義語》解。「進学喩」。
  5. 「嘔喩(オウユ)」とは、愉快に親しげに話すこと。▽愉に当てた用法。
  6. {動詞}たのしむ。よろこぶ。▽愉に当てた用法。「喩喩(ユユ)」「自喩適志与=自ら志に適へるかなと喩しむ」〔荘子・斉物論〕

字通

声符は。兪は、把手とってのある手術刀で膿漿のうしょうを盤*(舟)に移す形で、愈・瘉(癒)の初文。兪にはものを移す意がある。他にたとえて、ことを諭すを喩という。〔説文〕に喩字を収めず、〔広雅、釈言〕に「は喩なり」とみえる。〔荘子、斉物論〕に「指を以て、指の指に非ざるを喩ふるは、指に非ざるを以て、指の指に非ざるを喩ふるに若かざるなり」という。〔論語、里仁〕「君子は義にさとる」は、彼にかんがみてこれを知る意である。

*盤:平らな青銅の器。

訓義

たとえる、たとえてつげる、たとえてさとす、おしえる。つげる、さとす、さとる。愉と通じ、よろこぶ、やわらぐ、たのしむ。

大漢和辞典

告げる。さとす。さとる。たとえる、たとえ。いさめる。文体の名。諭に同じ。姓。こころよい。よろこぶ。やわらぎよろこぶさま。歌う。

愉(ユ・12画)

論語 愉 金文
魯伯愈父匜・春秋早期

初出は春秋早期の金文。カールグレン上古音はdi̯u(平)。

学研漢和大字典

会意兼形声。兪(ユ)は、左に舟を、右にくりぬく刃物の形をそえたもの。ぬきとる意を含む。愉は「心+(音符)兪」で、心中のしこりを抜きとること。癒(ユ)(病根を抜きとって病がいえる)と同系。類義語の楽(ラク)は、がやがやとにぎやかにたのしむ。快は、心中の支障を除いてさっぱりすること。

語義

  1. {形容詞}たのしい(たのし)。心のしこりがとれてたのしい。心中にわだかまりがない。「愉快」「必有愉色=必ず愉色有り」〔礼記・祭義〕
  2. {動詞}たのしむ。わだかまりなくたのしむ。喜ぶ。「他人是愉=他人是れ愉まん」〔詩経・唐風・山有枢〕

字通

[形声]声符は兪(ゆ)。兪は、把手(とつて)のある手術刀で膿漿を盤(舟)に移す形で、治癒の癒の初文。病苦を除いて心安らぐことを愉という。〔説文〕十下に「薄なり」と婾薄(とうはく)の意とするが、その字には婾・偸を用いる。〔論語、郷党〕に「私覿(してき)(私的に会うとき)には愉愉如たり」とあって、くつろぐたのしさをいう。〔詩、唐風、山有枢〕「他人是れ愉(たの)しまん」には、なお偸(ぬす)みとる意をも含むようである。

隃(ユ・12画)

初出は秦の隷書。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音は不明。藤堂上古音は逾・兪・愈と同じでdiug(dの下に○、平)、または戍(ジュ)と同じでthiug(去)。

学研漢和大字典

会意兼形声。「阜(やま)+(音符)兪(ユ)(中みをとり除く)」。

語義

ユ(平)
  1. {動詞}こえる(こゆ)。のりこえる。中間にある障害をとり除いてこえていく。《同義語》⇒踰・逾。「卑不聰尊=卑は尊を聰えず」〔漢書・匡衡〕
  2. 「聰麋(ユビ)」とは、地名。漢代の県。今の陝西(センセイ)省千陽(センヨウ)県の東にあたる。墨の産地。
シュ(去)
  1. {名詞}雁(ガン)のこえる山。雁門(ガンモン)山のこと。今の山西省代県の北にあたり、雁門関がある。

字通

[形声]声符は兪(ゆ)。兪に移し送る意がある。〔説文〕十四下に「北陵西隃、鴈門是れなり」とあり、西隃は山名。踰(ゆ)と通じ、こえる。また遥と通用する。

愈(ユ・13画)

愈 金文
魯伯愈父匜・春秋早期

初出は春秋早期の金文。カールグレン上古音はdi̯u(上)。同音多数。はその一つ。

学研漢和大字典

は、中身を抜き取った丸木舟のこと。は「心+音符兪」の会意兼形声文字で、病気や心配の種が抜き取られ、心が気持ちよくなること。の原字。ただし普通は(越える)-(越えて進む)と同系の言葉として用い、相手を越えてその先に出る意。また先へ先へと越えて程度をの進む意をあらわす。

意味

  1. {動詞・形容詞}まさる。比較してみて、他のものを越えている。また、そのさま。《類義語》踰(ユ)。「女与回也孰愈=女(なんぢ)と回と孰(いづ)れか愈(まさ)れる」〔論語・公冶長〕
  2. {副詞}いよいよ。→語法「①②」。
    {動詞}いえる(いゆ)。病気のもとがとれてさっぱりする。《同義語》癒。「全愈(ゼンユ)(=全癒)」「今日愈=今日愈ゆ」〔孟子・公下〕

語法

①「いよいよ」とよみ、「いよいよ~」「だんだんと~」と訳す。事態・程度が先をこえて発展する意を示す。「既以与人己愈多=既(ことごと)くもって人に与へて己愈(いよいよ)多し」〈何もかも人に与えながら、自分のものはますます多くなる〉〔老子・八一〕
②チ「愈~愈…」は、「いよいよ~なれば、いよいよ…なり」「いよいよ~にして、いよいよ…なり」とよみ、「~であればあるほど、ますます…である」と訳す。「挙足愈数而迹愈多=足を挙ぐること愈(いよいよ)数にして迹愈多し」〈足をあげることが多ければ多いほど、足跡もその分ますます多くなる〉〔荘子・漁父〕ヂ「益」「滋」「茲」などとともに用いられることもある。「虧人愈多、其不仁茲甚矣=人を虧(か)くこと愈(いよいよ)多ければ、その不仁なること茲(ますます)甚だし」〈他人に損害をかける程度が多ければ多いほど、その犯人の他人を思いやらぬ心情はますますひどくなる〉〔墨子・非攻〕

字通

声符は。兪は、把手とってのある手術刀で膿漿のうしょうを盤(舟)に移す形。これによってその痛苦を治癒する意で、その安らぐ情を愈という。愉と同字異構であるが、慣用を異にするところがある。〔孟子、公孫丑下〕「今、病小しくえたり」のように、治癒の意に用いる。〔論語、公冶長〕「女と回(顔回)と孰れかまされる」は比較。〔詩、小雅、小明〕「政事愈〻ちぢまる」は副詞。〔詩、小雅、正月〕「憂心愈愈たり」はの仮借で、なお病み憂える状態を言う。

訓義

いえる、なおる、おさまる。まさる、なおまさる。次第によろい、いよいよ、ますます。愉と通じ、たのしい、たのしむ。瘉と通じ、うれえなやむ。

大漢和辞典

まさる。いえる、いやす。いよいよ。うれえる、なやむ。ったのしむ。通じて兪*に作る。姓。

*いよいよ、しかり。

踰(ユ・16画)

論語 足 金文 論語 兪 金文
「足・兪」(金文)

初出は後漢の『説文解字』。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はdi̯u(平)。同音多数。はその一つ。『大漢和辞典』の第一義は”超える”。『大漢和辞典』には他に”踊る”の語義を載せる。

学研漢和大字典

は、中身を抜き取った丸木舟のこと。ただし普通は(越える)-(越えて進む)と同系の言葉として用い、相手を越えてその先に出る意。また先へ先へと越えて程度をの進む意をあらわす。類義語の越は、ひと息に何かに足をかけてふんばり、えいとばかりこえること。

意味

  1. {動詞}こえる(こゆ)。間にある物や境界をのりこえる。《同義語》⇒逾。《類義語》越。「踰牆=牆を踰ゆ」「無踰我牆=我が牆を踰ゆる無かれ」〔詩経・鄭風・将仲子〕
  2. {動詞}こえる(こゆ)。間にある時間や期限をのりこえる。「踰月=月を踰ゆ」。
  3. {副詞}いよいよ。一つ一つと段階をこえて、程度がひどくなるさま。▽兪(ユ)・愈(ユ)に当てた用法。

字通

[形声]声符は兪(ゆ)。兪は、把手(とつて)のある手術刀(余)で膿漿(のうしよう)を刺し、これを盤(舟)に移し除く意で、此より彼に移す意がある。それで、移動して道路を度越し、他に赴くことを踰(逾)という。〔説文〕二下に「越ゆるなり」、また逾字条二下に「■(辶+戊)(こ)え進むなり」とあって、経過することをいう。

又(ユウ・2画)

論語 又 金文
又尊・殷代末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はgi̯ŭɡ(去)。

学研漢和大字典

象形。物をかばう形をした右の手を描いたもので、右の原字。外からわをかけたようにかばう(佑)の意を含み、転じて、わをかけて、さらにそのうえに、の意の副詞となる。類義語に亦。

語義

  1. {副詞}また。→語法「①-1」。
  2. {副詞}また。→語法「①-2」。
  3. {助辞}数詞の端数の上につける。《同義語》⇒有。「十又五(ジュウユウゴ)(十の上にさらに五、つまり十五)」。
  4. {動詞}上古では、助ける・かばうの意。▽保佑(ホユウ)の佑に当てた用法。
  5. {名詞}みぎ。▽右に当てた用法。
  6. 《日本語での特別な意味》または。あるいは。Aか、またはB。

語法

  1. 「また~」とよみ、「そのうえ~」「さらに~」と訳す。ある行為・状態に、さらに別の行為・状態を追加する意を示す。▽「又」は、「A~又…=A~してまた…す」と使用されるように、主語が同じで、述語が異なる。「亦」は、「A~、B亦~=A~して、Bもまた~す」と使用されるように、主語が異なり、述語が同じ。「A~、B亦~」は通常、「A~、B亦如是=A~す、…もまたかくのごとし」と多く用いられる。「国人追之、又敗諸鹿門=国人これを追ひ、またこれを鹿門に敗る」〈国の人はこれを追撃し、さらにこれを鹿門で敗った〉〔春秋左氏伝・昭一〇〕
  2. 「また~」とよみ、「またもや~」「さらに~」と訳す。行為・状態が重複する意を示す。「戦于稷、欒高敗、又敗諸荘=稷に戦ひ、欒高敗る、又諸を荘に敗る」〈稷で戦い、欒(ラン)氏・高氏は敗れ、またもやこれを荘で敗った〉〔春秋左氏伝・昭一〇〕

②「既~又…」は、「すでに~また…」とよみ、「~のみならず…も」「~だけでなく、さらに…」と訳す。累加の意を示す。「既不能令、又不受命、是絶物也=すでに令すること能はず、また命を受けざるは、これ物を絶つなり」〈相手に命令することができないのに、相手の命令を聴かないのは、相手との交わりを絶って禍を招くことになろう〉〔孟子・離上〕

字通

[象形]右の手の形で、右の初文。〔説文〕三下に「手なり。象形。三指なる者は、手の列多きも、略して三に過ぎざるのみ」とある。左向の字は、左の初文。右は後起の字で、祝禱の器である口(𠙵(さい))をもつ形。左も後起の字で、呪具である工をもつ形。又はのち副詞のまた、動詞の佑助の意に用い、左右の字には用いない。金文では又を左右の右、有無の有、保有・敷有の有、また佑助の佑、侑薦の侑に用いる。〔詩、小雅、小宛〕「天命又(ふたた)びせず」、〔儀礼、燕礼〕「又之れに命ず」は復の意、〔礼記、王制〕「王三たび又す」は宥(ゆる)す意である。

友(ユウ・4画)

論語 友 金文
麥方鼎・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はgi̯ŭɡ(上)。

学研漢和大字典

論語 友 解字
会意。かばうように曲げた手をくみあわせたもの。「て+(音符)又(ユウ)」の会意兼形声文字とみてもよい。手でかばいあうこと。転じて、仲よくかばいあう仲間。佑(ユウ)(たすける、かばう)・右(物をかばうようにして持つみぎ手)と同系のことば。類義語の伴は、ペアをなす相手、一対の仲間(連れあい)。朋(ホウ)は、肩を並べた仲間、同僚。

意味

  1. {名詞}とも。ともだち。「朋友(ホウユウ)」「託其妻子於其友=其の妻子を其の友に託す」〔孟子・梁下〕
  2. {動詞}ともとする(ともとす)。ともだちのつきあいをする。友人とする。「友好」「匿怨而友其人=怨みを匿して其の人を友とす」〔論語・公冶長〕
  3. (ユウス)(イウス)・(ユウナリ)(イウナリ){動詞・形容詞}かばいあう。仲よく助けあう。また、そのさま。《類義語》佑(ユウ)。「出入相友=出入に相ひ友す」〔孟子・滕上〕。「友于兄弟、施於有政=兄弟に友に、有政に施す」〔論語・為政〕
  4. {形容詞}仲がよいさま。味方をしてくれるさま。「友軍」「友邦」。

字通

友 金文 史墻盤
(金文 「史墻盤」より)

ゆう+又。〔説文〕三下に「同志を友と為す。二又に従う。相い交友するなり」という。金文の字形は、双のように又を並べ、下に盟誓の器であるえつを加えて、論語 外字 ユウ すすむ たすくゆうの形に作ることが多い。盟誓の上に双方の手をおいて誓う形式を示す字であろう。〔説文〕古文に習の字形に作るのは、その譌形(訳者注:詐りの形)と考えられる。官友・官守友・法友のように、同僚の関係をいい、同族のものには論語 外字 ユウ すすむ たすくほうゆうという。〔書、君陳〕「兄弟に友に」とは、倗論語 外字 ユウ すすむ たすくの間の徳をいい、友情・友誼のように用いるのは、その拡大義である。

訓義

(1)とも、同僚、同輩。(2)兄弟、同族間の兄弟輩。兄弟間の徳を友という。(3)したしむ、まじわる。(4)なかま、くみ。(5)又と通じ、たすける。

大漢和辞典

友 大漢和辞典
友 大漢和辞典

尤(ユウ・4画)

論語 尤 金文
『字通』所収金文

初出は甲骨文。カールグレン上古音はgi̯ŭɡ(平)。”とがめる”。『大漢和辞典』の第一義は”異なる”。

学研漢和大字典

会意文字で、「手のひじ+━印」で、手のある部分に、いぼやおできなど、思わぬ事故の生じたことを示す。災いや失敗がおこること。肬(ユウ)(こぶ)・疣(ユウ)(こぶ)の原字。特異の意から転じて、とりわけ目だつ意となる。類義語に最。「非難する」の意味の「とがめる」は多く「咎める」と書く。

意味

  1. {名詞}とが。災い。また、失敗。「君無尤焉=君に尤無し」〔孟子・梁下〕
  2. {動詞}とがめる(とがむ)。失敗を責める。「不尤人=人を尤めず」〔論語・憲問〕
  3. {副詞}もっとも。目だっていちばんに。とりわけ。「汝時尤小=汝時に尤も小なり」〔韓愈・祭十二郎文〕
  4. (ユウナリ)(イウナリ){形容詞}目だってすぐれている。めずらしい。「尤者(ユウナルモノ)」「尤物(ユウブツ)(すぐれたもの)」。
  5. 《日本語での特別な意味》もっとも。そのとおりである。また、ただし。「君の言は尤もだ」。

字通

[象形]呪霊をもつ獣の形。その呪霊によって、人に尤禍をもたらすことができた。〔説文〕十四下に「異なるなり。乙に從ひ、又(いう)聲」とするが、祟(すい)と同じく、呪儀に用いる獣の象形。求もそのような呪獣の形で、それを殴(う)つ共感呪術は救、その法は術、また祟を殴つ字は殺で、減殺(げんさい)、他からの禍殃を減殺する意である。卜辞に「尤㞢(あ)るか」のように尤禍の意に用いる。その呪霊は畏るべきものであるから尤異の意となり、尤甚の意となる。

由(ユウ・5画)

論語 由 金文 論語 由 甲骨文
由伯尊・西周早期/(甲骨文)

初出は甲骨文。カールグレン上古音はd(平)。藤堂上古音はdiog(dの下に○)。

諸本下記の通りだが、甲骨文や金文を見ると、ともしびそのものの象形に見える。論語では記録の残った孔子の一番弟子、仲由子路の名としても登場する。

学研漢和大字典

象形文字で、酒や汁をぬき出す口のついたつぼを描いたもの。また、…から出てくるの意を含み、ある事が何かから生じて来たその理由の意となる。抽(口からぬき出す)・迪(テキ)(ある所から出てくる道)・笛(テキ)(息と音がぬけ出てくるふえ)・軸(車輪からぬけ出るじく)などと同系のことば。

意味

  1. {動詞}よる。…から出てくる。…に由来する。…に基づく。あるルートに従う。《類義語》依。「為仁由己=仁を為すは己に由る」〔論語・顔淵〕。「行不由径=行くに径に由らず」〔論語・雍也〕
  2. {前置詞}より。…→語法「①」。
  3. {名詞}よし。その事が生じるわけ・原因。てだて。てづる。「理由」「摘由(テキユウ)(理由の大要)」「雖欲従之、末由也已=これに従はんと欲すと雖も、由なきのみ」〔論語・子罕〕
  4. {指示詞}なお(なほ)…のごとし。→語法「④」。
  5. 「由蘖(ユウゲツ)」とは、木の切り株から細くのびた新芽。ひこばえ。
    も「由由(ユウユウ)」とは、細長く続くさま。転じて、ゆるゆると、ゆったりするさま。《類義語》悠悠。「故由由然与之偕而不自失焉=故に由由然としてこれと偕にして自ら失はず」〔孟子・公上〕
  6. 《日本語での特別な意味》よし。伝聞した内容であることをあらわすことば。…とのこと。「病の由」。

語法

①「~より」とよみ、「~から」と訳す。時間・空間の起点、経由の意を示す。《類義語》自・従。「礼儀由賢者出=礼儀は賢者由(よ)り出づ」〈礼儀は賢者によって行われるものです〉〔孟子・梁下〕
②「~により」「~によりて」「~によって」とよみ、「~によって」「~の理由で」と訳す。根拠・理由の意を示す。「何由知吾可也=何に由(よ)りて吾が可なるを知る」〈どうしてわたしにできることが分かるのか〉〔孟子・梁上〕
③「なお」とよみ、「それでもなお」と訳す。《類義語》猶。「王由足用為善=王由(な)ほもって善を為すに足れり」〈王はまだ十分善を行いうる人物である〉〔孟子・公下〕
④「なお~のごとし」とよみ、「ちょうど~のようである」と訳す。再読文字。▽「如」「若」より強い表現。《類義語》猶。「以斉王、由反手也=斉をもって王たるは、由(な)ほ手を反すがごときなり」〈斉(という大国)を保つ王であれば、(天下の王者となることは)手のひらを返すよう(に容易なこと)である〉〔孟子・公上〕

字通

論語 卣 金文 論語 卣 篆書
「卣」(金文・篆書)

[象形]初形は卣(ゆう)。瓠(ひさご)の類で、実が熟して中が油化したものの形。油の初文とみてよい。〔説文〕にみえないが、〔説文〕に由声の字十九字を収めているから、字を脱したものであろう。いまの訓義はみな仮借。〔詩、小雅、小弁(せうはん)〕「君子易(かろかろ)しく言を由(もち)ふること無(なか)れ」は用・庸の仮借。〔論語、為政〕「其の由る所を観る」は䌛(よう)の字義。それより由来・由縁の意となる。

右(ユウ・5画)

右 金文
頌壺・西周末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はgi̯ŭɡ(上)。

下掲『学研漢和大字典』・『字通』の所説にかかわらず、手+口の象形であり、口に食べ物を運ぶ手であることから”みぎ”の意を表した。漢字に四角い図形があれば、パブロフ犬のように「𠙵だ」と言う白川説には全面的には賛成しかねる。論語語釈「左」も参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。又は、右手を描いた象形文字。右は、「口+(音符)又(右手)」で、かばうようにして物を持つ手、つまり右手のこと。その手で口をかばうことを示す。又(右手)・有(かばって持つ)・佑(かばう→たすける)と同系で、右手の役割から生じた派生語である。

語義

  1. {名詞・形容詞}みぎ。《対語》⇒左。「座右」。
  2. {動詞}みぎする(みぎす)。右のほうに行く。「欲右右=右せんと欲せば右せよ」〔史記・殷〕
  3. {名詞・形容詞}西。西のほうの。▽南面すれば、西は右に当たることから。「江右(江西)」「山右(山西)」。
  4. {名詞・形容詞}みぎ。上位。上位の。▽中国の戦国時代には右を尊んだことから。「拝為上卿、位在廉頗之右=拝して上卿と為し、位廉頗の右に在り」〔史記・廉頗藺相如〕
  5. {動詞・形容詞}たっとぶ。大事にする。えらいさま。「右武=武を右ぶ」「豪右(とうとい豪族)」。
  6. {動詞}たすける(たすく)。かばう。《同義語》⇒佑。「保右」。
  7. {形容詞}《俗語》保守的な。穏健的な。▽十八世紀にフランスの国民議会で、穏健派が議場の右側の席にすわったことから。「右派」。

字通

[会意]又(ゆう)+口。又は右手、口は祝告の器の𠙵(さい)。右に祝禱の器である𠙵をもち、左に呪具である工を以て、神をたずね、神に接する。それで左右を重ねると、尋となり、神に接するとき、左右颯々(さつさつ)の舞を舞う。〔説文〕口部二上に「助くるなり」、また又部三下に重出して「手口相ひ助くるなり」とあり、〔段注〕に「手もて足らず、口を以て之れを助くるなり」とするが、そのような意味の会意ではない。左右の初文は工・口に従わず、卜辞では神祐を受けることを「シ 外字又(いういう)を受(さづ)けられんか」という。「シ 外字又」は「有祐」の意。又は右・佑・祐の初文で、又をその諸義に用いた。左右は神につかえる方法であったが、のち輔佐の意となり、金文には〔■(犭+首)鐘(はつしよう)〕「先王其れ嚴として帝の左右に在り」、〔叔夷鎛(しゆくいはく)〕「余(われ)一人を左右せよ」のように用いる。

幼(ユウ・5画)

幼 金文
禹鼎・西周末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はʔi̯ŏɡ(去)。呉音も”おさない”意味では「ユウ」、「ヨウ」は慣用音。”かぼそい”意味では漢音呉音共に「ヨウ」。

学研漢和大字典

会意兼形声。幺(ヨウ)は、細く小さい糸。幼は「力+(音符)幺(ヨウ)」で、力の弱い小さい子。夭(ヨウ)(なよなよとして弱い)・幽(ユウ)(かすか)と同系。

語義

ユウ
  1. (ヨウナリ)(エウナリ){形容詞}おさない(をさなし)。いとけない。また、転じて、知恵や学問の未熟なさま。「幼稚」「幼而不忌=幼にして忌はず」〔春秋左氏伝・昭元〕
  2. {名詞}おさない子ども。おさなご。「携幼入室=幼を携へて室に入る」〔陶潜・帰去来辞〕
  3. (ヨウトス)(エウトス){動詞}おさないと思っていつくしむ。「幼吾幼以及人之幼=吾が幼を幼として以て人の幼に及ぼす」〔孟子・梁上〕
ヨウ
  1. {形容詞}かぼそい。「幼妙」「幼眇(ヨウビョウ)」。

字通

[象形]糸かせに木を通して拗(ね)じている形で、拗の初文。幼少の意に用いるのは仮借。〔説文〕四下に「少(わか)きなり。幺(えう)に從ひ、力に從ふ」とは、微力の意とするものであろうが、力はものを扐(ろく)する意である。

有(ユウ・6画)

論語 有 金文
毛公鼎・西周末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はgi̯ŭɡ(上)。

論語では、恐らく架空の人物であろう孔子の弟子、有若子有のあざ名として登場することもある。

学研漢和大字典

会意兼形声文字で、又(ユウ)は、手でわくを構えたさま。有は「肉+〔音符〕又」で、わくを構えた手に肉をかかえこむさま。空間中に一定の形を画することから、事物が形をなしてあることや、わくの中にかかえこむことを意味する。

佑(ユウ)(かかえこむ)・囿(ユウ)(わくを構えた区画)・域(わくを構えた領分)と同系のことば、という。

意味

  1. {動詞}ある(あり)。空間の中にある形をしめて存在している。《対語》⇒無・亡(ない)。「未曾有(ミゾウ)(いまだかつてない)」「未之有也=いまだこれ有らざるなり」〔論語・学而〕→語法「①②」。
  2. {動詞}ある(あり)。あるようになる。あることがおこる。生じる。《対語》⇒無(なくなる)。「大道廃有仁義=大道廃れて仁義有り」〔老子・一八〕
  3. (ユウス)(イウス){動詞}たもつ。もつ。空間の中にわくを構える。わくを構えてかかえこむ。所有する。持ちつづける。「保有」「有国者不可以不慎=国を有つ者は以て慎まざるべからず」〔大学〕
  4. {名詞}あり。形をなしてあること。所有物。「尽其有=其の有を尽くす」「亡而為有=亡くして有りと為す」〔論語・述而〕
  5. {動詞・代名詞}…(する)あり。あるひと。…するものがあったの意から転じて、ある人が…したとの意。《同義語》⇒或。「古人有云=古人云へる有り」「有問之=有ひとこれを問ふ」〔柳宗元・種樹郭笛薔伝〕
  6. {助辞}人の集団や国名などにつけることば。「有周(ユウシュウ)(周の国)」「有虞氏(ユウグシ)(虞の国)」「有衆(ユウシュウ)(もろ人)」「有司(ユウシ)(役人)」。
  7. {名詞}一定のわくを構えた土地。▽域に当てた用法。「九有(=九域。全国の領土)」。
  8. {助辞}さらに輪をかけて、その上に加えての意を示すことば。→語法「④」▽去声に読む。
  9. 《日本語での特別な意味》ある(あり)。…である。

語法

①「~有…」は、
(1)「~に…あり」とよみ、「~に…がある・いる」と訳す。人・物が空間に存在する意を示す。「…」が主語。在とは用法が異なる。「鮑叔不以我為怯、知我有老母也=鮑叔我をもって怯と為さず、我に老母有るを知ればなり」〈鮑叔は私を臆病者呼ばわりしなかった、私には年とった母がいることを知っていたからである〉〔史記・管晏〕。「万方有罪、罪在朕躬=万方(まさ)に罪有らば、罪は朕が躬(み)に在らん」〈万民に罪があるならば、罪はわたしの身にあるようにせよ〉〔論語・尭曰〕
(2)「~、…あり」とよみ、「~は…をもっている」と訳す。所有の意を示す。「夫秦王有虎狼之心=それ秦王虎狼の心有り」〈だいたい秦王は虎や狼のような残忍な心を持っている〉〔史記・項羽〕
②「有~…(=~の説明)」は、「~の…するあり」とよみ、「…している~がある・いる」と訳す。「前有大蛇当径=前に大蛇の径(ただち)に当たる有り」〈前に道をふさいでいる大蛇がいる〉〔史記・高祖〕
③「有~者、…」は、「~(なるもの)あり、…す」とよみ、「~という人がいて、…する」と訳す。人物の登場を示す。▽有の上に時間・空間を示す語がつくこともある。「有顔回者、好学=顔回なる者有り、学を好む」〈顔回という者がいて、学問好きでした〉〔論語・先進〕
④「ゆう」とよみ、「加えて」「プラスして」と訳す。追加の意を示す。《同義語》又。「吾十有五而志于学=吾十有五にして学に志す」〈私は十五歳で学問に志した〉〔論語・為政〕

字通

ゆう+肉。肉を持って、神に侑薦(訳者注:すすめる)する意。〔説文〕七上に「宜しく有るべからざるなり」とし、「春秋伝に曰く、日月(月の字は衍文)之れを食する有り」の文を引いて、有とは異変のある意とし、字は「月に従い、又声」とするが、月に従う字ではない。卜文には有無の字に又を用い、金文に有を用いる。〔玉篇〕に「不無なり、果なり、得なり、取なり、質なり、しん(訳者注:つまびらか)なり」の訓がある。

訓義

(1)すすめる、のち侑に作る。(2)ある、存在する。(3)もつ、たもつ、おおい。(4)したしむ。

大漢和辞典

有 大漢和辞典
有 大漢和辞典
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邑(ユウ・7画)

論語 邑 金文
宜侯夨簋・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はʔi̯əp(入)。

学研漢和大字典

会意。「□(領地)+人の屈服したさま」で、人民の服従するその領地をあらわす。中にふさぎこめるの意を含む。のち翊(おおざと)の形となり、町や村、または場所をあらわすのに用いる。類義語に都。

語義

  1. {名詞}くに。殷(イン)代には、王の直轄のみやこの地。周代には、天子・諸侯および豪族のおさめる領地のこと。「大邑商(商、つまり殷代の都)」「采邑(サイユウ)(領地)」。
  2. {名詞}むら。国の中心のみやこを都というのに対して、地方の町やむらのこと。「都邑(トユウ)」「同邑(ドウユウ)(同郷の人)」「邑里(ユウリ)」。
  3. 「邑邑(ユウユウ)」とは、気がふさがってうっとうしいさま。《同義語》⇒悒悒(ユウユウ)。《類義語》於邑(オユウ)。「安能邑邑待数十百年以成帝王乎=いづくんぞ能く邑邑として数十百年を待ちて以て帝王と成らんや」〔史記・商君〕

字通

[会意]囗(い)+巴。囗は都邑の外郭、巴は卪(せつ)で人の跪座する形。城中に人のある意で、城邑・都邑をいう。〔説文〕六下に「國なり。囗に從ふ。先王の制、尊卑大小有り。卪に從ふ」とあり、卪を大小の節の意とするが、卪は人の蹲踞する象。囗の下に三人相並んで立つものは衆、卜文に口下に乑をしるす。卜辞に大邑商の名がみえ、王都を大邑といった。周初の新邑は成周、のちの洛陽で、成周とは武装都市の意。〔左伝〕にみえる外交の辞に、自国のことを弊邑・小邑という。また村落をいい、金文の〔𦅫鎛(そはく)〕に、二百九十九邑と民人都鄙とを賜与することをいう。〔左伝、荘二十八年〕に「凡そ邑に宗廟先君の主(位牌)有るを都と曰ひ、無きを邑と曰ふ」とみえる。

勇(ユウ・9画)

論語 勇 金文
庚壺・春秋末期

初出は春秋末期の金文。カールグレン上古音はdi̯uŋ(上)。

心が跳ね躍り、き上がるような感情。

学研漢和大字典

会意兼形声文字で、甬(ヨウ)は「人+〔音符〕用」から成り、用はつき通す意を含む。足でとんとんと突き通すように足踏みするのを甬(ヨウ)・踊(ヨウ)という。勇は「力+〔音符〕甬(ヨウ)」で、力があふれ足踏みして奮いたつ意。衝(まともに直進して突き当たる)とも縁が近い。

意味

  1. (ユウナリ){形容詞}いさましい(いさまし)。もと、足ぶみして奮いたつさま。のち、気力が盛んで強いさま。《対語》⇒怯(キョウ)。《類義語》壮・孟。「勇者」「民勇於公戦、怯於私闘=民公戦に勇にして、私闘に怯なり」〔史記・商君〕
  2. {名詞}まともに事にぶつかる気構え。「勇気」「見義不為、無勇也=義を見て為ざるは、勇無きなり」〔論語・為政〕
  3. {動詞}いさむ。心が奮いたつ。いさみたつ。「勇於為人、不自貴重顧藉=人の為にするに勇にして、自らは貴重顧藉せず」〔韓愈・柳子厚墓誌銘〕
  4. {名詞}中国の民間の自警団。義勇兵。「民勇」「郷勇」。

字通

[形声]声符は甬(よう)。〔説文〕十三下に「气なり」とみえ、篆・古文三字はみな今の勇とは異なる字形にしるされている。金文では、斉器の〔庚壺(こうこ)〕に武臣の功を賞して「甬甬たり」といい、字を甬に作る。踊躍の踊などと関係のある字であろう。

游(ユウ・12画)

游 金文 游 字解
叔之仲子平鐘・春秋末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音は声母のd(平)のみ、と同じ。藤堂上古音はdiog(dの下に○)。

学研漢和大字典

游 字解
会意兼形声。原字に二つあり、一つは「酉+子」の会意文字で、水上に子どもの浮かぶさま。もう一つはその略体を音符とし、旗のかたちを加えた字で、吹き流しの旗がゆらゆらと浮くようにゆれること。游はそれを音符とし、水を加えたもの。水上にゆらゆらと浮かび固定せぬことで、ひと所に定着しない意を含む。遊と通じて用いる。悠(ユウ)(とらわれない)や揺(ゆらゆら)と同系。

類義語の泳は、永く水上に浮くこと。「」とも書く。

意味

  1. {動詞}およぐ。足をつけずにゆらゆらと水面に浮かぶ。定着せずにゆらゆら動く。《同義語》⇒遊。《類義語》泳。「浮游(フユウ)(=浮遊)」「游泳(ユウエイ)(=遊泳)」「魚吾知其能游=魚は吾其の能く游ぐを知る」。
  2. {動詞}あそぶ。あそばす。固定せずにゆらゆらと動く。気のむくままに出歩く。《同義語》遊。「游学(ユウガク)(=遊学。他郷に学びに出る)」「游京師=京師に游ぶ」「游目騁懐=目を游ばせ懐ひを騁す」「秦時、与臣游=秦の時、臣と游ぶ」〔史記・項羽〕
  3. {名詞}水の流れ。《類義語》流。「上游(ジョウユウ)(川の上流)」「下游(カユウ)(川の下流)」。
  4. {動詞}あそぶ。気の向くままに楽しむ。《同義語》遊。「游於芸=芸に游ぶ」〔論語・述而〕
  5. {形容詞}一定の住まいや定職がないさま。《同義語》遊。「游民(ユウミン)」「游餌(ユウキョウ)(餌客)」。
  6. も{名詞}つきあい。《同義語》遊。《類義語》交。「息交以絶游=交はりを息めて以て游を絶たん」〔陶潜・帰去来辞〕

字通

[形声]声符は斿(ゆう)。斿は氏族旗を奉じて外に旅する意で、游・遊の初文。〔説文〕七上に「旌旗の流(りう)なり」とあり、遊をその古文とする。流は吹き流し。斿・游・遊三字はもと同字であるが、のち次第に慣用を生じた。〔詩、周南、漢広〕に「漢に游女有り」とは、漢水の女神。その祭祀は、女神出遊の形式をとるもので、水渡りをする。旗は神霊の宿るところであり、游・遊はもと神の出遊をいう字であったが、神を奉じてゆくことをいい、神のように自由に行動することをもいう。

大漢和辞典

→リンク先を参照

遊(ユウ・12画)

初出は甲骨文。カールグレン上古音は声母のd(平)のみ、と同じ。藤堂上古音はdiog(dの下に○)。

学研漢和大字典

会意兼形声。原字に二種あって、一つは「酉+子」の会意文字で、子どもがぶらぶらと水に浮くことを示す。もう一つはその略体を音符とし、吹き流しの旗のかたちを加えた会意兼形声文字(遊の右側の字)で、子どもが吹き流しのように、ぶらぶら歩きまわることを示す。游はそれを音符とし、水を加えた字。遊は、游の水を辶(足の動作)に入れかえたもの。定着せずにゆれ動くの意を含む。悠(ユウ)(ぶらぶら)・揺(ヨウ)(ぶらぶら)・猶予の猶(ユウ)(のんびり)と同系。草書体をひらがな「ゆ」として使うこともある。

語義

  1. {動詞・形容詞}あそぶ。きまった所にとどまらず、ぶらぶらする。旅をしてまわる。一定の住まいや定職がないさま。《同義語》⇒游。「行遊」「遊民」「遊子(旅人)」「遊餌(ユウキョウ)」。
  2. {動詞}あそぶ。すきなことをして気らくに楽しむ。《同義語》⇒游。「遊楽」「遊戯」。
  3. {動詞}あそぶ。定着した住居を離れてよそに出る。《同義語》⇒游。「遊学」「遊於京師=京師に遊ぶ」「遊於聖人之門者難為言=聖人の門に遊びし者は言を為し難し」〔孟子・尽上〕
  4. {動詞}いったり来たりしてつきあう。《同義語》⇒游。「交遊」。
  5. {動詞}あそばす。よりそって動かす。《同義語》⇒游。「遊目=目を遊ばす」「遊意=意を遊ばす」。
  6. {動詞}水にぶらぶらと浮く。転じて、泳ぐ。▽游に当てた用法。「遊泳(=游泳)」。
  7. 《日本語での特別な意味》
    ①あそぶ。音楽や舞をして楽しむ。
    ②あそび。ぶらぶらと動くだけのゆとり。「ハンドルの遊び」。
    ③野球で、「遊撃手」の略。「三遊間」。

字通

[形声]声符は斿(ゆう)。斿は氏族霊の宿る旗をおし建てて、外に出行することをいう字で、游・遊の初文。字はまた游に作る。〔説文〕に遊の字を収めず、游字条七上に「旌旗の流なり」とし、重文として遊を録する。〔詩、周南、漢広〕「漢に游女有り 求むべからず」とは、漢水の女神が出遊することで、水神であるから水渡りをする。陸ならば遊ということになる。遊ぶものは神霊であるから、その神事に携わり、特に喪祝のことに従うものを、わが国では「遊部(あそびべ)」といい、遊の初義において用いられている。すべて移動するものを遊といい、また逍遥して楽しむこと、自由な境涯をいう。

猶(ユウ・12画)

論語 猶 金文 論語 猶
毛公鼎・西周晚期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はz(平)。去声の音は不明。藤堂上古音はdiog(dの下に○)。

学研漢和大字典

会意。酋(シュウ)は、酉(酒つぼ)から酒気が細く長くのび出るさま。猶は「犬+酋(長くのびる)」で、のっそりとした動物や、手足と体をのばす動物の意。転じて、のばすの意となり、そこまでのばしてもなおの意の副詞となる。悠(ユウ)(のんびり)と同系。「なお」は「尚」とも書く。

語義

  1. {動詞・形容詞}のばす。のんびりするさま。《類義語》墹(ヨウ)・悠(ユウ)。「猶予(ぐずぐずと先へのばす)」。
  2. {副詞}なお(なほ)。→語法「①」。
  3. {指示詞}なお(なほ)。…のごとし。→語法「②」。
  4. {名詞}長くのびた道。▽猷(ユウ)に当てた用法。「大猶(タイユウ)(=大猷。大きな道)」。
  5. {名詞}さる。長い手をのばす手長ざる。▽去声に読む。また、キュウ(キウ)とも読む。
  6. {前置詞}…より。▽由に当てた用法。「然而文王猶方百里起=然りしかうして文王方百里よ」〔孟子・公上〕

語法

①「なお」とよみ、

  1. 「やはり」「それでもなお」と訳す。以前からの状況が続いている意を示す。「猶可以為善国=猶(な)ほもって善国と為す可し」〈(小国であっても)やはり立派な国にすることができる〉〔孟子・滕上〕
  2. 「猶且~=なおかつ」「猶復~=なおまた」も、意味・用法ともに1.と同じ。▽「猶且」は、戦国以後多く用いる。「猶復」は、前漢以後多く用いる。「尚且=なおかつ」「尚復=なおまた」は、よみは同じだが、意味は「さらにそのうえ」と異なる。

②「なお~のごとし」とよみ、「ちょうど~のようだ」と訳す。再読文字。比較して判断する意を示す。▽「如」「若」より強い表現。《類義語》由。「過猶不及=過ぎたるは猶(な)ほ及ばざるがごとし」〈ゆきすぎるのはゆきたりないのと同じだ〉〔論語・先進〕

③「~すらなお」とよみ、「~でさえも…」と訳す。
▽「~猶…、況=」は、「~すらなお…す、いわんや=をや」とよみ、「~でさえも…なのだから、ましてや=ならなおさらである」と訳す。抑揚の意を示す。「=」は「~」よりも程度が優れていることを示す。「管仲且猶不可召、而況不為管仲者乎=管仲すらかつ猶(な)ほ召す可からず、而(しか)るを況(いわ)んや管仲を為さざる者をや」〈管仲のような者でさえ呼びつけることはできない、とするなら管仲などとは違う者(わたし)はいうまでもない〉〔孟子・公下〕

字通

[形声]声符は酋(しゆう)。酋に輶・蝤(ゆう)の声がある。〔説文〕十上に「玃(さる)の屬なり」とし、「一に曰く、隴西(ろうせい)にて犬子を謂ひて猷と爲す」とあり、獣名とする。〔水経注、江水一〕に、猶猢(ゆうこ)は好んで巌樹に遊び「一騰百歩、或いは三百丈、順往倒返、空に乘ずること飛ぶが若(ごと)し」という。この字を猶予・夷猶のように用いるのは双声の連語。謀猶のときには多く猷を用い、金文の〔毛公鼎〕に「我が邦の小大の猷(はかりごと)」のようにいう。漢碑に「良猶」「徽猶」のように、猶を猷の義に用いる。猷は酋(繹酒(えきしゆ))に犬牲をそえた形で、神を祀り、神意に謀(はか)る意。また狖(ゆう)・又に通じ、さるの意に用いる。〔楚辞、九歌、山鬼〕「猨(さる)啾啾(しうしう)として、又(さる)夜に鳴く」の又は狖。猷の形が最も古くて、謀猷の意が本義。他の義には猶を用い、いま両字の用義を異にしているが、もと一字であった。

揖(ユウ・12画)

初出は後漢の『説文解字』で、論語の時代に存在しない。カールグレン上古音ʔi̯əp(入)で、同音に邑とそれを部品とする漢字群。語義は挹が共有するが、こちらも初出は『説文解字』。『大漢和辞典』で”えしゃく”を引くと「揖」とともに「撎」(エイ・イ)が出てくるが、こちらも初出は『説文解字』。

学研漢和大字典

会意。咠(シュウ)は「口+耳」からなり、口と耳をくっつけるさまを示す。揖は「手+咠(くっつける)」で、両手を胸の前でくっつけること。

語義

  1. (ユウス)(イフス){動詞}敬意をあらわすために、両手を胸の前で組み、囲みをつくった形にする。《同義語》⇒翠。「揖譲(ユウジョウ)(あいさつして、相手に譲る)」「入揖於子貢=入りて子貢に揖す」〔孟子・滕上〕
  2. (ユウス)(イフス){動詞}くむ。手や、ひしゃくで囲んで、そのわくの中に水を入れてすくう。▽翠(ユウ)に当てた用法。
  3. {動詞}多く集まる。《同義語》⇒輯・集。

字通

[形声]声符は咠(しゆう)。〔説文〕十二上に「攘(お)すなり」、また「一に曰く、手、胸に箸(つ)くるを揖(いふ)と曰ふ」とあり、「攘す」とは、次条に「攘は推すなり」とあって、手を前に組む推手と、手を胸に著ける引手の礼、いわゆる揖譲の礼をいう。〔左伝、昭二十五年〕「簡子、揖讓周旋の禮を問ふ」とあって、賓主の礼は、礼節の重要なものとされた。

語系

揖iəpは厭iapと声義近く、〔儀礼、郷飲酒礼〕「賓、介を厭(ひ)く」の〔注〕に「手を推すを揖と曰ひ、手を引くを厭と曰ふ」とみえる。撎ietは通転の字。粛拝のような拝礼のしかたである。揖にはまたtziəpの音があり、集dziəpと声近く、あつめ収める意がある。

誘(ユウ・14画)

初出は秦系戦国文字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音は声母のz(上)のみ。藤堂上古音は・・・yiəu。・・・の示す音を訳者は知らない。部品の「秀」初出も戦国文字。カ音は声母のs(去)のみ。藤音はt’uk。論語の時代に遡りうる可能性は皆無に等しい。

学研漢和大字典

会意兼形声。「言+(音符)秀(先にたつ)」。自分が先にたって、あとの人をことばでさそいこむこと。

語義

  1. {動詞}さそう(さそふ)。先にたってさそう。ある物事をするように勧める。「勧誘」。
  2. {動詞}みちびく。先にたって教えみちびく。「夫子、循循然善誘人=夫子、循循然として善く人を誘く」〔論語・子罕〕
  3. {動詞}さそう(さそふ)。引きおこす。おびき出す。また、そそのかす。「誘因」「誘惑」。

字通

[象形]羑(ゆう)に厶(し)を加えた形。厶はおそらく辮髪を垂れている形であろう。卜文の羌(きよう)には、辮髪の象を加えるものがあり、▽の形にかかれている。チベット系にその遺俗がある。〔説文〕九上に「相ひ訹呼(しゆつこ)するなり。厶に從ひ、羑に從ふ」と会意に解する。厶を姦邪の義とし、姦邪を以て相誘引する義とするものであろう。重文として誘・䛻(ゆう)および古文羑を録している。

憂(ユウ・15画)

論語 憂 金文
毛公鼎・西周末期

初出は西周早期の金文。カールグレン上古音はʔ(平)。藤堂上古音は・ɪog。

学研漢和大字典

論語 憂 解字
会意。「頁(あたま)+心+夊(足を引きずる)」で、頭と心とが悩ましく、足もとどこおるさま。かぼそく沈みがちな意を含む。優(しずしずと動く俳優)・幽(細かくかすか)・夭(ヨウ)(か細い)などと同系。類義語の愁は、心配で心が細く縮むこと。悁(エン)は、心が縮んで晴れないこと。患は、くよくよと気にすること。異字同訓に。うれい・うれえ 憂い・憂え「後顧の憂い(え)。災害を招く憂い(え)がある」 愁い「春の愁い。愁いに沈む」。草書体をひらがな「う」として使うこともある。▽「うれえる」「うれう」「うれえ」「うれい」は、「愁える」「愁う」「愁え」「愁い」とも書く。

意味

  1. {動詞}うれえる(うれふ)。心配してふさぎこむ。物思いに沈む。《類義語》愁(シュウ)。「憂愁」「父母唯其疾之憂=父母にはただその疾(やま)ひをこれ憂へしめよ」〔論語・為政〕
  2. {名詞}うれい(うれひ)。うさ。心配ごと。また、心配してめいった気持ち。「解憂=憂ひを解く」「杞憂(キユウ)(ゆえなき心配)」。
  3. {名詞}過労による病気。《類義語》患。「有采薪之憂=采薪の憂ひ有り」〔孟子・公下〕
  4. {名詞}死んだ父母のために服する喪。「丁憂=憂ひに丁たる」「居憂=憂ひに居る」。

字通

[会意]㥑(ゆう)+夊(すい)。頁(けつ)は儀礼の際の人の姿、夊はたちもとおる形、それに心を加えた形であるから、正確にいえば、𦣻(しゆ)+夊+心である。ただ憂の初文は𢝊、〔説文〕十下に𢝊を正字とし、「愁ふるなり。心頁に從ふ。𢝊ひの心、顏面に形(あら)はる。故に頁に從ふ」(小徐本)とするが、頁は儀礼に従うときの人の姿である。金文の字は頭に喪章の衰絰(さいてつ)を加える形で、象形。その廟中にある形は寡で、未亡人をいう。〔説文〕はまた夊部五下に憂を録し、「和の行なり。夊に從ひ、𢝊聲」とするが、和とは優字の訓である。金文の〔毛公鼎〕「先王の憂」の憂は象形。煩擾の意を示す。優・擾はみな憂に従う。

牖(ユウ・15画)

初出は『説文解字』で、論語では雍也篇10だけに見られるが、『孟子』『荀子』、大小の『礼記』にも見え、とりわけ『孔子家語』に多く見られる。カールグレン上古音は声母のz(上)のみ、韻母を共有する漢字多数。藤堂上古音はḍiog。動詞として”みちびく”の語釈があり、その場合の上古音はdog。「道・導」に当てた用法という。

学研漢和大字典

会意。甫は、博(開く、広がる)の意を示す。牖は「片(いた)+戸+甫」で、板で小さい戸型のまどをつくり、開いて明かりをとることを示す。壁を抜いてつくった小さい明かりとりのまどのこと。由(ユウ)(抜けて通る)・抽(抜いて通す)と同系。類義語の窓は、壁をつき抜けて空気を通すまどで、広く、へやのまどのこと。向は、空気抜きのまどのこと。

語義

  1. {名詞}まど。明かりとりのまど。壁やへいを打ち抜いて設けた明かりまど。「自牖執其手=牖より其の手を執る」〔論語・雍也〕
  2. {動詞}みちびく。▽道・導(上古音dog→dau)に当てた用法。「天之牖民=天の民を牖くや」〔詩経・大雅・板〕

字通

[形声]字はおそらくもと庸(よう)に従い、庸声であろう。〔説文〕七上に「壁を穿ち、木を以て交窻(かうさう)を爲すなり。片戶に從ひ、甫(ほ)聲」とするが、声が合わない。漢碑の〔婁寿碑(ろうじゆひ)〕に「棬樞(けんすう)甕牗(をういう)」とあって、字を牗に作る。土壁の墉に木枠の窓を設けるもので、庸に従う字とすれば、その声義を解することができる。

優(ユウ・17画)

初出は楚系戦国文字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はʔ(平)。同音多数。

学研漢和大字典

会意兼形声。憂の原字は、人が静々としなやかなしぐさをするさまを描いた象形文字。憂は、それに心を添えた会意文字で、心が沈んだしなやかな姿を示す。優は「人+(音符)憂」で、しなやかにゆるゆるとふるまう俳優の姿。▽「説文解字」に「饒(ユタ)かなり」とあるのはその派生義である。幽(奥深い。かすか)・夭(ヨウ)(しなやか)・窈(ヨウ)(しなやか)と同系。類義語に俳・秀。

語義

  1. {名詞}しなやかなしぐさをする人。「俳優」。
  2. (ユウナリ)(イウナリ){形容詞}やさしい(やさし)。しなやかなさま。「優美」。
  3. (ユウナリ)(イウナリ){形容詞}すぐれる(すぐる)。美しくひいでているさま。《対語》⇒劣。「優秀」。
  4. (ユウナリ)(イウナリ){形容詞}ゆたか(ゆたかなり)。ゆったりとしていてがさつかないさま。「優裕」「好善優於天下=善を好めば天下に優なり」〔孟子・告下〕
  5. 《日本語での特別な意味》
    ①ゆうに(いうに)。じゅうぶんであるさま。「優に十倍はある」。
    ②ゆう(いう)。成績や程度の序列で、最もよいものをあらわすことば。▽優・良・可の順。
    ③梵語(ボンゴ)「ウ」の音訳字。「優曇華(ウドンゲ)」。

字通

[形声]声符は憂(ゆう)。憂は喪に服して愁える人の形。未亡人のときには寡という。喪に服してかなしむ人の姿を優といい、またその所作をまねするものを優という。〔説文〕八上に「饒(おほ)きなり。一に曰く、倡(うた)ふものなり」とするが、もとは所作事を主とするものであった。〔説文〕に𢚧を憂、憂を優の義に解し、優には饒多の義を以て正訓とするが、もと俳優の優。死者の家人に代わって、神に対して憂え申す所作を演じたのであろう。のち山水の間に游んで神を慰め楽しませることを優游といった。〔詩、大雅、巻阿〕は山水の間に遊ぶ詩で、「爾(なんぢ)の游を伴奐(ばんくわん)にし 爾の休(慶)を優游にせよ」のように用いる。游も神とともに遊ぶ意である。神事的な遊楽が、のち娯楽のためのこととなり、調戯のこととなって、〔左伝、襄六年〕「少(わか)くして相ひ狎れ、長じて相ひ優(たはむ)る」とは戯れ合う意。もとは俳優の俳が調戯、優は憂愁の姿態をなす者であったが、その初義は早く失われたようである。

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