論語語釈「シ」(3)

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語釈 urlリンクミス

心(シン・4画)

論語 心 金文
大克鼎・西周晚期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はsi̯əm(平)。

学研漢和大字典

象形。心臓を描いたもの。それをシンというのは、沁(シン)(しみわたる)・滲(シン)(しみわたる)・浸(しみわたる)などと同系で、血液を細い血管のすみずみまで、しみわたらせる心臓の働きに着目したもの。▽平安時代には、灯心(トウシミ)のように、語尾のmをミ・ムに音訳した。「腎」の代用字としても使う。「肝心」▽付表では、「心地」を「ここち」と読む。

語義

  1. {名詞}五臓の一つ。循環系の中心をなす器官。心臓。「心房」「心者君主之官也、神明出焉=心は君主の官なり、神明これより出づ」〔素問・霊蘭〕
  2. {名詞}こころ。精神。▽心臓で精神作用が営まれると考えたところから。「心理」「傾心=心を傾く」「設心=心を設く」「従心所欲=心の欲する所に従ふ」〔論語・為政〕
  3. {名詞}むね。《類義語》胸。「心腹」。
  4. {名詞}物事の中心。まん中。また、まん中にあるもの。「円心」「核心」。
  5. {名詞}二十八宿の一つ。規準星は、今のさそり座にふくまれる。なかご。
  6. 《日本語での特別な意味》こころ。つ思いやり。「心なき人」づ趣味を解する気持ち。「絵心がある」。

字通

[象形]心臓の形に象る。〔説文〕十下に「人の心なり。土の蔵、身の中に在り。象形。博士説に、以て火の蔵と爲す」とあり、蔵とは臓の意。五行説によると、今文説では心は火、古文説では土である。金文に「克(よ)く厥(そ)の心を盟(あき)らかにす」「乃(なんぢ)の心を敬明にせよ」のように、すでに心性の意に用いている。

申(シン・5画)

論語 申 金文
子申父己鼎・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はɕi̯ĕn(平)。古くは「神」と書き分けられていない。

学研漢和大字典

会意。甲骨文字と金文とは、いなずま(電光)を描いた象形文字で、電の原字。篆文(テンブン)は「𦥑(両手)+┃印(まっすぐ)」で、手でまっすぐのばすこと。伸(のばす)の原字。電(のびるいなずま)・引(ひきのばす)・呻(シン)(声を長くのばしてうなる)・紳(からだをまっすぐのばす帯)などと同系。類義語に重。

語義

  1. {名詞}さる。十二支の九番め。▽時刻では、今の午後四時、およびその前後の二時間、方角では西南西、動物ではさるに当てる。「申時=申の時」「戊申(ボシン)の年」。
  2. {動詞}のべる(のぶ)。のばす。まっすぐに引きのばす。曲がりをためてまっすぐにする。《同義語》⇒伸。「屈申(=屈伸)」「申之、以孝悌之義=これを申ばすに、孝悌の義を以てす」〔孟子・梁上〕
  3. {動詞}もうす(まをす)。のべる(のぶ)。意見や気持ちを外に出して展開する。もうしのべる。《類義語》演。「申述」「申奏(上の人に所見をのべる)」。
  4. {動詞}力を入れてのばす。徹底させる。「申命」。
  5. {名詞}下級者が上級者に出す文書。「申文」。
  6. {名詞}上海の略称。▽上海の呉淞江(ゴショウコウ)を春申江ともいうことから。
  7. 《俗語》「申水(シエンシュイ)」とは、割り増し金。

字通

[象形]電光の走る形に象り、神(神)の初文。電の下部甲は、その電光の屈折して走る形。〔説文〕十四下に「神なり。七月、陰气體を成し、自ら申束(しんそく)す。𦥑(きよく)に從ふは、自ら持するなり。吏は餔時(ほじ)(食事時)を以て事を聽く。旦(あさ)の政を申(の)ぶるなり」と説くも、字形に即するところがない。〔大克鼎(だいこくてい)〕「申(かみ)にケン 外字孝(けんかう)す」、〔杜伯盨(とはくしゆ)〕「其れ用(もつ)て皇申(神)祖考と好倗友とに享孝す」など、金文には申を神の意に用いる。〔詩、小雅、采薇〕「福祿、之れを申(かさ)ぬ」のように申重の意に用い、また上申・申張のように用いる。伸はその派生字である。

迅(シン・6画)

卂 金文
「卂」卂伯簋・西周早期

初出は後漢の説文解字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はsi̯ĕn(去)。同音に新、薪、信、訊、卂”早く飛ぶ”。卂の初出は西周早期の金文。「ジン」は慣用音で、呉音は「シン」。

学研漢和大字典

会意兼形声。右側の字は、飛の一部で、はやく飛ぶこと。迅はそれを音符とし、辶をそえた字。疾(急病、はやい)・信(さっとのびる、はやく進む)と同系。類義語に早。

語義

  1. {形容詞}はやい(はやし)。速度がはやい。飛ぶようにはやい。「迅速」「奮迅」。
  2. {名詞}はやくとどく知らせ。▽信に当てた用法。「通迅(=通信)」。

字通

[形声]声符は卂(じん)。〔説文〕二下に「疾なり」と訓し、卂声。卂十一下は「疾く飛ぶなり。飛に從うて、羽見えず」とあり、〔唐本説文〕に「隼(しゆん)は卂の省に從ふ」とあって、隼(はやぶさ)の飛ぶようなさまをいう。のち迅雷のように用いる。

臣(シン・6/7画)

論語 臣 金文
毛公鼎・西周晚期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はȡi̯ĕn(平)。

学研漢和大字典

象形。臣は、下に伏せてうつむいた目を描いたもので、身をかたくこわばらせて平伏するどれい。臥(ガ)(ふせる)や臨(下をみる)に含まれる。上古にはギンと読み、緊(キン)(かたくしめる)・堅(ケン)(かたい)などと同系。もとの画数は六画。

意味

  1. {名詞}おみ。もと、かしこまってつかえるどれいのこと。転じて、家来。《対語》⇒君。「臣僕」「臣事(家来としてつかえる)」「臣事君、如之何=臣君に事ふるには、これをいかんせん」〔論語・八佾〕
  2. {名詞}臣下が君主に対してへりくだっていう自称のことば。《類義語》僕。「臣不能以喩臣之子=臣は以て臣の子に喩すこと能はず」〔荘子・天道〕
  3. (シンタリ){動詞}家来としての本分をつくす。家来らしくする。「臣不臣=臣臣たらず」〔論語・顔淵〕
  4. (シントス){動詞}家来とする。召し使う。「学焉而後臣之=学んでしかる後これを臣とす」〔孟子・公下〕
  5. 《日本語での特別な意味》おみ。八姓の一つ。天武天皇の時代に制定された八色(ヤクサ)の姓(カバネ)の六番め。

字通

目をあげて上を見る形。大きな瞳を示す。〔説文〕三下に「牽かるるなり」と、臣・牽の音の関係を以て解するが、両者の間に声義の関係はない。また字形について「君に事うる者なり。屈服する形に象る」(段注本)とするが、字は卜文の望に含まれる形と同じく、上方を見る目の形である。卜辞にみえる小臣は王族出身の者で、聖職に従い、臣を統括する。臣は多く神事に従い、もと異族犠牲や神の隷徒たる者を意味した。宮廟につかえる者を臣工といい、〔詩、周頌〕に〔臣工〕の一篇がある。金文の賜与に「臣三品」のようにいうのは、出自の異なる者三種をいう。また「臣十家」のようにいうのは、一般の徒隷と異なるものであろう。のち出自や身分に関することなく、他に服事するものをいう。

訓義

  1. つかえる、神廟につかえる、祭事につかえる。
  2. おみ、けらい、しもべ。
  3. めしうど、とりこ。
  4. たみ、人民。
  5. 臣下の自称。

身(シン・7画)

身 金文
邾公華鐘・春秋晩期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はɕi̯ĕn(平)。

学研漢和大字典

象形。女性が腹に赤子をはらんださまを描いたもの。充実する、いっぱいつまるの意を含み、重く筋骨のつまったからだのこと。真(いっぱいつまる)・鎮(チン)(重くつまる)などと同系。類義》語の体(=體)は、手足をはじめ、いろいろな器官の備わったからだ全体。草書体をひらがな「み」として使うこともある。

語義

  1. {名詞}み。からだ。また、首から上の部分を除いたからだ。《類義語》体。「身首、異処=身首、処を異にす」「身也者父母之遺体也=身也者は父母之遺せる体也」〔礼記・祭義〕
  2. {名詞・副詞}み。みずから(みづから)。わがみ。自分。自分で。また、三国・六朝時代には、わたくしの意の自称のことばとして用いた。「身為天子=身は天子と為る」〔孟子・万上〕
  3. {動詞}みずからする(みづからす)。自分でする。「湯武身之也=湯武はこれを身らするなり」〔孟子・尽上〕
  4. {名詞}み。木の幹、刀のなかみ、物の体積など、物の中心やなかみのこと。「刀身」「船身」。
  5. め{動詞・名詞}みごもる。はらむ。こどもをはらむ。おなかの中の胎児。「大任有身=大任身める有り」〔詩経・大雅・大明〕
  6. 「身毒(シンドク)」とは、インドの古称。「天竺(テンジク)」とも。▽インドの地域名Sindhuの音訳。

字通

[象形]みごもっている人の側身形。〔説文〕八上に「躬(み)なり」とするが、〔詩、大雅、大明〕に「大任(たいじん)身(はら)める有り」の〔伝〕に「身重きなり」とするのが字の原義。孕妊をいい、孕は腹中に子のある人の側身形。娠(しん)は身の形声字である。

辰(シン・7画)


二祀弋其卣・殷代末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はȡi̯ən(平)。

学研漢和大字典

辰 解字
象形。蜃(シン)(かい)の原字で、二枚貝が開いて、ぴらぴらと弾力性のある肉がのぞいたさまを描いたもの。振・震と同系。

意味

  1. {名詞}たつ。十二支の五番め。▽方角では東南東、時刻では午前八時、およびその前後二時間、動物では竜にあてる。▽十二支の五番めに当てたのは、動植物がふるいたつ初夏のころの意から。
  2. {名詞}十二支をまとめていうことば。「浹辰(ショウシン)(子から亥(ガイ)までで一巡する十二日)」。
  3. {名詞}とき。時刻や日。「時辰」「吉辰(キツシン)(吉日)」。
  4. {名詞}時刻につれて動く天体。日、月、星の総称。「三辰(サンシン)(日月星)」「北辰(ホクシン)(北極星)」。
  5. {名詞}星の名。水星。「辰星(シンセイ)」。
  6. {形容詞}元気よくふるいたつさま。▽振に当てた用法。「辰牡孔碩=辰牡孔だ碩なり」〔詩経・秦風・駟蚶〕

字通

辰[象形]蜃蚌(しんぼう)などの貝の類が、足を出して動いている形。〔説文〕十四下に「震ふなり。三月、陽气動き、靁電振ふ。民の農時なり。物皆生ず。乙匕(いつひ)に從ふ。匕は芒達(ばうたつ)(草木の芽)に象る。厂(かん)の聲」(段注本)とする。当時の五行説によって説くものである。なお「辰は房星、天時なり」と、星の名にして農祥とし、字形中の二は上の意であるという。字は蜃の象形。その貝殻は刈器として耨(くさきり)に用いられ、蜃器に対する古い信仰を生んで、祭祀にも蜃を用いた。〔周礼、地官、掌蜃〕に「祭祀には蜃器の蜃を共(供)することを掌る」とあり、〔春秋、定十四年〕「秋、天王、石尚をして、來(きた)りて蜃を歸(おく)らしむ」のような例がある。西周期の金文の紀月の法に、「辰(とき)は五月に在り」のようにいうのは、辰が農時の意から、時期の意に転用されたものであろう。日月の会するところの十二次を辰といい、また星宿の名に用いる。

辛(シン・7画)

辛 金文
父辛𣪕・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はsi̯ĕn(平)。

学研漢和大字典

象形。鋭い刃物を描いたもので、刃物でぴりっと刺すことを示す。転じて、刺すような痛い感じの意。新(切りたて、なま)・薪(切りたてのまき)と同系。鹹(カン)は、しおからい。

語義

  1. {名詞・形容詞}からい(からし)。五味(酸・苦・甘・辛・鹹(カン))の一つ。舌をさすようなぴりぴりする味。ぴりっとさす感じ。《類義語》辣(ラツ)。「辛辣(シンラツ)」「五辛(葵(キ)・據(カク)・薤(カイ)・葱(ソウ)・韭(キュウ)の五種のからい野菜)」。
  2. {名詞・形容詞}つらい(つらし)。身にこたえるつらさ。はだ身をさすように心が痛い。「辛酸」「悲辛(痛いほどの悲しみ)」。
  3. {名詞}かのと。十干(ジッカン)の八番め。▽五行では、庚とともに金に当てる。「かのと」は、「金の弟」の意。順位の第八位も示す。「辛亥(シンガイ)」。
  4. 《日本語での特別な意味》
    ①からし。からし菜の種からとったぴりぴりする粉。薬味などに用いる。また、からい野菜。「唐辛(トウガラシ)」。
    ②からい(からし)。物事に対する態度がきつい。きびしい。《対語》甘。「点が辛い」。
    ③「辛うじて」とは、やっとの意。

字通

[象形]把手のある大きな直針の形。これを入墨の器として用いるので、言・章・童・妾・辠(ざい)・辜(こ)・商などの字は、もと辛に従う形に作る。〔説文〕十四下に「秋時、萬物成りて孰す。金は剛、味は辛なり。辛痛しては卽ち泣(なみだ)出づ。一に從ひ、䇂(けん)に從ふ。䇂は辠(つみ)なり。辛は庚を承く。人の股に象る」とする。その説は五行配当の説によるもので、字形学的には何の意味もない。䇂はまた■(上下に立+丂)に作り、辥(せつ)・辟(へき)などの字は、もとその形に従い、曲刀の象、刳剔(こてき)するのに用いる。辛に墨だまりをつけた形は章、入墨によって文身を施すことを文章、その美しさを彣彰という。

信(シン・9画)

論語 信 金文
中山王□壺・戦国末期

初出は西周末期の金文。上掲の金文は戦国末期のもので、論語の時代には「㐰」と書かれた。
信 金文
(「叔鼎」西周末期)

カールグレン上古音はsi̯ĕn(去)。

学研漢和大字典

会意文字で、言は、言明(はっきりいう)の意。信は「人+言」で、一度言明したことを押し通す人間の行為をあらわす。途中で屈することなく、まっすぐのび進むの意を含む。信義の信はその派生義。進・晉(シン)(=晋)・迅(ジン)と同系のことば。

意味

  1. {名詞}まこと。言明や約束をどこまでも通すこと。▽前言をかえたり、途中で屈したりするのを不信という。「信義」「民無信不立=民信無(な)くんば立たず」〔論語・顔淵〕
  2. (シンナリ){形容詞}まこと。ほんとうであるさま。「信斯言也=信なるかな斯の言也」〔孟子・万上〕
  3. (シンニ){副詞}まことに。ほんとうに。「若妻信病、賜小豆四十斛=もし妻信に病めば、小豆四十斛を賜へよ」〔魏志・華佗〕
  4. (シンズ){動詞}信用する。「信任」「王信之乎=王これを信ずるか」〔韓非子・内儲説上〕
  5. {名詞}約束。また、約束のしるし。「印信(はんこ)」。
  6. {動詞}のびる(のぶ)。のばす。つかえずにまっすぐのびる。また、のばす。《同義語》⇒申。▽平声に読む。「屈而不信=屈して信びず」〔孟子・告上〕
  7. {動詞}まかせる(まかす)。引きとめずにまっすぐのばす。いくにまかせる。「信手=手に信す」「東望都門信馬帰=東のかた都門を望んで馬に信せて帰る」〔白居易・長恨歌〕
  8. {動詞}旅の行程をのばし二泊する。「信宿」。
  9. {名詞}遠くまでのび届くたよりやニュースのこと。▽訊(シン)に当てた用法。「音信」「風信」。
  10. 《日本語での特別な意味》「信濃(シナノ)」の略。「信州」。

字通

人+言。言は誓言、神に誓う語である。〔説文〕三上に「誠なり」という。〔穀梁伝、僖二十二年〕に「言にして信ならざれば、何を以てか言と為さん」とあり、誓約の言であるから、信誠の意がある。

訓義

1)まこと、まことにする。2)しるし、あかし、わりふ。3)あきらか、つまびらか。4)したがう、うやまう。5)任と通じ、まかせる。6)申と通じ、再宿、かさねて宿る。7)訊と通じ、たより、つかい。8)伸と通じ、のびる、ゆるやか。

大漢和辞典

まこと、まことに、まこととする、疑わない。あきらかにする、つまびらかにする。知る。しるし、あかし。割り符。従う。敬う。保つ。任せる。二晩泊まる、再宿。海水の定時の満干。使い、使者。たより、おとずれ。五音の宮をいう。五行で水神を言う。姓。〔仏〕一切の理・非理を弁別し、三宝の浄徳を楽願し、一切の善事を希望して、その心の清浄なこと。伸に通じ、のびる、のばす、ゆるくする。申に通ず。身に同じ。

信 大漢和辞典
信 大漢和辞典
信 大漢和辞典
信 大漢和辞典

神/神(シン・9画)

神 金文
㝬鐘・西周晚期

初出は西周中期の金文。カールグレン上古音はʰi̯ĕn(平)。藤堂上古音dien。論語語釈「鬼」も参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。申は、いなずまの伸びる姿を描いた象形文字。神(=神)は「示(祭壇)+(音符)申」で、いなずまのように、不可知な自然の力のこと。のち、不思議な力や、目に見えぬ心の働きをもいう。電(いなずま)と同系。類義語に鬼。旧字「閼」は人名漢字として使える。▽付表では、「神楽」を「かぐら」、「お神酒」を「おみき」と読む。

語義

  1. {名詞}かみ。日・月・風・雨・雷など、自然界の不思議な力をもつもの。天のかみ。▽祇(ギ)(地のかみ)・鬼(人のたましい)に対することば。「百神」「祭神如神在=神を祭るには神の在すがごとくす」〔論語・八飲〕
  2. {名詞}理性ではわからぬ不思議な力。「神秘」「入神」「聖而不可知之、之謂神=聖にしてこれを知るべからざる、これを神と謂ふ」〔孟子・尽下〕
  3. {形容詞}ずばぬけて、すぐれたさま。「神品」。
  4. {名詞}こころ。精神。「曠神=神を曠くす」「臣以神遇而不以目視=臣神を以て遇し目を以て視ず」〔荘子・養生主〕
  5. 《日本語での特別な意味》
    ①かみ。祖先のかみ。「天照大神(アマテラスオオミカミ)」。
    ②「神戸」の略。「阪神地帯」。

字通

[形声]声符は申(しん)。申は電光が屈折して走る形で、神威のあらわれと考えられ、神の初文。〔説文〕一上に「天神なり」とし、「萬物を引きて出だす者なり」と神・引の畳韻を以て訓する。〔礼記、礼運〕「鬼神に列す」の〔鄭玄注〕に「神なる者は、物を引きて出ださしむ。祖廟・山川・五祀の屬を謂ふなり」とあって、当時の音義説であった。金文の〔宗周鐘(そうしゆうしよう)〕に「皇上帝百神」、また〔大克鼎(だいこくてい)〕に「申(神)にケン 外字孝(けんかう)す」とあって、祖霊も神として祀られていたことが知られる。精神的なはたらきのすぐれたものをも、神爽・神悟のようにいう。

哂(シン・9画)

初出は不明。時代が下っても『定州竹簡論語』より新しくはない。カールグレン上古音はɕi̯ən(上)。同音に娠”はらむ”、矧”いわんや・ながい・はぐき”。矧の初出は後漢の隷書。”矢を矧ぐ”は日本語だけの語義。

『礼記』曲礼上篇に「笑不至矧」とあるので、おそらく漢代の言葉だろう。歯茎を見せてあざけり笑うこと。藤堂博士は根が一本気で真面目な人だから、下掲の通り一生懸命この漢字の語義を鹿爪らしく仕立てようとしているが、成功しているとは言えない。

学研漢和大字典

会意兼形声。西は、ざるを描いた象形文字で、すきまから水や息が漏れ去る意を含む。哂は「口+(音符)西」で、口もとから息が漏れること。遷(セン)(中身が抜け去る)と縁が近い。

語義

  1. {動詞}わらう(わらふ)。しっと歯の間から息を出して含みわらいをする。ほほえむとき、失笑するときの両方に用いる。「夫子哂之=夫子これを哂ふ」〔論語・先進〕

字通

[形声]声符は四(し)。〔玉篇〕に「笑ふなり」とあり、嘲笑的な笑いかたをいう。

袗(シン・10画)

初出は後漢の説文解字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はȶi̯ən(上)。同音に㐱”豊かな髪”とそれを部品とする漢字群多数。

学研漢和大字典

会意兼形声。右側の字(音チン・シン)は、びっしりとつまる意を含む。袗はそれを音符とし、衣を加えた字。

語義

  1. {動詞・名詞}びっしりと細かいぬいとりをする。また、ぬいとりをした衣服。
  2. {名詞}黒い衣服。墨染め。
  3. {名詞}目の細かい布でつくったひとえ。単衣。
  4. {形容詞・名詞}衣の色が服全体に同じで、そろいになっているさま。ひと色の衣服。《類義語》袀(キン)。

字通

[形声]声符は㐱(しん)。〔説文〕八上に「玄服なり」とあり、黒い服。裖はその或る体の字。〔玉篇〕に「玄服なり、縁なり、又、單なり」と衿とりした服とし、また繍などのある礼服をいう。また、襌と通じ、単衣をもいう。

浸(シン・10画)

浸 甲骨文
(甲骨文)

初出は甲骨文。カールグレン上古音はtsi̯əm(去)。

学研漢和大字典

会意兼形声。𠬶(シン)は「又(手)+ほうき」の会意文字で、手でほうきを持ち、しだいにすみずみまでそうじを進めていくさまを示す。浸は「水+(音符)𠬶」で、水がしだいにすみずみまでしみこむこと。侵(じわじわとはいりこむ)・沁(しみこむ)と同系。類義語の漬(シ)は、物を重ねて水の中につけこむこと。「滲」の代用字としても使う。「浸透」。

語義

  1. {動詞}しみる(しむ)。水がじわじわとしみこむ。《同義語》⇒滲(シン)・沁(シン)。「浸潤(しみわたる)」「浸透」。
  2. {動詞}ひたす。水にひたす。水の中につける。「別時茫茫江浸月=別るる時茫茫(ばうばう)として江月を浸す」〔白居易・琵琶行〕
  3. {副詞}ようやく(やうやく)。やや。少しずつ。じわじわと。しだいに。《類義語》漸(ゼン)・(ヨウヤク)。「国勢浸盛=国勢浸く盛んなり」。

字通

[形声]旧字は浸 外字に作り、帚(しん)声。〔説文〕の篆文の字形は濅に作る。帚は祼鬯(かんちよう)のとき、帚(箒(ほうき))に酒を灌いで、その祭場を清める意。濅は廟所を鬯酒(ちようしゆ)(香り酒)で祓い清める意で、その酒気を浸 外字という。〔説文〕十一上に濅を水名とし、呼沱(こだ)河の支流の名とするが、字は寝廟における祼鬯の礼をいう。その廟所をまた寢(寝)という。卜辞に「浸 外字するに、疾亡(な)きか」と卜する例があり、疾病を祓う儀礼にも用いた。■(示+帚)は精気感祥、これを祓うのに濅の儀礼が行われた。

晉/晋(シン・10画)

晋 金文
晉人簋・西周中期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はtsi̯ĕn(去)。

学研漢和大字典

会意。「二本の矢+口印(目標)」で、矢が並んで目標めがけてすすむさま。進と同じく、ずんずんと伸びすすむこと。臻(シン)・秦(シン)(すすむ)もこれとほとんど同じ。

語義

  1. {動詞}すすむ。ずんずんとすすむ。《同義語》⇒進。《類義語》臻(シン)(すすむ)。「孟晋(モウシン)(つとめ励んで、進歩する)」。
  2. {名詞・動詞}帯に差す短冊型のさしもの。また、それを差す。▽析(シン)に当てた用法。
  3. {名詞}春秋時代の国の名。もと周の成王の弟、叔虞が封ぜられた国。今の山西省を中心とする地。晋の文公は諸侯の覇者(ハシャ)となったが、のち韓(カン)・魏(ギ)・趙(チョウ)に分裂した。
  4. {名詞}山西省の別称。
  5. {名詞}三国時代のあとの王朝の名。司馬炎が魏(ギ)にかわってたてた。のち、元帝のとき、五胡(ゴコ)の侵入によって洛陽(ラクヨウ)から建康(南京)に移った。前半を西晋(四代。二六五~三一六)、後半を東晋(十一代。三一七~四二〇)という。
  6. {名詞}王朝の名。五代の一つ。石敬滅(セキケイトウ)が後唐(コウトウ)を滅ぼしてたてた。二代で契丹(キッタン)に滅ぼされた。「め」の晋と区別して後晋・石晋ともいう。
  7. {名詞}周易の六十四卦(カ)の一つ。陝隍(坤下離上(コンカリショウ))の形で、明るさが進んで地上に出るさまを示す。

字通

[象形]旧字は晉に作り、その初文は㬜。臸(じつ)は鏃(やじり)、その鋳型の形。曰(えつ)は鋳こみの流し口。ここから流しこんで鏃を作るので、晉は箭(せん)の初文。箭はその形声の字である。〔説文〕七上に「進むなり。日出でて萬物進む。日に從ひ、臸に從ふ」と会意に解し、また「易に曰く、明、地上に出づるは㬜なり」と〔易、晋、象伝〕の文を引く。晉・進は畳韻の訓。金文の〔師湯父鼎(しとうほてい)〕の賜与中に「矢■(上下に至+至)(しせん)」とあるのは矢箭の意。〔儀礼、大射儀、注〕に「古文、箭を晉と爲す」とするが、晉がその初文である。晉の訓義は〔易、晋〕の卦義から出ている。

進(シン・11画)

論語 進 金文
𥃝圜器・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はtsi̯ĕn(去)。

学研漢和大字典

会意。「辵+隹(とり)」で、鳥が飛ぶように前にすすむことをあらわす。信(すらすらとすすむ、いつわりのないことば)と同系。異字同訓に勧める「入会を勧める。転地を勧める」 薦める「候補者として薦める」。

語義

  1. {動詞}すすむ。すすめる(すすむ)。すいすいと前へ出る。前へ出す。人前に出る。《同義語》⇒晋・臻。《対語》⇒退。「前進」「雖覆一簣、進吾往也=一簣を覆すと雖も、進むは吾が往くなり」〔論語・子罕〕
  2. {動詞}すすむ。すすめる(すすむ)。高い地位、よいほうに移る。また、高い地位、よいほうに移す。「先進」「栄進」「国君進賢、如不得已=国君賢を進むるには、已むを得ざるがごとくす」〔孟子・梁下〕
  3. {動詞}すすめる(すすむ)。人の前にさし出す。さしあげる。「進呈」「進言」。
  4. {動詞・名詞}《俗語》はいる。とりこむ。収入。《対語》⇒出。《類義語》入。「進門(チンメン)」。
  5. {動詞}《俗語》輸入する。《対語》出。「進口(チンコウ)(輸入)」。
  6. 《日本語での特別な意味》じょう。四等官で、職・坊の第三位。

字通

[形声]声符は隹(すい)。〔説文〕二下に「登(すす)むるなり」、〔玉篇〕に「前(すす)むるなり、升(のぼ)すなり、登むるなり」とあって、進饌の意とする。字はもと進退に関して、鳥占(とりうら)によってことを決する意であろう。鳥占の俗には、軍事に関することが多く、たとえば鷹狩りによって神意の応答を試みるなどのことも行われた。

深(シン・11画)

深 金文
『字通』所収金文

初出は甲骨文。カールグレン上古音はɕi̯əm(平)。

学研漢和大字典

会意兼形声。右側は、もと「穴(あな)+火+又(手)」の会意文字で、穴の中に奥ふかく手を入れて火をさぐるさま。探(おくふかくさぐる)の原字。深はそれを音符とし、水を加えた字で、水の奥ふかいこと。湛(タン)(奥ふかい水)・潭(タン)(奥ふかい水)・甚(ふか入りしている、ひどい)・沈(奥ふかくしずむ)などと同系。

語義

  1. {形容詞・名詞}ふかい(ふかし)。ふかさ。水がふかいさま。また、その度合い。《対語》⇒浅。「深浅」「深淵(シンエン)」「深千尺(深さ千尺)」。
  2. {形容詞}ふかい(ふかし)。表面からずっと中にはいっているさま。奥ふかい程度がひどいさま。《類義語》遠。「深遠」「深刻」「智深而勇沈=智深くして而勇沈なり」〔史記・荊軻〕。「深耕易耨=深く耕して易かに耨す」〔孟子・梁上〕
  3. {形容詞・動詞}ふかい(ふかし)。夜がふけているさま。夜がふける。「夜深=夜深し」。
  4. {形容詞}ふかい(ふかし)。色がこい。《対語》浅。「深紅」。
  5. {副詞}ふかく。心の底にふかく。「深信=深く信ず」。
  6. {副詞}はなはだ。非常に。▽甚(ジン)に当てた用法。「深好=深だ好し」。
  7. 《日本語での特別な意味》み。奥ふかいことをあらわすことば。「深雪」「深山」。

字通

[形声]声符は罙(しん)。罙の初文を〔説文〕七下に𥥍とし、「𥥍は深なり。一に曰く、竈突(さうとつ)なり。穴に從ひ、火に從ひ、求の省に從ふ」とするが、字は火をもって穴中を照らす形である。廟中で火をもつものを叜というのと似た形である。〔爾雅、釈言〕に「㴱は測るなり」とあり、水深を測る意とする。〔礼記、楽記〕に「高きを窮め、遠きを極めて、深厚を測る」とあって、測る意のある字。ものを捜求するを探というが、罙も捜の従う叟と同じように、火を執ってものを探す意の字であろう。これを水中に及ぼして深という。

紳(シン・11画)

紳 金文
「𤕌」師克盨・西周末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はɕi̯ĕn(平)。論語の時代に通用した金文では、「𤕌」と記す。ただし「𤕌」は「練」”練り絹”・「緟」”かさねる”などの異体字とされ、なぜ「紳」の金文と言えるか疑問ではある。「𤕌」については論語語釈「畜」も参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。申の甲骨文字はのびていく稲妻を描いた象形文字。ただし篆文(テンブン)は「臼(両手)+┃印(まっすぐ)」の会意文字で、手でまっすぐにのばすことを示す。紳は「糸(ひも)+(音符)申」で、からだをまっすぐのばすおび。伸(のびる、のばす)と同系。

語義

  1. {名詞}ふとおび。からだをまっすぐのばすおび。転じて、高官が用いる礼装用の太いおび。「紳帯」「加朝服尽紳=朝服を加へ紳を尽く」〔論語・郷党〕
  2. {名詞}地位・教養が備わったりっぱな人。インテリ。知識人。「搢紳(シンシン)(仕官して礼服をつける官吏)」「郷紳(郷里に引退した者)」「紳士」。

字通

[形声]声符は申(しん)。申はものを束ねること。申束する意がある。〔説文〕十三上に「大帶なり」とあり、大帯には素また練を用いた。〔詩、衛風、有狐〕の〔伝〕に「帶は衣を申束(しんそく)する所以(ゆゑん)なり」、〔礼記、少儀、注〕に「帶は自ら結束する所以なり」という。〔論語、衛霊公〕「子張、諸(こ)れを紳に書す」とは、大帯の垂れた余りの部分に、孔子の語を急いで書きとどめたことをいう。

晨(シン・11画)

晨 金文
『字通』所収金文

初出は甲骨文。カールグレン上古音はȡi̯ən(平)。

学研漢和大字典

会意兼形声。辰(シン)は、二枚貝が開いて、ぺらぺらと震える舌を出したさまを描いた象形文字。蜃(シン)(はまぐり)の原字。晨は「日+(音符)辰」で、日がふるいたってのぼってくること。また生気のふるいたって動きはじめるあさ。震(ふるう)・振と同系。類義語に朝。

語義

  1. {名詞}あさ。あした。太陽がふるいたってのぼるあさ。生気に満ちた早朝の意に用いる。「清晨(セイシン)(さわやかなあさ)」「晨炊蓐食=晨に炊げども蓐食す」〔史記・淮陰侯〕
  2. {名詞}とき。早朝、鶏がときを告げること。「牝鶏之晨(ヒンケイノシン)(早朝、めんどりがときを告げること。女性がいばって政治を乱すたとえ)」〔書経・牧誓〕
  3. {名詞}二十八宿の一つ。房星。

字通

[形声]正字は曟に作り、辰(しん)声。〔説文〕七上に「房星なり。民の田時を爲す者なり」とし、星の名とする。〔爾雅、釈天、星名〕に「大辰は房心(星宿の名)の尾なり。大火、之れを大辰と謂ふ」とあり、〔国語、周語上〕に「農祥は晨正なり」とあって、農時を示すものとされた。晶は星の象。星の初文は曐に作る。晨は晨旦・昧爽の意である。〔説文〕は䢅字条三上に「早なり。昧爽なり」とする。䢅は辰(しん)(脤肉)を両手でもつ形で、金文の〔師䢅鼎(ししんてい)〕の字は■(上下に辰+止)に従う形に作り、昧晨の字とは形が異なる。経伝の文に、昧晨の字には晨を用い、䢅を用いることはほとんどない。農の初文䢉はその形に従っており、晨を農祥とすることは、その䢉の字と関係があろう。

診(シン・12画)

初出は秦系戦国文字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はȶi̯ən(上)。同音多数。

”みる”類義語の一覧については、論語語釈「見」を参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。彡は、髪の字の右上と同じで、毛が並んで生えているさま。診の右側の字(音シン)は、すきまなく髪の毛が生えているさま。診はそれを音符とし、言を加えた字で、すみずみまで手ぬかりのないようにみて判断を下すこと。慎(シン)(すみずみまで心を配って、手ぬかりのないよう用心する)と同系。

語義

  1. {動詞}みる。みおとしのないようにすみずみまでみて、その事がらについて判断を下す。よくみる。また、病状をよく調べる。「診察(病状をみて、病気を判断する)」「特以診脈為名耳=特に脈を診るを以て名と為すのみ」〔史記・扁鵲〕
  2. {動詞}うらなう(うらなふ)。夢うらないをする。夢の内容からその吉凶の判断をする。「匠石覚而診其夢=匠石覚めて其の夢を診ふ」〔荘子・人間世〕

字通

[形声]声符は㐱(しん)。㐱は人の発疹のある形。〔説文〕三上に「視るなり」とあり、〔列子、力命〕「其の疾む所を診(み)る」のように、診察することをいう。〔荘子、人間世〕「匠石(人の名)覺めて其の夢を診(つ)ぐ」は告知する意。その験証したところを以て告げることをいう。

愼/慎(シン・13画)

論語 慎 金文
(金文・邾公華鐘 春秋晚期 集成245)

初出は西周中期の金文。

部品の「真」に”つつしむ”の語義は『大漢和辞典』でも確認できないし、甲骨文も金文も戦国文字も見つかっていない。同訓近音に「叀」(セン)があり甲骨文から確認できるが、音通とは言いかねる。「叀」の上古音は不明であり、『広韻』による中古音の半切は線・禪の去声である。

「慎」のカールグレンによる上古音はȡi̯ĕn(去)であり、『広韻』による中古音の半切は震・禪の去声で、両者が音通できるかどうかはなんとも言えない。同音に「昚」(慎の古字、上掲)、「臣」(仕える、従える)。

学研漢和大字典

会意兼形声。眞(シン)(=真)は、欠けめなく充実したこと。愼は「心+(音符)眞」で、心が欠けめなくすみずみまでゆきとどくこと。填(テン)(欠けめなく詰める)と同系のことば。類義語の祗(シ)は、うやうやしいこと。謹(キン)は、こまかに気を配ること。恪(カク)は、心にかどめをつけること。虔(ケン)は、きちんと整ったこと。敬(ケイ)は、はっと緊張してかしこまること。恭(キョウ)は、両手でささげるような、うやうやしい気持ちのこと。欽(キン)は、からだをかたくとじたさまをしてつつしむこと。

異字同訓に慎む「身を慎む。酒を慎む。言葉を慎む」 謹む「謹んで聞く。謹んで祝意を表する」。旧字「愼」は人名漢字として使える。

意味

  1. {動詞・形容詞}つつしむ。念を入れる。欠けめなく気を配る。また、そのさま。《対語》⇒慢(マン)・怠(タイ)。「謹慎」「慎思之=慎んでこれを思ふ」〔中庸〕
  2. {名詞}つつしみ。つつしみ深いこと。念入りな心。

参考:『大漢和辞典』「真」条

真 大漢和辞典

新(シン・13画)

新 金文
郘大叔斧・春秋

初出は甲骨文。カールグレン上古音はsi̯ĕn(平)。

学研漢和大字典

会意兼形声。辛は、鋭い刃物を描いた象形文字。新の左側の字(音シン)は「木+(音符)辛」の会意兼形声文字で、木を切ること。新はそれを音符とし、斤(おの)を加えた字で、切りたての木、なまなましい意。薪(シン)(なま木、まき)と同系。類義語の鮮(セン)は、なまなましいこと。草書体をひらがな「し」として使うこともある。

語義

  1. {形容詞}あたらしい(あたらし)。あらた。切りたてであるさま。はじまったばかりであるさま。《対語》⇒旧・故。《類義語》鮮。「新鮮」「新年」。
  2. {名詞}あたらしき。あたらしい物事。「温故而知新=故きを温めて新しきを知る」〔論語・為政〕。「吐故納新=故きを吐きて新しきを納る」〔荘子・刻意〕
  3. {動詞}あらたにする(あらたにす)。あたらしいものにする。汚れを取り去って出なおす。「面目一新(メンボクイッシン)(すっかりようすを新しくする)」「日日新=日日に新たにす」〔大学〕。「改過自新=過ちを改めて自ら新たにす」〔漢書・刑法志〕
  4. {副詞}あらたに。…したばかり。近ごろ。「新嫁娘(花嫁)」「潦倒新亭濁酒杯=潦倒新たに亭む濁酒の杯」〔杜甫・登高〕
  5. {名詞}王朝の名。漢の王莽(オウモウ)が新都侯となり、前漢を滅ぼしてたてたが、紀元八年から二三年までで滅亡した。
  6. 《日本語での特別な意味》
    ①にい(にひ)。あら。あたらしい意をあらわすことば。「新妻(ニイヅマ)」「新湯(アラユ)」。
    ②しん。太陽暦のことの、「新暦」の略。「新の正月」。

字通

[会意]辛(しん)+木+斤(きん)。辛は針。新木を伐るとき、選木のために矢や針をうつ俗があった。〔説文〕十四上に「木を取るなり」とし、■(上下に辛+木)(しん)声とする。〔説文〕六上は■(上下に辛+木)を「■(上下に辛+木)實なり。小栗の如し」(段注本)と榛栗の意とし、声符とするが、(上下に辛+木)は木と辛(針)とに従い、入山して新木を伐る儀礼と解すべく、かくしてえた新木を以て神位を作る。これを拝するを親という。これらの字の従う(上下に辛+木)は、みな意符とみるべきである。卜辞において、新は新廟・新宗・新家など、多く寝廟に関する字に用いる。卜文に■(宀+新)の字があり、金文に親をまた■(宀+新)に作る。いずれも廟屋の形に従う字である。草木を併せて薪といい、薪も神事に用いるもので、〔詩〕には多く采薪の俗が歌われているが、それらは祭事詩の発想に用いられている。

寑・寢/寝(シン・13画)

寝 金文
小臣卣・殷代末期

寑の初出は甲骨文。寢の初出は春秋末期の金文。寑のカールグレン上古音はtsʰǐəm(上)。寢のカールグレン上古音はtsʰi̯əm(上)。 ̆は超短音を、◌̯は音声副音を示す。

「寑」に条目があるのは『大漢和辞典』のみで、『学研漢和大字典』『字通』『漢字源』『新漢語林』『新字源』には条目が無い。『中日大字典』は「寢」の異体字として取り扱っている。

学研漢和大字典

(条目無し)

会意兼形声。侵は、しだいに奥深くはいる意を含む。寢は、それに宀(いえ)を加えた字の略体を音符とし、爿(しんだい)を加えた字で、寝床で奥深い眠りにはいること。浸(水が奥深くしみこむ)と同系。類義語に睡。旧字「寢」は人名漢字として使える。

語義

  1. {動詞}ねる(いぬ・ぬ)。活動をやめて深い眠りにはいる。夜、眠る。または病気のため、奥のへやにはいって眠る。《対語》⇒覚。「宰予昼寝=宰予昼寝ぬ」〔論語・公冶長〕
  2. {名詞}寝床での本式の眠り。「就寝=寝に就く」「覚寝而説=寝より覚めて説ぶ」〔韓非子・二柄〕
  3. {動詞}やめる(やむ)。活動をやめる。また、採用をとりやめる。「寝其議=其の議を寝む」。
  4. {名詞}奥まったへや。本式の座敷。「燕寝(エンシン)(くつろぐ居室)」「正寝(奥の客間)」。
  5. {名詞}皇帝の墓のそばにこしらえた、墓祭りのために泊まるへや。「陵寝」。

字通

(条目無し)

[会意]正字は㝲に作り、夢の省文+𡪷 (しん)。夢は夢魔。夢魔によって死ぬことを薨という。㝲は寝臥中に夢魔に襲われることをいう。〔説文〕七下に「病みて臥するなり」とし、㝱の省に従い、𡨦(しん)の省声に従う字であるという。㝱は前条に「寐(い)ねて覺むること有るなり」とみえ、夢みてめざめる意。㝲はその夢魔におびやかされる意で、「寝廟」の寢とは同字でない。寝廟の寢の初文は𡨦。帚は箒の形で、これに酒を灌(そそ)いで祼鬯(かんちよう)し、霊廟を清める意で、寝廟の意となる。寢は寝臥、㝲は夢魔の象を加えた字。夢は媚蠱(びこ)(まじない)のなすところで、夢の上部は媚女の象である。

大漢和辞典

寝 大漢和辞典

親(シン・16画)

論語 親 金文
克鎛・西周晚期

初出は西周末期の金文。カールグレン上古音はtsʰi̯ĕn(平)。去声の音は不明。

学研漢和大字典

論語 親 解字 論語 見 解字
会意兼形声文字で、辛(シン)は、はだ身を刺す鋭いナイフを描いた象形文字。親の左側は薪(シン)の原字で、木をナイフで切ったなま木。親はそれを音符とし、見を加えた字で、ナイフで身を切るように身近に接して見ていること。じかに刺激をうける近しい間がらの意。類義語の戚(セキ)は、小さいの意を含み、隔ての小さいみうち。

意味

  1. {動詞・形容詞}したしむ。したしい(したし)。ちかい(ちかし)。身近に接している。じかにはだ身にふれる。《対語》⇒疏(ソ)(うとい)。「親疏(シンソ)」「親切」「人之親其兄之子=人の其の兄の子を親しむ」〔孟子・滕上〕
  2. {副詞}したしく。みずから(みづから)。自分でじかに。直接に。《類義語》自・躬(キュウ)。「親迎」「親書」「親征(天子みずから征する)」。
  3. {動詞}みずからする(みづからす)。自分で行う。「弗躬弗親、庶民弗信=躬らせず親らせずんば、庶民信ぜず」〔詩経・小雅・節南山〕
  4. {名詞}おや。じかに接している父・母のこと。「双親(父母)」「仁之実事親是也=仁の実は親に事ふること是なり」〔孟子・離上〕
  5. {名詞}身近なみうち。《類義語》戚(セキ)。「親戚」「六親(父子兄弟夫婦)」「親戚畔之=親戚もこれに畔く」〔孟子・公下〕
  6. {名詞}結婚によって縁つづきとなった身うち。▽去声に読む。「親家(婚姻によってできた身うち)」。
  7. 《日本語での特別な意味》おや。勝負事や組の主となる人。

字通

辛(ハリ)+木+見で、神事に用いる木を選ぶためにハリを打ち、切り出した木材を「新」といい、新で位牌を作って拝むことを「親」という。それが”おや”の意味に転じたのは、新しい位牌は父母のものであることが多いからであろう。

諶(シン・16画)

諶 金文
諶鼎・西周末期

初出は西周末期の金文。カールグレン上古音はȡi̯əm(平)。「ジン」は呉音。

学研漢和大字典

会意兼形声。「言+(音符)甚(シン)(深い)」。

語義

  1. {名詞}まこと。深い心の底。真心。また真実。
  2. {副詞}まことに。たしかに。実に。「諶荏弱而難持=諶に荏弱(じんじゃく)にして持し難(がた)し」〔楚辞・哀郢〕

字通

[形声]声符は甚(じん)。〔説文〕三上に「誠諦なり」とあり、誠をつくすことをいう。〔書、咸有一徳〕に「天は諶(まこと)にし難し」の句がある。訦・忱と声義が通ずる。

※訦・忱:”まこと”。

譖(シン・21画)

譖 金文
戎生鐘・西周中期偏晚

初出は西周中期の金文。カールグレン上古音はtʂi̯əmi̯əm(去)。

学研漢和大字典

会意兼形声。覚(セン)は、細い所へはいりこむこと。譖は「言+(音符)覚」で、ちょっとしたすき間から、じわじわと悪口をしみこませること。潛(セン)(=潜。水にもぐる)・簪(シン)(髪の毛のすき間にさしこむかんざし)と同系。

語義

  1. {動詞・名詞}そしる。そしり。じわじわと悪口をいう。中傷のことば。「浸潤之譖(シンジュンノソシリ)」〔論語・顔淵〕
  2. (シンス){動詞・形容詞}細かい手くだで事実をかくす。いつわる。いつわって真心がない。「朋友已譖=朋友已に譖す」〔詩経・大雅・桑柔〕

字通

(条目無し)

新漢語林

  1. 《音訓》シン沁zèn
  2. 《音訓》セン艶jiàn
  1. うったえる。うそを言ってうったえる。
    そし-る。事実をまげて悪口をいう。あることないことを言って讒言(ザンゲン)する。また、そしり。
  2. いつわる。たがう。=僭。

人(ジン・2画)

論語 人 金文
洹子孟姜壺・春秋晚期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はȵi̯ĕn(平)。

”他人”を意味しうることについては、現代日本語でも「ひと」を”他人”の意として用いるのと共通しているが、英語のhumanにその語義があるという話は聞かないので、人類の言語に普遍的現象とは言えない。

「人」と近音で”かれ”を意味する漢字は、『大漢和辞典』によれば「爾」ȵi̯ăr(上)のみ。音素の共通は50%で、音通するとは断じかねる。『学研漢和大字典』が「もと身近な同族や隣人仲間を意味した」と言うのは、どのような根拠によるものなのだろう。

学研漢和大字典

象形。人のたった姿を描いたもので、もと身近な同族や隣人仲間を意味した。▽孔子は、その範囲を「四海同胞」というところまで拡大し、広く隣人愛の心を仁(ジン)(ヒューマニズム)と名づけた。
二(ニ)・(ジ)(二つくっついて並ぶ)・爾(ニ)・(ジ)(そばにくっついている相手、なんじ)・尼(ニ)(相並び親しむ人)・仁と同系。類義語に民。付表では、「一人」を「ひとり」「二人」を「ふたり」「若人」を「わこうど」「大人」を「おとな」「玄人」を「くろうと」「素人」を「しろうと」「仲人」を「なこうど」と読む。

語義

  1. {名詞}ひと。人間。「宋人(ソウヒト)(宋の国の人)」「人而無信、不知其可也=人にして信無(な)くんば、その可なることを知らざるなり」〔論語・為政〕
  2. {名詞}ひと。他人。《対語》⇒己(オノレ)・我。「人我」「己欲立而立人=己立たんと欲して人を立つ」〔論語・雍也〕
  3. {副詞}ひとごとに。ひとびと。人々の略。「人給、家足=人ごとに給し、家ごとに足る」〔史記・太史公自序〕
  4. {単位詞}人数を数えることば。「三人行必有我師焉=三人行へば必ず我が師有り」〔論語・述而〕
  5. 《日本語での特別な意味》じん。物事を三段階に分けるときの第三。「天地人」。

字通

[象形]人の側身形。〔説文〕八上に、「天地の性、最も貴き者なり」とし、字形について「此れ籀文(ちうぶん)、臂脛(ひけい)の形に象る」という。卜文・金文はみなこの形に作り、匈(きよう)(胸)・包・身など、みなこの形に従う。

仁(ジン・4画)

仁 金文
中山王鼎・戦国末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はȵi̯ĕn(平)。

論語では、孔子の肉声であれば”貴族(らしさ)”、後世の捏造であれば”常時無差別の高尚な愛”。論語における「仁」も参照。

学研漢和大字典

会意兼形声文字で、「人+二」で、二人が対等に相親しむことを示す。相手を人として扱うこと。また、柔らかいこと。人(ジン)・(ニン)と二(ジ)・(ニ)と、どちらを音符と考えてもよい。

意味

  1. {名詞}ひと。人間。《同義語》⇒人。「井有仁焉=井に仁有り」〔論語・雍也〕
  2. (ジンナリ){名詞・形容詞}自分と同じ仲間として、すべての人に接する心。隣人愛や同情の気持ち。また、そのような気持ちをもつさま。「仁者愛人=仁なる者は人を愛す」〔孟子・離下〕
  3. {名詞}「仁ま」の心をそなえた人。仁徳をそなえた人。「仁者」「観過、斯知仁矣=過ちを観れば、斯に仁を知る」〔論語・里仁〕
  4. {名詞}柔らかい果物のたね。「杏仁(キョウニン)(あんずのたね)」。
  5. 「不仁(フジン)」とは、手足の動かない病気のこと。

字通

人+二。〔説文〕八上に「親しむなり」とし、「人に従ひ、二に従ふ」と二人相親しむ意とする。金文や、〔説文〕に古文として録する字形は、人が衽(しきもの)を敷いている形で、二人相偶するという形ではない。〔儀礼、士昏礼〕「衽を奥に御(すす)む」の中に「臥席なり」とあり、衽席を用いて安舒であることから、和親・慈愛の意が生まれたのであろう。一般に徳目に関する字は、正は征服、義は犠牲、道(道)は道路の修祓、德(徳)は遹省(いつせい)巡察を原義とするので、具体的な行動や事実をいうものであった。のち次第に抽象化して、高度の観念に達する。仁もまた衽席によって和むことから、和親・仁愛の意に展開したものであろう。

訓義

したしむ、なごむ。いつくしむ、めぐむ。あわれむ、おもいやり、なさけぶかい。うるおう、うるおいがある。人としての徳、最高の徳。果実のさね。

大漢和辞典

いつくしむ、親しむ。いつくしみ、したしみ。めぐみそだてる。あはれむ。しのぶ。なさけ、おもひやり。うるほひ。徳教、教化。人、又、人の心。心の本体、性、理、覚。愛の理、心の徳。己を修めること。諸徳の総称。有徳の人。存する。五行で東・春・乾・木に配当する。果実のさね。人に通ず。民に通ず。古は忎・𡰥に作る。姓。

盡/尽(ジン・6画)

盡 尽 金文
中山王□壺・戦国末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はdzʰi̯ĕnまたはtsi̯ĕn(共に上)。

学研漢和大字典

会意。盡は、手に持つ筆の先から、しずくが皿にたれつくすさまを示す。津(シン)(しずく)・燼(ジン)(燃えつきたかす)と同系。類義語の悉(コトゴトク)は、細かいところまで全部、の意。旧字「盡」は人名漢字として使える。▽「甚」の代用字としても使う。「食尽」。

語義

  1. {動詞}つきる(つく)。つくす。残りなく出してしまう。ありったけを費やす。「尽力(ジンリョク)」「事君尽礼=君に事ふるに礼を尽くす」〔論語・八飲〕。「秋風吹不尽=秋風吹いて尽きず」〔李白・子夜呉歌〕
  2. {動詞}つくす。最後まで全うする。おわる。「尽吾歯=吾が歯を尽くす」〔柳宗元・捕蛇者説〕
  3. {動詞}つくす。力をあるだけあらわして最上の程度に達する。「尽美矣=美を尽くせり」〔論語・八飲〕
  4. {副詞}ことごとく。→語法「①」

語法

①「ことごとく」とよみ、「残らずすべて」と訳す。《類義語》悉(シツ)・(コトゴトク)。「頭髪上指、目眥尽裂=頭髪上り指し、目眥(もくし)尽く裂く」〈その髪は逆立ち、目じりは裂けきらんばかりである〉〔史記・項羽〕
②「不尽~」は、「ことごとくは~せず」とよみ、「すべて~するとは限らない」と訳す。部分否定。「五穀尽収、則五味尽御於主、不尽収、則不尽御=五穀尽く収まれば、則(すなは)ち五味は主に尽く御(おさ)め、尽くは収めざれば、則ち尽くは御めず」〈五穀をすべて収穫できたときには、五味を調和させた食事をことごとく君主に進めることができる、五穀すべてが収穫できないときには、五味すべての味付けがされた食事などは進めることはできない〉〔墨子・七患〕
③「尽不~」は、「ことごとく~せず」とよみ、「まったく~しない」と訳す。全部否定。▽「尽」「不」の語順により意味が異なる。「問其左右、尽不知也=その左右に問ふに、尽く知らざるなり」〈左右の者に尋ねたが、だれもみな知らなかった〉〔韓非子・説林上〕

字通

[会意]旧字は盡に作り、聿(いつ)+皿+水滴の象。深い器の中を洗うために、細い木の枝のような棒(聿)を入れ、水を加えて器中を洗滌(せんでき)することを示す。〔説文〕五上に「器中、空しきなり」とあり、器中を洗うことによって終尽の意を示す。終尽の意から、すべてを傾注する、ものを究極する意となる。

甚(ジン・9画)

論語 甚 金文
甚諆鼎・西周中期

初出は西周中期の金文。カールグレン上古音はȡi̯əm(上/去)。

学研漢和大字典

会意。匹とは、ペアをなしてくっつく意で、男女の性交を示す。甚は「甘(うまい物)+匹(色ごと)」で、食道楽や色ごとに深入りすること。深・湛(タン)(深く水をたたえる)・探(深く手を入れてさぐる)・貪(タン)(深入りしてむさぼる)などと同系。類義語の太は、程度のはげしいこと。頗(ハ)(すこぶる)は、片よって程度を過ごすこと。「尽」に書き換えることがある。「食尽」。

語義

シン(去・上)
  1. {形容詞}はなはだしい(はなはだし)。ある事に深入りしている。また、ひどい。「甚矣、吾衰也=甚だしきかな矣、吾が衰へたる也」〔論語・述而〕
  2. {副詞}はなはだ。→語法「①」。
ソモ(唐:平)
  1. {副詞}《俗語》なに。どんな。《同義語》⇒什。「甚人(ソモニン)(どんな人)」「甚麼生(ソモサン)(なぜ、どうして)」。

字通

[象形]竈(かまど)の上に烹炊の器をかけている形で、烹餁(ほうじん)の意。〔説文〕五上に「尤も安樂するなり。甘匹に從ふ。匹は耦なり」と甘匹の会意とし、男女相媅(たの)しむ意とする。媅の意を以て解するが、古文の字形は竈に鍋をかけた形。斗を以てこれをくむを斟酌(しんしやく)という。〔左伝〕にみえる裨諶(ひじん)は、裨竈(ひそう)と同一人であるらしく、甚・竈対待の名字をもつ人であろう。煮すぎることを過甚という。

衽(ジン・9画)

初出は秦系戦国文字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はȵi̯əm(去)。同音は壬とそれを部品とする漢字群多数。壬に”えり”の語釈は『大漢和辞典』に無い。

学研漢和大字典

会意兼形声。「衣+(音符)壬(ジン)(中に入れこむ)」で、内側に入れこむ衣の部分。妊(赤ん坊を腹の中に入れこむ)と同系。

語義

  1. {名詞}えり。内側に入れこむえり。のち、広く、衣服のえり。「左衽(サジン)(左のえりを内に入れる)」。
  2. {名詞}おくみ。衣服をわきで縫いあわせるときに、そのぬいあわせ目にある布。また、和服の場合、前幅を広くつくるために、身頃(ミゴロ)に縫いつける細長い布。
  3. {名詞}衣服のすそ。もすそ。「斂衽=衽を斂む」。
  4. {名詞}柔らかいねどこ。しとね。「衽席(ジンセキ)」。
  5. {名詞}くぎのかわりに用いて板と板とをつなぐもの。ちぎり。▽棺をつくるときに使う。

字通

[形声]声符は壬(じん)。壬にふくらむ意がある。〔説文〕八上に「衣の䘳(えり)なり」とあり、衿は襟、衽はおくみをいう。左衽は東夷の俗。中国では死者の礼。〔儀礼、士喪礼〕「衽を奧に御(すす)む」、〔中庸、十〕「金革を衽(しとね)とす」のように、衽席の意にも用いる。仁の古い字形は、人の後ろに衽席をおく形で、安舒を原義とする字である。〔荘子、達生〕に「人の最も畏るる所は、衽席の上、飮食の閒なり」とみえる。

訒(ジン・10画)

初出は後漢の説文解字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はȵi̯ən(去)。同音は忍、刃、認、肕”堅い肉”、仞”高低の単位”、軔”歯止め”、牣”満ちる・塞ぐ”。うち認は「訒に通ず」と大漢和辞典は言うが、初出は不明。忍は「こらえる」の語釈があるが、初出は戦国末期の金文

学研漢和大字典

会意兼形声。「言+(音符)刃(ジン)(ねばる)」。

語義

  1. (ジンナリ){形容詞}口がねばるさま。口のきき方が重々しく、いいよどみがちなさま。「仁者其言也訒=仁者は其の言也訒なり」〔論語・顔淵〕

字通

認(訒)

[形声]声符は忍(にん)。字はもと訒に作り、刃(じん)声。〔説文〕三上に「訒は頓(なや)むなり」、〔広雅、釈詁三〕に「訒は難(なや)むなり」、〔玉篇〕に「訒は鈍きなり」とあり、これらの古字書に認の字はみえない。王念孫の〔広雅疏証〕に「荀子正名篇に、是れに外(はづ)るる者、之れを認と謂ふ。楊倞注に云ふ、認は難なりと。竝びに字異なるも義は同じ」という。おそらくもと同じく、のち分化した字であろう。認識とは、旧所有者が遺失の物を発見し、その所有権を主張し立証することをいう。〔三国志、呉、鍾離牧伝〕に、牧が自ら墾田して荒田二十余畝を開き、稲の熟したころ「縣民に之れを識認するもの有り」、牧はそのまま県人にこれを与えたという話がみえる。このころから、認にそのような用義を生じたのであろう。

飪(ジン・13画)

初出は後漢の説文解字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はȵi̯əm(上)。同音に壬とそれを部品とする漢字群など多数。部品の壬(初出は甲骨文)に”煮る”の語釈は無い。近音同義「甚」ȡi̯əm(上/去)の初出は西周中期の金文。論語時代の置換候補となる。

学研漢和大字典

会意兼形声。「食+(音符)壬(ニン)・(ジン)(中に入れこむ、ふんわりとする、柔らかい)」。

語義

  1. {動詞・名詞}にる。しんがとおって柔らかくなるまで、食物をにる。また、にかた。にえかた。「失飪不食=飪を失へるは食らはず」〔論語・郷党〕

字通

[形声]声符は壬(じん)。壬にふくらむ意がある。〔説文〕五下に「大いに孰(に)るなり」、〔方言、七〕に「熟(に)るなり。徐・揚の閒には飪と曰ふ」とみえる。〔論語、郷党〕に「失飪のものは食らはず」とあり、よく火がとおって、ふくよかになることをいう。

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