論語語釈「ソ」

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語釈 urlリンクミス

助(ソ・7画)

初出は秦系戦国文字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はdʐʰi̯o(去)。同音は鋤、耡、鉏(三つとも農具のスキ)。「ジョ」は呉音。

学研漢和大字典

会意兼形声。且は、積み重ねたさまを描いた象形文字。助は「力+(音符)且(シャ)・(ショ)」で、力の足りないとき、その上にプラスして力をそえてやること。祖(世代の重なり)・苴(ショ)(敷き重ねる草)・且(かつ。その上に重ねて)などと同系。類義語の佑(ユウ)・祐(ユウ)は、かばう。佐は、ささえる。扶は、わきの下をささえる。援は、急場にゆとりをあけてやる。裨(ヒ)は、つけ足す。補は、つぎ当てる。救は、危険におちいらないようにひき止めること。輔(ホ)はぴったりくっついて力をそえる。

語義

  1. {動詞}たすける(たすく)。力を貸す。「補助」「回也、非助我者也=回や、我を助くる者に非ざるなり」〔論語・先進〕
  2. {名詞}たすけ。援助。「得道者多助=道を得たる者には助け多し」〔孟子・公下〕
  3. 「耕助(コウジョ)」とは、畑にすきを入れて耕すこと。▽鋤(ジョ)に当てた用法。
  4. 「助法」とは、古代の税法。孟子の説では、田地を井字型に九区画にわけ、周囲の八区を八家に与え、中央を公田として共同で耕させ、その全収穫を租税とした。⇒「井田法」。
  5. (ジョス){動詞}「む」の方法で租税を納める。また、納めさせる。「殷人七十而助=殷人は七十にして而助す」〔孟子・滕上〕
  6. 《日本語での特別な意味》
    ①すけ。四等官で、寮の第二位。
    ②すけ。人の特徴をあらわす語につけ、人名めかしていうことば。「飲み助」「ちび助」。

字通

[会意]且(しょ)+力。〔説文〕十三下に「左(たす)くるなり」とし、且声とするが、且は耒(すき)、力は耒(すき)。両者を組み合わせて、鋤耕の意を示す。鋤耕に協力することから、助耕・助力の意となる。共耕によって税を出すことを助法という。すべて助勢する意に用いる。

阼(ソ・8画)

初出は戦国中期の金文。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はdzʰɑɡ(上)。同音は祚”さいわい”、胙”ひもろぎ”。藤堂説では同音の「祚」が同義というが、初出は楚系戦国文字。白川説によると部首の「阝」=「𨸏」に階段の語義があるといい、初出は甲骨文

学研漢和大字典

会意兼形声。「阜(盛り土)+(音符)乍(=作。たつ、しつらえる)」。

語義

  1. {名詞}堂(客間)の東側にある階段。客を迎えるとき、主人がたつ所。
  2. {名詞}玉座にのぼる階段。転じて、天子の位。《同義語》⇒祚。「践祚(センソ)」。

字通

[形声]声符は乍(そ)。〔説文〕十四下に「主の階なり」とあり、主人が堂に升るときの東の階段。賓は西の階段より升る。天子即位のとき、この阼階より升るので、践阼という。〔礼記、曲礼下〕に「阼を踐(ふ)みて祭祀に臨む」とみえる。

俎(ソ・9画)

俎 金文
三年𤼈壺・西周中期

初出は西周中期の金文。カールグレン上古音はtʂi̯o(上)。呉音は「ショ」。

学研漢和大字典

会意兼形声。且(シャ)は平らな台を示す一印の上に、物を積み重ねたさまを描いた象形文字。俎(ソ)は「積み重ねるさま+(音符)且」。且が、その上に重ねる→かつ、の意の接続詞となったため、俎がその原義をあらわすようになった。祖(世代の重なった先祖)・助(力を積み重ねる)・苴(ショ)(重ねて敷く草)などと同系。

語義

  1. {名詞}供物を積み重ねてのせる台。「礼俎(レイソ)」。
  2. {名詞}まないた。さかなや肉を積み重ねて料理する台。「人方為刀俎、我為魚肉=人は方に刀俎為り、我は魚肉為り」〔史記・項羽〕

字通

[会意]両肉片+且(そ)。且は俎(まないた)の形。且の上に大きな祭肉をおく形は宜。金文に「ソン 外字宜(そんぎ)」という語があり、饗宴を献ずることをいう。〔説文〕十四上に「禮俎なり。半肉の且上に在るに從ふ」とあり、〔礼記、玉藻〕に三俎・五俎、〔儀礼、士昏礼〕に匕俎従設のことがみえる。宴会のことを樽俎という。

素(ソ・10画)

論語 素 金文
師克盨蓋・西周末期

初出は西周末期の金文。カールグレン上古音はso(去)。

学研漢和大字典

会意文字で、「垂(スイ)(たれる)の略体+糸」で、ひとすじずつ離れてたれた原糸。疏(ソ)(一つずつ離れる)・索(ひとすじずつ離れた糸)などと同系のことば。

意味

  1. {名詞}より糸にする前のもとの繊維。蚕から引き出した絹の原糸。《類義語》索。
  2. {名詞}もと。人工を加えたり、結合したりする前の、もととなるもの。「要素」「元素」。
  3. {名詞・形容詞}もと。人工を加えない本質。生地のままのさま。飾りけのないさま。《類義語》樸(ボク)・朴。「素朴」「素質」「質素」。
  4. {形容詞・名詞}しろい(しろし)。しろ。模様や染色を加えない生地のままのさま。また、そのしろい布。「織素=素を織る」「素衣(白い衣)」「素以為絢兮=素以て絢と為す」〔論語・八佾〕
  5. {名詞}もとからの下地。もとからのつきあい。「有平生之素=平生の素有り」。
  6. {形容詞・副詞}資産や金をかけていない。ただで。道具を使わずに。地のままで。「素餐(ソサン)(ただ食い)」「素封(ソホウ)(爵位のない大名、つまり民間の金持ち)」→語法。
  7. {副詞}もとより。もともと。はじめから。昔から。《類義語》固(モトヨリ)。「素善留侯張良=素より留侯張良に善し」〔史記・項羽〕→語法。
  8. (ソス){動詞}もとづく。生地のままに安んじる。そのままで安んじる。「君子素其位而行=君子は其の位に素して行ふ」〔中庸〕
  9. {名詞}なま野菜。蔬菜(ソサイ)。「茹素(ジョソ)(柔らかいあお菜)」。
  10. 《日本語での特別な意味》まったく何もない。ただの。「素寒貧(スカンヒ°ン)」。

語法

「もと」「もとより」とよみ、「平素より」「素性からして」「ふだん」「日頃」などと訳す。▽「素」には、金や手間をかけずに、地のままでという意や、平素より、日頃という意、むかしから、はじめからという意などがあるので、文脈によって訳が異なる。「且相如素賤人=かつ相如は素(もと)賤人なり」〈それに相如はもともと微賤の出だ〉〔史記・廉頗藺相如〕

字通

[象形]糸を染めるとき、束の上部の結んだ部分が白く染め残される。その部分を素という。糸の上部は、その結んだところ。〔説文〕十三上に「白の緻(きめこま)かき繒(きぬ)なり。糸と垂とに從ふ。其の澤あるを取るなり」とするが、垂に従う字ではない。染め残されたところが本来の色であるので、すべて手を加えない以前の状態をいう。

措(ソ・11画)

初出は戦国末期の金文。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はtsʰɑɡ(去)。同音は無し。部品の「昔」に”おく”の語釈は無い。

敗戦の詔勅に「拳々措カサル所」とあるのは、”拳を丸めるように体を丸めるような恭しい態度で、放置しない”の意。壊滅的な敗戦を仕出かしたというのに、まだこんな馬鹿げた呪文をラジオでまき散らしていた。旧制中学の漢文の先生以外、一体誰が聞いて分かったのだろう。

学研漢和大字典

会意兼形声。昔(セキ)は「かさねるしるし+日」からなる会意文字で、日数を重ねた昔のこと。措は「手+(音符)昔」で、手を物や台の上に重ねておくこと。錯(地金の上に金をぬり重ねること)・籍(セキ)(重ねておく竹の冊子)と同系。類義語に寘。

語義

  1. {動詞}おく。上に重ねておく。台におく。《類義語》置。「挙措(上げたりおいたりする→動作、ふるまい)」「民無所措手足=民手足を措く所無し」〔論語・子路〕
  2. {動詞}おく。手をくだす。「措置」「措手不及=措手及ばず」。
  3. {動詞}おく。そのままにしておく。手を下におろして、仕事をやめる。《類義語》捨。「学之弗能弗措也=これを学んで能はずんば措かず」〔中庸〕

字通

[形声]声符は昔(せき)。昔に錯(そ)の声がある。〔説文〕十二上に「置くなり」とは赦すこと。措置(そち)とは、手足を伸ばして安んずること。すべて、そのような状態に処置することをいう。

疏(ソ・12画)

蔬も参照

初出は戦国文字で、論語の時代に存在しない。カールグレン上古音は”うとい・まばら”の場合平声でʂi̯o(平)。同音にその意味の漢字は存在しない。その意味での同義語である疎の字(「漢字古今音資料庫」では疏の異体字として取り扱っている。すなわち同音)には、甲骨文・金文が存在しない。去声の音は不明。

部品「㐬」=「旈」は垂れ下がった”のぼり・玉すだれ”で、”うとい・まばら”の意は無いが、カ音l(平)/藤堂上古音lɪogは「流」(l・平/lɪog)に通じると『大漢和辞典』はいう。

「流」の初出は戦国末期の金文だが、その古形であるㄊは甲骨文からあり、論語の時代に存在した。詳細は論語語釈「流」を参照。
疏 古今音

学研漢和大字典

会意兼形声。「流(すらすらとながす)の略体+(音符)疋(ショ)」。「疎」に書き換えることがある。「疎水・疎通」▽「流れが通ずる」「親しくない」「まばら」の意味では「疎」とも書く。

語義

漢音ソ・平声
  1. {形容詞}まばら。一つずつ離れているさま。《同義語》⇒疏。《対語》⇒密。「疎散」「天網恢恢、疎而不失=天網恢恢、疎なれども失はず」〔老子・七三〕
  2. {形容詞・名詞}うとい(うとし)。すきまがあいていて離れているさま。また、親密でないさま。近づきの少ない人。疎遠な人。《同義語》⇒疏。《対語》⇒親(したしい)。「疎遠」「疎客」「去者日以疎=去る者は日に以て疎し」〔古詩十九首〕
  3. {動詞}うとんずる(うとんず)。うとむ。すきまをおく。精神的に離れて親しくしない。《同義語》⇒疏。「疎外」。
  4. (ソス){動詞}とおす(とほす)。とおる(とほる)。ふさがった所を、わけ離してとおす。水をわけて引く。《同義語》⇒疏。「疎水」「疎泉=泉を疎す」「禹疏(=疎)九河=禹(う)九河を疏(=疎)す」〔孟子・滕上〕
  5. (ソス){動詞・名詞}くしけずる(くしけづる)。くし。もつれた髪の毛を別々にわけて、くしをとおす。めのあらいくし。▽梳に当てた用法。「疎比」。
  6. {名詞}裏までぬき通した彫刻。すかしぼり。「疎櫺(ソレイ)(すかしぼりをした格子窓)」。
  7. {形容詞}あらいさま。おろそかなさま。そまつなさま。▽粗に当てた用法。《同義語》⇒疏。《対語》⇒精。「疎食(ソシ)(=粗食)」。
漢音ソ・去声
  1. {名詞}一条ずつわけて意見をのべた上奏文。「上疏(意見書をたてまつる)」。
  2. {名詞}むずかしい文句を、ときわけて、意味をとおした解説。《類義語》注。「注疏」。
  3. 《日本語での特別な意味》さかん(さくわん)。四等官で、弾正台(ダンジョウダイ)の第四位。

字通

[形声]いま常用漢字に疎を用いるが、正字は疏。ともに疋(しよ)声。疋は𤕟(そ)。爻(こう)はあらめの模様。疏は𤕟の爻に代えて、梳(そ)(あらい櫛)の㐬を加えた形。〔説文〕十四下に「通ずるなり」とあり、疏通の意と、疏野の意とに用いる。疏野は粗野。字はまた疎に作り、疏・疎は同字であるが、上疏・疏通には疏、疎略・疎忽には疎を用いる。字に慣用上の相違があるが、いま同字として扱う。

踈/疎(ソ・12画)

「踈」の初出は不明。カールグレン上古音はʂi̯o(平)。同音に疏”荒い・粗末な”、蔬”菜っ葉”、疋”足・記す”、所、糈”白米”。「疎」の初出は前漢の隷書。カールグレン上古音は不明。

学研漢和大字典

会意兼形声。疋(ショ)は、あしのことで、左と右と離れて別々にあい対する足。間をあけて離れる意を含む。疎は「束(たば)+(音符)疋」で、たばねて合したものを、一つずつ別々に離して、間をあけること。「疏」の代用字としても使う。「疎水・疎通・疎明」。

語義

  1. {形容詞}まばら。一つずつ離れているさま。《同義語》⇒疏。《対語》⇒密。「疎散」「天網恢恢、疎而不失=天網恢恢、疎なれども失はず」〔老子・七三〕
  2. {形容詞・名詞}うとい(うとし)。すきまがあいていて離れているさま。また、親密でないさま。近づきの少ない人。疎遠な人。《同義語》⇒疏。《対語》⇒親(したしい)。「疎遠」「疎客」「去者日以疎=去る者は日に以て疎し」〔古詩十九首〕
  3. {動詞}うとんずる(うとんず)。うとむ。すきまをおく。精神的に離れて親しくしない。《同義語》⇒疏。「疎外」。
  4. (ソス){動詞}とおす(とほす)。とおる(とほる)。ふさがった所を、わけ離してとおす。水をわけて引く。《同義語》⇒疏。「疎水」「疎泉=泉を疎す」「禹疏(=疎)九河=禹(う)九河を疏(=疎)す」〔孟子・滕上〕
  5. (ソス){動詞・名詞}くしけずる(くしけづる)。くし。もつれた髪の毛を別々にわけて、くしをとおす。めのあらいくし。▽梳に当てた用法。「疎比」。
  6. {名詞}裏までぬき通した彫刻。すかしぼり。「疎櫺(ソレイ)(すかしぼりをした格子窓)」。
  7. {形容詞}あらいさま。おろそかなさま。そまつなさま。▽粗に当てた用法。《同義語》⇒疏。《対語》⇒精。「疎食(ソシ)(=粗食)」。

字通

[形声]声符は疋(しよ)。もと疏の俗字。のち、あらい、まばら、うといの意にこの字を用いることがあるが、上疏・疏通の意には用いることがない。束はものを束ねる意。その結束の疏緩なることをいう字であろう。梁の簡文帝の〔初秋詩〕に「疎螢(そけい)」、〔論衡、非韓〕に「交黨疎耐す」のように用いる。束ねることの疎緩であることから、疎遠・迂疎の意となる。

[形声]いま常用漢字に疎を用いるが、正字は疏。ともに疋(しよ)声。疋は■(爻+疋)(そ)。爻(こう)はあらめの模様。疏は■(爻+疋)の爻に代えて、梳く(そ)(あらい櫛)の㐬を加えた形。〔説文〕十四下に「通ずるなり」とあり、疏通の意と、疏野の意とに用いる。疏野は粗野。字はまた疎に作り、疏・疎は同字であるが、上疏・疏通には疏、疎略・疎忽には疎を用いる。字に慣用上の相違があるが、いま同字として扱う。

愬/訴(ソ・14画)

初出は前漢の隷書。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はsɑɡ(去)。同音に泝”さかのぼる”。「訴」は同音同調異体字。従って初出も前漢の隷書

学研漢和大字典

会意兼形声。朔(サク)は「大(ひと)の逆になった形拶+月」からなり、逆の方向に戻ること。愬は「心+(音符)朔」で、さからう気持ちをおこすこと。遡(ソ)(逆にさかのぼる)・訴(反抗して言い争う)と同系。

会意。「言+斥(逆方向に切りこみを入れる)」。乍(サ)(ざくっと切れ目を入れる)・作(作為を加える)・泝(ソ)(川をさかのぼる)と同系。

語義(愬)

  1. {動詞}うったえる(うったふ)。反感を持ってうったえる。現実にさからう気持ちをおこす。《同義語》⇒訴。「皆欲赴愬於王=皆愬へんと王に赴きて欲す」〔孟子・梁上〕
  2. {名詞}うったえ(うったへ)。《同義語》⇒訴。「膚受之愬(切実なうったえ)」〔論語・顔淵〕
サク
  1. 「愬愬(サクサク)」とは、ぎくりと驚くさま。「履虎尾、愬愬、終吉=虎(とら)の尾を履(ふ)む、愬愬たり、終(つひ)に吉なり」〔易経・履〕

語義(訴)

{動詞・名詞}うったえる(うつたふ)。うったえ(うつたへ)。だまってなりゆきにまかせておかずに、上に申し出て人を動かそうとする。また、その行為や事の内容。《同義語》⇒愬。《類義語》告。「訴訟」。

字通

[形声]声符は朔(さく)。訴と同義の字で、〔説文〕三上に訴の別体の字としているが、訴は告訴・訴訟など訟獄の意に用い、愬は情を以て告げる意に用いる。〔詩、邶風、柏舟〕「薄(しばら)く言(ここ)に往き愬(うつた)へて 彼の怒りに逢へり」とみえる。〔易、履、九四〕に「虎の尾を履(ふ)む。愬愬(さくさく)たらば終(つひ)に吉なり」とは、恐懼のさまをいう。

[形声]声符は斥(そ)。斥の初文は㡿(さく)。ゆえに字はまた愬に作る。〔説文〕三上に「告ぐるなり」とあり、上訴することをいう。告訴するので譖毀(しんき)の意を含む。〔論語、顔淵〕「膚受(ふじゆ)の愬(うつた)へ」とは、かけこみ式の哀訴をいう。ただ訴訟のときには、愬ではなく訴を用いる。

蔬(ソ・15画)

初出は後漢の『説文解字』。論語時代の置換候補はㄊ。カールグレン上古音はʂi̯o(平)。「疏」も参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。「艸+(音符)疏(ショ)・(ソ)(すき間があく)」。

語義

  1. {名詞}な。食用になる草の総称。あおもの。「蔬菜(ソサイ)」。
  2. {形容詞}あらい。粗末であるさま。《同義語》⇒疏。

字通

[形声]声符は疏(そ)。疏に疏大の意がある。〔説文新附〕一下に「菜なり」という。〔礼記、曲礼下〕に「稻を嘉蔬(かそ)と曰ふ」とあり、穀実をもいう。〔論語、述而〕「疏食(そし)を飯(く)らひ水を飮み、肱を曲げて之れを枕とす」の疏は蔬と通用の義。また粗に通じる。

爭/争(ソウ・6画)

論語 争 甲骨文
(甲骨文)

初出は甲骨文。カールグレン上古音はtsĕŋ(平)。金文は見つかっていない。『大漢和辞典』の第一義は”あらそう”。『字通』も、杖状の物を両端より引き合う形という。しかし甲骨文を見るとそうは思えない。だが正解も分からない。

学研漢和大字典

会意文字で、「爪(手)+━印+手」で、ある物を両者が手で引っぱりあうさまを示す。反対の方向に引っぱりあう、の意を含む。諍(ソウ)(言いあってあらそう)・箏(ソウ)(両方から引きあって弦を張った琴)などと同系のことば。

意味

  1. {動詞}あらそう(あらそふ)。両方からとりあいをする。力ずくであらそう。「争奪」「君子無所争=君子は争ふ所無し」〔論語・八佾〕
  2. {助辞}いかでか。疑問・反語をあらわす助詞。どうして。▽やや口語的なことば。「誠知老去風情少、見此争無一句詩=誠に老い去りては風情の少なきを知るも、此を見ては争でか一句の詩無からんや」〔白居易・題峡中石上〕
  3. {動詞}いさめる(いさむ)。あやまちを改めるようにいう。▽諍(ソウ)に当てた用法。「争臣(=諍臣)」。

字通

[会意]旧字は爭に作り、杖形のものを両端より相援(ひ)いて争う形。〔説文〕四下に「引くなり」とし、字形を𠬪(ひよう)(両手)と𠂆(えい)とに従うとするが、両手の間にあるものは杖形の棒。爰(えん)と相近く、爰は援引の意、爭は相争うことをいう。

宋(ソウ・7画)

論語 宋 金文
北子宋盤・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はs(去)。藤堂上古音はsoŋ。

殷王朝の末裔を称する国。→Wikipedia

学研漢和大字典

会意。「宀(やね)+木」で、木を家の中に移し植えるさまを示す。遺民を集めてたてた国の名。寄せ集める意を含み、束(寄せ集めてたばねる)・造(寄せ集める)と同系であろう。

語義

  1. {名詞}国名。周が殷(イン)を滅ぼしたのち、紂(チュウ)王の弟微子に命じ、その遺民を集め祖先の祭りを継ぐことを許してたてさせた国。春秋・戦国時代に、強国の間にはさまれた弱国であり、他国の人からは亡国の遺民としてののしられたが、古い文化を継ぐという自負心を持っていた。紀元前二八六年、楚(ソ)や斉(セイ)に滅ぼされた。今の河南省商邱(ショウキュウ)県にあった。
  2. {名詞}王朝名。中国の南北朝時代、南朝の一つ。劉裕(リュウユウ)がたて、都を建康(今の南京(ナンキン)市)に置いた。八代五十九年で、斉(セイ)に滅ぼされた。劉宋ともいう。四二〇~四七九。
    み{名詞}王朝名。五代ののち、趙匡胤(チョウキョウイン)がたてた。都は凪京(ベンケイ)(今の河南省開封市)。一一二七年高宗のとき、金に攻められて南方の臨安(今の浙江(セッコウ)省杭州(コウシュウ)市)に都を移した。それ以前を北宋(ホクソウ)、以後を南宋(ナンソウ)という。計十八代三百二十年で、一二七九年、元(ゲン)に滅ぼされた。趙宋ともいう。九六〇~一二七九。

字通

[会意]宀(べん)+木。〔説文〕七下に「居るなり。宀に從ひ、木に從ふ。讀みて送の若(ごと)くす」とするが、その用例はない。字の初形は宀に従うものではなく、卜文・金文の宋と思われる字形は、木の上を覆う形に作っている。〔礼記、郊特牲〕に「喪國の社は之れに屋す」とあり、これを勝社という。宋は亡殷の後であるから、木に屋する字を用いたのであろう。

宗(ソウ・8画)

論語 宗 金文 論語 宗 解字
作宗寶彝卣・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はts(平)。藤堂上古音はtsoŋ。

学研漢和大字典

会意文字で、「宀(やね)+示(祭壇)」で、祭壇を設けたみたまやを示す。転じて、一族の集団を意味する。族はその語尾がつまってkに転じたことば。叢(ソウ)(草の集まり)・聚(シュウ)(あつまる)などと同系のことば。

意味

  1. {名詞}みたまや。先祖をまつる所。▽一族団結の中心の象徴であった。「宗廟(ソウビョウ)」。
    {名詞}一族の中心となる本家。「宗家」。
  2. {名詞}同じ祖先から出た一族。「同宗(同姓の族)」。
  3. {名詞}氏族団結の中心。「宗法」。
  4. {名詞}むね。中心となるもの。また、主となる考え。「宗旨(ソウシ)」「以道為宗=道を以て宗と為す」〔呂氏春秋・下賢〕
  5. (ソウトス){動詞}たっとぶ。中心として重んじる。「亦可宗也=亦た宗とすべきなり」〔論語・学而〕
  6. {名詞}開祖の思想。また、それを中心に集まった信仰の団体。「宗派」「禅宗」。
  7. {単位詞}《俗語》まとまった品物・物件などを数えることば。「一宗(一件)」「大宗(量の多い物件)」。

字通

べん+示。宀は廟屋。示は祭卓の形。〔説文〕七下に「尊祖の廟なり」とあり、宗廟のあるところ、またその祭る祖宗をいう。卜辞に大宗・中宗・小宗の名があり、周に大宗・小宗を本支とする宗法制度があった。宗廟の祭器を宗彝そういという。本宗として尊崇すべきものを宗といい、その本旨のあるところを宗旨、信教の上では宗旨しゅうしという。

訓義

みたまや。みたまやにまつる人、おやすじの人、特に主としてまつるべき人、その家すじの人。たっとい、とうとぶ、あがめる、おもだつ、むねとする。

大漢和辞典

会意。宀と示の合字。示は神、宀は屋、故に本義を祖廟、すなわちみたまやの義とす。又、段注によれば、宗と尊とは双声、故にたっとい義に用う。また、叢・眾(衆)・𥟛(稷)に仮借す。

字解

たまや。位牌。社。まつりの主体。まつり、まつる。祭祀・礼儀を司る官。たっとい。むね。むねとする、あがめる。むねとし崇める人物。始祖の嫡長子。正嫡、長子。祖先中の有徳者、またその廟号。一族。まみえる。多い。あつまる。布、布の糸。禜*と読む。〔仏〕教義の流派。春秋の国名。姓。〔現〕西蔵地方の行政区域の名。

*禜:(エイ・ヨウ)なわばりの檀域を設けて凶災をはらう祭事。

莊/荘(ソウ・9画)

論語 荘 金文
𧽙亥鼎・春秋中期

初出は春秋中期の金文。カールグレン上古音はtʂi̯aŋ(平)。

”頼りがいのある”こと。原義は”くさのさかんなさま”。他の語義は”くさのたけのととのうさま・おごそか”。

上掲の金文は古今字資料庫に無く、白川静博士独自の採取だと思われる。従って年代が特定できない。ただし『字通』を参照すると、西周宣王(BC828-BC782)時代の「毛公鼎」に「唯天荘 外字集厥命」(これてんおおいにそのめいをなす)に現れた「荘 外字」が原字だとする。

以上から、上掲の金文は論語の時代にあったと考えて良い。

学研漢和大字典

会意兼形声文字で、「艸+〔音符〕壯(すらりと長い)」で、草のたけが長くおいたつことで、細長い草ぶきの納屋。また、いなかの農家のこと。転じて、形が整って勢いが盛んである意。

壯(=壮。背の高い男)と同系。また、荘園の荘(=莊)は、蔵・倉(穀物をしまう納屋)などと同系のことば。

意味

  1. (ソウナリ)(サウナリ){形容詞}おごそかなさま。すらりと形が整ったさま。「臨之以荘則敬=これに臨むに荘なるを以てすれば則ち敬す」〔論語・為政〕
  2. {名詞}納屋。転じて、いなかの家。また、農村の集落。「荘田」。
  3. {名詞}いなかにある仮ずまい。「別荘」。
  4. {名詞}四方八方に通ずる長い道。「康荘」。
  5. {名詞}商店。「銭荘」。
  6. 荘周(荘子)のこと。「老荘」。
  7. 《日本語での特別な意味》しょう(しゃう)。「荘園」の略。

字通

字通 将
[形声]旧字は莊に作り、壯(壮)(そう)声。壯に盛大の意がある。〔説文〕一下に「上(しやう)の諱(いみな)なり」として、説解を加えていない。後漢の明帝の諱。当時荘姓の人は、その諱を避けて厳と改め、厳助・厳安のようにいった。金文に字を壮 外字(そう)に作り、ときに祝禱の器である𠙵(さい)を加える。〔毛公鼎〕に「唯(こ)れ天壮 外字(おほ)いに厥(そ)の命を集(な)す」とあり、壮 外字は将大の意。また〔虢季子白盤(かくきしはくばん)〕に「戎工(軍事)に壮 外字武なり」とは、その厳荘なることをいう。宋器の〔■(走+馬)亥鼎(ばがいてい)〕に莊公を壮 外字公としるしているので壮 外字が莊と声近く、おそらくその初文とみてよいであろう。壮 外字の従う爿(しよう)は、將(将)・壯の爿と同じく、殷器の上掲画像(しよう)図象から出て、のち將・壯の字となった。〔説文〕古文の字形は艸に従わず、もと厳荘の意の字であろう。

送(ソウ・9画)

初出は戦国末期の金文。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はsuŋ(去)。同音は存在しない。

学研漢和大字典

会意。「辶(足の動作)+物を両手でささえるさま」で、物をそろえて他所へはこぶことを示す。そろえまとめて、すうっと押し出すの意を含む。奏(ソウ)(そろえる)・窓(ソウ)(空気をまとめて出すまど)・縦(ジュウ)・(ショウ)(細長くのばす)と同系。類義語に贈。異字同訓に贈る「お祝いの品を贈る。感謝状を贈る。故人に位を贈る」。

語義

  1. {動詞}おくる。出かける人やすぎゆくものを、ていねいにおくり出す。《対語》⇒迎。「歓送会」「送賓」「送往迎来=往くを送り来たるを迎ふ」〔中庸〕
  2. {動詞}おくる。物をととのえて人に与える。また、Aの所からBの所へ、さしさわりなく物をはこぶ。《対語》⇒受。《類義語》贈(ソウ)「奉送(おおくりする)」「運送」。

字通

[形声]声符は关(そう)。关は両手でものを奉じて献ずる形。〔説文〕二下に「遣(おく)るなり」と訓する。金文の〔毛公鼎〕に「女(なんぢ)に𢆶(こ)の关(おくりもの)を易(たま)ふ」とあって、关は送の初文。𠈖(そう)字条八上に「送るなり。~呂不韋曰く、有侁(いうしん)氏、伊尹を以て女に𠈖す」とあって、𡟒の意に用いる。关を〔玉篇〕に火種を奉ずる意とするが、盤(舟)にいれて賸(おく)るものを朕といい、𡟒・賸は女・貝を以て贈ることをいう。朕はもと𦨶の形に作り、盤中のものを奉ずる意である。

草(ソウ・9画)

草 金文
作原・春秋晚期或戰國早期

初出は春秋末期あるいは戦国早期の石鼓文。カールグレン上古音はtsʰ(上)。

学研漢和大字典

形声。「艸+(音符)早」。原義はくぬぎ、または、はんのきの実であるが、のち、原義は、皁(ソウ)の字であらわし、草の字を古くから艸の字に当てて代用する。艸(いくらでも生える雑草)・造(ざっと集めてこしらえる)・糟(ソウ)(ざっとしたかす)などと同系。付表では、「草履」を「ぞうり」と読む。▽「材料になるもの」の意味の「ぐさ」は「種」とも書く。

語義

  1. {名詞}くさ。草本植物の総称。どこにでも生えている雑草。《同義語》⇒艸。
  2. {形容詞}ぞんざいなさま。まにあわせの。上等でない。「草率」「草紙」。
  3. {名詞・形容詞}くさ深いいなか。また、官に仕えず、民間にいることのたとえ。「草沢(ソウタク)」「草莽(ソウモウ)」。
  4. {名詞}ざっとした下書き。「草案」「起草」。
  5. {名詞}書体の一つ。前漢代中期に発生する。「草書」。
  6. {名詞}物のはじまり。「草創」。

字通

[形声]声符は早(そう)。〔説文〕一下に「草斗、櫟(くぬぎ)の實なり」とし、また「一に曰く、斗の子(み)に象る」とする。櫟の実で染めて黒色となるを皁(そう)というが、その字と解するものであろう。草は艸の俗字。また草昧・草稿・草書・草次などの意に用いる。

造(ソウ・10画)

論語 造 金文
頌鼎・西周末期

初出は西周末期の金文。カールグレン上古音はtsʰ(上)またはdzʰ(去)。藤堂上古音はdzɔg(上)またはts’ɔg(去、操と同音)。「ゾウ」は呉音(上)または慣用音(去)。

学研漢和大字典

会意。告は「牛+口(わく)」の会意文字で、牛の角(ツノ)にくっつけるとめ木。梏(コク)の原字。造は「辶(足の動作)+告(くっつける)」で、ある所まで届いてくっつく、材料をくっつけあわすなどの意。類義語の作・創は、素材に切れめを入れて、新たにつくり出す。為は、現にあるものの形や質をかえて、あつらえること。異字同訓につくる⇒作。

語義

ソウ(上)
  1. (ゾウス)(ザウス){動詞}つくる。材料をくっつけあわせてこしらえる。《類義語》作・為。「修造」「造舟為梁=舟を造して梁と為す」〔詩経・大雅・大明〕
  2. {動詞}つくる。なす。手あたりしだいによせ集めてでっちあげる。「捏造(ネツゾウ)(でっちあげる)」「造謡(ゾウヨウ)(うわさをでっちあげる)」「造化(そそくさと万物をでっちあげる)」。
ソウ(去)
  1. {動詞}いたる。くっつく。ある所までとどく。「造詣(ゾウケイ)(学問の到達の程度)」「深造(奥までとどく)」「造於莱門=莱門(らいもん)に造る」〔春秋左氏伝・哀八〕
  2. {形容詞}そそくさとしてあわただしいさま。《類義語》草。「造猝(ソウソツ)(=草卒)」「造次」。
  3. {名詞}二つくっついてペアをなすもののうちの、一つのもの。「両造(原告と被告)」「乾造坤造(ケンゾウコンゾウ)(男と女)」。
  4. {名詞}年のめぐり。年代。「末造(末世)」。
  5. {名詞}運勢を占うために、その人のうまれた年・月・日・時間の干支(全部で八字)をよせ集めたもの。
  6. 《日本語での特別な意味》みやつこ。上古の姓(カバネ)の一つ。「国造(クニノミヤツコ)(国守)」。

字通

[会意]字の初形は艁・ゾウ 外字に作り、艁は舟+告。舟は盤の形。告は木の枝に祝禱を収める器(𠙵(さい))をつけて神に訴え祈る意。わが国の申し文にあたる。盤中に供えものを薦め、申し文をつけてささげ、神のいたるのを迎えることを造という。艁は廟前でその儀礼を行う意。造は艁・ゾウ 外字の省文に従う字である。〔説文〕二下に「就(な)るなり」と訓するが、就は訓義多く、「就(な)る」「就(つ)く」などとよむ。〔説文〕に造を告(こく)声とするが、造は字の初形でなく、古文として録する艁の省文に従う。金文の〔令彝(れいい)〕に「用(もつ)て王の逆造(げきざう)に饗す」とあり、逆造は出入の意。〔礼記、王制〕「禰(でい)(父廟)に造す」は祭名。〔麦盉(ばくか)〕「終(つひ)に用て徳を造(な)す」は成就の意。〔頌壺(しようこ)〕「新造(艁)の貯」は新しく屯倉を設営する意。造字の初義は、ほとんどすでに金文の用義のうちにみえる。字は草・曹に通用することがあり、造次・両造のようにいう。

桑(ソウ・10画)

論語 桑 甲骨文
(甲骨文)

初出は甲骨文。カールグレン上古音はsɑŋ(平)。

学研漢和大字典

会意。叒は、大きな葉をつけた三本の枝を描いた象形文字。桑は「叒+木」で、しなやかにまがったくわの木。韓も桑も、くわの木を意味し、古くは同じであったが、のち、桑を使うようになった。女(しなやかなおんな)・若(しなやか、従順)・茹(ジョ)(やわらかい草)と同系。

語義

  1. {名詞}くわ(くは)。木の名。くわ科の落葉高木。くわ類の総称。葉は蚕のえさとなる。材木は農具・家具などに使う。実は憙(シン)といい、赤黒く熟したものは甘くて食べられる。
    ま{動詞}くわとる(くはとる)。桑の葉を摘む。
    み{動詞}桑を植え、蚕をかう。養蚕する。

字通

[象形]桑の葉の茂る形。その全体象形の字。〔説文〕六下に「蠶(かひこ)の葉を食らふ所の木なり。叒(じやく)木に從ふ」という。叒は〔説文〕六下に「榑桑(ふさう)叒木なり」とあり、字はまた若木に作る。日が東方のこの木より昇るとされる神木であるが、桑とは関係がない。ただ若の卜文の字形は巫が手をかざして舞う形で、いくらか似たところがある。養蚕のことはすでに殷代に行われ、卜辞には蚕示(さんじ)(蚕の神)を祀ることがみえる。また大きな桑の葉の上に、蚕の繭(まゆ)作りの形をしるしたものもある。古く桑林は歌垣の場所でもあり、のち採桑女を主題とする文学が生まれた。

曾/曽(ソウ・11画)

論語 曽 金文 論語 曽 語釈
曾伯雨木二簠・春秋早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はtsəŋまたはdzʰəŋ(共に平)。語源は蒸し器のせいろうで、”かさねる”の意味がある。「”かつて””すなはち”など副詞的に用いるのは仮借」と字通はいい、最古の古典である論語に適用するのは慎重になるべき。

学研漢和大字典

象形文字で、「ハ印(ゆげ)+せいろう+こんろ」をあわせてあり、上にせいろうを重ね、下にこんろを置き、穀物をふかすこしきの姿を描いたもので、層をなして重ねる意を含む。甑(ソウ)(こしき)の原字。

また、曾は、前にその経験が重なっているとの意から、かつて…したことがあるとの意を示す副詞となった。鑰(=層。幾重にも重なる)・鑠(=増。重なってふえる)と同系のことば。

意味〔一〕ソウ/ゾ・ゾウ

  1. {副詞}かつて。→語法「①」。
  2. {助辞}すなわち(すなはち)。→語法「④⑤」。
  3. {動詞}ます。上に重ねてふやす。▽増に当てた用法。

意味〔ニ〕ソウ/ソ・ソウ

  1. {形容詞}層をなして世代が重なるさま。《類義語》重。「曾祖父(ソウソフ)(ひいじいさん)」「曾孫(ソウソン)(ひまご)」。
  2. {形容詞}層をなして重なるさま。▽層に当てた用法。

語法

①「かつて」とよみ、「以前に~(したことがあった)」と訳す。過去の経験の意を示す。《類義語》嘗(カツテ)。「曾貌先帝照夜白=曾(かつ)て先帝の照夜白を貌(か)く」〈かつて先帝(玄宗)の照夜白(という名の名馬)を描いた〉〔杜甫・韋諷録事宅観曹将軍画馬図引〕▽「曾経=かつて」も、意味・用法ともに同じ。
②(1)「曾不~」は、「かつて~せず」とよみ、「決して~でない」と訳す。否定の強調の意を示す。「曾不吝情去留=曾(かつ)て情を去留に吝(やぶさ)かにせず」〈心を自然のなりゆきにまかせてくよくよなどしない〉〔陶潜・五柳先生伝〕
(2)「曾無=かつて~なし」も、意味・用法ともに同じ。「曾無黄石公=曾(かつ)て黄石公無(な)し」〈黄石公は影すらない〉〔李白・経下癢袈橋懐張子房〕
③「未曾~」は、「いまだかつて~せず」とよみ、「これまで~したことがない」と訳す。否定の強調の意を示す。「緩賢忘士、而能以其国存者、未曾有也=賢を緩(うとん)じ士を忘れ、而(しか)してよくその国をもって存せし者は、未だ曾(かつ)て有らざるなり」〈賢い者をうとんじ優れた者を無視して、国を保つことのできた者は、いままでに存在したためしがない〉〔墨子・親士〕▽唐代以後は、「不曾=かつて~せず」を用いることもある。
④「すなわち」とよみ、「なんと~」「いったいぜんたい」と訳す。感嘆の意を示す。「吾以子為異之問、曾由与求之問=吾子をもって異なるをこれ問ふと為す、曾(すなは)ち由と求とをこれ問ふか」〈私はあなたがもっと別なことを尋ねられると思いましたが、なんと由と求とのことですか〉〔論語・先進〕▽「何曾」は、「なんぞすなわち」とよみ、「どうしてまた~」と訳す。
⑤「すなわち」とよみ、「まさか~ではあるまい」と訳す。反語の意を示す。「越曾足以為大虞乎=越は曾(すなは)ちもって大虞為るに足らん」〈越など大して心配するに足りないのだ〉〔国語・呉〕

字通

[象形]甑(こしき)の形で、甑の初文。八は湯気のたちのぼる形。〔説文〕二上に「詞の舒(ゆる)やかなるなり」とし、「すなはち」という承接の語とする。それで字形について「八に從ひ、曰(えつ)に從ひ、𡆧(さう)聲」と口気の意とする解を試みているが、金文の字形によって明らかであるように、甑の象形字。釜甑(ふそう)をいう。ゆえに累層するものの意に用いる。「かつて」「すなはち」など副詞的に用いるのは仮借。

喪(ソウ・12画)

論語 喪 金文
毛公鼎・西周晚期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はsɑŋ(平/去)。同音に桑・顙”ひたい”。『大漢和辞典』の第一義は”死ぬ”であり、第二義が”喪(に服する)”。第三義以降でやっと”うしなう”の意味がある。

学研漢和大字典

会意。喪は「哭(なく)+口二つ+亡(死んでいなくなる)」で、死人を送って口々に泣くことを示す。ばらばらに離散する意を含み、相(二つにわかれる)と同系。疏(ソ)(ばらばらになる)はその語尾の縮まったことば。

語義

  1. {名詞}も。死者の別れ去ることを悲しむ礼儀作法。▽「三年の喪」とは、父母が死んだときから二十五か月、足かけ三年の間、服する喪をいう。「喪中」「服喪=喪に服す」。
  2. (ソウス)(サウス){動詞}うしなう(うしなふ)。離れ去る。分離して自分のものでなくなってしまう。▽去声に読む。「喪明(失明する)」「喪地於秦七百里=地を秦に喪ふこと七百里」〔孟子・梁上〕
  3. {動詞}ほろびる(ほろぶ)。ほろぼす。見放される。見捨てられる。▽去声に読む。「天喪予=天予を喪ぼせり」〔論語・先進〕

字通

亡 外字

[会意]哭(こく)+亡 外字/亾(亡)。哭は祝禱を収めた器(𠙵(さい))を並べて、犬牲を加え、哀哭する意。亡 外字(亡)は死者。〔説文〕二上に「亡なり。哭亡に從ふ。~亡は亦聲なり」とするが、亡(ぼう)声ではない。葬の意に用いることがあり、金文の〔卯𣪘(ぼうき)〕に「不淑(不幸、死亡)なりしとき、我が家の朱を取りて、用(もつ)て喪(葬)せしめたり」とみえる。天災にも「奕喪(えきそう)」「降喪」のようにいう。また喪失の意に用い、卜辞に「喪家」「喪師」のことを卜する例がある。亡命者を喪人といい、すべて死喪の礼を以て遇した。

語系

喪sang、葬tzangは声義が近い。金文には「昧爽」を「昧喪」に作る。爽shiangも声近く、「喪師」を「爽師」ともいう。

葬(ソウ・12画)

論語 葬 甲骨文 論語 葬 金文
(甲骨文)/兆域圖銅版・戦国末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はtsɑŋ(去)。

上掲の金文は戦国末期の文字(兆域圖銅版 戰國晚期 集成10478)だが、左の甲骨文(字形は葬 外字)も出土しているので、論語の当時からあった文字だと思われる。

学研漢和大字典

会意。「艸二つ+死」で、死体を草むす土の中に隠し去ることをあらわす。「礼記」檀弓上篇に「葬とは蔵なり」とある。蔵(ゾウ)(しまいこむ)・倉(しまう)と同系。類義語の喪(ソウ)は、相(ソウ)(二つに離れる)と同系で、離れ去ること。

意味

  1. {動詞・名詞}ほうむる(はうむる)。儀式をおこなって死んだ人を生きた人の世界から隠し去る。また、そのためのいとなみ。▽火葬(死体を火で焼く)・土葬(死体を地中に埋める)・水葬(死体を水に流す)・風葬(死体を風にさらす)などのやり方があり、中国では土葬が本則であった。「大葬(大げさな葬式)」「葬我君定公=我が君定公を葬る」〔春秋・定一五〕
  2. {動詞}ほうむる(はうむる)。うずめさる。隠してなきものにする。「葬花(落ちた花を埋める)」。

字通

[会意]茻(ぼう)+死。死は風化した残骨の象である歺(がつ)を拝する形。茻は原野。その叢中に屍をすて、風化を待って骨を収め葬るのであるから、葬は複葬を意味する字とみてよい。〔説文〕一下に「蔵するなり」と畳韻の字を以て訓する。また字形について「死の茻中に在るに從ふ。其の中に一あるは、之れを薦(すす)むる所以(ゆゑん)なり」というが、一を含む字形ではない。〔孟子、滕文公上〕に、「蓋(けだ)し上世嘗(かつ)て其の親を葬らざる者有り。其の親死するときは、則ち擧げて之れを壑(たに)に委(す)つ」とみえるが、西方では一時板屋に納める俗があったようである。その風化の期間が、殯(ひん)(かりもがり)の礼となった。

廋(ソウ/シュ(シュウ)・13画)

廋 古文 論語 死神 廋
「廋」(古文)

初出は後漢の『説文解字』にすら見られない。カールグレン上古音はʂ(平)。同音に捜など叟を部品に持つ漢字群などの他、縮など宿を部品に持つ文字群・蒐(あつめる・かくす:戦国末期の金文にあり)・漱(すすぐ)。上声は不明。藤堂上古音はsīog。

『大漢和辞典』によると、古くは文字が「捜」と同じという。「廋人」は、馬の飼育を管轄する官吏。異体字と思われる「廀」(ソウ)があるが、金文以前に遡れない。同訓で字形の近い「㢎」(ショウ)も同じ。同訓近音の「蒐」(シュウ)も戦国末期の金文までしか遡れない。

この文字は、論語と同時代の金文やそれ以前の甲骨文には見られず、戦国文字でも未発掘で、後漢の『説文解字』にも載っていない。儒教経典では『孟子』『礼記』に例があるが捏造の可能性があり、それ以外では『淮南子』『史記』『漢書』『後漢書』に用例がある。

ここに記載した古文は、杜從古『集篆古文韻海』、《宛委別藏》選集影舊抄本三冊、1935年商務印書館依故宮博物院藏本影印に載せられたもので、標本の時代は不明。

同じく「ソウ/かくす」の音訓の組み合わせに「蔵」(カールグレン上古音dzʰɑŋ/藤堂上古音dzaŋ)があり、その原字「」(カールグレン上古音tsɑŋ/藤堂上古音tsaŋ)なら甲骨文から確認できる。ただし音通しているとは言いがたい。
臧 金文
「臧」(金文)

「おおう」で検索すると「幬」「燾」(トウ)「庥」「厩」(キュウ)「𥮪」「箿」「葺」(シュウ)「𩋍」(ショウ)「育」(チュウ・ジュ)が出てくるが、金文以前に遡れない。「障」のカールグレン上古音はti̯aŋで音通しそうにない。「敦」のカールグレン上古音もtwərの類で音通しない。

”かくれる”で検索すると「蟄」(シュウ)があるが金文以前に遡れない。”きえる・けす”で検索すると「消」があるが、やはり金文以前に遡れない。

気を取り直してもう一度”かくれる”で検索すると「幽」(カールグレン上古音ʔi̯ŏɡ/藤堂上古音・iog)があり、ʂ/sīogと音通していると言えなくもない。『大漢和辞典』に”かくれる・かくす”の語釈が載る。甲骨文から出土し、西周晩期の「六年召伯虎簋」金文の字形は次の通り。幽 金文

結論として、もし孔子の口から出たのだとするなら、それは「幽」だったのだ。

学研漢和大字典

会意兼形声で、叟は「宀(あな)+火+又(て)」の会意文字で、細い穴の奥の残り火を、手でさぐるさま。捜の原字。秀(細い)・痩(ソウ)(細くやせる)と同系で、細い意を含む。廋は「广(いえ)+〔音符〕叟」で、細い穴の奥にかくすこと。

意味

  1. {動詞}かくす。入り口を狭く細くしてその中にかくす。「人焉社哉=人焉くんぞ社さん哉」〔論語・為政〕
  2. {動詞}さがす。▽捜に当てた用法。

字通

「叟」は祖先祭殿でともし火を手に取る形で、一族の長老を指す。火を掲げることから”捜索”の意味が出来、それに対する”隠す”の語義が出来た。

創(ソウ・12画)

刅 金文
刅作寶彝壺・西周早期

初出は西周早期の金文。ただし字形は「荊」。カールグレン上古音はtʂʰi̯aŋ(平)。

学研漢和大字典

形声。「刀+(音符)倉」で、倉という原義とは関係がない。刃物で切れめをつけること。素材に切れめを入れるのは、工作の最初の段階であることからはじめるの意に転じても使われた。食(ショウ)(切る、きずつける)・槍(ソウ)(やり)と同系。類義語に傷・始・造。

語義

  1. {動詞}きずつける(きずつく)。刃物で切る。切れめをつける。
  2. {名詞}きず。切りきず。《類義語》食(ショウ)。「項王身亦被十余創=項王の身も亦た十余創を被る」〔史記・項羽〕
  3. {動詞}はじめる(はじむ)。仕事をはじめる。はじめてつくり出す。▽去声に読む。「創始」「先帝創業=先帝業を創む」〔諸葛亮・出師表〕

字通

[形声]声符は倉(そう)。〔説文〕四下に刅を正字とし、「傷つくなり。刃に從ひ、一に從ふ」とし、重文として創を録する。いま創傷の字に創を用いる。創始の意には、刱がその初文と考えられる。刱は鋳型を刀で割く形。鋳型を外して制作のものをとり出すので、創出の意となる。刅・創・刱はもとそれぞれ立意のある字で、刅は創傷、創はその形声の字、刱が創出の意を示す字である。いま創を創傷・創始の両義に用いる。

筲(ソウ・13画)

初出は後漢の隷書だが、前漢の『定州竹簡論語』にも見られる。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はsŏɡ(平)。同音に梢”木の名”、蛸、稍”末・やや”、揱”二の腕の細長くしなやかなさま”。稍の初出は秦系戦国文字。「ショウ」は呉音。

学研漢和大字典

会意兼形声。「竹+(音符)肖(細い)」。

語義

  1. {名詞}竹を編んでつくった、米を入れる細長いかご。一斗二升はいる。「斗筲之人(トショウノヒト)(器量のせまい人、小人物)」〔論語・子路〕

字通

[形声]声符は肖(しよう)。〔方言、十三〕に「𥰠(りよ)、南楚にては之れを筲と謂ふ」、また〔広雅、釈器〕に「筲は𥰠なり」とあり、めしびつの類をいう。

憎/憎(ソウ・14画)

初出は後漢の『説文解字』。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はtsəŋ(平)。同音に曾(=曽)を部品とする漢字群。「ゾウ」は慣用音。

学研漢和大字典

会意兼形声。曾(ソウ)は、こしきの形で、層を成してなん段も上にふかし器を載せたさま。憎は「心+(音符)曾」で、いやな感じが層を成してつのり、簡単に除けぬほどいやなこと⇒曾。類義語の悪は、押さえられて発散せず、胸に詰まる感じのこと。旧字「憎」は人名漢字として使える。

語義

  1. {動詞}にくむ。つくづくいやになる。きらう。そねむ。《対語》⇒愛。《類義語》悪(オ)。「屢憎於人=縷人に憎まる」〔論語・公冶長〕
  2. {名詞}にくしみ。にくく思う感情。つもる反感。「有憎於主、則智不当=主に憎しみ有れば、則ち智も当たらず」〔韓非子・説難〕

字通

[形声]声符は曾(そう)。〔説文〕十下に「惡(にく)むなり」とあり、憎悪の意。〔礼記、曲礼上〕「愛して其の惡を知り、憎みて其の善を知る」の語がある。

增/増(ソウ・14画)

初出は西周末期の金文。「曾」tsəŋ(平)と書き分けられていない。カールグレン上古音はtsəŋ(平)。「ゾウ」は慣用音。呉音も「ソウ」。

学研漢和大字典

会意兼形声。曾(ソウ)は、八(湯気がわかれて出る)の下にせいろうとこんろの形を描いた象形文字で、こんろの上に、せいろうを重ねて穀物をふかし、湯気が発散するさまを示す。後世の甑(コシキ)の原字であり、層をなして上に重ねる意を含む。鑠は「土+(音符)曾」で、土を上へ何層にも積むこと。層(上へかさなる)と同系。類義語の益は、ふやしていっぱいに満たすこと。加は、上にプラスすること。倍は、もう一つつけたすこと。滋は、子どもがつぎつぎにうまれるようにふえること。異字同訓にふえる・ふやす⇒殖。旧字「增」は人名漢字として使える。

語義

  1. {動詞}ます。ふえる。また、ふやす。上へ上へと層をなしてつぎたす。転じて広く、つけ加わる、つみあげる意をあらわす。《対語》⇒減。《類義語》益。「重修岳陽楼増其旧制=岳陽楼を重修し其の旧制を増す」〔范仲淹・岳陽楼記〕
  2. {副詞}ますます。程度が上へ上へと加わって、強くなるさまをあらわすことば。

字通

[形声]旧字は增に作り、曾(そう)声。曾は甑(こしき)の初文で、こしきから湯気のあがる形。〔説文〕十三下に「益(ま)すなり」という。甑は上下二器の重なるもので、層累の意がある。増は増大・増加の意に用いる。

總/総(ソウ・14画)

初出は秦系戦国文字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はtsuŋ(上)。同音に鬷”釜の一種・あつまる”、豵”子猪”、稯”稲四十束”、緫(異体字)、揔”総べる”。鬷・緫・揔に甲骨文・金文は存在しない。呉音は「ス」。

学研漢和大字典

会意兼形声。囱は、もと空気抜きのまどを描いた象形文字で、窓の原字。へやの空気が一本にまとまり、縦に抜け出ること。それに心を加えた悤(ソウ)(=怱)は、多くの用事を一手にまとめて忙しいこと。總は「糸+(音符)悤」で、多くの糸を一つにまとめてしめたふさ。一手にまとめる意となる。総はその略字。類義語の統は、一本にまとめて筋を通す。「惣」の代用字としても使う。「総・総菜」また、「綜」の代用字としても使う。「総合」。

語義

  1. {名詞}ふさ。糸をたてにまとめて束ねて一か所をしめくくって垂らしたもの。《類義語》房。「総角(子どもの束ね髪)」。
  2. {動詞}すべる(すぶ)。引きしめる。すべてを一つにまとめる。また、すべおさめる。《類義語》綜(ソウ)。「総合」「総括」「百官総己=百官己を総ぶ」〔論語・憲問〕
  3. {名詞}全体をまとめる役。また、その役目の長。「総統」「千総(元(ゲン)・明(ミン)代のころの大隊長)」。
  4. {副詞}すべて。みんな。また、どれもこれも結局は。▽俗語として「どうしても」の意に用いることもある。「総是玉関情=総て是れ玉関の情」〔李白・子夜呉歌〕
  5. 「総之=これを総ずるに」とは、まとめていうと、の意。
  6. 「総総(ソウソウ)」とは、たくさんあるさま。「紛総総兮九州、何寿夭兮在予=紛として総総たる九州、何ぞ寿夭の予に在る」〔楚辞・大司命〕
  7. 《日本語での特別な意味》「上総(カズサ)」「下総(シモフサ)」の略。「総州」。

字通

[形声]旧字は總に作り、悤(そう)声。〔説文〕十三上に「聚めて束ぬるなり」とあり、糸の末端を結んで、まとめることをいう。〔釈名、釈首飾〕に「總は束髮なり」、また〔急就篇、三、注〕に「總は絲縷(しる)を以て之れを爲す。髮を束ぬる所以(ゆゑん)なり」という。〔儀礼、喪服〕「布總」の〔注〕に「總は束髮なり」とあり、幼童のあげまきを「総角」、さかやきを剃らぬことを「総髪」というなど、多く結髪の語に用いる。集めて総(ふさ)状にすることをいう。糸を縦横に交えて織成するものは綜、糸の末端を結んでとめる形は屯(とん)、へり飾りすることを純という。

藻(ソウ・19画)

初出は後漢の『説文解字』。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はtsoɡ(上)。

学研漢和大字典

会意兼形声。「艸+(音符)澡(ソウ)(表面をさっと流す、表に浮かぶ)」。水面に浮かぶ水草をいう。

語義

  1. {名詞}も。水中に生える草の総称。水草。
  2. {形容詞・名詞}あやがあって、きらびやかなさま。また、表面に浮き出て、模様をなすもの。「藻井(ソウセイ)」。
  3. {形容詞・名詞}文章で、修辞が巧みなさま。また、ことばのあや。文章のあや。「辞藻(ジソウ)」「文藻(ブンソウ)」。
  4. (ソウス)(サウス){動詞}模様を描く。かざる。「藻飾(ソウショク)」「山節藻梲=節を山にし梲に藻けり」〔論語・公冶長〕

字通

[形声]正字は薻に作り、巢(巣)(そう)声。巢は細い木の枝を組み、あやなす意。〔説文〕一下に「水艸なり」とし、重文として藻を録する。藻が通行の字である。水藻の文様のような美しさから、藻麗の意となり、文彩・文章に関して、文藻・才藻という。


藻麗:あやがあり、美しい。

竈(ソウ・21画)

竈 金文
郘弋黑鐘・春秋末期

初出は西周中期の金文。カールグレン上古音は不明(去)。藤堂上古音はtsog。

学研漢和大字典

会意。「穴+土+黽(細長いへび)」。土できずいて、細長い煙穴を通すことを示す。焦(こげる)・燥(ソウ)(火がさかんにもえる)などと同系。

語義

  1. {名詞}かまど。土で穴をきずき、火をもやして煮たきするところ。へっつい。また、かまどの神。「寧媚於竈=寧ろ竈に媚びよ」〔論語・八佾〕
  2. 「祭竈(サイソウ)」とは、陰暦十二月二十三日にかまどの神をまつる中国の古い習慣。「祀竈(シソウ)」ともいう。

字通

[形声]声符はシュウ 外字(しゅう)の省文。〔説文〕七下に黽(びん)に従う𥨫を正形とし、「炊竈なり」という。〔段注〕に「周禮に、𥨫を以て祝融を祠る」の文を補う。〔左伝、昭二十九年疏に引く賈逵注〕に「句芒(こうぼう)は戸に祀り、祝融は𥨫に祀り、■(上下に辱+寸)收は門に祀り、玄冥は井に祀り、后土は中霤(ちゆうりう)(雨だれ落ち)に祀る」とみえる。祝融は火神。竈神は老婦。年末に家族の功過を携えて升天し、上帝に報告するというので、おそれられた。竈の上部は穴ではなく、蓋に空気抜けのあながある形。金文の〔秦公鐘(しんこうしよう)〕に「下國を𥨫有(さういう)す」とあり、その字形が確かめられる。竈有は奄有の意である。

增/増(ゾウ・14画)

初出は西周末期の金文つちへんが付くのは戦国文字から。それまでは「曾/」と書き分けられていない。カールグレン上古音はtsəŋ(平)。去声の音は不明。

学研漢和大字典

会意兼形声。曾(ソウ)は、八(湯気がわかれて出る)の下にせいろうとこんろの形を描いた象形文字で、こんろの上に、せいろうを重ねて穀物をふかし、湯気が発散するさまを示す。後世の甑(コシキ)の原字であり、層をなして上に重ねる意を含む。鑠は「土+(音符)曾」で、土を上へ何層にも積むこと。

層(=層。上へかさなる)と同系。類義語の益は、ふやしていっぱいに満たすこと。加は、上にプラスすること。倍は、もう一つつけたすこと。滋は、子どもがつぎつぎにうまれるようにふえること。異字同訓にふえる・ふやす⇒殖。旧字「增」は人名漢字として使える。

語義

  1. {動詞}ます。ふえる。また、ふやす。上へ上へと層をなしてつぎたす。転じて広く、つけ加わる、つみあげる意をあらわす。《対語》⇒減。《類義語》益。「重修岳陽楼増其旧制=岳陽楼を重修し其の旧制を増す」〔范仲淹・岳陽楼記〕
  2. {副詞}ますます。程度が上へ上へと加わって、強くなるさまをあらわすことば。

字通

[形声]旧字は增に作り、曾(そう)声。曾は甑(こしき)の初文で、こしきから湯気のあがる形。〔説文〕十三下に「益(ま)すなり」という。甑は上下二器の重なるもので、層累の意がある。増は増大・増加の意に用いる。

大漢和辞典

増 大漢和辞典

臧・藏/蔵(ゾウ・15画)

臧 金文

「臧」の初出は甲骨文。カールグレン上古音はtsɑŋ(平)。
「藏」」の初出は戦国末期の金文。カールグレン上古音はdzʰɑŋ(平/去)。

学研漢和大字典

会意兼形声。食(ソウ)・(ショウ)は、すらりと長いやり。臧は「臣(どれい)+(音符)食」で、背の高いどれい。また、すらりとしたの意から、裝(=装。かっこうがよい)の意にも用い、よいの意となる。壯(ソウ)(=壮。背の高い男)と同系。

形声。艸は、収蔵する作物を示す。臧(ソウ)は「臣+戈(ほこ)+(音符)爿(ソウ)・(ショウ)」からなり、武器をもった壮士ふうの臣下。藏は「艸+(音符)臧」で、臧の原義とは関係がない。倉(ソウ)(作物をしまいこむ納屋)と同系。類義語の納は、入や内と同系で、中へいれること。隠は、目だたぬようおしさげてかくすこと。匿は、わくやかこいの中にかくすこと。異字同訓に倉。異体字「藏」は人名漢字として使える。▽「くら」は「倉」「庫」とも書く。

意味

  1. {形容詞}よい(よし)。すらりとしていて、かっこうがよい。また、手ぎわがよい。《対語》⇒否(ヒ)。「臧否(ソウヒ)(よしあし)」「執事順成為臧=事を執りて順成するを臧と為す」〔春秋左氏伝・宣一二〕
  2. {名詞}ボディーガードの役をする体格のよい男のどれい。「臧獲(ソウカク)」。
  1. (ゾウス)(ザウス){動詞}かくす。かくれる(かくる)。おさめる(をさむ)。しまいこむ。入りこんで出てこない。▽平声に読む。《対語》⇒露(外へ出す)。「収蔵」「蔵頭露尾(頭かくして尻(シリ)かくさず)」「用之則行、舎之則蔵=これを用ゐれば則ち行ひ、これを舎つれば則ち蔵る」〔論語・述而〕
  2. {名詞}くら。物をしまっておく建物。▽去声に読む。《類義語》倉・府・庫。「宝蔵」。
  3. {名詞}しまいこんでかくした物。▽去声に読む。《同義語》贓。
  4. {名詞}精気や栄養をしまいこむ内臓。▽去声に読む。《同義語》臓。「五蔵(=五臓。肺・心・肝・腎(ジン)・脾(ヒ)の五つの内臓のこと)」。
  5. {名詞}「西蔵(チベット)」の略。▽去声に読む。「漢蔵語(シナ・チベット語族)」「蔵族(チベット族)」。
  6. 《日本語での特別な意味》旧「大蔵省」の略。「蔵相」▽現在は、「財務省」。

字通

[形声]声符は戕(しよう)。〔説文〕三下に「善なり」とあり、〔詩、邶風、雄雉〕に「何を用(もつ)て臧(よ)からざらん」のように用いる。字の原義は臧獲の臧。もと俘虜をいう語であろう。臣は神の徒隷としてつかえる臣僕。戕(しよう)はその臣僕に聖器である戕を加えて祓う意で、すでに清められたのちに神に捧げられる。ゆえに臧善の義となったのであろう。卜文に、臣に戈(か)を加える形、また金文・古陶文に、戕と祝告の器である𠙵(さい)を加えた形の字がある。

[形声]旧字は藏に作り、臧(ぞう)声。〔説文新附〕一下に「匿(かく)すなり」と訓する。徐鉉の案語に「漢書に通じて臧を用ふ。艸に從ふは、後人の加ふる所なり」という。〔礼記、檀弓上〕に「葬なる者は藏なり。藏なる藏は、人の見るを得ざることを欲するなり」と、葬の義を以て説く。俘囚を祓うときには、死葬の礼を加えることがあるので、臧獲(ぞうかく)の臧の字説として、参考することができよう。藏には古い字形がなく、その艸に従う意を確かめがたい。倉と声義の関係があるようである。

大漢和辞典

臧 大漢和辞典

蔵 大漢和辞典

足(ソク・7画)

論語 足 金文
申簋蓋・西周中期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はtsi̯uŋ(去)またはtsi̯uk(入)。

学研漢和大字典

象形。ひざからあし先までを描いたもので、関節がぐっとちぢんで弾力をうみ出すあし。捉(ソク)(指をちぢめてつかむ)・促(ソク)(間をつめて急がす)・縮(シュク)(ちぢむ)と同系。類義語の脚(キャク)は、却(キャク)(くぼむ)と同系で、ひざで折れて、うしろにくぼむあし。あしのことを中世以後の口語では足といわず、脚という。疋(ショ)は、左右あい対するあしのこと。股(コ)は、またぐとき∧型に開くところ。太もも。趾(シ)は、あしくび。腿(タイ)はもも。脛(ケイ)は、まっすぐなすね。異字同訓に脚「机の脚(足)。えり脚(足)。船脚(足)」。付表では、「足袋」を「たび」と読む。

語義

ソク
  1. {名詞}あし。ももからあし先までの部分。また、あしくびから先の部分。《類義語》脚。「跣足(センソク)(はだし)」「百足之虫(ヒャクソクノムシ)(むかで)」「足、牾牾如有循=足、牾牾として循ふ有るがごとし」〔論語・郷党〕
  2. {名詞}あし。あしの形をしていて物をささえる部分。また、物の下の部分。《類義語》脚。「鼎足(テイソク)(かなえのあし)」「山足(ふもと)」。
  3. {名詞}あゆみ。「捷足(ショウソク)(はやあし)」「高足(学問の歩みの進んだ上位のでし)」。
  4. {動詞}たりる(たる)。おしちぢめて、いっぱいにつまる。転じて、欠けめがない。「満足」「過不足(すぎたこととたりないこと)」。
  5. {動詞}たりる(たる)。それでじゅうぶんだ。また、それだけの値うちがある。→語法「①②」。
  6. {動詞}たす。いっぱいに満たして、欠けめをなくす。「充足」「足食=食を足す」〔論語・顔淵〕
シュ
  1. {副詞}あまり…しすぎるほど。十二ぶんに。「足恭(スウキョウ)・(シュキョウ)(ていねいすぎる)」〔論語・公冶長〕
  2. 《日本語での特別な意味》
    ①あし。おかね。ぜに。
    ②はきものを数える語。「くつ一足」。

語法

①「~するにたる」とよみ、「~するのに十分である」と訳す。▽「足以~=もって~するにたる」と多く用いる。「料大王士卒、足以当項王乎=大王の士卒を料(はか)るに、もって項王に当るに足る」〈大王(劉邦)の士卒(の力量)を考えて、項王と十分渡り合えますか〉〔史記・項羽〕
②「不足」は、「~するにたらず」とよみ、「~する価値がない」と訳す。「足」の否定形。▽「不足以~=もって~するにたらず」と多く用いる。「士而懐居、不足以為士矣=士にして居を懐(おも)ふは、もって士と為すに足らず」〈士人でありながら安住の場を慕っているのでは、士人である価値がない〉〔論語・憲問〕

字通

[象形]膝の関節より足趾に至るまでの形。〔説文〕二下に「人の足なり。下に在り。止口に從ふ」と会意とするが、口の部分は膝蓋骨の形である。卜文に「足(た)る」の字には正を用い、「帝は雨を正(た)らしめんか」のようにいう。金文に「疋(たす)く」の疋(しよ)を、足の形にしるしている。足・正・疋の形は甚だ近く、みな止に従う。足・疋には古く通用の例がある。

束(ソク・7画)

論語 束 金文
大簋蓋・西周晚期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はɕi̯uk(入)。

学研漢和大字典

会意。「木+○印(たばねるひも)」で、たき木を集めて、そのまん中にひもをまるく回してたばねることを示す。ちぢめてしめること。速(ちぢめて歩く)・捉(ソク)(ちぢめてつかむ)・縮(ちぢめる)・竦(ショウ)(足をちぢめてたつ)と同系。類義語に縛。

語義

  1. {動詞}たばねる(たばぬ)。つかねる(つかぬ)。たてにそろえてしばる。また、しばってほそくちぢめて、一つにまとめる。「束髪」「束帯」「束之高閣=これを高閣に束ぬ」。
  2. {動詞}動きがとれないようにしばる。また、心や行動の自由を制限する。言動をひきしめる。言動をつつしむ。「拘束」「約束(かってなことをしないように引きしめる)」。
  3. {名詞}たば。ほそくしめてしばり、ひとまとめにしたもの。
  4. {単位詞}たばねてひとしめにしたものを数えるときのことば。干し肉は十本、矢は五十本、絹布は十反(タン)をひとしめとする。
  5. 《日本語での特別な意味》
    ①たばねてひとまとまりにしたものを数えるときのことば。紙は十帖(ジョウ)、稲は十把(パ)をひとまとまりとする。
    ②つか。昔、物の長さをはかるときの単位。一束とは指四本をにぎった幅の長さ。
    ③「束の間」とは、ほんのひとにぎりの間。ほんのしばらく。

字通

[象形]束薪の形。〔説文〕六下に「縛るなり。口木に從ふ」とする。金文に「帛束」「絲束」「矢五束」などの語があり、一定数のものを束ねて一束とした。また束髪・束帯など、整えて結ぶことをいう。まとまることを結束といい、行動については終束という。

𠟭/則(ソク・9画)

論語 則 金文 論語 則 解字
(金文)

初出は甲骨文。カールグレン上古音はtsək(入)。「すなわち」と訓む一連の漢字については、漢文読解メモ「すなわち」を参照。

学研漢和大字典

会意文字で、「刀+鼎(カナエ)の略形」。鼎にスープや肉を入れ、すぐそばにナイフをそえたさま。そばにくっついて離れない意を含む。即(そばにくっつく)と同じ。転じて、常によりそう法則の意となる。さらにAのあとすぐBがくっついておこる意をあらわす助詞となった。類義語の乃(スナワチ)は、Aのあと曲折をへてBがおこる際に用い、やっと、そこで、ついになどの意を含む。而(ジ)は乃ほどではないが、やはり曲折した、しかも、しこうしてなどの意をあらわす。斯(ココニ)・即は、則と同じように、前後をさらりと直結して、…ならすぐの意をあらわす。

意味

  1. {名詞}のり。いつもそのそばによりそって離れてはならない道理・手本・基準。「法則」「不識不知、順帝之則=識らず知らず、帝の則に順ふ」〔詩経・大雅・皇矣〕
  2. (ソクス){動詞}のっとる。手本として守り従う。▽訓の「のっとる」は、「のり(則)+とる(取る)」の音便。「則天=天に則る」「唯尭則之=唯だ尭これに則る」〔論語・泰伯〕
  3. {接続詞}すなわち(すなはち)。→語法「①-チ」。
  4. {副詞}すなわち(すなはち)。→語法「①-ヂ」。
  5. {副詞}すなわち(すなはち)。→語法「②-ッ」。
  6. 列挙した事柄を数えることば。「第一則」。

語法

▽前の状況が後の状況に続く場合に用いる。
①「~則…」は、(1)「~(ならば)すなわち…」とよみ、「もし~ならば…」と訳す。順接の仮定条件の意を示す。▽「レバ則(ソク)」といわれるように、順接の仮定条件の文で多く用いる。「嚮吾不為斯役、則久已病矣=嚮(さき)に吾かの役を為さざりせば、則(すなは)ち久しくすでに病みしならん」〈以前もし私がこの仕事をしなかったならば、長いこと苦しんできただろう〉〔柳宗元・捕蛇者説〕
(2)「~すなわち…」とよみ、「すぐさま」と訳す。《同義語》即。「項王則夜起飲帳中=項王則(すなは)ち夜起ちて帳中に飲す」〈項王はすぐさま夜起ってとばりの中で酒を飲んだ〉〔史記・項羽〕
(3)「~(は)すなわち…」とよみ、「~の場合は…」と訳す。強調の意を示す。「父母之年、不可不知也、一則以喜、一則以懼=父母の年は、知らざる可からず、一は則(すなは)ちもって喜び、一は則ちもって懼(おそ)る」〈父母の年齢は知っておかなければいけない、一つにはそれで(長生きを)喜び、一つにはそれで(老い先を)気づかうのだ〉〔論語・里仁〕
②「否則」は、「しからずんばすなわち」とよみ、「さもなければ」と訳す。前節とは逆の条件を提示する意を示す。「聴則進、否則退=聴かば則(すなは)ち進み、否(しから)ずんば則ち退く」〈(自分の意見が)聞かれれば進み、聞かれなければ退く〉〔国語・晋〕

字通

正字は𠟭に作り、鼎+刀。鼎側に刀を加えて銘文として刻する意。叙任や賜賞など、重要なことは鼎銘に刻して記録し、あるいは約剤とした。約剤は契約書、剤の初文劑はもとせいに従う字で、齎とは方鼎を言う。円鼎に刻したものを則、方鼎に刻したものを剤という。鼎銘に刻するところは軌範とすべきものであるから、定則・法則の意となる。また承接の語に用い、金文には行為の儀節の間に加えて「𠟭ち拝す」「𠟭ち誓う」のようにいう。またものを分別していうときにも用いる。

訓義

  1. ほる、銘文にほる。
  2. のり、のっとる、ならう、軌範とする。
  3. 約束、約剤と同じ。
  4. 件・条と同じ意。一くだり。
  5. すなわち、そのときには、それは、もし。

速(ソク・10画)

速 金文
字通所載金文

初出は甲骨文。カールグレン上古音はsuk(入)。

学研漢和大字典

会意兼形声。束は、木の枝を○印のわくでたばねたさまを示す会意文字。ぐっとちぢめて間をあけないの意を含む。速は、「辶(足の動作)+(音符)束」で、間のびしないよう、間をつめていくこと。促(ちぢめる、せく)・縮(シュク)(ちぢめる)・蹙(シュク)(ちぢめる)などと同系。類義語に早。異字同訓に早。

語義

  1. {形容詞}はやい(はやし)。すみやか(すみやかなり)。間がちぢまっている。テンポやスピードがはやい。すかさずに。急いで。《対語》⇒遅(のろい)・慢(マン)(間のびする)。《類義語》疾(シツ)・迅(ジン)・早。「急速」「迅速」「王、速出令=王、速やかに令を出だせ」〔孟子・梁下〕
  2. {動詞}まねく。せきたてる。さあさあと、さそいよせる。うながして来させる。《同義語》促(ソク)。「速禍=禍を速く」「不速之客=速かざるの客」〔易経・需〕
  3. 「速速」とは、せかせかとちぢまるさま。《類義語》蹙蹙(シュクシュク)。
  4. 《日本語での特別な意味》はやさ。「時速」。

字通

[形声]声符は束(そく)。〔説文〕二下に「疾(すみ)やかなり」とあり、重文として遬など二字を加える。金文に■(言+速)の字があり、人名に用いる。また〔叔家父簠(しゆくかほほ)〕に「以て諸兄を速(まね)く」、〔詩、小雅、伐木〕「以て諸父を速く」、〔詩、召南、行露〕「何を以てか我を獄に速く」など、祭事や獄訟に招く意に用いる。また〔大盂鼎(だいうてい)〕に「罰訟を敏(いそ)しみ敕(つつし)む」とあり、束声に束ねて緊束する意がある。

速(ソク・10画)

速 金文
『字通』所収金文

初出は甲骨文。カールグレン上古音はsuk(入)。

学研漢和大字典

会意兼形声。束は、木の枝を○印のわくでたばねたさまを示す会意文字。ぐっとちぢめて間をあけないの意を含む。速は、「甦(足の動作)+(音符)束」で、間のびしないよう、間をつめていくこと。促(ちぢめる、せく)・縮(シュク)(ちぢめる)・蹙(シュク)(ちぢめる)などと同系。類義語に早。異字同訓にはやい⇒早。

語義

  1. {形容詞}はやい(はやし)。すみやか(すみやかなり)。間がちぢまっている。テンポやスピードがはやい。すかさずに。急いで。《対語》⇒遅(のろい)・慢(マン)(間のびする)。《類義語》疾(シツ)・迅(ジン)・早。「急速」「迅速」「王、速出令=王、速やかに令を出だせ」〔孟子・梁下〕
  2. {動詞}まねく。せきたてる。さあさあと、さそいよせる。うながして来させる。《同義語》促(ソク)。「速禍=禍を速く」「不速之客=速かざるの客」〔易経・需〕
  3. 「速速」とは、せかせかとちぢまるさま。《類義語》蹙蹙(シュクシュク)。
  4. 《日本語での特別な意味》はやさ。「時速」。

字通

[形声]声符は束(そく)。〔説文〕二下に「疾(すみ)やかなり」とあり、重文として遬など二字を加える。金文に■(言+速)の字があり、人名に用いる。また〔叔家父簠(しゆくかほほ)〕に「以て諸兄を速(まね)く」、〔詩、小雅、伐木〕「以て諸父を速く」、〔詩、召南、行露〕「何を以てか我を獄に速く」など、祭事や獄訟に招く意に用いる。また〔大盂鼎(だいうてい)〕に「罰訟を敏(いそ)しみ敕(つつし)む」とあり、束声に束ねて緊束する意がある。

側(ソク・11画)

初出は西周末期の金文。カールグレン上古音はtʂi̯ək(入)。

学研漢和大字典

会意兼形声。則は「鼎(カナエ)の略形+刀」の会意文字で、食器の鼎のそばに食事用のナイフをくっつけたさま。則が接続詞や法則(ひっついて離れないおきて)の意に転用されたため、側の字がその原義をあらわすようになった。側は「人+(音符)則」で、そばにくっつければ一方にかたよることから、そば、かたよるの意をあらわす。類義語に傾。

語義

  1. {名詞}かたわら(かたはら)。物のそば。わき。「側室」「子食於有喪者之側=子喪有る者の側に食す」〔論語・述而〕
  2. {動詞}そばだてる(そばだつ)。そばめる(そばむ)。片方に寄せる。またかたむける。「側目=目を側む」。
  3. {動詞}そばだてる(そばだつ)。耳や盾など、ねているものをたてておこす。▽かたよせるの意から。「側其盾以撞=其の盾を側だてて以て撞く」〔史記・項羽〕
  4. {形容詞}正面からはずれて片すみにあるさま。かたよっているさま。《同義語》⇒仄。「側地(へんぴな所)」。
  5. {名詞}永字八法の一つ。⇒「永字八法」。
  6. 《日本語での特別な意味》がわ(がは)。あい対するものの一方。…のほう。

字通

[形声]声符は則(そく)。則は鼎側に銘刻を施すことをいう。〔説文〕八上に「旁(かたは)らなり」とあり、人に施して人の旁ら、また傾仄の状態をいう。

塞(ソク/サイ・13画)

塞 金文
塞公屈顙戈・年代不詳

初出は甲骨文。カールグレン上古音はsəɡ(去)またはsək(入)。

学研漢和大字典

会意兼形声。「宀(やね)+工印四つ+両手」の形が原形。両手でかわらや土を持ち、屋根の下の穴をふさぐことを示す会意文字。塞はそれを音符とし、土を加えた字で、すきまのないように、かわらや土をぴったりあわせつけること。即(そばにひっつく)・則(ぴったりとひっつく)などと同系。

語義

ソク(入)
  1. {動詞}ふさぐ。すきまを詰めて通れなくする。「厄塞(ヤクソク)(運勢がふさがって悪い)」「茅塞之矣=茅もてこれを塞がん」〔孟子・尽下〕
    ま{動詞}ふさがる。すきまなく満ちる。「充塞(ジュウソク)」「塞于天地之間=天地の間に塞がる」〔孟子・公上〕
  2. {名詞}中央アジアにいた民族の名。サカ族。
サイ(去)
  1. {名詞}とりで。通路をふさいで、守りを固めるための小規模の出城。《同義語》⇒砦。「要塞(ヨウサイ)」。
  2. {名詞}地形の険しい要害の地。
  3. {名詞}中国北方をふさぐ万里の長城のこと。▽長城付近を塞上(サイジョウ)・塞下(サイカ)といい、長城の外を塞外(サイガイ)という。「近塞之人、死者十九=塞に近きの人、死する者十に九なり」〔淮南子・人間〕

字通

[会意]正字は𡫳(そく)+土。𡫳は塞の初文。建物などの入口を、呪具の工を重ねて填塞し、邪霊などをそこに封じこめる意。土は土主(土地神)。道路や辺境の要地に塞を設けて土神を祀り、異族神や邪霊の通行を禁ずる呪禁とした。〔説文〕十三下に「隔つるなり」とあり、また〔文選、西京の賦、注〕に引く〔説文〕に「隔は塞ぐなり」とあって互訓。隔は神域を示す𨸏(ふ)(神梯の象)に鬲(れき)(壺の類)を埋めて、聖俗の境を示し、隔離する意。塞をまた、とりでの意に用いるのは、軍事的な施設に転用したものである。わが国の「塞(さえ)の神」が、古い用法である。

賊(ソク・13画)

論語 賊 金文
散氏盤・西周末期

初出は西周末期の金文。カールグレン上古音は不明。藤堂上古音はdzək(入)。「ゾク」は呉音。

学研漢和大字典

会意。戎は「戈(ほこ)+甲(かぶと)」の会意文字で、ほこや、かぶとでおどしつけること。賊は「貝+戎」で、凶器で傷つけて財貨をとることをあらわす。

語義

  1. (ゾクス){動詞}そこなう(そこなふ)。傷つける。害を与える。無法なことをする。《類義語》害。「賊害」「賊夫人之子=かの人の子を賊はん」〔論語・先進〕
  2. {動詞・名詞}ぬすむ。傷つけて奪いとる。強盗。「盗賊」。
  3. {名詞}国家に反逆する者。また、社会の秩序や倫理を乱す者。「賊徒」「逆賊」。
  4. {名詞}攻めて来る外敵。「寇賊(コウゾク)」。

字通

[会意]正字はもと鼎(てい)に従い、鼎+戎(じゅう)。金文にはその字形に作る。鼎銘を戈(か)で刊(けず)りとり、其の鼎銘を無効とする行為をいう。〔説文〕十二下に「敗るなり。戈に從ひ、則(そく)聲」とする。則はもと𠟭に作り、鼎の銘刻をいう。もしその声をとるならば、𠟭の省声というべきである。金文の〔散氏盤〕に「余に、散氏を心に賊とすること有らば、則ち爰(鍰(くわん)、罰金)千、罰千ならん」という盟約の辞があり、そのような盟約にそむき、これを廃棄することを賊という。盜も血盟の盤中に㳄(ぜん)(よだれ)を加えて汚し、その盟約をけがし、盟約から離脱する行為を示す字。盗賊とはただ財宝を掠めとる小盗の類ではなく、盟誓に違背する反逆的行為をいう。

族(ゾク・11画)

族 金文
明公簋・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はdzʰuk(入)。

学研漢和大字典

会意。「はた+矢」で、旗の下に矢を集めて置いたさま。同じ物を集めてグループにまとめた意を含む。のち血族集団の意に専用された。蔟(ソウ)(集めた草、草むら)・簇(ゾク)(群がって生えた竹)・束(たばねる)・聚(シュウ)(集める)などと同系。叢(ソウ)(草むら)は、その語尾が鼻音に転じた語。類義語の群は、まるく固まった集団。類は、よく似た物の集まり。氏は、一貫した名(祖先の名)を持つ人々のグループ。叢(ソウ)は、長短のちがう多くの物の集まり。「簇」の代用字としても使う。「族生」。

語義

  1. {名詞}やから。同じ血族の人々のグループ。同じ姓の人々のグループ。みうち。のち、さらに範囲を広げて、同じ階層のグループ。「族人(同姓の人々)」「三族(父・母・妻の族。あるいは、父母・兄弟・妻子)」。
  2. {名詞}人間や動植物の同じ種類のグループ。「靺鞨族」「魚族」。
  3. (ゾクス){動詞・名詞}一族をみな殺しにする。また、その重い刑の名。「族滅」「毋妄言、族矣=妄言する毋かれ、族せられん」〔史記・項羽〕
  4. {名詞}何本もそろえた矢。また、矢のやじり。▽鏃(ゾク)や簇(ソウ)に当てた用法。
  5. {動詞}むらがる。▽簇に当てた用法。

字通

[会意]㫃(えん)+矢。㫃は氏族旗。矢は矢誓(しせい)、誓約に用いるもの。氏族旗のもとで誓約する族人をいう。〔説文〕七上に「矢鋒なり。之れを束ぬること族族たり」と鏃(やじり)を束ねる意で、族集のさまをいうとするが、鏃はのちの形声字で、族の初義ではない。族は矢誓の族盟に参加するもので、氏族軍、その構成者をいう。金文の〔毛公鼎〕に「乃(なんぢ)の族を以(ひき)ゐて、王の身を干吾(かんぎょ)(扞敔)せよ」とあり、軍を派遣するときには、〔明公𣪘(めいこうき)〕「唯(こ)れ王、明公に命じ、三族を遣はして東或(国)(とうごく)を伐たしむ」のようにいう。また族集の意となる。

粟(ゾク・12画)

漢文 粟 金文大篆
(金文大篆)

初出は秦系戦国文字で、論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はsi̯uk(入)で、同音は存在しない。部品の米の字には”穀物”の意があり、甲骨文より存在する。孔子は自分の俸給を「奉粟六萬」と言っており、貨幣経済より前の論語時代、粟が貨幣の役割を果たした。ただし下記『字通』が「音読みのときは、五穀の総称として用いる」と言うので、アワに限られなかったことだろう。

学研漢和大字典

会意。「西(ばらばらになる)+米」。小さくて、ぱらぱらした穀物をあらわす。縮(小さくちぢむ)と同系。

語義

  1. {名詞}穀物の総称。稲・きびなどの外皮のついたままの実。《対語》⇒米。
  2. {名詞}あわ(あは)。穀物の名。実は黄色で小さくてまるい。畑でつくる。中国北部で産する穀物のうち、もっとも主要なもの。▽小さいものにたとえる。「滄海一粟(ソウカイノイチゾク)」。
  3. {名詞}穀物。食糧。また、俸禄(ホウロク)。「義不食周粟=義として周の粟を食まず」〔史記・伯夷〕

字通

[象形]穀の実のある形。〔説文〕七上に字を𥻆に作り、「嘉穀の實なり。𠧪(いう)に從ひ、米に從ふ」とし、重文の字形は三𠧪に従う。音読みのときは、五穀の総称として用いる。

卒(ソツ・8画)

卒 金文
多友鼎・西周末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はtsi̯wət(入)。

学研漢和大字典

会意。「衣+十」で、はっぴのような上着を着て、十人ごと一隊になって引率される雑兵や小者をあらわす。小さいものという意を含む。「にわか」の意は猝(ソツ)に当てたもの。また、小さくまとめて引き締める意から、最後に締めくくる意となり、「おわり」の意を派生した。碎(=砕。小さくくだいた石)また、引率の率(引き締めてまとめる)と同系。「にわかである」の意味では「率」とも書く。

※”にわかである”の但し書きは、『論語』先進篇25で漢帝国の儒者がやらかした、古くさく見せるためのでっち上げに、つじつまを付けるための記述。

語義

ソツ(入)
  1. {名詞}十ぱひとからげの雑兵(ゾウヒョウ)や人夫。小者たち。「従卒」「料度諸侯之卒=諸侯の卒を料度す」〔史記・蘇秦〕
  2. {形容詞・副詞}にわかに(にはかに)。急なさま。突然に。《同義語》⇒猝。▽この場合の現代音はcù。「卒然」「卒中(急にのぼせて中風になる)」「卒起不意、尽失其度=卒かに起こり不意なり、尽く其の度を失ふ」〔史記・荊軻〕
シュツ(入)
  1. {動詞}おわる(をはる)。おえる(をふ)。締めくくる。「卒業」。
  2. {名詞}おわり(をはり)。締めくくり。「有始有卒者、其惟聖人乎=始め有り卒り有る者は、其れ惟だ聖人か」〔論語・子張〕
  3. (シュッス){動詞}身分の高い人が死ぬ。▽直接「死」といわず「(年を)卒(オ)えた」と表現した忌みことば。「古公卒、季歴立=古公卒し、季歴立つ」〔史記・周〕
  4. {副詞}ついに(つひに)。→語法
  5. 《日本語での特別な意味》「卒業」の略。「大卒」「卒論」。

字通

[象形]衣の襟(えり)をかさねて、結びとめた形。死者の卒衣をいう。死没するとき、死者の衣の襟もとを重ね合わせて結び、死者の霊が迷い出るのを防ぐのである。〔説文〕八上に「人に隷して事を給する者の衣を卒と爲す。卒衣とは題識有る者なり」という。受刑者などが服役するときの、法被(はつぴ)のような仕事服と解するものであるが、卒の原義は死卒、死喪のときの儀礼を示すものであるから、終卒また急卒の意に用いる。

存(ソン・6画)

初出は秦系戦国文字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はdzʰwən(平)。「ゾン」は呉音。

学研漢和大字典

会意。「在の字の左上部+子」で、残された孤児をいたわり落ち着ける意をあらわす。もと、存問(いたわり問う)の存の意。のち、たいせつにとどめおく意となる。尊(ソン)(すわりのよい酒つぼ)・蹲(ソン)(じっとうずくまる)などと同系。

語義

  1. (ソンス){動詞}ある(あり)。…にある。…にいる。《対語》⇒亡。《類義語》在。「存在」「猶有存者=なほ存する者有り」〔孟子・公上〕
  2. (ソンス){動詞}たもつ。じっととどめておく。たいせつにとっておく。《対語》亡。「竜蛇之蟄以存身也=竜蛇の蟄するは以て身を存するなり」〔易経・壓辞下〕
  3. (ソンス){動詞}この世に生きている。《対語》歿(ボツ)。死。「吾以捕蛇独存=吾蛇を捕らふるを以て独り存す」〔柳宗元・捕蛇者説〕
  4. (ソンス){動詞}なだめて落ち着ける。状況をいたわり尋ねる。「存問」「存恤(ソンジュツ)」。
  5. {動詞}《俗語》金品を保管してもらうため預ける。「存款(預金)」。
  6. 《日本語での特別な意味》
    ①「存ず」とは、知っている。心得ている。「ご存じない」。
    ②思う。考える。「存外」。

字通

[会意]才(さい)+子。才は榜示の木。木に祝禱の器である𠙵(さい)をつけた形は才。在の初文で、神がここに在り、その占有支配する意を示す。その聖化の儀礼によって、生存が保障されることを存という。〔説文〕十四下に「恤(うれ)ひ問ふなり」とあり、才声とするが声が合わず、〔段注〕に在の省文に従うとする。才は在の初文である。在は才と士に従い、士は鉞頭の象。才にさらに聖器の鉞(まさかり)を加えた形で、存在はほとんど同義に用いる。

孫(ソン・10画)

論語 孫 金文
魯大𤔲徒子仲伯匜・春秋早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はswən(平)。遜も参照

学研漢和大字典

会意。「子+糸(小さく細い糸)」で、小さい子どもを示す。のち、右側に系をそえるが、系もまた、つないだ糸のこと。子の系統をひくいちだんと小さい子すなわち、まごのこと。遜(ソン)(小さくなって遠慮する)・損(小さくへらす)などと同系。

語義

  1. {名詞}まご。子の子。▽子‐孫‐曾孫(ソウソン)‐玄孫‐来孫‐昆孫(コンソン)‐仍孫(ジョウソン)‐雲孫の順にいう。「乳下孫(まだ乳を飲んでいる幼いまご)」「雖孝子慈孫、百世不能改也=孝子慈孫と雖も、百世改むること能はざるなり」〔孟子・離上〕
  2. {名詞}祖先の血筋を引く者。「荀卿十一世孫也=荀卿十一世の孫也」〔後漢書・荀淑〕
  3. {名詞}切り株から再生した植物。「稲孫(トウソン)(稲のひこばえ)」。
  4. (ソンナリ){動詞・形容詞}控え目にうしろにさがる。のがれる。へりくだるさま。▽遜(ソン)に当てた用法。去声に読む。「奢則不孫=奢なれば則ち孫ならず」〔論語・述而〕

字通

[会意]子+系(けい)。系はおそらく呪飾として加える糸飾り。祖祭のとき、尸(かたしろ)となる子に加えたものであろう。〔説文〕十二下に「子の子を孫と曰ふ。子に從ひ、系に從ふ。系は續なり」と系続の意とする。卜文・金文の字形は、子の頭部に糸飾りをつけている形である。〔礼記、祭統〕に「夫(そ)れ祭の道、孫は王父(祖)の尸と爲る」、また〔礼記、曲礼上〕「禮に曰く、君子は孫を抱きて、子を抱かず」とあり、孫が尸となる定めであった。

巽(ソン・12画)

初出は戦国早期の金文。論語の時代にはあったかどうかと言う所。カールグレン上古音はswən(去)。

学研漢和大字典

会意文字で、原字は「人二人+台を示すしるし」で、物をきちんとそろえて台上に供えるさま。饌(セン)の原字。一般には、遜(ソン)に当て、柔軟にへりくだる意に用いる、という。

語義

  1. {名詞}周易の八卦(ハッカ)の一つ。陦の形であらわし、表面が強いのに中の柔順な意を含み、風に当てる。また、六十四卦の一つ。陦陦(巽下巽上(ソンカソンショウ))の形で、柔順なさまを示す。
  2. {名詞}たつみ。南東の方角。
  3. {動詞}へりくだる。小さくなって遠慮する。《同義語》⇒遜。「巽与(ソンヨ)」。
  4. {動詞}食事をそろえて供える。《同義語》⇒饌(セン)。

字通

論語 外字 ソンソン。丌は神殿の前の舞台。論語 外字 ソンは二人並んで舞楽する形。並んで舞楽し、その舞楽を以て神に献ずる意で、撰の初文。〔説文〕五上に「そなはるなり」とし、論語 外字 ソン声とする。論語 外字 ソンについては〔説文〕九上に「二せつなり。巽は此れに従ふ。闕」とし、その形義について説くところがない。丌上に二人舞楽して供するので、そのことを撰、舞人を僎、舞容を選選(選選)、膳羞を供えることを饌という。〔易、巽〕にみえるそん順*は、字の本義ではなく、そん(ゆずる)と通仮してその義を用いるものであろう。

訓義:そなえる、神前にそなえる、神前に舞楽する。ふむ、ちらす。遜と通じ、したがう、つつしむ、うやうやしい。八卦の一。方位において、たつみ(東南)にあたる。

*易のソンの形(☴)。含意は風。天と雲の下にあって流動する。方角南東たつみ。性入る。

遜(ソン・13画)

初出は後漢の『説文解字』。カールグレン上古音はswən(去)。

学研漢和大字典

会意兼形声。孫(ソン)は「子+系(細い糸)」の会意文字で、細く小さい子ども(まご)をあらわす。遜は「辵(足の動作)+(音符)孫」で、細く小さくなって退くこと。損(ソン)(小さくなる)・巽(ソン)(へりくだる)・寸(スン)(小さい幅)などと同系。「へりくだる」は「謙る」とも書く。

語義

  1. {動詞・形容詞}へりくだる。小さくなってあとへさがる。一歩さがる。相手を敬って自分を卑下する。ひかえめな。転じて、少しだけ劣る。「謙遜(ケンソン)」「不遜(フソン)(えらそうなさま)」「遜色(ソンショク)」。
  2. {動詞}ゆずる(ゆづる)。自分があとへひく。「遜譲(ソンジョウ)」「遜位=位を遜る」「皇帝遜位魏=皇帝位を魏に遜る」〔後漢書・献帝〕
  3. {動詞}のがれる(のがる)。しりぞいてのがれる。「遜辞」「吾家耄遜于荒=吾が家の耄は荒に遜る」〔書経・微子〕

字通

[形声]声符は孫(そん)。〔説文〕二下に「遁(のが)るるなり」とあり、〔爾雅、釈言〕に「遯(のが)るるなり」とみえる。古くは遜逃の意に孫を用い、〔春秋経、荘元年〕「夫人、齊に孫(のが)る」のようにいう。遜逃の意より、遜順の意となった。

損(ソン・13画)

論語 損 金文大篆
(金文大篆)

初出は後漢の『説文解字』。論語の時代に存在しない。訓そこなう・へる音ソンの文字は他に無く、部品の「員」には”ふやす”訓はあっても”へらす”は無い。

カールグレン上古音はswən(上)。同音に飧”晩飯・茶漬け”、巽”たつみ”、孫とそれを部品とする漢字群。その一つに遜”去る・譲る・下す”があり、初出は後漢の『説文解字』だが、孫は「遜に通ず」と『大漢和辞典』が言う。

学研漢和大字典

会意文字で、員(ウン)は、口のまるくあいた鼎(テイ)(かなえ)の姿。損(ソン)は「手+員」で、まるい穴をあけて、くぼめること。穴をあけるのは減らすことであり、くぼめて減らす、の意を持つ。遜(ソン)(後ろに下がる、小さくなる)などと同系のことば。

意味

  1. (ソンズ){動詞}そこなう(そこなふ)。一部分を穴をあけたりこわしたりする。また、勢力を小さくする。くぼませる。「破損」「損害」「損兵=兵を損なふ」。
  2. (ソンズ){動詞}減らす。また、減る。《対語》⇒益(増す)。「減損」「損上益下=上を損じて下を益す」「所損益可知也=損益する所知るべきなり」〔論語・為政〕
  3. (ソンズ){動詞}へりくだる。また、うしろに下がる。《類義語》遜(ソン)。「抑損(へりくだる)」。
  4. {名詞}利益を失うこと。不利益。《対語》得(もうけ)。「損得」。
  5. {名詞}周易の六十四卦(カ)の一つ。(兌下艮上(ダカゴンショウ))の形で、下のものが減少するさまを示す。
  6. 《日本語での特別な意味》そこなう(そこなふ)。そんずる(そんず)。つ失敗する。「し損ずる」づチャンスを失ってやるべきことをやらないでしまう。「行き損なう」。

字通

[会意]手+員(えん)。〔説文〕十二上に「減るなり」と減損の意とし、員声の字とするが、声が異なる。孔門の閔損は字(あざな)は子騫(しけん)。騫は蹇足(けんそく)。員はもと圓(円)の初文で円鼎の意であるから、損とはその鼎足などを損する意であろう。それより増損・損益の意となった。

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