論語子路篇:要約

こんにちは! ナビゲーターAIのアルファーです。
孔子:解説の孔子じゃ。

アルファー:先生、論語子路篇とはどんなお話なんですか?
孔子:うむ。前半は論語顔淵篇の続きで、政治に関する、ワシ=孔子の言葉を載せておる。後半は、やがて政治に関わっていくことになる、弟子たちへの教えを載せておる。志を持った士族、高い教養と技能を身につけた君子=貴族とは何かを、じっくりと説明したのじゃぞ。

アルファー:先生、ありがとうございました。では、始めましょう。

1

子路が政治を問うたので答えた。
「民の先頭に立ち、励ますことだ」
「もう少し」「飽きずにやれ。」

アルファー:先生、子路さんって飽きっぽいんですか?
孔子:いや、そんなことはない。子路はたとえば治水工事があったりすると、自らもっこ担ぎをして民の先頭に立ちたがる男での。その点は心配せなんだが、そんな事がいつまでも続けられるはずもないと思ってな。じゃから、飽きずにやれ、と教えたのじゃ。
2

仲弓(冉雍)が季氏の執事になって、政治を問うたので言った。
「仕事は部下に任せなさい。部下の小さな間違いは見逃し、能のある者を取り立てなさい。」
「どうやって能を見分けるのですか?」
「お前の目で見て判断しろ。お前の知らない者でも、切れ者なら人が褒めそやす。」
3

子路が言った。「衛の国君が先生に政治を任せたら、まず何をなさいますか?」
「真っ先に、物事の名前とその中身を一致させる(名を正す)な。」

「これだから先生は。そんな遠回りな事でどうなります?」
「わかっとらんなお前は。わかっとらんから、黙っておれ。これからわけを教えてやる…」
ものの名前が正しくなければ、言葉がおかしくなる。
〔犬肉屋が看板に”ひつじ”と書いたら、もめるだろう。〕
おかしくなれば、政令が正しく伝わらない。
伝わらなければ、礼法も音楽も盛んにならず、社会規範と教育が乱れる。
乱れると刑罰は不正になり、民は何をされるかと怯え出す。
だから為政者は名付ける時、必ずものが正しく言えるように付ける。
言えば必ず行う。
「…為政者は口に出したことを、決していい加減に行ってはいかんのだよ。わかったか。」

アルファー:へ~え。政治の基本は、名前が正しいことなんですね。
孔子:そうじゃ。これはのちに儒教の根本思想の一つになっての。正名論と言うてな、儒者どもが他人のアラを探すのに使う常套手段になった。ワシはただ、ヒツジ屋ならヒツジ屋、ウソをつかんことを説いたまでなんじゃがな。

アルファー:そう言えば儒者の中には、この話は衛のお家騒動の最中で、「名を正す」とは、誰が衛の国君かはっきりさせること、と解する説があるようですね。
孔子:大げさ・こじつけもいい所じゃ。
4

樊遅が聞いた。「どうやったら穀物がたくさん取れるんでしょう?」
「知らんよ私は。お百姓さんに聞きなさい。」
「どうやったら畑がうまく耕せるんでしょう?」
「知らんよ私は。お百姓さんに聞きなさい。」
樊遅が私の前を下がったので、言った。「タワケだな、樊須(樊遅)は…」
もし上の者が ―
礼儀正しければ、民はむやみに無礼を働かない。
無茶しなければ、民はむやみに刃向かわない。
原則を守れば、民はむやみにウソつかない。
「…その通りに出来れば、四方の民が赤ん坊を背負い、来たって領民になりたがる。自分で耕す必要がどこにあろう。」

アルファー:あらまあ、樊遅さん叱られちゃったんですね。
孔子:いや、叱っちゃおらん。全部漢帝国の儒者がこしらえたでっち上げじゃ。樊遅のことを「小人」とワシは言わされておるが、ワシの生前、「小人」は「君子」=貴族に対する平民のことじゃ。樊遅は武勲もあるれっきとした士族じゃぞ? 話がおかしいではないか。
5
詩を三百編、全部暗記して歌うことが出来る者も居る。しかし。
政治を任せるとヘマをする。
使いに出しても独断できない。
これでは詩をたくさん覚えても、その詩が何の役に立つ。

アルファー:お勉強ばかりしている秀才じゃいけない、ってことなんですね。
孔子:そうじゃ。我が孔子一門が、既存の政治勢力に割り込んで行くには、まず有能でないといかん。暗記でどうにかなる話ではないんじゃ。

アルファー:だから徳=人間の機能を高めて、隠然とした人格力を養うことがが必要、ってことですね?
孔子:そうそうその通り! よく分かってきたのう。
6
為政者が間違いのない政務を執っていれば、命令しなくても政治はうまく回る。
間違っていれば、命令しても回らない。
7
魯と衛の政治は、兄弟みたいによく似ているな。

アルファー:どこが似ているんですか?
孔子:うむ。国の規模が似ており、隣に斉や晋といった強大な国があるところも似ておるな。
8
衛の公子荊どのは、よく家中を整えている。
初めて家産を貯えた時「ひとまず間に合った。」
少し増え始めた時「ひとまず申し分なくなった。」
大いに財産が増えた時「ひとまずよくなった。」
9

私が冉有(冉求)を連れて、衛の国に行った時のこと。思わず言った。
「人がたくさん居るなあ。」
冉有「ええそうですね、どうしてやります?」
孔子「財布をふくらませてやろう。」
冉有「ふくらんだらどうします?」
孔子「ものを教えてやるとするかな。」
10
もし政治を任せて貰えるなら、ひと月でほどほど、三年で国を完璧に仕立ててみせるのだがな。

アルファー:先生、大変な自信ですね。
孔子:うむ、まあな。ワシは論語の時代でおそらくただ一人、徳の存在に気付いておったからな。人が何に従うか、それを即物的なモノやカネや軍事力でなく、抽象的な原則として徳を理解しておったんじゃよ。じゃからこう言えたのじゃ。
11
善良な人に百年国を任せたら、死刑を廃止できる。ウソじゃないぞ。

アルファー:先生、そんなんで死刑が廃止できるんですか?
孔子:出来るわけないし、儒者のでっち上げでもあるが、そうであればどんなによいかのう。
12
この戦乱の世に、武力による覇道を退け、道徳的な王道を行う真の王者が現れたら、人々を教えさとし、戦争は終わり、情けに満ちあふれた世が実現するのであるぞよ。

アルファー:はあ? こんな絵空事本当に仰ったんですか?
孔子:はっはっはっは。こりゃ孟子くんのこしらえたニセモノじゃ。
13
もし為政者が正しい人格者なら、政治を行うなど造作もない。
そうでないなら、人をまともな道に導くなどできはしない。
14

冉有が政庁から帰ってきたところへ言った。
「遅かったじゃないか。」「政務がありまして。」
「雑用だろう? もし国政に関わることなら、呼ばれなくとも私の耳には入るよ。」
15

かつて我が君、定公さまがおたずねになった。「一言で国を栄えさせる言葉はあるか。」
「一言では無理ですが、やや長い言葉ならございます。世に言います、君主はつらいよ、家臣も楽じゃないよ、と。」
「では一言で国を滅ぼす言葉はあるか。」
「同じく世に言います、君主は楽しくないよ、せいぜい家臣が言うことを聞くのが楽しいだけだ、と。」
「どういうことじゃ?」
「君主が正しいなら、その通り家臣が言うことを聞いてまことに結構です。しかし正しくないなら、これこそ亡国です。」

アルファー:定公さまって?
孔子:うむ。ワシを宰相代行にお取り立て下さった魯の国君じゃ。じゃがワシが政治的にやり過ぎ、貴族からも庶民からも嫌われた時、守っては下さらなかったのう。ま、いわば論語の時代に、ごく普通の君主じゃ。ただし、名君ではおわさなんだな。ただそれだけのことじゃ。
16

楚の一領主で、国政にもあずかる葉公どのが政治の要点をおたずねになったので、答えた。
「善政を敷いて領民を喜ばせ、領外の者まで移住を望ませることです。」

アルファー:葉公さんって、どんな方だったんですか?
孔子:うむ。ワシが南方で政治工作をしておった時の、楚国側のパートナーじゃ。楚国は南方の大国でな。もともと大領主の連合政権じゃ。
大領主が国内に、半独立の領地を抱えておった。いわばミニ周王朝と言ったところじゃな。葉公どのはそんな大領主の一人で、王族じゃ。竜がお好きでの。それを伝え聞いた竜が、そんなに好きなら会ってやろうと屋敷にやって来たら、腰を抜かしたという伝説がある。

アルファー:へ~え。私、竜って想像上の動物だと思ってました。

孔子:いや、論語の時代にはおったぞ。今もおるらしい。名こそ、ヨウスコウワニと呼ばれておるがな。論語の時代では、他にサイやゾウも中国におったぞ。
17

子夏が遠い莒父のまちの代官になり、政治を問うたので言った。
「急ぐな。ちまちました成果を求めるな。急げば失敗するし、ちまちましていると大きな成功はしない。」
18

葉公が言った。
「うちの村に正直者の躬という者がおりましてね、父がヒツジを盗んだら、おやじが犯人だと証言しました。」
孔子「うちの村の正直者は違いますね。父は子のため、子は父のために隠す。それが正直というものです。」

アルファー:あ、私これ知ってます。「父は子のために、子は父のために隠す。直きこと、その中にあり」ですよね。
孔子:そうじゃ。確かに論語の説教は貴族になるための教養で、貴族は判断に冷徹さを失っては務まらぬが、家族の情愛まで捨ててしまったら、人として何にもならないのじゃ。
19

樊遅が仁を質問したので答えた。
「居住まいはうやうやしく、仕事を任されて慎重で、人と付き合うには自分を偽らない。これはたとえ蛮族の国に行っても同じだよ。」

アルファー:先生は、武人の樊遅さんに合わせて仁を教えたんですよね。
孔子:そうじゃ。論語の教えが、時に矛盾しているように見えるのは、一つはこれが原因じゃな。じゃがワシは、同じ時代を生きたインドの賢者・ブッダどのと同様、「応病与薬」(病気に合わせて薬を与える)を心掛けておったんじゃよ。
20

子貢が質問した。「どうなれば、一人前の士族と言えますか。」
「私事では恥ずかしいことをしない。主君の命で使いに出ても、主君に恥をかかせないことだな。」
「半人前は?」
「一族からは孝行者と言われ、ご近所からは気のいい若者だと言われることだな。」
「やっとの者は?」
「約束は守り、ぐずぐずしない。カタブツで器量は大きくないが、まあ、ぎりぎり士族と言っていいだろう。」
「今日びの役人はどうでしょう?」
「へっ。せいぜい一升瓶ほどの小物だ。まともな士族なもんか。」
21
ほどほどを心得ないまま世間で生きると、人はもの狂いか偏屈になる。
もの狂いな者は、人が何と言おうとやり遂げようとする。
偏屈者は、人が何と言おうとやりたくないことはやらない。

アルファー:何か、あまり関わり合いになりたくない人たちですよね。
孔子:まあそうかも知れん。しかしおべっか使ってウソ付いて、人を踏みつけにして生きていくより、よっぽどマシじゃ。
22
南方にこういう言葉があるらしい。「不動心のない者は、医者にも神主にもなれない。」
…その通りだ。
易にこういう言葉がある。「能力が不十分で揺らぐようでは、占っても時に恥をかくぞ。」
…その通りだ。
23
君子は互いに和むがつるまない。
凡人は互いにつるむが和まない。
24

子貢が質問した。
「村人がみんな褒めるような人物ってどうですかね。」
「それだけじゃ人は分からんよ。」
「村人がみんな嫌う人物ってどうですかね。」
「それだけじゃ人は分からんよ。村の善人がいいと言うなら本物の善人だろうし、悪党までが嫌うなら本当の悪党だ。」

アルファー:先生って、他人による他人の評価って、全く当てにしていないんですね。
孔子:ほほほ。ワシも偏屈者じゃからのう。見る目がある者が見なければ、信用はならんのじゃ。
25
まともな貴族には仕えやすい。部下の能に応じて使ってくれるから。
しかしなかなか喜ばない。道理にかなっていないと喜ばないから。
凡人は仕えにくい。出来ない事までやらされるから。
しかし簡単に喜ぶ。道理が無くとも楽しけりゃいいからな。
26
まともな貴族はおおらかで威張らない。
凡人は口うるさくて威張り返る。

アルファー:確かにそれなら立派な君子=貴族なんでしょうけど、実際にそんな人いるんでしょうか。
孔子:うむ。ここでの君子は、”諸君”と読み替えても良いな。弟子の諸君に、そうした立派な君子を目指して欲しかったんじゃよ。
27
体は丈夫、行動は果敢、根は素直、そして口下手。
こういう人は仁、つまり理想の貴族に近い。

アルファー:剛毅木訥、仁に近し。論語の名言ですね。
孔子:そうじゃ。論語の中に出て来る実在の人物としては、子路が一番近いかのう。ただし、おしゃべりじゃがな。
28

子路「どんな者がサムライでしょう。」
孔子「心豊かに相手を思いやり、しかも言うべき事実は忠告し、されど笑顔を絶やさない者だろうな。どうもお前はいかつ過ぎる。友人に忠告してやるにも、思いやりを忘れぬように。そして兄弟は飴のように、甘やかしてやれ。」

アルファー:その子路さんですが…。
孔子:うむ。子路は政治の腕は確か、剛毅木訥にも近いが、ちょいとトゲがあってな。
そこを和らげると、論語の中でも申し分ない人物になるのじゃが…。まあ、「角を矯めて牛を殺す」(角の形が気に入らないからと言って、いじくり回して牛を死なせてしまう)では、元も子もないからの。やんわりとお説教したのじゃ。
29
腕利きの政治家でも、民が兵役に就けるまで躾けるのに七年かかる。そうでないのに徴兵するから、逃げ出したりするんだ。
30
ところが導きもしないのに戦場へ引っ張り出す、こういうのを人を磨りつぶすと言うのだ。

アルファー:へぇ。先生って、古代人なのに民主的なんですね。
孔子:それは残念じゃが違うな。ワシにとって民は政治の対象であり、材料じゃ。民主主義といった考えは、微塵も持っておらん。

アルファー:え?
孔子:分からぬかな。イエスどのの言葉を借りようか。ワシはよい羊飼いじゃ。羊飼いは時には命をかけて羊を守る。しかしいずれは食べてしまう。羊も民も、ワシにとっては経済動物じゃ。ただし周文化に賛同するワシは、人道の面ならば、今でも通用するじゃろうな。

アルファー:論語子路篇はこれでおしまいです。みなさん、おつかれさまでした。



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