論語詳解230子罕篇第九(26)三軍も帥を奪うべき

論語子罕篇(26)要約:人の行動はお金や権力で操れても、人の心は当人の自由で、イヤなものはイヤ、好きなものは好きです。時に人は忘れがちですが、うわべを従わせてもつまらないだけでしょう。孔子先生はそう説くのでした。

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論語:原文・書き下し →項目を読み飛ばす

原文

子曰、「三軍可奪帥也、匹夫不可奪志也。」

書き下し

いはく、三なすいくさいくさのきみうばなり匹夫ただびとこころざしうばからざるなり

論語:現代日本語訳 →項目を読み飛ばす

逐語訳

論語 孔子別像
先生が言った。「国の全軍だろうと、その司令官を更迭できる。しかしつまらない男も、その志は奪えない。」

意訳

論語 孔子 キメ2
全軍を率いる将軍だって首に出来るが、いかに下らないおやじでも、志を取り上げることは出来ない。

従来訳

論語 下村湖人

先師がいわれた。――
「大軍の主将でも、それを捕虜に出来ないことはない。しかし、一個の平凡人でも、その人の自由な意志を奪うことは出来ない。」

下村湖人『現代訳論語』

論語:語釈 →項目を読み飛ばす

三軍

論語 三 金文 論語 軍 金文
(金文)

論語の本章では、”国軍すべて”。

礼法の規定では周王は六軍を持ち大諸侯は三軍で中諸侯は二軍で小諸侯は一軍で…などという作り話はどうでもよろしい。事実ではないからだ。要するに国家の全軍のこと。

『学研漢和大字典』によると「軍」は会意文字で、「車+勹(外側をとりまく)」で、兵車で円陣をつくってとりまくことを示す。古代の戦争は車戦であって、まるく円をえがいて陣どった集団の意。のち、軍隊の集団をあらわす。運(まるくめぐる)・群(まるくまとまった集団)と同系のことば、という。

奪帥

論語 奪 金文 論語 帥 金文
(金文)

論語の本章では”軍司令官”。

「帥」は「元帥」「総帥」のように、組織を率いる人のこと。「ひきいる」と動詞に読むこともある。「奪帥」を従来訳のように”司令官を捕虜にする”と読むのも誤りではなく、”軍から司令官を奪い去る”と解するなら、訳は自由であっていい。

『学研漢和大字典』によると「帥」は会意。𠂤(タイ)は、堆積物や集団をあらわし、ここでは隊の意。巾は、布の旗印をあらわす。帥は「𠂤(=隊)+巾」で、旗印をおしたてて、部隊をひきいることを示す。ひきいるという動詞は、現在では多く、率であらわし、帥は「将帥」という名詞をあらわす。

なお師(シ)は、別字。帥(ソツ)の右側は上に一がない、という。

匹夫

論語 匹 金文 論語 夫 金文
(金文)

論語の本章では、”下らない男”。

『学研漢和大字典』によると「匹」は会意文字で、「厂(たれた布)+二つのすじ」で、もとは匸印を含まない。布ふた織りを並べてたらしたさまで、ひと織りが二丈の長さだから、四丈で一匹となる。二つの物を並べてペアをなす意を含む。比(ヒ)(二つ並ぶ)と同系のことば、という。

動物を一匹二匹と数えるように、漢文では人間を馬鹿にする時は動物にたとえる。これは南方の異民族を「蛮」と呼んで「虫」が入り、北方の異民族を「テキ」と呼んでけものへん「犭」(=犬)が入っている例と同じ。

われわれ日本人は中華思想の分類では東夷に入り、「人」が入っているだけまだましだが、海と親しんで生活するのを「ギョベツにまみれる」と言い、魚やスッポンの仲間と見なされた。中華思想の夢想性の高さがおわかり頂けるだろうか。事実はどうでもいいのである。

論語:解説・付記

論語の本章は、人間の行動や言動など、表に現れる行為は規制できても、心の中は自由である、という道理。ここで儒者の受け売りをして、「志とはッ!」とかいう体育会的お説教と解釈すると論語を読み誤る。

論語 孔子 洞察力
孔子もまた中華思想の結晶の一人であるからには、高度の夢想性を持ったが、同時に怜悧な政治的人間であり、事実をありのままに見つめることを弟子に教えた。「動機や目的を見れば人は丸わかりだ」(論語為政篇10)と教えたのがその例。本章も同様である。

中国人の夢想性が後進性をもたらしたとして、毛沢東は「実事求是」=事実に基づいて正しい方法を知ることを求めた。政権を取るまでの中国共産党が、極めて合理的な集団であり得たのはそのおかげ。人を力で従わせることは出来るが、心まで支配する事は出来ないのも事実。

孔子はその事実を本章で指摘したのであり、志を高く持てと言ったのではない。もちろん孔子は志を持つことを弟子に求めはしたが、本章はそれとは違う話なのだ。政治家や官僚として世に出て行く弟子に、実事求是の教えを諭したものと理解すべき。

警告

漢文業界の者は嘘つき中国人そっくりで、微塵も信用ならぬ(→理由)ので、数言申し上ぐ。


出典明記の引用は自由だが(ネット上では可動リンク必須)、盗用・剽窃は居合を嗜む有段者の訳者が、櫓櫂の及ぶ限り追い詰める。言い訳無用。訳者が「やった」と思ったら、全国どこでも押し込む。頭にきたら海外にも出かけ、バッサリやってすぐ帰る。訳者は暇であるし、惜しむものを持っていないし、面倒が苦にならぬゆえ、こうして古典を研究している。

そして未だ人を斬ったことが無い。

盗作・剽窃の通報歓迎。下手人を成敗した後、薄謝進呈。他人にやらせた者も同罪、まずそ奴から追い回す。覚悟致せ。

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コメント

  1. […] 三軍可奪帥也、匹夫不可奪志也。(『論語』子罕) 〔三軍帥を奪う可き也、匹夫も志を奪う可から不る也。〕 […]