論語語釈「ス」

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語釈 urlリンクミス

水(スイ・4画)

論語 水 金文
同簋蓋・西周中期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はɕi̯wər(上)。

学研漢和大字典

象形。みずの流れの姿を描いたもの。追(ルートについて進む)・遂(ルートに従ってどこまでも進む)と同系。その語尾がnとなったのは順や巡(従う)、循(ルートに従う)などである。平准の准(ジュン)(平らに落ち着く)と同系だと考える説もある。付表では、「清水」を「しみず」と読む。

語義

  1. {名詞}みず(みづ)。外わくに従って形をかえ、低い所に流れる性質をもつ液体の代表。▽火に対して水といい、湯に対して水(特に冷たいみず)という。また柔弱なものの代表。「水火(みずと、ひ。生活の基本条件)」「知者楽水=知者は水を楽しむ」〔論語・雍也〕
  2. {名詞}みず(みづ)。川や湖などのある場所。「滄浪水(ソウロウノミズ)(清らかな流れ。また滄浪という川の名)」「洞庭水(ドウテイノミズ)(洞庭湖)」「水陸」。
  3. {名詞}河川の名につけることば。「洛水(ラクスイ)」。
  4. {名詞}「水星」の略。
  5. {名詞}五行の一つ。方角では北、色では黒、時節では冬、十干(ジッカン)では壬(ジン)と癸(キ)、五音では羽に当てる。
  6. {名詞}《俗語》割増金や、手当。「貼水(テンスイ)(割増金)」。
  7. 《日本語での特別な意味》
    ①「水素」の略。「水爆」。
    ②みず(みづ)。相撲で、勝負が長びき力士が疲れたとき、しばらく引き離して休ませること。
    ③すい。七曜の一つ。「水曜日」の略。

字通

[象形]水の流れる形に象る。〔説文〕十一上に「準(たひ)らかなるなり」と水準の意とする。〔周礼、考工記、輈人、注〕に「故書に準を水に作る」とあって、水を水準の器に用いた。〔説文〕にまた「北方の行なり」というのは、五行説では水を北に配するからであるが、「衆水竝び流れ、中に微陽の气(き)有るに象る」といい、中の一画を陽、両旁を陰の象とし、坎の卦にあてて解するのは、拘泥の説である。

帥(スイ・9画)

論語 帥 金文
丼人𡚬鐘・西周末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はsli̯wəd(去)。「ソツ」は漢音の又音。

学研漢和大字典

会意。𠂤(タイ)は、堆積物や集団をあらわし、ここでは隊の意。巾は、布の旗印をあらわす。帥は「𠂤(=隊)+巾」で、旗印をおしたてて、部隊をひきいることを示す。ひきいるという動詞は、現在では多く、率であらわし、帥は「将帥」という名詞をあらわす。師(シ)は、別字。帥(ソツ)の右側は上に一がない。

語義

スイ(去)
  1. {名詞}軍をひきいる大将。「将帥」「元帥(最高の将官の位)」「三軍可奪帥也=三軍も帥を奪ふべきなり」〔論語・子罕〕
  2. {名詞}最高の指導者。かしら。「夫志、気之帥也=夫れ志は、気之帥也」〔孟子・公上〕
ソツ(入)
  1. {動詞}ひきいる(ひきゐる)。おおぜいの先頭にたって指揮する。《同義語》⇒率(ソツ)。「尭帥諸侯北面而朝之=尭諸侯を帥ゐ北面してこれに朝す」〔孟子・万上〕
  2. 《日本語での特別な意味》かみ。四等官で、大宰府(ダザイフ)の第一位。

字通

[会意]𠂤(し)+巾(きん)。𠂤は師の従うところの脤肉の象とは異なり、啓・肇などの従う神戸棚(かみとだな)の形に近く、帥とはその神戸棚に巾を加えてこれを刷拭(さつしよく)する意であろう。〔説文〕七下に「佩巾なり」とあり、重文として帨(ぜい)を録するが、帨は婦人が前かけのようにして帯びるもので、帥と同字とはしがたい。金文の〔師虎𣪘(しこき)〕に「今余(われ)隹(こ)れ先王の命に帥井(そつけい)す」のように、帥型(手本)の意に用いる。のちの率従というほどの意である。

衰(スイ・10画)

論語 衰 金文
衰鼎・西周

初出は西周期の金文。カールグレン上古音はtʂʰi̯warまたはʂwi̯ər(ともに平)。

学研漢和大字典

会意。「衣+みのの垂れたさま」で、みののように、しおたれたの意を含む。力なく小さくしおれること。蓑(サイ)(みの)の原字。砕(サイ)(小さい)・摧(サイ)(小さくくだく)と同系。

語義

スイʂwi̯ər
  1. {動詞・形容詞}おとろえる(おとろふ)。しおたれる。転じて、勢いや力が弱くなる。《対語》⇒盛。「盛衰」「衰微」「何徳之衰=何ぞ徳之衰へたる」〔論語・微子〕
シtʂʰi̯war
  1. {動詞・形容詞}そぐ。へつる。しだいにへる。また、少しずつ差がつく。また、順に差のついたさま。《類義語》殺(サイ)。「衰征=征を衰ぐ」。
  2. {名詞}等差。順序。順序のあとのほう。「等衰(トウシ)(等級)」「以衰(イシ)(以降)」「自是以衰=是より以衰」〔春秋左氏伝・襄二五〕
サイ
  1. {名詞}蓑(ミノ)のような、粗末な喪服。広く、喪服のこと。《同義語》埣。「斬衰(ザンサイ)(麻布を切って端を縫わない喪服)」「衰麻(サイマ)(喪服)」。

字通

[会意]正字は衣+冄(ぜん)。冄は呪飾。死者の襟もとに麻の呪飾を加えて祓う。〔説文〕八上に「艸雨衣なり。秦には之れを萆(ひ)と謂ふ。衣に從ひ、象形」と蓑(みの)の意とするが、冄は死葬のとき、衣に著ける呪飾で、衰は縗(さい)の初文。糸(べき)部十三上に縗を喪服とする。葬送のときには礼を減衰(げんさい)するので、また減少・衰微の意となる。

遂(スイ・12画)

遂 金文
𦅫鎛・春秋中期

初出は西周早期の金文。カールグレン上古音はdzi̯wəd(去)。

学研漢和大字典

形声。右側の字は、重いぶたを描いた象形文字で、隊(タイ)・墜(スイ)などの音符として用いられる。遂は甦(すすむ)にそれを単なる音符としたそえた字。道すじをたどって奥へ進むこと。追(ツイ)(ルートをおって進む)・水(スイ)(低地に従って進むみず)・隧(スイ)(ルートに従って奥へはいるトンネル)・邃(スイ)(奥ふかい)などと同系。「ついに」は「竟に」「終に」とも書く。

語義

  1. {動詞}とげる(とぐ)。道すじをたどって奥までたどりつく。いける所までいく。また、物事をやりとげる。「完遂」「遂事(やりとげたこと)」「遂我所願=我が願ふ所を遂ぐ」〔宋書・楽志〕
  2. {動詞}とげる(とぐ)。一定の方向にそってすらすらと進む。また、すくすくとそだつ。「遂意(思う方向に進む)」「遂字(のびのびと育ちふえる)」「気衰則生物不遂=気衰ふれば則ち生物遂げず」〔礼記・楽記〕
  3. {副詞}ついに(つひに)。→語法「①②」。
  4. {名詞}遠い道をたどっていきつく地。周の行政区画では、都から百里以上離れた地。「遂方」。

語法

①「ついに」とよみ、「そのまま」と訳す。前から後ろへすんなり状況がつながる意を示す。「及反市罷、遂不得履=反るに及べば市罷(や)み、遂(つひ)に履を得ず」〈もどって来ると市は終わっていて、そのまま履物は買えなかった〉〔韓非子・外儲説左上〕

②「ついに」とよみ、「かくして」と訳す。最終的な結果としてという意を示す。「遂餓死於首陽山=遂(つひ)に首陽山に餓死す」〈かくてそのまま首陽山で餓死した〉〔史記・伯夷〕

字通

[形声]旧字は■(辶+八+豕)に作り、■(八+豕)(㒸)(すい)声。㒸は獣が耳を垂れている形。これを犠牲として軍の進退などを卜し、その結果を待って行動を継続することを遂行という。〔説文〕二下に「亡(に)ぐるなり」とするも字義と合わず、〔玄応音義〕に引いて「成るなり」に作る。㒸を〔説文〕二上に「意に從ふなり」とするが、それが遂の字義に近い。金文には㒸を墜の意に用い、〔エイ 外字𣪘(えいき)〕に「追孝して、對(こた)へて敢て㒸(おと)さず」のように用いる。述も道路で獣を犠牲として進退を卜する字で、〔小臣■(言+速)𣪘(しようしんそくき)〕に「述(つひ)に東す」とあり、遂と同義。その道路における呪儀を術という。

綏(スイ・13画)

妥 綏 金文
蔡姞簋・西周中期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はsni̯wər(平)。論語の時代に通用した金文では、妥の字と書き分けられていない。

学研漢和大字典

会意兼形声。妥は「爪(手)+女」で、いきりたつ女をまあまあと手でなだめて落ち着かせることをあらわす会意文字。綏は「糸+(音符)妥(タ)」。妥と同系。類義語に安。

語義

スイ
  1. {名詞}車に乗るときつかまってからだの安定を保つ綱。▽むかしの車台は地面から高かった。「升車、必正立執綏=車に升りては、必ず正しく立ちて綏を執る」〔論語・郷党〕
  2. {動詞}やすんずる(やすんず)。落ち着かせる。やすらかに居させる。▽妥(ダ)に当てた用法。「君若以徳綏諸侯、誰敢不服=君もし徳を以て諸侯を綏んずれば、誰か敢へて服せざらん」〔春秋左氏伝・僖四〕
  3. {形容詞}やすい(やすし)。やすらか。落ち着いているさま。安定しているさま。「綏静(スイセイ)」。
  1. {動詞}たれる(たる)。やんわりと、たれる。ぶら下げる。《同義語》⇒妥。

字通

[形声]声符は妥(だ)。妥に挼・娞(すい)の声がある。妥は女子に上から手を加え、これを安撫する意。〔説文〕十三上に「車中の把(と)るものなり」とあり、〔論語、郷党〕に「車に升るに、必ず正しく立ちて綏を執る」とみえる。車に升るときにもつ垂れひもで、〔儀礼、士昏礼〕に新夫が新婦を迎える親迎のとき、車上から綏を授ける儀礼がある。綏安の意に用い、字はまた綏に作る。食前に、黍・稷・肺を以て尸(かたしろ)を祭ることを綏祭といい、キの音でよむ。

誰(スイ・15画)

誰 金文
大鼎・西周中期

初出は西周中期の金文。カールグレン上古音はȡi̯wər(平)。藤堂上古音はdhiuer(平)。

学研漢和大字典

形声。「言+(音符)隹(スイ)」。惟(イ)・維(イ)は、「これ」の意をあらわす指示詞に用い、その変形した誰は、だれの意をあらわす疑問詞にして用いる。言語の助詞なので、言べんを加えた。▽現代語で、那(それ)の変形を犠(どれ)という疑問詞に用いるのと似ている。

語義

  1. {疑問詞}たれ。→語法「①②③④」。
  2. {助辞}リズムをととのえる接頭辞。▽指示詞から転じたもの。《類義語》惟(イ)・維(イ)。「誰昔(スイセキ)(むかし)」「誰昔然矣=誰昔より然り矣」〔詩経・陳風・墓門〕
  3. 「誰何(スイカ)」とは、不審な人をとがめて、姓名や所属などをたずねること。《同義語》誰呵・誰訶。

語法

①「たれ」「た」とよみ、

  1. 「どなた」「どの人」「だれ」「だれの」と訳す。不明の人を問う疑問代名詞。疑問文に多く用いる。「誰毀誰誉=誰をか毀(そし)り誰をか誉めん」〈誰をそしり誰をほめるのか〉〔論語・衛霊公〕▽「だれの」の場合は、「たが」とよむ。「誰為含愁独不見=誰が為に愁を含む独不見」〈誰のためにうれいをこめて「独不見」の曲を奏でるのか〉〔沈姻期・古意〕
  2. 「どのようなひとでもすべて」「だれでも」と訳す。不特定の人を示す疑問代名詞。▽反語文に多く用いる。「誰能出不由戸、何莫由斯道也=誰かよく出づるに戸に由(よ)らざらん、なんぞこの道に由ること莫(な)きか」〈誰でも出てゆくのに戸口を通らないものはない、(人として生きてゆくのに)どうしてこの道を通るものがないのだろうか〉〔論語・雍也〕

②「たれぞ」「たぞ」とよみ、「~するのはだれか」と訳す。不特定の人を示す疑問代名詞。▽疑問文・反語文に用いる。「若所追者誰=若(なんぢ)の追ふ所の者は誰ぞ」〈お前(蕭何)が連れもどしに行ったのは誰だ〉〔史記・淮陰侯〕

③「誰~者」は、「たれか~ものぞ」とよみ、「だれが~するのか」と訳す。疑問・反語の意を示す。「富貴不帰故郷、如衣墸夜行、誰知之者=富貴にして故郷に帰らざるは、墸(しう)を衣(き)て夜行くが如(ごと)し、誰かこれを知る者ぞ」〈富貴の身となったのに故郷に帰らぬというのでは、美しい錦を着て夜歩くようなものだ、だれが気づいてくれるだろうか〉〔史記・項羽〕

④「いずれ」とよみ、「どれ」「なに」と訳す。事物について問う疑問代名詞。▽戦国から前漢にかけて多く用いられた。「敢問人道誰為大=敢(あ)へて問ふ人の道は誰(いづ)れをか大と為すと」〈あえて尋ねるが、人の道の中で何が重要であろうか〉〔礼記・哀公問〕

字通

[形声]声符は隹(すい)。隹は唯・進・雖などの字義から考えられるように、古い鳥占(とりうら)の俗を示すもので、誰も不特定のものを推測するときの鳥占の俗を示す字であろう。〔説文〕三上に「誰何(すいか)するなり」(段注本)とあり、誰何とはとがめ問う意である。疑問詞にはその本義とすべきものがなく、他義の字を転用する例が多いが、誰はその人を誰何特定する卜法から出たもので、本義に近い字である。

雖(スイ・17画)

論語 雖 金文
秦公簋・春秋中期

初出は春秋中期の金文。カールグレン上古音はsi̯wər(平)。

学研漢和大字典

形声文字で、「虫の形+(音符)隹(スイ)」で、もと、虫の名であるが、ふつうは惟(これ)や維(これ)などの指さすことばに当て、条件をもち出して、「こうだとしても」と、それを強く指定することによって、仮定の意をあらわす。

現代語で、指定のことば「就是」を用いて仮定をあらわすのに似た用法。また、雖は、既存の条件をさすのにも用いる。類義語の仮令や使は、仮空の条件を設定するさいにだけ用いる。

意味

  1. {接続詞}いえども(いへども)。→語法「1.」。
  2. {助辞}これ。ただ。→語法「2.」「雖悔可追=雖だ悔いてのみ追ふべし」〔書経・五子之歌〕
  3. {名詞}とかげの一種。

語法

  1. 「~といえども」とよみ、
    (1)「たとえ~であっても」「かりに~であっても」と訳す。逆接の仮定条件の意を示す。「縁木求魚、雖不得魚、無後災=木に縁(よ)りて魚を求むるは、魚を得ずと雖(いへど)も、後の災無(な)し」〈木に登って魚を捕らえようとするのは、たとえ魚は捕らえられなくても、あとの災難はありません〉〔孟子・梁上〕
    (2)「~ではあるが」と訳す。逆接の確定条件の意を示す。「江東雖小、地方千里、衆数十万人=江東は小なりと雖(いへど)も、地方は千里、衆は数十万人あり」〈江東は狭いとは言え、広さは千里四方、人間は数十万あります〉〔史記・項羽〕
  2. 「ただ~(のみ)」「これ」とよみ、「ただ~だけ」「~にすぎない」と訳す。限定・強調の意を示す。《同義語》惟・維・唯。「雖有明君能決之=ただ明有るの君のみよくこれを決す」〈ただ賢明な君主だけがこのように切り開くことができるのである〉〔管子・君臣〕

字通

[会意]口+隹(すい)+虫。口は𠙵(さい)。祝禱を収める器の形。隹は鳥占(とりうら)。祈って神託を求める。これによって示される神意は唯。受諾を意味し、「しかり」の意。それで神聖に関する記述のときに、唯(惟・維)を発語としてそえる。虫は蠱(こ)。呪詛(じゆそ)の意。この祈りに呪詛が加えられているので、唯に対して停止条件が加えられ、逆接態となって「いえども」となる。〔説文〕十三上に「蜥蜴(せきえき)(とかげ)に似て大なり」と虫の名とするが、その用義例はない。ほとんど「然りと雖も」の意に用いる。

數/数(スウ・13画)

論語 数 金文
中山王□鼎・戦国末期

初出は戦国末期の金文で、論語の時代に存在しない。”しばしば”の意味でのカールグレン上古音は入声でsŭk。同音は欶(吸う・付ける・付く)のみ。”かず”の意味では去声または上声で、カールグレン上古音はsli̯uで、同音は存在しない。入声韻目「屋」字母「心」の音は不明。

語義を共有する齒(歯)のカ音はȶʰi̯əɡで音通しそうに無い。算も戦国文字からしか無く、音もswɑnで音通しそうに無い。ただし須si̯uには”しばらく”の語義があり、「数年」の置換候補として「須年」を想定したい。

なお同訓の「責」のカ音はtsĕkで、およそ音が通じない。「計」の初出は戦国文字。「品」のカ音はpʰli̯əmで、甲骨文より存在する。「員」は”かず”の意ではi̯wənで、甲骨文より存在する

部品の「婁」は”しばしば”の意味でに通ず」と『大漢和辞典』が言い、西周早期の金文から存在する

学研漢和大字典

ル・ロウは、女と女をじゅずつなぎにしたさまを示す会意文字。數は「婁(じゅずつなぎ)+攴(動詞の記号)の会意文字で、一連の順序につないでかぞえること。
意味:かず。かず、同列の仲間。回り合わせ。天文や暦の単位。六芸の一つ。はかりごと。複数をばく然とあらわすときのことば。かぞえる。一つ二つと数えたてて責める。わずらわしい。しばしば。

意味〔一〕ス/シュ

  1. {名詞}かず。順序正しく並んだかず。転じて、一つ一つのかず。「数字」「奇数」「不知数=数を知らず」「以其数則過矣=其の数を以てすれば則ち過ぎたり」〔孟子・公下〕
  2. {名詞}かず。同列の仲間。「不以為兄弟数=以て兄弟の数と為さず」〔漢書・衛青〕
  3. {名詞}回り合わせ。運命。「命数(運命)」「数奇(異常な回り合わせ)」。
  4. {名詞}天文や暦の計算。「暦数」。
  5. {名詞}六芸の一つ。算術。
  6. {名詞}はかりごと。たくらみ。「術数」。
  7. {数詞}複数をばく然とあらわすときのことば。「数十人」「数口之家(何人かの家族の家)」〔孟子・梁上〕
  8. {動詞}かぞえる(かぞふ)。一つ二つとかぞえる。▽上声に読む。「不可勝数=勝げて数ふべからず」。
  9. {動詞}かぞえる(かぞふ)。問題として取り上げていう。▽上声に読む。「不足数=数ふるに足らず」。
  10. {動詞}せめる(せむ)。一つ二つとかぞえたてて責める。▽上声に読む。「数譲」。

意味〔二〕サク

  1. {形容詞}わずらわしい(わづらはし)。何度も続いてひんぱんなさま。こせこせしたさま。細かい。《類義語》瑣(サ)。「数罟(ソクコ)(目の細かい網)」「事君数斯辱矣=君に事へて数しければ斯に辱めらる」〔論語・里仁〕
  2. {副詞}しばしば。何度もひんぱんに。「范増、数目項王=范増、数項王に目す」〔史記・項羽〕

意味〔一〕ショク/ソク

{形容詞}細かい。「数罟(ソクコ)(目の細かい網)」。

字通

旧字は數に作り、ろうぼく。婁は女子の髪を高く結いあげた形。これに攴を加えて、髪を乱すことをさくという。数数として髪が乱れる意。女子を責めるときにその髪をうって乱したので責めることをいい、乱れてばらばらになるので数多い意となり、計数の意となる。〔説文〕三下に「計ふるなり。攴に从(従)ひ、婁聲」とするのは、後起の義。字もまた婁声ではない。計数の赴くところは必然であるから、世運や運命をも数という。

→婁

[象形]婦人の髪を高く巻きあげた形。高く重ねる、すかすなどの意がある。〔説文〕十二下に「空なり。毋(くわん)に從ひ、中女に從ふ。婁空の意なり」(段注本)という。婁空とは髪を軽く巻き重ねて、透かしのある意であろう。目の明らかなことを離婁といい、まどの高く明るいことを麗廔(れいろう)という。すべて重層のものをいい、建物には樓(楼)、裾(すそ)の長い衣には「摟(ひ)く」という。〔詩、唐風、山有枢〕「子に衣裳有るも 曳(ひ)かず婁(ひ)かず」とあるのは摟の意。糸には縷といい、婁は女の髪、これをうって乱すを「數數(さくさく)」という。〔繁伝〕に「一に曰く、婁務は愚なり」とあって畳韻の語であるが、用例をみない語である。

訓義

せめる、うながす。かず、かぞえる、よみあげる、計数。数の理、ことわり、さだめ、いきおい。わざ、はかりごと、てだて。しばしば、しきりに、はやい、すみやか。二、三から五、六の概数。

諸本(里仁篇第四26)

吉川本

数の字の読み方は、充分にはあきらかでないが、入声のサクの音に読むのがよろしく、煩瑣に、こせこせとすることであると思われる。

宮崎本

「数(しばしば)すれば」
「しつこくしすぎると」

藤堂本

「数(わずらわ)し」:煩瑣なこと。せせこましくわずらわしい。
「こせこせとわずらわしい動きをするようでは」

加地本

「数(はや)からん」:「数」を「速くする」(『集解』)ではなくて、「しばしば」(主君を何度も諫める)と解する(『集注』)など、いくつか別の解釈がある。
「すぐ親しくなろうとすると」

宇野本

「数(しばしば)すれば」:あまり度々君にまみえれば…とも解釈できる。
「しばしば諌めて去らなければ」

緅(スウ・14画)

初出は楚系戦国文字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はtsu(平)またはtsi̯u(去)。前者の同音は陬”すみ”、掫”まもる・たきぎ”、走。後者の同音は同音は諏”はかる”、娵”星宿の名”、陬、掫。

学研漢和大字典

形声。「糸+(音符)取」。

語義

  1. {名詞}赤黒い色。また、赤みがかった青。▽一説に薄桃色。「君子不以紺緅飾=君子は紺緅を以て飾らず」〔論語・郷党〕

字通

(条目無し)

鄹(スウ/シュ・17画)

後漢の『説文解字』にすら記載が無く、無論論語の時代からは発見されていない。カールグレン上古音も不明(平または上)、藤堂上古音も不明。その他の音韻学者の説も不明。部品の「聚」(カ音dzʰi̯u・上声・同音無し、藤音dziug)が現れるのも、楚・秦の戦国文字からになる。

なお「陬」のカ音はtsi̯u(平)。藤堂上古音はtsug(走と同)/tsïog(鄒と同)/tsiug(諏と同)。「鄒」のカ音は不明、藤音はtsïog。

論語では「鄹人のこせがれ」として、孔子の父の居住地とされる(論語八佾篇15)。
陬 地図

学研漢和大字典

形声。「邑+(音符)聚」。

語義

スウ(平)
  1. {名詞}地名。春秋時代の魯(ロ)の邑(ユウ)。《同義語》⇒郰(スウ)「{名詞}地名。春秋時代の魯(ロ)の邑(ユウ)。孔子のうまれた所。今の山東省曲阜(キョクフ)県」。
  2. {名詞}古代の国の名。《同義語》⇒鄒「{名詞}国名。春秋時代には邾(チュウ)といい、戦国時代には鄒といった。孟子の出生地。今の山東省鄒県のあたり」。

シュ(去)

  1. {名詞}人々が集まり住む所。集落。《同義語》⇒村落。

字通

鄒/郰

[形声]声符は芻(すう)。〔説文〕六下に「魯の縣。古の邾婁(ちゆる)の國なり。帝顓頊(せんぎよく)の後の封ぜられし所なり」(段注本)とあり、春秋期の山東の国の名。邾また邾婁ともいい、〔国語、魯語〕に蛮夷の名とする。曹姓の〔邾公■(金+乇)鐘(ちゆこうたくしよう)〕に「陸終の孫、邾公■(金+乇)」と称しており、顓頊ののちに陸終六子があり、その第五子が曹姓であった。

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