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慶大蔵『論語疏』について

慶應義塾の発表

世界最古級の論語版本として、残巻のみだが定州漢墓竹簡『論語』に次いで古い版本(平壌楽浪地区出土『論語』は、不審が多いので本サイトでは扱えない)。慶應義塾のサイトに次のように言う。

『論語疏』は以下の3つの点で注目される資料です。

(1)中国で写された伝世最古写本(出土資料を除く)の論語であると考えられる
本書に記された文字の字体字様を詳細に比較検討した結果、本書は遣隋使、遣唐使によってもたらされた、隋以前の中国写本であると推定されます。まとまった紙の写本としては、仏典以外では現存最古級のものです。

(2)古代以来日本で長く伝わってきた
(1)で指摘したように、本書は平安時代以前に日本にもたらされてから、日本国内に長く伝来してきました。古代の藤原氏印が見られ、中世の所蔵者は不明であるものの、江戸時代に入ると朝廷の庶務や公文書を管掌する壬生家(みぶけ)に収蔵されていたことが、藤原貞幹(さだもと)の『好古雑記(こうこざっき)』に記載されています。

(3)幕末以降所在不明であった資料が発見された
長らく所在不明であった本書が近年発見され、慶應義塾図書館が所蔵することとなりました。学内で書誌学、中国文学、国文学、日本史学などの各分野の研究者からなるチームが編成されて2018 年度より研究が進められ、2021年にはその研究成果も刊行されました(参考文献②)。『論語疏』巻六は、現在の中国思想史および日本漢学の学説に新たな議論を呼び起こし、研究を進展させる論拠となる可能性を大きく秘めている資料といえるでしょう。

論語疏 巻六 | 慶應義塾大学メディアセンター デジタルコレクション Digital Collections of Keio University Libraries

また2020.11.23の「Keio Report」は次のように言う。

…『論語疏』写本は、…中国の南北朝から隋にかけての時期に書写されたものと認められる…麻紙による料紙二十枚を継いだ巻子装一軸から成り、『論語』二十篇の内、子罕・郷党の二篇を収める。…奈良時代或いはそれ以前(7~8世紀)に日本に将来されたものと推測できよう。…都内の古書店から『論語義疏』の古写本を仕入れたとの連絡のあったのが2016年3月のこと。そして、本書がめでたく慶應義塾図書館に収まったのは翌年2月のこと…。

【Keio Report】『論語疏』──中国6世紀写本の出現と公開|その他|三田評論ONLINE
去る10月7日から13日まで、東京丸の内の丸善本店4階ギャラリーで第32回慶應義塾図書館貴重書展示会が開催された。今回のテーマは「古代中世日本人の読書」で、室町時代以前の日本人が中国伝来の漢籍をどの…

なるほどおめでたい。

訳者の見解

ということだが、2023年になって元画像を慶應義塾がネット公開しているのに気づき、全文参照して論語詳解の改訂に資料として用いた。訳者はあくまでプリンタと虫眼鏡と色鉛筆を使って公開画像をチクチク解読しただけで、この版本に拠る出版物はただの一冊も目にしていない。

論文も読んでいない。そう断った上で以下のようなことを確認した。

字が汚く誤字脱字がある

筆画が明瞭でなく、崩した書き方をしている。一部は草書で、「亦」を「」と書かれても、楷書しか知らないと読みようがない。また本来その語義を意味する漢字はあるのに、あえて音や形の近い別の漢字を用いたり、簡体字のように大胆に筆画を略して書いているのが少なくない。

文字は本来他者へ意図を伝えるために用いるものだが、識字が特権階級の象徴であるような肥溜めくさい社会では、前衛演芸の一つになりもする。中国の草書や日本の崩し字が一例で、他人に読めないからこそ価値がある、ともてはやされた。もはやオタクのうちわ話とぜんぜん変わらない。

バブル期の末に榊莫山という京大出の書道家がいて、わけの分からん字を書くというので軽薄なNHKを初めとするメディアがもてはやした。同時期の漫画『稲中卓球部』では、遠慮無く莫山のうさんくささをからかい倒した。だが誰もが字を読めるわけではない社会では、こうはいかない。

政治と結びついて、からかう者をぶち込んだり殺したりするからだ。

要するに書き手が自分に酔っても通ってしまうので、南朝の時代的雰囲気にふさわしい。南朝は東晋が始まる直前から、宰相が国を食い散らかした上で「知らんがな」と言ってのけたように、後漢と同等以上にふざけた社会だったが、仏教に凝った梁の武帝が寺に自身を寄進して奴隷になり、本堂の掃き掃除を始めるたびに家臣が金を出し合い、寺から買い戻すなどふざけようは続いた。

儒家その他知識人も軽薄極まりなく、あぶない𠂊ス刂をやってはぶらぶらとうろつき回るのが流行った。こういう社会でまじめを通して生きるのは容易ではない。社会に寄生する知識人ならなおさらで、慶大蔵論語疏を筆書きした者も、そういう南朝にありふれた本読みの一人だったのだろう。

また経(本文)を記し忘れて注と疏(注の付け足し)だけ記していたりする。人間のすることだからウッカリは仕方が無いが、まじめに校正した痕跡も無い。以上はもちろん、買って帰った奈良平安のご先祖さまのせいではなく、慶應義塾や担当教員や塾生元塾生のせいでもない。

古注系統の文字列を保存している

原始論語?…→定州竹簡論語→白虎通義→
             ┌(中国)─唐石経─論語注疏─論語集注─(古注滅ぶ)→
→漢石経─古注─経典釈文─┤ ↓↓↓↓↓↓↓さまざまな影響↓↓↓↓↓↓↓
       ・慶大本  └(日本)─清家本─正平本─文明本─足利本─根本本→
→(中国)─(古注逆輸入)─論語正義─────→(現在)
→(日本)─────────────懐徳堂本→(現在)

定州竹簡論語や現伝の古注本から、論語は中唐まで異同のある雑多な版本が並行して存在したと考えていいが、晩唐の初期になって、儒教経典の定本を朝廷が定めた。孔子を使ったハッタリをかますためで、もちろん中国人の政府がすることだから、図々しい書き換えは平気でやった。

現在の視点からは、「しっぽの見える芝居」と判明することも少なくない。

©宮崎駿『風の谷のナウシカ』第3巻より

それを記した碑文を開成石経といい、開成二年(837)に完工したが、翌年最後の遣唐使が訪れ、おそらく写しを取って帰った。おじゃる公家が開いて見ると、当然ながらそれまで伝わった古注系統とは文字列が異なっている。「大唐帝国公認の論語」の新文字列に恐れ入ったであろう日本人が、しおらしく慶大本の本文に添え書きし、訂正した跡が見える。

つまり慶大本は、唐政府のやらかしたデタラメを元に戻す役には立つ。

たぶん南方での筆写

使われた書体を追っていくと、古くは後漢の碑文に見られる書体、新しくは唐代の碑文に見られる書体と分かる。北魏、東魏の碑文刻字も見える。だからといって、慶大本が華北で筆写されたと断じるのは早すぎる。

なぜなら、現在はたまたま華北の碑文が多く残り、たまたま研究書が多いからに過ぎないので、蛇口から飲料水が出てくるなら取水口の水も同じだろう、と言い張る間抜けはしたくない。南北朝時代の北朝を担った北方遊牧民は、確かに中華文明的人文には暗かったかも知れないし、乱暴でもあったろうが、その分まじめで、南朝のようなふざけた連中が上流階級を占めはしなかった。

だから鮮卑人政権の隋が589年に南北を統一して中華帝国を復興でき、縁戚の「大唐帝国」が栄えたわけで、慶大本のようなふざけた筆写を当時の華北人がしたという動機を考えつかない。また訳者が確認したのは一点だけだが、華南の碑文に見られる刻字があったことも事実だ。

衣〔尚皮廾〕緼〔衣𠂊巳〕*与衣狐狢者立而不恥者其由也与
袍 異体字
「袍」の異体字。「〓西南詔古碑 付嘉慶三年記」(南詔)刻。(論語子罕篇27)

遣隋使や遣唐使は、百済が健在なうちは朝鮮半島経由で比較的安全に行き来したが、白村江でバチバチ戦争をやった相手である新羅が半島を統一すると、シナ海を突っ切った上に、理由不明ながらわざわざ台風の季節に出帆した。ボロ船をあてがわれた小野篁おののたかむらが逃げたのも無理は無い。

葛野麻呂かどのまろが泣き出したのも当然だ。従ってうまく流れ着いたにしても、華南辺りの海岸からワカメだらけになって上がったわけで、船酔いでぐったりしているところへ、ずるそうな唐人がわーっとたかり、連中からヘンな巻物をだまし売りつけられたとしても不思議は無い。

なお奈良平安のご先祖様が、ちうごく人に対してあまりにしおらしかったのは、鎌倉時代の人参坊主までは続いた(論語衛霊公篇11解説)。室町の足利義満も同様だった。だが少し時間が過ぎると、たかが一アキンドがチュコクの地方役人にだまされて怒り、寧波をまちごと丸焼けにした

バルチック艦隊 Вторая Тихоокеанская эскадра

「耕して山巓やまのてっぺんに至る」と日本人をバカにした清国人とロシア人も、因果応報になった。

付記

上記したように、訳者はこの『論語疏』に基づく出版物を一切参照していない。『慶應義塾図書館蔵 論語疏巻六 慶應義塾大学附属研究所斯道文庫蔵 論語義疏 影印と解題研究』と題する本は、2023年6月末時点でamazonでは¥25,688、大型本とあって配送料も\1,000かかる。

論語業者も数あるが、「斯道」を名乗る者にろくな人間を見たことが無い。「斯」の字の意味を甲骨文からしつこく追い求めた者で、それでも「斯道」を名乗る者も同様。論語の「斯道」を「シドウ」とか「このみち」とか読み読ませている漢文業者は、ばった者と思った方がいい。

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例えばこの男はしゃべりをyoutubeで流しただけで、「受験料」と称して¥5,000を取り論語なんたら士と認定する商売を始め、子供が付けて喜ぶサイダーの栓みたいなのを¥15,000で売っている。元帝大教授がここまでするのは、役人特有のワイロ漬けか、かみさんに金がかかるためか。

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なおサイダーの栓は評判が悪かったらしく、今は栓売りの口上をHPから削っているが、ソースに証拠が残っている(保存済)。我が輩の知らぬことは世間も知らぬという思い上がり、または売人とコード書きの仲が悪いか、売人がwebの何たるかを知らぬ程度には頭が悪いのか。

コード書きが怒るのはほぼ100%買い叩くからで、web商売なのに安普請のHPを上げるのは、風でひしゃげる店舗に客を入れるのと同じ、重大事故が起こるまでは公権力もうるさく言わない。だがいつかひしゃげるのは確実で、そんな店に入りたいですかと閲覧者諸賢には申し上げる。

幼児教育に携わる方や習い事の先生、道徳教育の先生、家庭でしつけをするご家族などから専門知識を得て子ども論語塾を開きたい方まで、様々な希望をお持ちの方に受けていただきたい講座です。

知的抵抗力のない子供に論語をすり込み奴隷化を図る連中には、一片も同情の余地がない。

こども論語塾

本に話を戻すと、訳者の出身校の図書館などに行けば置いてはあるのだろうが、読みに行く気もしない。めんどうくさいし、漢学教授をほとんど信用していない(理由は論語雍也篇27余話「そうだ漢学教授しよう」を参照)から、たぶん目にしてもがっかりするだけだろうと踏んでいるからだ。

さて、本写本の価値は奈辺にあるのだろうか。(同「Keio Report」)

ナ変もサ変もあるものか。一般社会に対する漢文業界人の、こういう持って回ったバカバカしい物言いは、南朝のヤ𠂊ちうと同様の臭いがする。そういうあぶない人の書き物だから、読みに行く気もしなくなるというわけだ。

遣唐使 難破

なおこの手の古本には珍しいことではないが、上古の日本人が水死の危険まで負って持って帰った本の、著作権は慶應義塾にあるのだそうで、画像の公開は一部だろうと許可が要る。自分で漢文を読めるなら、別に困りはしないので、せめて画像だけでもネット公開した事は賞賛したい。

だがやはり、虫眼鏡は要ったと記しておく。光学工学ばんざい!

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