論語里仁篇:要約
アルファー:こんにちは。ナビゲーターAIのアルファーです。
孔子:解説の孔子じゃ。
アルファー:先生、論語里仁篇はどんなお話なんですか?
孔子:うむ。里仁篇は主に、仁と徳、そして孝を説いておる。
アルファー:三つを簡単にご説明願います。
孔子:うむ。仁とは、貴族らしい振る舞いの事じゃ。後世、孟子君が「仁義」を言い出してから意味が変わってしまい、人が本来持つ思いやりの事になったが、ワシの頃はそうでない。徳とは道徳や人徳ではない。経験や修練によってつちかわれた、人間の持つ機能の事じゃ。ま、その結果に打たれる者が出たら、人徳と言ってもよいがの。
孔子:孝とは、年下が年上に抱く愛情のことじゃが、ワシは子が犠牲になるような親孝行を説いことはないぞ? それは後世の儒者のこしらえ事じゃ。
アルファー:ありがとうございました。それでは早速始めましょう。
1
鯉(孔子の一人息子)よ。貴族らしいキリリとした身ごなしはよいものだ。それを目指さないと、ものを知る喜びが分からぬまま一生が終わってしまうぞ。
アルファー:この章は、一説には「村八分などするような腐った村からは、出て行きなさい。頭が悪くなるぞ」だとも言いますよね。ずいぶん厳しいですが、「里は仁を美と為す」ってそういう意味にもなるんですか?
孔子:うむ、実はワシも何と言ったか忘れてしもうた。
アルファー:えっ?!
孔子:なにせ2,500年ぶりにお前さんたちに叩き起こされたのじゃからな。ホーホッホッホ。ただし、儒者が一杯機嫌で書き散らしたデタラメを、真に受けてはならぬぞよ。
2
貴族らしく生きられない奴は、逆境には不平を言うし順境には不満を言う。
だが生きられる者には不平不満がない。
だから頭のいい者は、仁の情けを切れ味鋭い道具だと思うんだな。
アルファー:先生、「知者は仁を利とす」の「利」って、利益の事じゃないんですか?
孔子:うむ。確かにその意味もあるが、論語の時代ではむしろ切れ味の事じゃな。右側のつくりが刀になっておるだろう? 論語を読むには、漢字の古い意味を知らねばならんのじゃ。
3
善悪の判断は、貴族らしい教養を身につけないと、本当のところは分からない。
4
本気で貴族になりたいなら、悪いことをしてはいかん。
5
地位財産は誰でも喜ぶ。だが人をいじめて得たなら、長続きしないぞ。
無職貧乏は誰でもいやがる。だがいじめもしないのにそうなったら、運命だと思ってあきらめることだな。腹が立つからと言って情けを捨てるようでは、君子の名がすたるというものだ。
だから諸君は食事の間も、慌ただしいときにも、大洪水にも、仁の情けを忘れてはならぬ。
アルファー:あれれ先生、「仁」って貴族らしさのことじゃなかたんですか?
孔子:そうじゃよ。じゃがこの話は儒者のでっち上げじゃから、でっち上げの意味で読み取らねばイカンのじゃ。
アルファー:それと先生、「顚沛」ってむつかしい漢字が出てきましたが。
孔子:それは天地がひっくり返るような大洪水の事じゃ。後世の儒者どもは、意味が分からなくなって、いろいろと個人的感想を「論語の注釈」と称して書き連ねたようじゃがな。
我が中華文明は、洪水と治水の歴史じゃ。論語の時代、過去の大洪水の記憶は、まだ生々しくワシらの頭にあったんじゃよ。
6
世の中不人情な奴ばかりだ。不人情を憎むだけでいいのに。たった一日でいいから情けから離れずにいてくれないものかな。出来ないとは言わせないぞ。
アルファー:難しい漢字がないのに意味が分からないことで、古来有名な章ですが、こんなごく当たり前のお話なんですか?
孔子:そうじゃよ。「者」を”~する人”と解釈している限り、この章の意味は分からぬじゃろうな。ほれ、日本語で「前者」というように、”こと”の意味もあるのじゃよ。
7
民の罪は、その一族まで追求して審理する。罪の詳細を吟味することが、貴族としての仕事を覚えることになるのだ。
アルファー:先生、この章は解釈が分かれているようですが。
孔子:ナニ、素直に読めばよいのじゃよ。この話はワシの口から出た言葉じゃから、司法官としての心得を語ったと読めばよいのじゃよ。
アルファー:それにしても、論語の解釈ってどうしてこんなに混乱するんですか。
孔子:それはのう、儒者どもが一杯機嫌で書いたことを、鵜呑みにして疑わぬ漢学者が今なおほとんどだからじゃな。この章も「人の過」とあるのが、もと「民の過」であったことぐらい、とうの昔に分かっておるのに、古い解釈を変えようとはせんのじゃよ。一円にもならぬからのう。ホホホホ。
8
我が同志諸君。
革命の算段が立ったなら、その日の内に死んでもいい。
それぐらいの気持で戦ってくれ。
アルファー:先生アジってますね~。論語の名言、「朝に道を聞かば夕べに死すとも可なり」ですね。
孔子:そうじゃ。その覚悟がないと、革命の闘士にはなれんのじゃよ。
9
同志諸君。
革命成就のためには、飲み食い着るものに心を奪われるな。
そんなようでは同志ではないぞ。
10
諸君が天下を経巡っても、責められるようないわれはないし、追い払われることもない。いつも正義が寄り添っているからだ。
11
貴族は人格を磨いて世を渡ろうとするが、庶民は土地を求めて耕して世を送ろうとする。貴族は規則や原則に従おうとするが、庶民は規則外れのお恵みやお目こぼしを期待する。
12
自分がデキるからといって好き放題すると、嫌われるぞ。
アルファー:先生、「利を放ちて行わば」って、利益目当てで好き放題することじゃないんですか?
孔子:うむ。そうとも読めるな。じゃが、先ほど言った通り「利」とは鋭さのことじゃ。能ある鷹は爪を隠しておかんと、既存の支配者たちに袋だたきに遭うからな。気を付けねばならん。
13
礼法だけで国が治まるなら、安いものだ。
治まらないなら、無用の長物だ。
アルファー:先生、「礼譲」って何ですか?
孔子:うむ。熟語ではなく「礼」と「譲」じゃな。「礼」は礼儀作法だけではなく、日常生活のあらゆる行動の規範じゃ。「譲」は人にへりくだる事じゃ。
つまりただのお作法だけではない。政治的決断をどうするかなど、人間生活全てを決める、法令のようなものだと思ってくれい。
14
地位が無いのを悩むな。地位にふさわしい能がないのを悩め。
無名なのも悩むな。能を身につける気にもならないのを悩め。
15
孔子「參(シン、曽子)よ、私はずっと一つのことを貫いてきたのだ。」
曽子「はい。」
わかったようなのでその場から出た。残った曾參は質問攻めにあったらしい。
ある弟子「どういう意味です?」
曽子「先生が貫いてきたのはただ一つ、忠恕=おのれを偽らず、人を思いやること*だ。」
アルファー:先生がウスノロ呼ばわりした曽子さんのお言葉ですが…。
孔子:う~む、あ奴は何も分かっておらん。ワシが貫いたのは仁であって、忠と恕は、仁者にふさわしい行動の一つに過ぎんのじゃ。
16
貴族は義務に生きねばならん。平民のように、自分の利益だけ考えていては貴族が務まらぬぞ。
アルファー:ここでもまた、「利にさとる」って「利」が出てきましたが。
孔子:うむ。ここでは利益と考えても間違いではない。じゃが論語の時代に普通の理解では、凡人は鋭い威力には簡単に恐れ入る、ということでもあるのじゃな。
17
賢者を見たら真似をしろ。
バカ者を見たら真似するな。
18
親の間違いはやんわりといさめろ。だが言うことを聞かないかも知れない。
それでも怒鳴ったりするな。世話をしてうらむな。
年を取って頑固になっているのだから。
19
親が生きている間は、用もないのに遠出するな。
出るなら、行く先を告げておけ。
アルファー:先生、ここでは「方」の解釈に、みなさん悩んでいるようですね。
孔子:うむ。「方」には、文字を聞き記す札の意味がある。つまりは手紙の事じゃ。
20
世の親御さん、よーく聞きなさい。
死後三年まで子供に文句を言われないようでないと、子は孝行者になりませんぞ。
アルファー:これって論語学而篇にも出てきたような…。
孔子:はっはっはっは。ワシの弟子や儒者たちは、かなりあわてて論語を編纂したようじゃな。じゃが時の皇帝陛下に、儒教が国教として認められてからは、、論語を編纂し直すのがだんだん難しくなったのじゃろうな。
21
親の歳は忘れるな。
長寿を喜び、残り少ない時間を大切にするのだ。
アルファー:これが先生の言う「孝」なんですね。
孔子:そうじゃ。親にわざとらしいことをするより、心から心配かけないようにするのが、本当の孝行じゃ。
22
昔の賢者は、べらべら喋らなかった。
言行不一致を恐れたのだ。
23
これ見よがしに質素倹約を見せつける奴には、偽善の匂いがプンプンする。
24
諸君は口数少なく、行動は敏速に。
アルファー:先生っておしゃべりな割には、お弟子さんたちには黙っていろと言いますよね。
孔子:やかましわッ! その分行動も敏速じゃ。口先ばかりで何も出来ん弟子が多いから説教してやったのじゃ!
25
内に秘めたるパワーを持つ者は、それに惹かれて同類が寄ってくる。
アルファー:これが論語の名言、「徳孤ならず、必ず鄰あり」ですね。
孔子:そうじゃ。自己宣伝などせずとも、おのれの能力を高めていけば、したい寄ってくる者が出るものじゃ。
アルファー:論語里仁篇はこれでおしまいです。みなさん、おつかれさまでした!