論語詳解415衛霊公篇第十五(37)君子はさとりて

論語衛霊公篇(37)要約:天命を知って動揺しない。だから人の話は安請け合いしない。そう説く孔子先生は、古代人らしく天の意志を恐れる人でした。でも恐れるとは頼りがいでもあって、弟子に天が味方していると励ましたのでした。

論語:原文・白文・書き下し →項目を読み飛ばす

原文・白文

子曰、「君子貞而不諒。」

書き下し

いはく、君子くんしさとりてうべなはざれ。

論語:現代日本語訳 →項目を読み飛ばす

逐語訳

論語 孔子 肖像
先生が言った。「諸君は天命を覚って動揺するな。その代わり安請け合いしてはならない。」

意訳

論語 孔子 キメ
何が正しいかは天が決める。それを知って恐れることなく進んで欲しい。安易に人の言葉に同調してはならない。

従来訳

論語 下村湖人

先師がいわれた。――
「君子は正しいことに心変りがしない。是も非もなく心変りがしないのではない。」

下村湖人『現代訳論語』

論語:語釈 →項目を読み飛ばす

君子

論語 君 金文 論語 子 金文

論語の本章では”諸君”。論語では君子は

  1. 貴族(為政者)
  2. 教養人
  3. 諸君

の三通りで用いられるが、3.と解釈して文意が通じれば、”諸君”と理解していい。

論語 貞 金文
(金文)

論語の本章では、”天命を覚って動揺しない”。

『学研漢和大字典』によると形声文字で、もと鼎(テイ)(かなえ)の形を描いた象形文字で、貝ではない。のち、卜(うらなう)を加えて、「卜+(音符)鼎(テイ)」。聴(テイ)・(チョウ)(まっすぐにききあてる)・正(まっすぐ)・定(まっすぐたって動かない)などと同系のことば。語義は以下の通り。

  1. (テイナリ){形容詞}ただしい(ただし)。まっすぐである。動揺しない。《同義語》⇒禎。
  2. (テイス){動詞}とう(とふ)。きく。占って神意をきく。
    ▽殷(イン)代の卜辞(ボクジ)では聴(テイ)・(チョウ)に当てた。
  3. (テイス){動詞}ただしく神意をききあてる。
    ▽「周易」の語。卜辞の習慣をひいたことば。「貞吉=貞して吉なり」。

一方『字通』によると鼎を使って占うことで、日本の「盟神探湯くがたち」のように煮え湯の中に手を突っ込むか、ゆでられたいけにえの形によって占い、神意を問うことではないか、という。

論語 諒 金文大篆
(金文)

論語の本章では”安請け合いする”。

『学研漢和大字典』によると会意兼形声文字で、「言+(音符)京(キョウ)・(リョウ)(=亮。あきらか)」。明らかにものをいう。転じて、はっきりわかること。語義は以下の通り。

  1. {名詞}まこと。明白なこと。偽りのない真実。
  2. {副詞}まことに。たしかに。
  3. (リョウス)(リャウス){形容詞・動詞}あきらか(あきらかなり)。あきらかにする(あきらかにす)。はっきりとみきわめた。わかったという。是認する。転じて、あっさりと認める。
  4. 「諒闇(リョウアン)」「諒陰(リョウアン)」とは、天子が父母の喪に服するときのへや。また、その喪に服している期間のこと。

一方『字通』によると「言+京」で、京は戦死者のなきがらを葬った凱旋門のようなアーチ状の門。そこでさまざまな呪術的儀式が行われた。その結果何らかの答えを得ることを言う、とある。また『学研漢和大字典』の語義に加えて”助ける”の意があるという。

論語:解説・付記

論語 藤堂明保 論語 白川静
論語の本章は「貞」と「諒」をどう解釈するかにかかっている。現代の言語学・漢字学の結果は上記の通りで、「諒」にも超自然的存在に伺って答えを得る、という語義はあるものの、神意には劣るだろうと判断して上掲のような訳と判断した。

論語の中で孔子が天命を持ち出したのは「五十にして天命を知る」(論語為政篇4)に始まるが、「先生はめったに天命を言わなかった」(論語子罕篇1)とあるように、簡単に口に出してはいけない、畏るべき存在が天だった。一方で斉の晏嬰アンエイはこう批判した。

論語 晏嬰
〔儒者は〕天命を言い立て、そのせいにして仕事を怠けますから、職を与えても無駄です。(『墨子』非儒篇下)

批判者から持ち出されるほど、孔子一門は天命を重んじたことになる。するとやはり凱旋門で亡き者の霊に問うよりは、天命の方を重んじたと考えてよいだろう。論語の本章は孔子の天命観を示すとともに、弟子たちに向けた「天が味方している」という励ましだったに違いない。

論語 孔子 楽
諸君が天下を経巡って、全く受け入れられることも、全く追い払われることもない。いつも正義が寄り添っていることを忘れないで欲しい。(論語里仁篇10)

孔子が叫んだ復古的政治革命は、復古なだけに当時の既得権益層や社会の風潮に刃向かうものだったから、弟子たちは心細かったに違いない。本章が政治向きの話であることから、あるいは孔子一門の政治派・子貢がかつて孔子から聞いたアジ演説だったのかも知れない。
論語 子貢 驚き 論語 孔子 説教

孔子が天命をどこまで真に受けていたかは知りようがないが、政治工作に出向く弟子たちを励ますには、得体の知れない天を持ち出すほかなかったのだろう。その意味では論語時代の儒学も、紛れもない宗教であり、のちの帝国儒教につながる不合理性を多分に含んでいた。

しかし孔子の生きた時代は古代であり、当時の合理的な支配者である各国の君主や執権たちも、『左伝』によると易などの神意を問う行為に多大の信頼を寄せている。孔子とその一門だけが、天命に頼ったわけではない。人の技術力がか細く、天災を神意として恐れたからだ。
論語 雷雨

警告

漢文業界の者は嘘つき中国人そっくりで、微塵も信用ならぬ(→理由)ので、数言申し上ぐ。


出典明記の引用は自由だが(ネット上では可動リンク必須)、盗用・剽窃は居合を嗜む有段者の訳者が、櫓櫂の及ぶ限り追い詰める。言い訳無用。訳者が「やった」と思ったら、全国どこでも押し込む。頭にきたら海外にも出かけ、バッサリやってすぐ帰る。訳者は暇であるし、惜しむものを持っていないし、面倒が苦にならぬゆえ、こうして古典を研究している。

刀の手入れは毎日している。そして未だ人を斬ったことが無い。

盗作・剽窃の通報歓迎。下手人を成敗した後、薄謝進呈。他人にやらせた者も同罪、まずそ奴から追い回してぶっ○○る。覚悟致せ。

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