論語語釈「ネ」

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語釈 urlリンクミス

佞(ネイ・7画)

論語 佞 金文大篆
(金文大篆)

初出は前漢の篆書で、論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はnieŋ(去)で、同音に寧、寍(寧の古字)、濘(ぬかるみ、清い)。寧は丁寧の寧で、”ねんごろ”の意がある。つまり”口車”の意でなければ、置換候補になりうる。

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加地伸行によると、もともと仁は、民間の拝み屋としての儒者が、客におもねることを指し、女性の儒者=巫女がおもねりを言うのを、仁に女を足して佞といったという。だが加地は根拠を一切言っていない。つまり口からの出任せに過ぎず、真に受けられない。

学研漢和大字典

会意兼形声。「女+(音符)仁(ニン)」。仁と佞は同系のことばだが、仁は、人ずきがよく親切なの意に傾いたのに反して、佞は、口先だけが巧みで、人あたりはよいが、心中は知れないの意味に傾いた。

語義

  1. (ネイナリ){形容詞}人あたりがよくて、口先がうまいさま。「佞者(ネイシャ)」「仁而不佞=仁にして佞ならず」〔論語・公冶長〕
  2. (ネイス){動詞}口先うまくとり入る。おもねる。「佞給(ネイキュウ)」。
  3. 「不佞(フネイ)」とは、自分のことをへりくだっていうことば。

字通

[形声]声符はネイ 外字(二+女)(ねい)。〔説文〕十二下に字を女部に属し、「巧みに讇(へつら)ふ高材なり。女と信の省に從ふ」とするが、金文の人名にネイ 外字の字があり、ネイ 外字声の字とみてよい。その字は女の肩のところに符号的に重点を加えた形で、おそらく佞の初文であろう。もと神につかえる才のある女をいう字と思われる。神につかえる才の及ばぬことを不佞といい、春秋期には〔左伝、成十三年〕「寡人(くわじん)不佞」のように、王侯自ら謙称として用いた。のちよく人につかえるものの意となり、諂佞・姦佞の意となる。〔論語、先進〕に「是の故に夫(か)の佞者を惡(にく)む」の語がある。

甯(ネイ・12画)

初出は後漢の『説文解字』で、カールグレン上古音は不明だが、藤堂音では寧と同音neŋ(去)で、”やすい・むしろ”の意で音通する。「寧」も参照

学研漢和大字典

形声文字で、「用+(音符)寧(ネイ)の略体」。副詞としては”むしろ”。二つのもののうち、一方を選ぶ、また、片方になることを願うの意をあらわすことば。いっそのこと。▽訓の「むしろ」は、「もし(若し)+ろ(接尾語)」からできたことば

語義

  1. {副詞}むしろ。二つのもののうち、一方を選ぶ、また、片方になることを願うの意をあらわすことば。いっそのこと。▽訓の「むしろ」は、「もし(若し)+ろ(接尾語)」からできたことば。《同義語》⇒寧。「悠可如此=悠ろ此くのごとくなるべし」。
  2. 「悠渠(ネイキョ)」とは、疑問・反問をあらわす副詞。なぜ。どうして。▽訓読では、「なんぞ」「あに」「いづくんぞ」と読む。
  3. {形容詞}心のやすらかなさま。ねっとり落ち着いたさま。▽平声に読む。《同義語》⇒寧。

字通

「寧」の異体字。

寧(ネイ・14画)

論語 寧 金文
耳卣・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はnieŋ(平)。接続辞として”むしろ”。『大漢和辞典』の第一義は”やすらか”。

学研漢和大字典

会意兼形声文字で、寍は「宀(やね)+心+皿」をあわせて、家の中に食器を置き、心を落ち着けてやすんずるさまを示す。丂印は語気ののび出ようとして屈曲したさまで、やはりこちらに落ち着こうという語気をあらわす。寧は「亜印+〔音符〕寍(ネイ)」。▽清(シン)朝では宣宗(センソウ)のいみな(旻寧)をさけて甯と書く。

語義

  1. {形容詞}やすらか(やすらかなり)。やすい(やすし)。じっと落ち着いている。がさつかない。じっくりしてていねいな。《同義語》⇒悠(ネイ)。《対語》⇒危。「安寧」「丁寧」「百姓寧=百姓寧し」〔孟子・滕下〕
  2. {動詞}やすんずる(やすんず)。落ち着けて静かにさせる。安心させる。また、転じて、両親を見舞って安心させること。「寧国=国を寧んず」「帰寧(キネイ)(とついだ娘が里の親を見舞うこと。里帰り)」。
  3. {接続詞}むしろ。→語法「①」。
    む{副詞}なんぞ。いずくんぞ(いづくんぞ)。→語法「③」▽「み~む」は去声に読む。{形容詞}やすらか(やすらかなり)。やすい(やすし)。じっと落ち着いている。がさつかない。じっくりしてていねいな。《同義語》⇒悠(ネイ)。《対語》⇒危。「安寧」「丁寧」「百姓寧=百姓寧し」〔孟子・滕下〕
  4. {動詞}やすんずる(やすんず)。落ち着けて静かにさせる。安心させる。また、転じて、両親を見舞って安心させること。「寧国=国を寧んず」「帰寧(キネイ)(とついだ娘が里の親を見舞うこと。里帰り)」。
  5. {接続詞}むしろ。→語法「①」。
  6. {副詞}なんぞ。いずくんぞ(いづくんぞ)。→語法「③」▽「5.~6.」は去声に読む。

語法

①「むしろ」とよみ、チ「どちらかといえば~のほうがましだ」と訳す。好ましくない両者のうち一方を選択する意を示す。▽「むしろ」という訓は「もし+接尾語ろ」に由来し、もしどちらかといえば、の意。▽「寧~無…=むしろ~するとも…するなかれ」「寧~不…=むしろ~するとも…せず」と多く用いる。「寧」の下のものがましなものとして選択される。「寧為鶏口無為牛後=寧ろ鶏口と為るも牛後と為る無(な)かれ」〈鶏のくちばしとなっても、牛の肛門にはなるな〉〔史記・蘇秦〕ヂ「~よりは…のほうがよい」と訳す。選択の意を示す。▽「与其~寧…=その~(ならん)よりは、むしろ…(なれ)」と多く用いる。「礼与其奢也寧倹=礼はその奢(おご)らんよりは寧ろ倹なれ」〈礼ははでやかにするよりも、ひかえめのほうがよい〉〔論語・八佾〕
②「無寧」は、「むしろ」とよみ、「いっそ~のほうがよい」「~が願わしいではないか」と訳す。願望の意を示す。▽「無寧~乎=むしろ~せんや」と多く用いる。「且予与其死於臣之手也、無寧死於二三子之手乎=かつ予(わ)れその臣の手に死なん与(よ)りは、無寧(むしろ)二三子の手に死なん」〈それにわしは、家来などの手で死ぬよりは、むしろお前たちの手で死にたいものだね〉〔論語・子罕〕
③「いずくんぞ」「なんぞ」とよみ、「どうして~であろうか」「まさか~ではあるまい」と訳す。反語の意を示す。▽今の北京語の犠(ナア)に当たる。「王侯将相、寧有種乎=王侯将相、寧(いづ)くんぞ種有らん」〈王侯でも将軍・宰相でも、決まった家柄などあるものか(なろうとすれば誰だってなれる)〉〔史記・陳渉〕

字通

会意文字で、宀(べん)+心+皿(べい)+丂(こう)。宀は廟。皿上に犠牲の心臓を載せ、之れを高く揚げている形。〔説文〕五上に「願ふ詞なり。丂に從ひ、寍(ねい)聲」とするが、もと寍と同字であろう。〔説文〕はまた別に寍・甯(ねい)を出だし、甯三下にも「願ふ所なり」とあって、祈願の意とする。寍七下に「安らかなり」と訓するが、みな安寧を願い祈る字で、もと同字と考えられる。「むしろ」「なんぞ」は乃などと音が通じ、仮りて用いる用法である。

念(ネン・8画)

初出は甲骨文。カールグレン上古音はniəm(去)。

学研漢和大字典

会意兼形声。今は「△(ふさぐ)+━」から成り、中に入れて含むことをあらわす会意文字。念は「心+(音符)今」で、心中深く含んで考えること。また、吟(ギン)(口を動かさず含み声でうなる)とも近く、経をよむように、口を大きく開かず、うなるように含み声でよむこと。類義語に思。

語義

  1. (ネンズ){動詞}おもう(おもふ)。心中深くかみしめる。いつまでも心中に含んで考える。「思念」「牽念(ケンネン)(気にかけて心配する)」「伯夷叔斉不念旧悪=伯夷叔斉は旧悪を念はず」〔論語・公冶長〕
  2. {名詞}心中におもいつめた気持ちや考え。「心念」「三載一意其念不衰=三載一意其の念衰へず」〔陳鴻・長恨歌伝〕
  3. (ネンズ){動詞}よむ。口を大きく動かさずに低い声を出してよむ。《同義語》⇒唸(ネン)。「念経(読経)」「念仏」。
  4. {数詞}二十。▽ニジフniNJ^pがつづまって、最後のpがmとなった。《類義語》廿。「念九日(二十九日)」。
  5. 《日本語での特別な意味》注意。「入念(ていねいに注意を注ぐ)」。

字通

[形声]声符は今(きん)。今に侌(いん)・岑(しん)・■(上下に今+隹+皿)(あん)、また念に稔(ねん)・唸(てん)・汵(しん)の声があり、今声の範囲はかなり広い。今は蓋栓(がいせん)の形。㱃(いん)(飲)は酒樽の蓋(ふた)のある形に従う。その今と心との会意という構造は考えがたいから、今の転声とするほかない。〔説文〕十下に「常に思ふなり」とし、今声とする。金文に「巠(経)念」「敬念」などの語がある。廿(しゆう)の音に借用して「元祐辛未(しんび)、陽月念(しふ)五日」のように用いるのは宋以後のことであるらしく、〔集韻〕に字を亼(しゆう)声とするが、金文の字形は明らかに今に従っており、廿・亼の声は字の原音ではない。〔釈名、釈言語〕に「念は黏(ねん)なり。意(こころ)に相ひ親愛し、心黏著して忘るる能はざるなり」という。今は蓋栓の形で、中に深くとざす意をもつ字である。

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