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論語語釈「カ」(2)

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語釈 urlリンクミス

回(カイ・6画)

亘 回 甲骨文 回 金文
「亘」甲骨文/回父丁爵・西周早期

初出:初出は甲骨文。ただし「セン」kəŋ(去)と未分化。現行字体の初出は西周早期の金文。

字形:渦巻きの象形で、原義は”まわる”。

回 異体字
慶大蔵論語疏では異体字「囬」と記す。上掲「唐〓郡城父縣尉盧復墓誌銘」刻。『干禄字書』(唐)所収。

音:カールグレン上古音はgʰwər(平)。

用例:「回」の用例は春秋末期以前では一例しか知られない。

上掲西周早期「󺶉亘父丁爵」(集成8906)に「󺶉亘父丁。」とあり、「亘」は「回」字形をしているが、語義は分からない。

論語ではほぼ、孔子の弟子・顔回子淵のこと。

備考:「漢語多功能字庫」には、論語の読解に関して見るべき情報が無い。

学研漢和大字典

象形。回転するさま。または、小さい囲いの外に大きい囲いをめぐらしたさまを描いたもの。囲(まわりをかこむ)・塊(カイ)(まるいかたまり)と同系。類義語に反・環・番。異字同訓に周り「池の周り。周りの人」。「廻」の代用字としても使う。「回・回送・回転・回廊」また、「恢」の代用字としても使う。「回復」また、「徊」の代用字としても使う。「低回」また、「蛔」の代用字としても使う。「回虫」▽「めぐる」は「巡る」とも書く。

語義

  1. {動詞}まわる(まはる)。まわす(まはす)。ぐるりとまわる。ぐるりとまわす。《同義語》⇒廻。「回転」。
  2. {動詞}めぐる。めぐらす。まわりをかこむ。《同義語》⇒廻。
  3. {動詞}めぐらす。頭を後ろへ向ける。「回首=首を回らす」。
  4. {動詞}かえる(かへる)。かえす(かへす)。もとにもどる。もとにもどす。「回帰」「古来征戦幾人回=古来征戦幾人か回る」〔王翰・涼州詞〕
  5. {動詞・形容詞}たがう(たがふ)。逆もどりする。曲線をえがいて曲がる。わきへそれたさま。「経徳不回=経徳は回はず」〔孟子・尽下〕
  6. {単位詞}たび。回数を示すことば。「人間能得幾回聞=人間能く幾回か聞くことを得ん」〔杜甫・贈花卿〕
  7. {名詞}厶教に関係のあることをあらわすことば。▽唐末から宋(ソウ)代にかけて、厶教が回鶻(カイコツ)(ウイグルの音訳語)人を経て中国に伝わったので、回というようになった。「回教」。

字通

[象形]水の回流する形。〔説文〕六下に「轉ずるなり」とするが、淵字条十一上に「回水なり」とあり、孔門の顔回、字は子淵。いわゆる名字対待。水のめぐる意より、すべて旋回することをいう。

會/会(カイ・6画)

会 甲骨文 会 金文
合1030正/𧽙亥鼎・春秋中期

初出:初出は甲骨文

字形は「亼」”ふた”+「四」+「𠙵」で、「四」「𠙵」の由来は不明ながら、全体として蓋を容器にあわせるさま。原義は”合う”。

音:カールグレン上古音はgʰwɑd(去)。

用例:「甲骨文合集」36518に「其令東會于□」とあり、”会合させる”と解せる。

西周の金文では人名・地名の例が複数見られる。

春秋末期「沇兒鎛」(集成203)に「龢𨗥百生」とあり、「龢𨗥」は「和會」と釈文されており、”あわせる”と解せる。

漢語多功能字庫」によると、甲骨文では原義に、金文では”帳簿”(訓匜・西周末期/集成10285)、戦国の金文では”会合”(𠫑羌鐘・戦国早期)の意に用いた。

学研漢和大字典

会意。「△印(あわせる)+鑠(ふえる)の略体」で、多くの人が寄りあつまって話をすること。繪(=絵。色糸を寄せあわせた模様)・膾(カイ)(肉を寄せあわせたごちそう)と同系。また、和(寄せあわす)・話(ワ)(あつまって会話する)・括(カツ)(寄せまとめる)とも縁が近い。類義語の遇(グウ)は、二つのものがふと出あうこと。逢(ホウ)は、両方から進んで来て一点で出あうこと。合は、ぴったりとあわさること。値は、まともにそこにあたること。遭は、ひょっこりと出あうこと。対は、双方がちょうど合致するようにむき合う意。向は、ある方向に進行すること。迎は、来る人を出むかえて双方がかみ合う意。異字同訓にあう⇒合。

語義

カイ(呉音エ)
  1. {名詞}あつまり。また、出会い。「宴会」「鴻門之会(コウモンノカイ)」。
  2. (カイス)(クワイス){動詞}あつまる。あつめる(あつむ)。ひと所にまとまる。また、多くのものを寄せあつめる。《類義語》合・集。「会合」「以文会友=文を以て友を会す」〔論語・顔淵〕
  3. {動詞}あう(あふ)。あつまって対面する。「会見」「会晤(カイゴ)(あって話しあう)」。
  4. {動詞}あう(あふ)。その物事に出くわす。《類義語》遇(グウ)。「会其怒不敢献=その怒に会ひ敢(あ)へて献ぜず」〔史記・項羽〕
  5. {名詞}巡りあわせ。また、物事の要点。「機会」。
  6. {副詞}たまたま。→語法「②」。
  7. {副詞}かならず。→語法「①」。
  8. (カイス)(クワイス){動詞}思いあたる。そうかと悟る。気持ちにかなう。「領会(なるほどとわかる)」「会心=心に会す」。
  9. {名詞}人々のあつまる所。「都会」「省会(ショウカイ)(中国の省の中心である都市)」。
カイ(呉音ケ)
  1. 「会計」とは、収支の結果をあつめて計算すること。

語法

①「かならず」とよみ、

  1. 「かならず~」と訳す。可能性が高いこと、あるいは予想通りの結果になることへの願望を示す。「会向瑶台月下逢=会(かなら)ず瑶台(やうだい)月下に向かひて逢はん」〈必ず(伝説の)瑶台(ヨウダイ)山の、月の下で会えるだろう〉〔李白・清平調詞一〕
  2. 「会須=かならずすべからく~すべし」「会当=かならずまさに~すべし」「会応=かならずまさに~すべし」と、助動詞とともに用いて、「どうしても~すべきである」「どうしても~する必要がある」と訳す。「丈夫会応有知己=丈夫会(かなら)ず応(まさ)に知己(ちこ)有るべし」〈男子たる者、必ず親友を持つべきである〉〔張謂・贈喬琳〕

②「たまたま」とよみ、「おりしも」「ちょうどそのとき」と訳す。ある場面に出くわした意を示す。「居頃之、会燕太子丹質秦、亡帰燕=居ること頃(しばら)らくしてこれ、会(たまたま)燕の太子丹秦に質たり、亡(のが)れて燕に帰る」〈(荊軻が)しばらく燕に滞在するうちに、ちょうど秦に人質として行っていた燕の太子の丹が逃げ帰ってきた〉〔史記・刺客〕

字通

[象形]会の旧字は會に作り、蓋のある食器の形。器の下部は甑(こしき)。その上に蓋のある器をおき、下から蒸す。〔説文〕五下に「合ふなり」と訓し、「亼(しふ)に從ひ、曾の省に從ふ」といい、「曾は益なり」と説くが、曾は甑(こしき)、その甑に蓋することを會という。金文に「會鼎」のような語があり、また〔儀礼、公食大夫礼〕に「坐して簋(き)の會(ふた)を啓く」とあり、蓋のある鼎、簋の類をいう。蒸しもの用で器蓋を合するので、あう意となる。

改(カイ・7画)

改 金文 改 甲骨文
改蓋・西周中期/甲骨文

初出:初出は甲骨文

字形:甲骨文の字形は「巳」”へび”+「ホク」”叩く”。蛇を叩くさま。

慶大蔵論語疏は異体字「攺」と記す。文字史からはこちらの方が原形に近い。

音:カールグレン上古音はkəɡ(上)。同音に「該」など「亥」を部品に含む漢字群。

用例:甲骨文から”改める”の意だと解釈されており、なぜそのような語釈になったのか明らかでない。「漢語多功能字庫」もその理由について説くところがない。

春秋時代の金文に「萬年毋改,子子孫孫永…」の言い廻しが複数あり、論語の時代に”あらためる”の意があったことが分かる。

学研漢和大字典

会意兼形声。己(キ)は、起の原字で、はっとしておきたつさまを描いた象形文字。改は「攴(動詞の記号)+(音符)己」で、はっと緊張させておこすこと。たるんだものに活を入れておこす意となる。革(力をこめて堅く張る皮)・亟(キョク)(力をこめて張りきる)と同系。また、更(しんに力を入れて強くすること)ときわめて近い。類義語に代。

語義

  1. {動詞}あらためる(あらたむ)。たるんだものに力を入れて、たて直す。新しくする。新たにやり直す。▽訓の「あらたむ」は、「あらた(新)+む」から。《類義語》革・更。「改革」「更改」。
  2. {動詞}あらためる(あらたむ)。悪いやり方をかえてやり直す。「改悔」「過則勿憚改=過てば則ち改むるに憚ること勿かれ」〔論語・学而〕
  3. {動詞}あらたまる。今までの姿がかわる。「改容(姿が一変する)」「今年花落顔色改=今年花落ちて顔色改まる」〔劉廷芝・代悲白頭翁〕
  4. {動詞}あらためて。新しくやり直して、「改葬(あらためて埋葬し直す)」「改刺連州=改めて連州に刺たり」〔韓愈・柳子厚墓誌銘〕

字通

[形声]声符は己(き)。〔説文〕三下に「更(か)ふるなり」と変改の意とし、「攴(ぼく)己に從ふ」と会意に解するが、己の意を解かず、〔繫伝〕に己声とする。攴は「殴(う)つ」意で、攺・𢻬・故・微などみな殴つ対象を示し、攺は巳(蛇)、𢻬は亡(屍骨)、故は古(密封した呪詛)、微は長髪の巫女を殴つ形で、みなその呪儀をいう。己は紀の初形で糸を巻き取る器。呪器とはしがたいものであるから、改はおそらく攺の異文で、のちその形声字と考えられたものであろう。攺は蛇形のものをうつ呪儀で、これによって自己に加えられた呪詛を変改することができるとされた。

戒(カイ・7画)

戒 金文
戒作方廾官鬲・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はkæɡ(去)。

学研漢和大字典

会意。「戈(ほこ)+りょうて」で、武器を手に持ち、用心して備えることを示す。張りつめて用心する意を含む。革(カク)(張りつめたかわ)・核(張り詰めたしん)と同系。「誨」の代用字としても使う。「教戒」また、「誡」の代用字としても使う。「戒・戒告・訓戒」。似た字(戎・戒)の覚え方。「じゅう(十)ジュウ(戎)」。

語義

  1. {動詞・形容詞}いましめる(いましむ)。用心する。緊張して備える。気を張って用心させる。《対語》⇒惰。《類義語》警。「警戒」「戒之在色=これを戒むること色に在り」〔論語・季氏〕
  2. {動詞}いましめる(いましむ)。あやまちをしないよう、今後に気をつけさせる。さとす。《同義語》誡。「訓戒」。
  3. {動詞}いましめる(いましむ)。自分に対してすることを禁ずる。「戒詩=詩を戒む」「戒酒=酒を戒む」。
  4. {名詞}いましめ。いつも、気をつけて避けるべき事がら。また、だれないようにする用心。「斎戒」「君子有三戒=君子に三戒有り」〔論語・季氏〕
  5. {名詞}《仏教》仏道にはいった者が、生活を引き締めるおきて。「五戒(殺・盗・淫(イン)・妄(ボウ)・酒の五つの戒め)」「破戒=戒を破る」。
  6. {名詞}境めのこと。▽界に当てた用法。「両戒(=両界)」。

字通

[会意]戈+廾(きよう)。〔説文〕三上に「警なり。廾戈に從ふ。戈を持ちて、以て不虞を戒む」(段注本)とあり、廾は両手。両手で高く戈(ほこ)をあげている形。斤(まさかり)をあげる形は兵。兵備を戒めて警戒する意。

怪(カイ・8画)

怪 秦系戦国文字 圣 甲骨文
睡.日甲82背/「圣」甲骨文

初出:初出は秦系戦国文字。出典は戦国最末期の「睡虎地秦簡」。

字形:〔忄〕”こころ”+「圣」。「圣」(音読みはコツまたはセイ)は「又」”手”+「土」”位牌”で、精霊を祭るさま。全体で得体の知れない精霊を怪しむこと。「恠」は異体字で、俗字と『字通』『大漢和辞典』は言う。

音:カールグレン上古音はkwæɡ(去)。同音は存在しない。「ケ」は呉音。部品「圣」のカールグレン上古音は不明。

用例:戦国最末期「睡虎地秦簡」法律問答69に「擅殺子,黥為城旦舂。其子新生而有怪物其身及不全而殺之,勿罪。」とあり、”常ならざる”と解せる。

論語時代の置換候補:部品の「圣」。『大漢和辞典』で音カイ訓あやしい・あやしむは他に存在しない。近音に「鬼」ki̯wər(上)があり、甲骨文から存在するが、音素の共通率は2/5でしかなく、音通とは言いがたい。論語語釈「鬼」を参照。同訓に「奇」ɡʰia/kɡʰ(共に平)があるが、音が遠すぎる。

下掲『学研漢和大字典』が語源の類語とする「塊」のカールグレン上古音はkʰwər(去)。

学研漢和大字典

会意兼形声。圣(カイ)は「又(て)+土」からなり、手でまるめた土のかたまりのこと。塊(カイ)と同じ。怪は「心+(音符)圣」で、まるい頭をして突出した異様な感じを与える物のこと。鬼(キ)(まるい頭をした奇怪なもの)・瘣(カイ)(まるく突き出たこぶ)などと同系。

類義語の異(イ)は、常の反対で通常とは別のもの。奇(キ)は、正の反対で、かたよって正常でないこと。妖(ヨウ)は、細くかすかで正体の知れないものの意。

語義

  1. (カイナリ)(クワイナリ){形容詞}あやしい(あやし)。見なれない姿をしている。不思議である。どうもふに落ちない。「奇怪」「子、不語怪力乱神=子、怪力乱神を語らず」〔論語・述而〕
  2. (カイトス)(クワイトス){動詞}あやしむ。どうもおかしいと思う。とがめだてをする。「群臣怪之=群臣これを怪しむ」〔史記・荊軻〕
  3. {名詞}不思議なこと。また、あやしげなもの。化け物。「妖怪(ヨウカイ)」「斉諧者志怪者也=斉諧とは怪を志す者なり」〔荘子・逍遥遊〕
  4. {副詞}《俗語》なんだかすごく。「怪好(クワイハオ)(ばかによい)」。

字通

[形声]声符は圣(かい)。卜文に土主の形である土の左右に手を加える字があり、地霊である土主を祀る儀礼を示す字とみられる。〔説文〕十下に「異(あや)しむなり」とあり、怪とはもと地の怪異、地妖をいう。恠に作るものは俗字。圣を在の形に誤ったものである。

怪の従う圣は、卜文に「圣田」としてみえる圣と異なる。圣田の圣(こつ)は開墾の礼をいう字である。

圣(かい)は土+又(ゆう)。土は土主。開墾のとき、その地霊を祀ることが行われたらしく、卜辞に「圣田」を卜する例が多い。その字は土主の左右に手を加える形に作る。〔説文〕十三下に「汝潁(じよえい)の閒(河南中央部)、力を地に致すを謂ひて圣と曰ふ」とみえ、その音を窟(くつ)とする。卜辞以後の用例をみない字である。いま中国では、聖の簡体字として用いる。

畫/画(カイ/カク・8画)

画 甲骨文 画 金文
甲骨文/小臣宅簋・西周早期

初出:初出は甲骨文

字形:甲骨文の字形には、「又」”手”を欠くもの、「个」”たけ”を「丨」”ひご”に描くものなどがある。字形は「聿」”ふで”+「又」+”墨壺”で、筆に墨を含ませて筆画を記すこと。原義は”記す・描く”。

音:「ガ」は慣用音、「エ」は呉音。「カイ」の音で”描く”、「カク」の音で”区切る”を意味する。カールグレン上古音はghwĕɡ(去)またはghwĕk(入)。

用例:春秋末期までに、”かぎる”・”くぎる”と明確に解しうる用例は無い。しかし上掲西周早期「小臣宅簋」の字形は、田地を筆で区切っている様と解せ、所有地に線引きして”区切る”の意を表した可能性は大きい。

漢語多功能字庫」によると、甲骨文では人名・地名に用い、金文では”絵画”(小臣宅𣪕・西周早期)、”彫刻”(王臣𣪕・西周中期)に用い、戦国の竹簡で”描く”、”区切る”の意に用いた。

学研漢和大字典

会意文字で、「聿(ふでを手に持つさま)+田のまわりを線で区切ってかこんださま」で、ある面積を区切って筆で区画を記すことをあらわす。常用漢字字体は聿(ふで)の部分を略した形。劃(カク)(区切る)・刲(ケイ)(区切る)・規(区切りをつけるコンパス)などと同系のことば。類義語の絵は、彩りや模様をあわせてつくったえ。描(えがく)は、細い筆で細かくえがくこと。「劃」の代用字としても使う。「画・画然・画期的・区画・企画」。

語義

カイ(去)
  1. {名詞}線や色で区切りをつけてえがいたえ。デッサン。《類義語》絵。「絵画」「図画」「詩中有画=詩中に画有り」〔東坡志林〕
  2. {動詞}えがく(ゑがく)。えをかく。「画地為蛇=地に画きて蛇を為らん」〔戦国策・斉〕
カク(入)
  1. (カクス)(クワクス){動詞}かぎる。区切りをつける。また、区切りとして境界線を入れる。《同義語》劃(カク)。「画界=界を画す」「画地而不犯=地を画して犯さず」〔漢書・鄒陽〕
  2. (カクス)(クワクス){動詞}ここまでと限定して、その外に出ない。「今、女画=今、女は画す」〔論語・雍也〕
  3. {名詞}くぎり。「区画」。
  4. (カクス)(クワクス){動詞}はかる。図面を引いて考える。計画する。「画策」。
  5. {名詞}はかりごと。「計画」「故願大王審画而已=故に願はくは大王画を審らかにせよのみ」〔漢書・鄒陽〕
  6. {名詞・単位詞}書道で、漢字の横線を引くこと。また、転じて漢字を構成する点・線をかぞえるときのことば。「筆画」。
  7. {名詞}易の卦(カ)の単位となる横線。▽卦は、すべて陰または陽をあらわす六本の横線から成る。《類義語》爻(コウ)。
  8. 《日本語での特別な意味》「映画」「映像」の略。「洋画」「邦画」「録画」。

字通

[会意]旧字は畫に作り、聿(いつ)+田。聿は筆、田は周の初形。周は彫・雕の字の従うところで、彫盾の形。周は方形の楯面を四分して彫飾を施す意。その彫飾を施すことを畫という。〔説文〕三下に「界なり。田の四界に象(かたど)る。聿は之れを畫する所以なり」とするが、劃は文様の分界を劃することをいう。

海/海(カイ・9画)

海 金文
小臣言簋・西周早期

初出:初出は西周早期の金文

字形:新字体は「海」。中国・台湾・香港では新字体がコード上の正字として扱われている。字形は「氵」+「每」”暗い”。原義は深く暗い海。

音:カールグレン上古音はxməɡ(上)。

用例:「漢語多功能字庫」によると、金文では原義に用いた(白懋父簋=小臣言簋・春秋早期)。

学研漢和大字典

形声。「水+(音符)每」で、暗い色のうみのこと。北方の中国人の知っていたのは、玄海・渤(ボツ)海などの暗い色の海だった。▽音符の每(=毎)は毎(muəg)のmが鼻からいきだけが出る音に変わり、さらにhになって海・晦・悔などの音符となったもの。黒・灰・晦(くらい)・悔(=悔。くらい気持ちになる)などと同系。旧字「海」は人名漢字として使える。▽付表では、「海原」を「うなばら」「海女」を「あま」と読む。

語義

  1. {名詞}うみ。うす黒く水をたたえたうみ。わた。わたつみ。「乗桴浮于海=桴に乗りて海に浮かばん」〔論語・公冶長〕
  2. {名詞}大きな湖。「北海(バイカル湖)」。
  3. {名詞}同種のものが非常に多く集まっているところ。「樹海」。
  4. {形容詞}広く大きい。「海碗(カイワン)」「海口」。
  5. 《日本語での特別な意味》うみ。すずりの水をためるくぼんだところ。

字通

[形声]声符は每(毎)(まい)。每に晦・悔(悔)(かい)の声がある。〔説文〕十一上に「天池なり。以て百川を納るる者なり」とあり、天池とは大海をいう。

皆(カイ・9画)

皆 甲骨文 皆 金文
甲骨文/皆作尊壺・西周中期

初出:初出は甲骨文

字形は「虎」+「𠙵」”口”で、虎の数が一頭の字形と二頭の字形がある。後者の字形が現行字体に繋がる。原義は不明。金文からは虎が人に置き換わる。「ジュウ」”人々”+「𠙵」”口”で、やはり原義は不明。

音:「ケ」は呉音。カールグレン上古音はkær(平)。同音は存在しない。

用例:「甲骨文合集」29694.3に「其(皆)用臣貝。 吉」とあるのは、”みな”と解せるかも知れない。31182に「豚眔羊(皆)用。」とあるのも、”みな”と解せるかも知れない。

戦国末期の「中山王□鼎」(集成2840)に「𢘓󱴪皆從。」とあり、「□みな従うをはかる」と読め、”みな”と解せる。

「先秦甲金文簡牘詞彙資料庫」では、春秋末期以前の用例が西周金文の二例しか無く、いずれも人名と見られる。

漢語多功能字庫」によると、人名や”みな”の意に用いられたとするが、用例の出典が戦国時代からしかない。

学研漢和大字典

会意。比は、人が肩を並べたさま。白は、自(鼻の原字)で、鼻のこと。白ではない。替(かわる)や晋(すすむ)の下部も白印(→自)で、自印は、人間の動作をあらわす。皆は「比(ならぶ)+自(そうする)」で、みんな並んでそろうことを示す。偕(カイ)(何人かがいっしょにそろう)・諧(カイ)(ことばの音調がそろう)などと同系。類義語の咸(カン)は、みんなあわせての意。都(すべて)は、いっしょに集まっての意。

語義

  1. {副詞}みな。ともに。→語法「①②」「悉皆(シツカイ)(ことごとくみな)」。
  2. 《日本語での特別な意味》みな。みんな。おおぜいの人に呼びかけることば。また、おおぜいの人をさしていうことば。「皆はどう思うか」「皆さん」。

語法

①「みな」とよみ、「みんな」「みんなそろえて」と訳す。複数の人・物・事をうける場合に用いる。《類義語》咸(ミナ)・都(スベテ)。「至於犬馬、皆能有養=犬馬に至るまで、皆よく養ふこと有り」〈犬や馬でさえみな十分に養うということはある〉〔論語・為政〕

②「ともに」とよみ、「両方とも」と訳す。二つの人・物・事をうける場合に用いる。《同義語》偕(トモニ)。「此二人者、皆聖人也=この二人は、皆(とも)に聖人なり」〈この二人はともに聖人であった〉〔韓非子・説難〕

字通

[会意]比+曰(えつ)。いま字を皆に作り、〔説文〕四上に「偕(とも)にする詞なり」とし、白は自(鼻)の一体で、「詞言の气、鼻より出づ。口と相ひ助くるなり」とするが、鼻は詞気とは関係がない。金文の字形は从(從)と曰とに従う。比・从はともに人の連なり並ぶ形。曰は祝禱・盟誓を収める器。多数の霊が降下することを皆という。その祝禱を神が受け容れることを「諧(かな)う」という。祝禱に対して一人の霊が下ることを「旨(いた)(詣)る」といい、詣の初文。

悔/悔(カイ・9画)

悔 晋系文字 悔 金文
侯馬・春秋末期或戦国早期/鳥書箴銘帶鉤・戦国

初出:初出は甲骨文。ただし中国では「妻」と釈文されている。「小学堂」による初出は春秋の晋系文字

字形:新字体は「悔」。中国と台湾ではこちらがコード上の正字として扱われている。字形は「每」(毎)+「心」で、心を暗くするさま。原義は”悔いる”。未来を気にかける「憂」に対して、過去への後悔を言う。詳細は論語語釈「憂」を参照。

音:カールグレン上古音はxmwəɡ(去)。

用例:「甲骨文合集」26901.2に「以眾王弗每(悔)」とあり、「衆をもちいて王くいなからんか」と読め、”悔いる”と解せる。

備考:同音同訓に詯があるが、甲骨文・金文ともに存在しない。部品の毎には”悔いる”の語義が無い。同音に誨”おしえる”・晦”みそか”・痗”病む・悩む”。痗に悔との音通を『大漢和辞典』が指摘するが、『説文解字』にも記載がない。上声のカ音は不明。

下記『字通』によると、甲骨文に「每」を「悔」として用いた例があるという。

学研漢和大字典

形声文字。每(マイ)(=毎)の音muəiは、海(=海)・悔(悔)・晦(カイ)においては子音がmからhに変わり、カイ(クヮイ)という音をあらわす。悔は「心+(音符)每」で、心が暗い気持ちになること。海(=海。暗い色をしたうみ)・晦(月のない暗いみそか)・灰(黒い燃えかす)などと同系のことば。旧字「悔」は人名漢字として使える。

語義

  1. {動詞}くいる(くゆ)。くやむ。失敗したあと、暗い気持ちになる。がっかりして残念がる。「改悔」「太甲悔過=太甲過ちを悔ゆ」〔孟子・万上〕
  2. {名詞}くい。残念な気持ち。「後悔」「死而無悔者=死して悔い無き者」〔論語・述而〕
  3. 《日本語での特別な意味》くやみ。人の死をとむらうことば。

字通

[形声]声符は每(毎)(まい)。每に海・晦(かい)の声がある。每は多く髪飾りをつけた女の姿。その甚だしいものを毒という。每・毒に甚だしいもの、上を蔽われたものの意があるのであろう。卜文に每を悔の意に用いる。〔説文〕十下に「恨なり」とみえる。古い用法では、神意に合わないことをいい、〔詩、大雅、雲漢〕「明神を敬恭す 宜しく悔怒すること無(なか)るべし」、〔詩、大雅、抑〕「庶(ねが)はくは大悔无(なか)らん」のように神怒、神の降すとがをいう。

害(カイ/カツ・10画)

害 金文 轄 楚系戦国文字
史墻盤・西周中期/「轄」楚系戦国文字

初出:初出は甲骨文。「小学堂」による初出は西周中期の金文

字形:食器とその蓋の象形と中国の漢学教授が言うがデタラメ。「車カツ」=”車の輪が外れるのを防ぐくさび”で、「轄」ɡʰat(入、去は不明)の初出は楚系戦国文字で、それまでは「害」と書かれた。車轄には刃物を取り付けて敵軍を傷付けたことから、”そこなう”の意になった。派生字「割」kɑt(入)は、車轄を割り入れることから起こった字と思われる。

音:「ガイ」「ガチ」は呉音。カールグレン上古音はgʰɑd(去)。同音は存在しない。近音に「盍」”覆う”gʰɑp(去)、「蓋」gʰɑp(入)など。

用例:甲骨文の用例は欠字が多くて解読できない。大陸では「害」と釈文していないようだ。

西周早期の用例は人名のように思える。

西周末期の金文に「干害王身」の例が複数あり、「干害」は「捍御」”護衛する”と釈文されている。

西周末期「毛公鼎」(集成2841)に「邦□(將)害(曷)吉」とあり、「邦将になんぞ吉ならんか」と読め、”どうして”と解せる。または「邦将に吉いをそこなわん」と読め、”そこなう”と解せる。

漢語多功能字庫」によると、金文では”大きい”(多父盤・西周)、”乞い願う”(伯家父簋・西周末期)、また人名に用いた。

学研漢和大字典

会意。「宀(かぶせる物)+口または古(あたま)」で、かぶせてじゃまをし進行をとめることを示す。轄(車軸どめ)・割(切って生長をとめる)・遏(アツ)(じゃましてとめる)と同系。また蓋(ガイ)(ふたをかぶせる)とも近い。類義語に何。「碍」の代用字としても使う。「障害・妨害」。

語義

カイ(去)
  1. (ガイス){動詞}そこなう(そこなふ)。生長をとめる。また、じゃまをする。「害時=時を害ふ」「無求生以害仁=生を求めて以て仁を害すること無し」〔論語・衛霊公〕
  2. (ガイス){動詞}生きものの命をとめる。「殺害」「傷害」。
  3. (ガイトス){動詞}じゃまだと思う。ねたむ。「争寵而心害其能=寵を争ひて心に其の能を害とす」〔史記・屈原〕
  4. {名詞}じゃま。さまたげ。わざわい。《対語》⇒利。「凶害」「冷害」「遇害=害に遇ふ」「侵官之害甚於寒=官を侵すの害は寒より甚だし」〔韓非子・二柄〕
  5. 「要害」とは、人をじゃまして通さない狭くて険しい所。
カツ(入)
  1. {副詞}なんぞ。いつか。▽何に当てた用法。「時日害喪=時の日害か喪びん」〔孟子・梁上〕

字通

[会意]把手のある大きな針+口。口(𠙵(さい))は祝詞を収めた器。その器に上部から把手のある大きな針を加え、その祝禱の呪能を害する意。〔説文〕七下に「傷つくるなり」と訓し、字は宀(べん)と口とに従い、「言、家より起るなり」と口禍が家の内より起こる意とするが、祝禱の呪能を害する意。

繪/絵(カイ・12画)

絵 楚系戦国文字
仰25.10・楚系戦国文字

初出:初出は楚系戦国文字

字形「糸」+「會」。糸で作った筆で染料をぬり「かさ」ねることであろうか。

音:カールグレン上古音はgʰwɑd(去)。

用例:論語では”え”として用いる。

論語時代の置換候補:同音に部品の「會」(会)gʰwɑdまたはkwɑd(共に去)があり、初出は甲骨文、”絵”の語釈を『大漢和辞典』が載せる。ただし春秋の金文までには、”え”の語義は確認できない。詳細は論語語釈「会」を参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。會(カイ)(=会)は「△印(あわせる)+增(ふやす)の略体」の会意文字で、寄せあわすこと。繪は「糸+(音符)會」で、色糸をあわせて刺墸(シシュウ)の模様をつくること。転じて、彩色を施したえのこと。類義語に画。「え」は「画」とも書く。

語義

  1. {名詞}色模様。また、彩色を施してえがいたえ。《類義語》画。「絵画」「絵事後素=絵事は素を後にす」〔論語・八佾〕
  2. {動詞}えがく(ゑがく)。色模様や、えをかく。《類義語》描・画。

字通

[形声]旧字は繪に作り、声符は會(会)(かい)。〔説文〕十三上に「五彩を會(あつ)めたる繍(ぬひとり)なり」とあり、五色の刺繍による絵模様をいう。

開(カイ・12画)

開 秦系戦国文字
鐵續・戦国秦

初出:初出は戦国の竹簡。「小学堂」による初出は秦系戦国文字

字形:「門」+「廾」”両手”で、両手で門をあけるさま。原義は”開ける”。

音:カールグレン上古音はkʰər(平)。同音に「愷」”たのしむ・やわらぐ”、「凱」”かちどき”、「塏」”高くて乾いた地”、「鎧」、「闓」”ひらく”。

用例:戦国末期「元年春平𥎦矛」(集成11556)に「元年。相邦春平𥎦。邦右庫工帀趙瘁。冶韓開執齊。」とあり、鍛治師の名前と思われる。

漢語多功能字庫」によると、戦国の金文では人名に用いた。

論語では孔子の弟子・漆雕開の名として現れる。

論語時代の置換候補:同音同訓「闓」の初出は後漢の『説文解字』。日本語音で同音同訓の「䦱」の初出は『説文解字』同訓近音の「啓」初出は甲骨文。カールグレン上古音はkʰiər(上)。音通する置換字候補となる。

学研漢和大字典

会意。門のかんぬきを両手ではずして、門をあけるさま、または「門+幵(平等に並んだ姿)」で、とびらを左右平等にひらくことを示す。闓(ガイ)(ひらく)・凱(ガイ)(明るくひらけた)などと同系。啓(ケイ)とも縁が近い。類義語に啓。異字同訓にあく・あける⇒明。

語義

  1. {動詞}ひらく。ひらける(ひらく)。門・出入り口など、閉じたものを広げあける。また、閉じているものがあく。《対語》⇒閉(ヘイ)・闔(コウ)。《類義語》羯(ガイ)・啓(ケイ)。「開口=口を開く」「開花」「切開」「天門開闔=天の門開闔す」〔老子・一〇〕
  2. {動詞}ひらく。埋もれたものを掘りおこす。すておかれたものをおこしてひらく。「開発」「開墾」「開辺=辺を開く」。
  3. {動詞}物事をはじめる。はじまる。「開端=端を開く」「開始」「開春」。
  4. {動詞}しばったものをときはなす。「開放」「開釈無辜=無辜を開釈す」〔書経・多方〕
  5. {動詞}離れる。また、離れて間があく。「離開」。
  6. {動詞・形容詞}ひらける(ひらく)。あけすけになる。あけすけであるさま。開放的で明るい。「開朗」「開明」。
  7. {動詞}あけすけに外に出す。ひろげる。「展開」「開列」「開筵=筵を開く」。
  8. {動詞}ひらく。数学で、乗根を出して示す。「開平(平方根を出す)」。
  9. {動詞}じゃまなものをおしのけてとる。「開除」。
  10. {動詞}《俗語》動かす。動きはじめる。「開動(カイトン)」「開車(カイチョ)(発車)」。
  11. {動詞}《俗語》湯がわく。湯をわかす。「開水(カイシュイ)(わいた湯)」。
  12. {単位詞}印刷用紙の全紙の大きさを基準にし、それの何分の一にあたるかによって、紙の大きさをあらわすことば。きり。「四開(全紙の四分の一の大きさ)」。
  13. 《日本語での特別な意味》
    ①ひらき。会や宴会を閉じること。▽「閉」を忌んでいう。「お開きにする」。
    ②ひらき。あいた隔たり。間隔や差。「十メートルの開き」。
    ③ひらき。魚の身を切りさいて干したもの。

字通

[会意]閂(さん)+廾(きよう)。門の両扉を披(ひら)く形。また、かんの木を外す形。〔説文〕十二上に「張るなり」とあり、開張する意。

階(カイ・12画)

階 甲骨文 階 金文
合36938/階侯微逆簠・戦国早期

初出:初出は甲骨文

字形:初出の字形は「阝」”はしご”+「羊」+「几」”三方”。天や祖先に通じるはしごの前に、生け贄を載せた三方を据えて捧げるさま。戦国早期まではこの字形で、前漢からつくりが「皆」”大勢で申し上げる”になった。

音:カールグレン上古音はkær(平)。

用例:甲骨文の字形は破損がひどくて文として判読できない。

戦国早期「階侯微逆簠」(集成4521)に「階𥎦󱣩逆乍𠤳。」とあり、国名と解せる。

戦国の竹簡「上海博物館蔵戦国楚竹簡」昭王03に「才(在)於此室之□(階)下」とあり、□の字形は「階侯微逆簠」に近く、”きざはし”と解せる。

学研漢和大字典

会意兼形声。「阜(土盛り)+(音符)皆(きちんとそろう)」。諧(カイ)(音がそろう)・偕(カイ)(そろっていく)と同系。

語義

  1. {名詞}きざはし。高さを等分して、きちんとそろえた段。「階段」「没階趨進=階を没せば趨り進む」〔論語・郷党〕
  2. {名詞}はし。はしご。高さを等分したはしご。「階梯(カイテイ)」。
  3. {名詞}物事が目的・結果に向かって、一段一段と進む段どり。物事の順序・等級。「乱階」「階次」「段階」「乱之所生也、則言語以為階=乱の生ずる所には、則ち言語以て階を為す」〔易経・壓(繋)辞上〕
  4. (カイス){動詞}はしごをかける。「猶天之不可階而升也=なほ天の階して升るべからざるがごときなり」〔論語・子張〕
  5. {動詞}のぼる。一段一段とのぼる。順序をおって進む。順序をおって進める。「而階太平之治=しかうして太平の治に階る」〔韓愈・釈言〕
  6. {名詞}しな。積み重ねたものの、上下にわけたもの一つ一つ。《類義語》層。「階級」「階層」。
  7. {名詞}頼りになるもの。「漢亡尺土之階=漢に尺土の階亡し」〔漢書・異姓諸侯王表〕
  8. {動詞}ととのう。調子がそろう。▽諧(カイ)に当てた用法。
  9. 《日本語での特別な意味》たてものの階数をいうことば。

字通

[形声]声符は皆(かい)。〔説文〕十四下に「陛(へい)なり」、陛字条に「高きに升(のぼ)る階なり」とあり、また陔字条に「階の次なり」とあって、みな次を以て高きにのぼることをいう。皆に整列する意があり、段階を以て上るべきものをいう。𨸏(ふ)は神梯の象。もと祭壇の階をいう語であった。字はまた堦に作る。

蓋(カイ/コウ・13画)

蓋 金文
秦公簋・春秋中期

初出:「漢語多功能字庫」による初出は春秋早期の金文。「小学堂」は同じ字を初出は春秋中期の金文とする。

字形:「艹」+「盍」”ふた・覆う”で、原義は”草葺き屋根”。

音:「ガイ」は慣用音。「カイ」カールグレン上古音kɑb(去)の音で”覆う”を、「コウ」ɡʰɑp(入)の音で”草葺き屋根”、”どうして…ないのか”の意を示す。

用例:西周早期「禽𣪕」(集成4041)の□(上下に林+去)は「蓋」と釈文されている。”ふた”を意味するようである。

西周早期「岡刼卣」(集成5383)に「用乍王征□(上下に林+去)」とあり、地名を意味するようである。

「蓋」の字形では、上掲春秋中期の「秦公簋」が初出。”ふた”を意味する。以上で春秋末期までの用例は終わる。

漢語多功能字庫」によると、初出の金文は”器のふた”の意(秦公簋・春秋中期)で用いた。

「盍」との通用や誤記の可能性については、論語語釈「盍」も参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。盍(コウ)は「去+皿(さら)」の会意文字で、皿にふたをかぶせたさま、かぶせること。蓋は「艸+(音符)盍」で、むしろや草ぶきの屋根をかぶせること。甲(かぶせる)・闔(コウ)(ふさぐ)・享(コウ)(口をふさいでぶつぶついう)などと同系。掩(エン)(かぶせておおう)・灼(エン)(かぶせておおう)などとも縁が近い。類義語に弇。「おおう」は普通「被う」「覆う」と書く。

語義

カイ(去声)
  1. {動詞}おおう(おほふ)。かぶせて上からふたをする。また、かぶせて隠す。《類義語》覆・掩(エン)。「覆蓋(フクガイ)」「遮蓋(シャガイ)(見えないようにさえぎっておおう)」。
    ま{名詞}ふた。かさ。上からかぶせてさえぎるおおい・ふた。また、草ぶきの屋根。「天蓋(テンガイ)」「車蓋(シャガイ)」。
  2. {単位詞}傘(カサ)などを数えることば。
  3. {動詞}《俗語》家をたてる。▽屋根をかぶせるの意から。
  4. {動詞}《俗語》はんこを押す。「蓋印(ガイイン)」。
  5. {副詞}けだし。→語法「①②③」。
コウ(入声)
  1. {名詞}草ぶきの屋根。とま。
  2. {疑問詞}なんぞ…(せ)ざる。→語法「④」

語法

①「けだし」とよみ、「たぶん」「思うに」と訳す。全体を見わたして推量する意を示す。文頭、述語の前にくる。「蓋将自其変者而観之、則天地曾不能以一瞬=蓋(けだ)し将(はた)その変ずる自(よ)りしてこれを観れば、則(すなは)ち天地も曾(かつ)てもって一瞬なる能はず」〈思うに、変化するということから見れば、天地も一瞬でも同じであったことは決してない〉〔蘇軾・赤壁賦〕
②「けだし」とよみ、「そもそも」「いったい」と訳す。文頭におかれ、議論をおこしたり、結論を述べる。「蓋均無貧、和無寡、安無傾=蓋(けだ)し均しければ貧しきこと無(な)く、和(やは)らげば寡(すく)なきこと無く、安ければ傾くこと無し」〈つまり公平であれば貧しいということもなくなり、仲良く和合すれば少ないということもなくなり、安定すれば危険もなくなるものだ〉〔論語・季氏〕
③「~蓋…」は、「~はけだし…」とよみ、「~は要するに…」「~はつまり…である」と訳す。後節の文頭におかれ、前節の理由・原因を説明する。「将軍画善蓋有神=将軍画の善きこと蓋(けだ)し神有り」〈将軍の絵のすばらしさは、神霊がのりうつったかのようである〉〔杜甫・丹青引贈曹将軍覇〕
④「なんぞ~ざる」とよみ、「どうして~しないのか」と訳す。再読文字。▽「何不(カフ)」ɦa・puの二字を「蓋(カフ)」ɦapの一字で代用した用法。盍(コウ)に当てた用法。「何不~」と意味・用法ともに同じ。《同義語》盍。

字通

[形声]声符は盍(こう)。盍は器物に蓋をする形。その声義を承ける。〔説文〕一下に「苫(とま)なり」とあり、ちがやの類。屋根を蓋うのに用いる。

誨(カイ・14画)

毎 甲骨文 誨 金文
「每」甲骨文/史墻盤・西周中期

初出:初出は甲骨文とされるが、一例のみで、「每」(毎)の字形であり、「每」に”おしえる”の語義は甲骨文で確認できない。

弜(勿)省田,其每。→田を省みるなからば、それ「每」か。「甲骨文合集」29155
※「省田」は甲骨文に40例ほどあり、”耕地を見回る”か”狩り場を見回る”か決めがたい。

字体:現行字体の初出は西周中期の金文。字形は「言」+「每」で、「每」は髪飾りを付けた女の姿。ただし漢字の部品としては”暗い”を意味し、「某」と同義だった。

音:カールグレン上古音はxmwəɡ(去)。

用例:西周早期「䲨叔鼎」(集成2615)に「誨乍寶鬲鼎。」とあるのは、人名と解せる。

西周中期「曶鼎」(集成2838)に「曶廼每(誨)于□(氏氏)□」は「曶(人名)すなわち□(氏氏)に誨えて□」と読め、”おしえる”と解せる。

春秋末期の金文に「誨猷不飤」との用例が複数あるが、『字通』によると「カイユウあやまたず」と読み、「誨猷」を”はかりごと”、「飤」を”虫食い”の意とする。

漢語多功能字庫」によると、金文では”たくらむ”を意味し(史墻盤・西周中期)、”教える”の語義は確認できない。

学研漢和大字典

形声。音符の每は、子音がyからhにかわり、カイ(クワイ)という音をあらわす。悔(暗い気持ち)・晦(カイ)(月が欠けて暗い)など、「くらい」という基本義を持つ。誨は「言+音符每」で、相手の暗さをことばでとり除いて、さとそうと努力すること。

語義

  1. {動詞}おしえる(をしふ)。物事をよく知らない者をおしえさとす。「誨人不倦=人を誨へて倦まず」〔論語・述而〕

字通

[形声]声符は每(毎)(まい)。每に悔・晦(かい)の声がある。〔説文〕三上に「曉(さと)し敎ふるなり」とあり、金文の「肇誨(てうくわい)」は〔詩〕の「肇敬」、また「誨猷(くわいいう)」は「謀猷」の意で、ともに神事に関する語。もと祭事を教える意であろう。

懷/懐(カイ・16画)

懐 金文 懐 懷 金文
「褱」沈子它簋蓋・西周早期/史墻盤・西周中期

初出:初出は西周早期金文。ただし字形は「褱」。現行字体の初出は秦系戦国文字。

字形:「褱」の字形は「トウ」+「衣」で、「眔」はのちに”視線で跡を追う”と解されたが、原義は「目」+「水」で”涙を流す”こと。「褱」は全体で”泣いて衣を濡らす”ことであり、そのような感情のさま。秦系戦国文字で”心”を示す「忄」がついたのは感情を示すダメ押し。原義は”泣くほどの思い”。

音:カールグレン上古音はɡʰwær(平)で、同音は同訓の「褱」と異訓の「壊」(去)。論語語釈「壊」を参照。

用例:春秋早期「晉姜鼎」(集成2826)に「懷遠埶君子」とあり、”遠近の君子を懐ける/招き寄せる”と解せるが、春秋末期までの金文でこの言い廻しは他にも多数例がある。

漢語多功能字庫」によると、金文では”思い”(沈子它簋・西周早期)、”ふところ”(班簋・西周中期)、”与える”(史牆盤・西周中期)、「鬼」”亡霊”(伯[冬戈]簋・西周中期)、”招き寄せる”(毛公鼎・西周末期)の意に用いた。

学研漢和大字典

会意兼形声。褱(カイ)は「目からたれる涙+衣」の会意文字で、涙を衣で囲んで隠すさま。ふところに入れて囲む意を含む。懷は「心+(音符)褱」で、胸中やふところに入れて囲む、中に囲んでたいせつに暖める気持ちをあらわす。回(取り囲む)・囲(かこむ)と同系。類義語の抱は、まるく包みこむこと。擁は、両腕でだきかかえること。

語義

  1. {動詞}いだく。ふところにする(ふところにす)。胸にかかえこむ。また、心の中におもいをいだく。「懐抱」「懐其宝而迷其邦=其の宝を懐きて其の邦を迷はす」〔論語・陽貨〕。「常懐千歳憂=常に懐く千歳の憂ひ」〔古詩十九首〕
  2. {名詞}ふところ。物をだきこむ胸の前。また、ふところの中。「懐中」。
  3. {動詞}おもう(おもふ)。胸の中に大事にたたみこむ。心の中でたいせつにおもい慕う。「懐徳=徳を懐ふ」「懐佳人兮不能忘=佳人を懐ひて忘るる能はず」〔漢武帝・秋風辞〕
  4. {名詞}おもい(おもひ)。心の中で、あたためた考え。胸のうち。「本懐」「騁懐=懐を騁す」「感君区区懐=君が区区たる懐ひに感ず」〔古楽府・焦仲卿妻〕
  5. {動詞}なつく。なつける(なつく)。ふところにだきこんでかわいがる。いたわって慕わせる。「少者懐之=少者はこれを懐く」〔論語・公冶長〕
  6. {名詞}兄弟のこと。▽同じ母のふところにだかれたことから。「懐弟」「懐兄」。
  7. 《日本語での特別な意味》なつかしい(なつかし)。なつかしみ。慕わしい。胸にいだいて慕わしく思う感じ。

字通

[形声]旧字は懷に作り、褱(かい)声。褱は死者の衣襟の間に眔(なみだ)(涙の象形)をそそぐ形。その死を哀惜し、懐念することをいう。金文に「率褱」「神褱」のように褱を用いる。褱を〔説文〕八上に「侠なり。一に曰く槖(ふくろ)なり」とするが、侠は夾、物を懐にする意。字は懷の初文。懷はその形声字である。〔説文〕十下に「念思なり」とするが、追懐を字の本義とする。

𢸬・壞/壊(カイ・16画)

褱 金文
「褱」褱鼎・春秋中期偏晚

現行字形の初出は戦国末期の秦の金文。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はkwær(去)またはɡʰwær(去)。同音は懐/褱ɡʰwær(平)。『大漢和辞典』で音カイ訓やぶれるは他に存在しない。現代北京語での簡体字「坏」huàiの初出は西周早期の金文だが、『大漢和辞典』に”やぶる・こわれる・やぶれる”の語義はなく、”低い丘・あなどる”などの語義を載せる。𢸬は異体字と『大漢和辞典』にも言う。

ただし下掲『漢語多功能字庫』によると、周代末期から戦国時代にかけて、「懐」と「壊」は「褱」の字形で相互に通用したらしく、定州竹簡論語と同じく前漢の馬王堆漢墓帛書には、「懐」の意味で「壊」を用いている。「褱」ɡʰwær(平)の初出は西周中期の金文。結論として、論語の時代も「壊」は存在したが、「褱」と書かれて「懐」との区別が無かった。論語語釈「懐」を参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。「土+(音符)褱(カイ)(ふところ、うつろに穴があく)」。潰・隤(カイ)(穴があいてくずれる)と同系。また、毀(キ)とも縁が近い。類義語に破。旧字「壞」は人名漢字として使える。▽「潰」の代用字としても使う。「壊滅・壊乱・全壊・決壊・崩壊・倒壊」。

語義

  1. {動詞}やぶれる(やぶる)。穴があいてくずれる。中がうつろになってこわれる。《同義語》⇒潰。「決壊」「天雨牆壊=天に雨ふりて牆壊る」〔韓非子・説難〕
  2. {動詞}やぶれる(やぶる)。こわれる(こはる)。組織・制度がくずれる。「礼、必壊=礼、必ず壊れん」〔論語・陽貨〕
  3. {動詞}こぼつ。こわす。《類義語》毀(キ)。「壊宮室以為曇池=宮室を壊ちて以て曇池と為す」〔孟子・滕下〕

字通

[形声]旧字は壞に作り、褱(かい)声。〔説文〕十三下に「敗るるなり」とし、籀文(ちゆうぶん)・古文二形をあげる。籀文は褱に攴(ぼく)を加える形。古文は土(社主)に眔(なみだ)(涙の象形)を注ぐ形。褱は死者の衣襟(衣)に眔(涙)を加える形で、死者に訣別するときの儀礼を示す字であろう。ゆえに敗壊の意となる。

膾(カイ・17画)

膾 篆書 会 金文
説文解字・後漢/「會」𧽙亥鼎・春秋中期

初出:初出は後漢の説文解字。ただし春秋中期の金文で「會」(会)を「膾」と釈文する例がある。

字形:「月」”にく”+音符「會」。

音:カールグレン上古音はkwɑd(去)。同音に「會」とそれを部品とする漢字群。「襘」”帯の結び目”「檜」「旝」”旗、弩”「澮」”小川”「廥」”まぐさ藏”「鬠」”髪を束ねる”。

用例:春秋中期「𧽙亥鼎」(集成2588)に「自乍(作)會(膾)鼎」とあり、「會」は「膾」と釈文され、”なます”と解せる。

文献上の初出は論語郷党篇8。『孟子』『荘子』にも用例がある。

備考:中国人は生ものを食べないと巷間言われてきたが、歴史的に見ると宋代までは肉や魚の刺身をよく食べており、元代に何かが変わったことを思わせる。

学研漢和大字典

会意兼形声。會は「△(あわせるしるし)+鑠の略体」の会意文字で、あわせてふやす意を含む。膾は「肉+(音符)會(カイ)」。會(=会)と同系のことばで、赤や白の肉を細く切り、それを彩りよくとりあわせた刺身(サシミ)。

語義

  1. {名詞}なます。生の肉を細く切り、彩りよくとりあわせたもの。「膾不厭細=膾は細きを厭はず」〔論語・郷党〕
  2. 《日本語での特別な意味》なます。大根・人参などを細く切って酢であえた食べ物。

字通

[形声]声符は會(会)(かい)。〔説文〕四下に「細かく切りたる肉なり」とあり、魚肉のときには鱠(なます)という。〔論語、郷党〕に「膾は細きを厭(いと)はず」とみえる。

各(カク・6画)

各 甲骨文 各 金文
甲骨文/虢季子白盤・西周末期

初出:初出は甲骨文

字形:「スイ」”あし”+「𠙵」”くち”で、人がやってくるさま。原義は”来る”。

音:カールグレン上古音はklɑk(入)。

用例:殷代末期または西周早期の「宰椃角」(集成9105)に「庚申王才󱥦。王各。宰椃从。易貝五朋。」とあり、”いたる”と解せる。

西周早期「寧𣪕蓋」(集成4021)に「其用各百神用妥多福。」とあり、”いたす”とも”おのおの”とも解せる。

漢語多功能字庫」によると、甲骨文では原義に、金文でも原義(曶壺・西周中期)に用いた。”おのおの”の意は戦国の竹簡まで時代が下る。

以下は余談だが、「各」の上古音をklɑkとするのはカールグレンに限られ、藤堂博士を始め他説ではおおむねkakだとする。藤堂説では中世までkakだったとし、近世にko、現代になってkə(əはシュワーと読み、アとエの中間音)になったとする。

さらに全くの蛇足だが、ロシア語の基本単語にкакカークがあり、英語のhowに当たる疑問辞だが、加えて日本語の「かく語りき」の「かく」=”このように”と、よく似た語義を持つ。белыйベールィ как снегスニェーク.”雪のように白い”など。言語にはこういう偶然の一致があるものだ。

学研漢和大字典

会意。「夂(人の足)+口印」で、歩いていく人の足が四角い石や障害につかえた姿を示す。もと、こつんとかたくつかえ止めること。また、個(かたい個体)の意味に近く、一つずつこちんこちんとつかえる→それぞれに、の意となった。格(つかえる枝→しん棒)・恪(カク)(かたい心)・咯(カク)(のどがつかえる)・客(主人の宿に足を止めてつかえ止まった客人)などと同系。類義語の毎は、つぎつぎとあらわれる、そのたびごとにの意。「各(おのおの)」は、「各々」とも書く。

語義

  1. {指示詞・副詞}おのおの。めいめい。《類義語》毎。「各自」「盍各言爾志=なんぞ各爾の志を言はざる」〔論語・公冶長〕
  2. {副詞}おのおの。それぞれに。《対語》共。「各別」「醒時同交歓、酔後各分散=醒むる時は同じく交歓し、酔ひし後は各分散す」〔李白・月下独酎〕
  3. {動詞・形容詞}つかえて止まる。また、そのさま。《同義語》格。「支各(=支格)」。

字通

[会意]夂(ち)+口。夂は下降する足の形。口(𠙵(さい))は祝詞を収める器の形で祝告。神に祈り、それに応えて神霊の降下して格(いた)る形。金文に「𢓜(いた)る」「■(辶+各)(いた)る」、文献に「格(いた)る」の字を用いるが、各がその初文。また金文に「昭各(せうかく)」「昭假(せうかく)」といい、文献に「昭格(せうかく)」「昭假(せうか)」という。〔説文〕二上に「異詞なり」とし、夂とは止むるも相聴かざる意で、各自の義とするが、一人降格するを各、衆神並び降るを皆という。それより各自の意となる。

角(カク・7画)

角 甲骨文 角 金文
甲骨文/鄂侯鼎・西周晚期

初出:初出は甲骨文

字形:つのの象形。原義は”つの”。

音:カールグレン上古音はkŭk(入)。入声で屋-来の音は不明。

用例:「漢語多功能字庫」によると、甲骨文では地名に、金文では”慎み深い”(史牆盤・西周中期)の意に用いた。戦国の竹簡では原義に用いた。

学研漢和大字典

象形。角は∧型のつのを描いたもので、外側がかたく中空であるつの。▽古代音はkluk・glukで、そのgが落ちてロクの音となったとみる説もある。殻(カク)(かたいから)・鉤(カク)(かたい)・確(カク)(かたい)などと同系。

語義

  1. {名詞}つの。外がかたくて中がうつろな∧型をした動物のつの。また、つのの形をしたもの。「犀角(サイカク)(さいのつの。漢方薬に用いる)」「触角」。
  2. {名詞}すみ。かど。二線が一点で出あって、∧型となったもの。∧型をしたはしのほう。また、物のとがったところ。「三角形」「稜角(リョウカク)」。
  3. {名詞}∧型につき出たものの先端部。「頭角」「隆準日角(ほお骨または鼻が高く、ひたいのはえぎわがとがっている、貴人の人相)」〔後漢書・光武帝〕
  4. {名詞}子どもの髪を左右にわけ、つののような形に両側で巻いたゆい方。あげまき。「総角」「男角女羈=男は角にし女は羈す」〔礼記・内則〕
  5. {名詞}ます。中国の量で四升はいるます。もと、つのの形をして、中がうつろであった。
  6. {名詞}さかずき。もと、つの製、またはつのの形をしていた。
  7. {名詞}つのぶえ。また、軍隊で号令を伝えるラッパ。「角笛(カクテキ)」。
  8. {名詞}五音の一つ。古代中国の音楽で、階名をあらわす。七音のミにあたる。▽五音は、宮・商・角・徴(チ)・羽。「十二律」は、音名。
  9. {名詞}二十八宿の一つ。規準星は、今の乙女座に含まれる。すぼし。
  10. (カクス){動詞}くらべる(くらぶ)。つのをつきあわす。せりあう。力くらべをする。「角逐」「角力=力を角ぶ」「口角(口げんか)」「角無用之虚文=無用の虚文を角ぶ」〔漢書・谷永〕
  11. 「掎角(キカク)」とは、戦争で、軍隊の一部を妙な所につののようにつき出して、敵を牽制(ケンセイ)すること。「掎角之陣(キカクノジン)」。
  12. {名詞}《俗語》芝居の役がら。また、役者。「名角(有名な役者)」「旦角(タンチァオ)(女の主役、おやま)」。
  13. {単位詞}《俗語》中国の貨幣の単位。一角は、一元の十分の一で、十分に当たる。「角子(小ぜに)」。
  14. {単位詞}《俗語》公文書を数えるときのことば。「一角(文書一件)」。
  15. 《日本語での特別な意味》
    ①かど。道路の曲がりめの所。曲がりかど。「道角(ミチカド)」。
    ②かど。他人とうまくおりあわない性質。「角(カド)がある」。
    ③「角(カド)が立つ」とは、物事が円満にいかず、とげとげしくなること。
    ④かく。方形。しかく。「角ばる」。
    ⑤かく。将棋のこまの一種。「飛車と角」。
    ⑥相撲のこと。「角界」。

字通

[象形]獣角の形。〔説文〕四下に「獸角なり。象形」とし、字形について「角と刀魚と相ひ似たり」とする。漢碑の〔曹全碑〕〔景北海碑〕などの鰥(かん)の字形を、角に従う形に作る。殷周の酒器に角とよばれる酒器があり、古く角を酒器に用いたなごりである。

學/学(カク・8画)

学 甲骨文 学 學 金文
甲骨文/大盂鼎・西周早期

初出:初出は甲骨文

字形:甲骨文の下部は「介」に見えるが、「介」の甲骨文は全く字形が異なる。上部の×印「」”数字の五”を”千木”と『字通』は解するが、中国の建築に千木があったという話を聞かない。上部は「コウ」”算木”を「キョク」”両手”で操る姿で、「爻」だけで「学」を意味するとされる甲骨文もある。「爻」が「㐅」になっている甲骨文、また上下に「㐅」一つと「介」形だけで構成された甲骨文もある。

學 学 異体字
慶大蔵論語疏は異体字「〔臼丨冖子〕」と記す。「偽周魏州莘縣尉王君夫人成氏墓誌」(唐?)刻。

音:「ガク」は呉音(遣隋使より前に日本に伝わった音)。カールグレン上古音は声母のɡʰ(入)のみ、藤堂上古音はɦǒk。原義は”神聖な建物”。

用例:原義は”学ぶ”。座学と実技を問わない。

「先秦甲金文簡牘詞彙資料庫」は、甲骨文の多くを「學戊」という鬼神名に分類するが、「戊」は「茂」の原字で、例えば「貞、㞢于學戊」(『甲骨文合集』10408)は「貞う、學に茂る有らんか」(教習は進歩するか)と読みうる。

西周早期の「靜𣪕」に、「丁卯王令靜𤔲射學宫。小子𥄳服。𥄳小臣。𥄳夷僕學射。」とあり、”ひのとうの日、王は家臣であるわたし静に命じて学び舎で弓術を享受させた。王子たちが参加し、わたしの弓術を見学した。さらに部下の射手の弓術も見学し、弓術を学んだ」と解せ、座学だけでなく実技教習の場でもあったことを見て取れる。

学研漢和大字典

メ印は交差するさまを示す。先生が知恵を授け、でしがそれを受け取って習うところに、伝授の交流が行われる。宀印は屋根のある家を示す。學は、「⺽(両方の手)+宀(やね)+子+音符コウ」の会意兼形声文字で、もと伝授の行われる場所。つまり、学校のこと。效(効、ならう)-コウ(まねる)と同系のことば。交流の交ときわめて近い。

語義

  1. {動詞}まなぶ。先生から知恵を授かり、それを見習って自分のものとする。《対語》⇒教。《類義語》効(ならう)。「学而時習之=学びて時にこれを習ふ」〔論語・学而〕
  2. {名詞}学問。「受学=学を受く」「志学=学に志す」「勧学=学を勧む」。
  3. {名詞}まなびや。物事を伝授され、それを見習う場所。学校。▽「孟子」滕文公篇上に「夏曰校、殷曰序、周曰庠、学則三代共之=夏には校と曰ひ、殷には序と曰ひ、周には庠と曰ひ、学は則ち三代これを共にす」とある。
  4. {名詞}学問をする人。「篤学」「碩学(セキガク)」。
  5. 《日本語での特別な意味》「学校」「大学」の略。「学則」「学長」。

字通

旧字は學。こうきょくべき+子。字の初形は外字 コウ 学。屋上に千木のある形。それに子を加えるのはメンズハウスの意。臼は後に加えたものであるが、卜文にすでにみえる。〔説文〕三下に斅を正字として「覺悟するなり」と訓するが、教える意。斅は金文の〔也𣪘さい〕にみえ、學の動詞形とみられる。〔玉篇〕に斅を「敎ふるなり」、學を「敎へを受くるなり、覺るなり」とあり、学ぶ意とし、両字を区別する。〔書、説命えつめい下〕に「をしふることは、學ぶことの半ばなり」とあり、教と学と相長ずることをいう。

客(カク・9画)

客 金文 客 金文
師遽簋蓋・西周中期/曾伯陭壺・春秋早期

初出:初出は西周中期の金文

字形:「宀」”屋根”+「夊」”あし”+「𠙵」”くち”で、外地よりやって来て宿るさま。原義は”外来の人”。

音:「キャク」は呉音。カールグレン上古音はkʰlăk(入)。

用例:「漢語多功能字庫」によると、金文では原義で用いている(曾伯陭壺・春秋早期など)が、掲載例はみな「賓客」と記し、身分ある「賓」と身分無き「客」とは別物である。論語語釈「賓」を参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。各とは、足が四角い石につかえてとまった姿を示す会意文字。客は「宀(やね、いえ)+(音符)各」で、他人の家にしばし足がつかえてとまること。また、その人。格(つかえる木)・閣(門のとびらをとめるくい)・擱(カク)(つかえてとまる)などと同系。

語義

  1. {名詞}まろうど(まらうど)。訪問者。よそから来て、一時足をとめた人。きゃく。《対語》⇒主。「賓客」「主人下馬客在船=主人馬を下り客船に在り」〔白居易・琵琶行〕
  2. {名詞}よそから来た者。旅人。「客舎(宿屋)」「鶏鳴而出客=鶏鳴きて客を出だす」〔史記・孟嘗君〕
  3. {名詞}いそうろう。「食客」「客之居下坐者有能為鶏鳴=客の下坐に居る者能く鶏鳴を為す有り」〔史記・孟嘗君〕
  4. {名詞}見知らぬ人を呼ぶことば。《類義語》君。「客何為者=客は何為る者ぞ」〔史記・項羽〕
  5. (キャクタリ)・(カクタリ){動詞}他人の家に食客としてやっかいになる。また、他郷に旅してとどまる。「客籍(よそ者)」「独将衰鬢客秦関=独り衰鬢を将て秦関に客たり」〔盧綸・長安春望〕
  6. {形容詞・名詞}自分がその事がらに当面していない。よそごと。「客歳(すでに過ぎ去った年、去年)」「客観(自分の意識の外)」。
  7. 「客家(カッカ)・(ハッカ)」とは、漢民族の一集団の名。広東(カントン)省・江西省・福建省・広西壮(チワン)族自治区などの地方に点在する。その人口は約二千万人以上といわれる。もと北方にいた漢民族のうち、集団で南へ移住したもので、周辺の部族からよそ者(客家)として扱われていた。そのことばは、客家語と呼ばれ、中国の五大方言の一つとされる。「客人」とも。▽ハッカは客家語の音。
  8. 《日本語での特別な意味》「過ぎ去った」意味をあらわすことば。「客月」。

字通

[会意]宀(べん)+各。宀は廟屋。各は祝禱の器(𠙵(さい))に対して、神霊が上より降下(夂(ち))する形。廟中に神霊を迎えることを客という。〔説文〕七下に「寄なり」と客寄・旅寓の意とするが、もとは客神をいう字であった。〔詩、周頌、振鷺〕「我が客戻(いた)る」、〔詩、周頌、有客〕「客有り、客有り 亦た其の馬を白(あを)くす」とは、周廟の祭祀に、客神として殷の祖霊を迎える意。「まろうど」は、わが国においても異族神を意味した。

格(カク・10画)

各 甲骨文 格 金文
甲骨文/倗生簋・西周中期

初出:初出は甲骨文。ただし字形は「各」。現行字体の初出は西周中期の金文

字形:甲骨文の字形は「夂」”あし”+「𠙵」”あな”で、落とし穴にはまるさま。金文以降は「木」+「各」”落とし穴にはまる”で、人が木で作ったかせにはまること。原義は”矯正する”。

音:カールグレン上古音はklăk(入、韻目「陌」)。同じく入声で韻目「鐸」のカ音は不明。

用例:春秋末期までの用例は、全て西周中期の金文で、地名・国名に用いた。戦国以降に人名の例が見られる。

漢語多功能字庫」によると、金文で国名や姓氏名に用い(格伯簋・西周)、戦国の竹簡で”おきて”、漢代以降に”客”を意味した。

学研漢和大字典

会意兼形声文字で、各は、夂(あし)と四角い石を組みあわせて、足がかたい石につかえて止まったさまを示す。格は「木+〔音符〕各」で、つかえて止めるかたい棒、ひっかかる木。

客(一軒の家につかえて止まった人)・閣(とびらにつかえて止めるとびらどめの石)・擱(カク)(つかえて止まる)・挌(つきあたる、ひっかかる)などと同系のことば。

語義

  1. {名詞}こつんとつかえるかたいしんや、しん棒。人間が、しんにもつ本質。「人格」「骨格」。
    ま{名詞}こつんとつかえるかたいかどや、わく。物事を制限するきまり。法則。「格式」「及格(=合格)」「言有物、而行有格也=言に物有りて、行に格有るなり」〔礼記・緇衣〕
  2. {名詞}かたい材料でつくった、物を止めておく道具。また、四角くくぎったますがた。「書格(本だな)」「格子」。
  3. {動詞・形容詞}こつんとつかえる。つかえてとめる。また、そのさま。「扞格(カンカク)(つかえる)」「支格(つかえる)」「格格不入=格格として入らず」。
  4. {動詞}こつんと打ち当てる。かたい物にぶつかる。《同義語》⇒挌。「格闘」「格殺」。
  5. {動詞}いたる。いたす。かたい本質につき当たる。物事のしんにつき当たるまでつきつめる。きわめる。とどく。「致知在格物=知を致すは格物に在り」〔大学〕
  6. {動詞}ただす。かたいかどめをつける。わくにはめてただす。あやまちをただしくする。「惟大人為能格君心之非=惟だ大人のみ能く君心の非を格すを為す」〔孟子・離上〕
  7. {名詞}体言(名詞)が他の語に対する関係をあらわす文法学の用語。ケース。「主格」。
  8. 《日本語での特別な意味》平安時代の、制度に関する勅令や、きまり。「格式(キャクシキ)」。

字通

[形声]声符は各(かく)。〔説文〕六上に「木長ずる皃なり」とあり、枝が伸びてからむことをいう。各に「いたる」意があり、神の降格する意。神意によってただす、それより格式・規格の意となる。

郭(カク・11画)

享 甲骨文 郭 金文
京津1046 ・甲骨文/臣諫簋・西周中期

初出:初出は甲骨文。ただし字形は「享」。「小学堂」による初出は戦国末期の金文

字形:たかどのの象形。

音:カールグレン上古音はkwɑk(入)。なお「享」はxi̯aŋ(上)。

用例:甲骨文では、地名・人名と思われる例が見られる。

春秋中期「新收殷周青銅器銘文暨器影彙編」NA1129に「薛郭公子商微戈」とあり、人名と思われる。

戦国の竹簡では、”城郭”の意に用いた。

学研漢和大字典

会意。享は、真ん中に□印の城があり、その南北に城門のあい対するさまを描いた象形文字。郭は「邑(まち)+享」で、外壁で囲んだ町をあらわす。槨(カク)(外わく)・哥(カク)(わく)・獲(カク)(外からまいてつかむ)などと同系。「廓」の代用字としても使う。「郭・郭大・外郭・輪郭」。

語義

  1. {名詞}くるわ。外側をへいや城壁でとりまいた町。また、町の外がこいのへい。▽中国では町全体を城壁でとりまき、城門の外に発達した町を、さらに外城でとりかこむ。東の城門の外の町を東郭、西の城門の外の町を西郭という。《同義語》⇒廓。「城郭」「三里之城、七里之郭」〔孟子・公下〕
  2. {名詞}物の外がこい。外わく。「輪郭(まるい外わく)」。
  3. {名詞}周代の国名。つ今の陝西(センセイ)省宝鶏県にあった。西郭。づ今の河南省塙陽(ケイヨウ)県にあった。東郭。《同義語》⇒畋。
  4. {動詞}外わくを広げる。▽拡(カク)に当てた用法。「郭大(=拡大)」。
  5. 「郭落(カクラク)」とは、からからとして中がうつろなさま。《同義語》⇒廓落。
  6. 「郭索(カクサク)」とは、ごそごそと歩く音をあらわす擬声語。
  7. 《日本語での特別な意味》くるわ。その一区画をへいでとりまいた遊里。色まち。《同義語》⇒廓。

字通

[形声]字の初文は𩫏に従い、𩫏(かく)声。𩫏は城郭の象形で、その平面形。南北に望楼のある形。郭はその省略形に従い、城郭をいう。

槨(カク・12画)

槨 金文 郭 金文
元年奠𠊈矛・戦国末期/「郭」臣諫簋・西周中期

初出:初出は戦国末期の金文。「小学堂」による初出は後漢の隷書

字形:「享」xi̯aŋ(上)+「木」。「享」は盛り土の上に建てたかどので、集落を囲む城壁のやぐら。論語語釈「享」を参照。「槨」は木で造った城壁。転じて、棺を多う木箱の意に用いた。部品の「郭」は「享」+「盛り土」で、初出は甲骨文。異体字の「椁」の初出は戦国時代の金文

音:カールグレン上古音はkwɑk(入)。同音は「郭」のみ。

用例:戦国末期「元年奠𠊈矛」(集成11552)に「奠(鄭)𠊈(令)□(槨)□、司寇芋慶」とあり、城壁を司るのを家職とする人名か。

戦国最末期「睡虎地秦簡」から、棺を多う木箱の意に用いた。

論語時代の置換候補:”そとひつぎ”の意で、上古音に語義を共有する漢字は無い。『大漢和辞典』に同音同訓は無い。ただし現物が春秋時代の遺跡より発掘されており、ともに木で造った外郭であることから同音の「郭」が置換候補になり得る。

備考:中国貴族の棺桶は二重で、外棺を槨という。槨そのものは陝西省宝鶏市の秦公一号大墓など、春秋時代にも存在が確認されており、また百度百科によると、次のような「椁」の甲骨文・金文・篆書を載せている。ただしご覧の通り見るからに三文字コピーでいい加減であり、信用できるとは言いかねる。
槨 百度

学研漢和大字典

会意兼形声。「木+(音符)郭(まわりをとりまく)の略体」。郭(家なみをとりまく外城)と同系。

語義

  1. {名詞}うわひつぎ(うはひつぎ)。棺を入れる外箱。外棺。「古者棺椁無度=古者は棺椁に度無し」〔孟子・公下〕

字通

[形声]声符は𩫏(かく)。字はまた槨に作り、郭(かく)声。〔説文〕六上に「葬に木𩫏有るなり」という。𩫏は城郭の南北に望楼のある形。〔玉篇〕に槨を椁の重文とする。棺の外椁。

覺/覚(カク・12画)

初出は秦系戦国文字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はk(入)。同音多数。

学研漢和大字典

会意兼形声。𦥯(ガク)は「両手+×印に交差するさま+宀(いえ)」の会意文字で、爻(コウ)と同系のことば。片方が教え、他方が受けとるという交差が行われる家を示す。學(=学)の原字。覺は「見+(音符)𦥯」で、見聞きした刺激が一点に交わってまとまり、はっと知覚されること。交(コウ)(交差する)・較(コウ)・(カク)(交差させてくらべる)などと同系。類義語に悟。異字同訓にさます・さめる 覚ます・覚める「太平の眠りを覚ます。迷いを覚ます。目が覚める。寝覚めが悪い」 冷ます・冷める「湯冷まし。湯が冷める。料理が冷める。熱が冷める」。

語義

カク
  1. {動詞}おぼえる(おぼゆ)。ぼんやりした意識が、はっとかみあう。いろいろな感覚がかみあって、一つにまとまる。意識する。「知覚」「統覚」。
  2. {動詞・名詞}さとる。さとす。さとり。はっと気がついてそれを理解する。わからせる。そうかと思いあたること。▽仏教では仏の道にはっと思いあたること。《類義語》悟(ゴ)。「正覚(ショウガク)(仏道へのさとり)」「使先知覚後知=先知をして後知を覚さしむ」〔孟子・万上〕
  3. (カクス){動詞}人に知られる。気づかれる。「発覚」。
コウ(カクは慣用音)
  1. {動詞・形容詞}さめる(さむ)。はっと気づいて目ざめる。また、その状態。うつつであるさま。▽日本ではカクと読み、「び」と区別しない。《類義語》醒(セイ)。「覚醒」「其覚也形開=其の覚むる也形開く」〔荘子・斉物論〕
  2. 《日本語での特別な意味》
    ①おぼえる(おぼゆ)。記憶する。
    ②おぼえ。記憶。また、評価や信用。「覚えめでたし」。
    ③「不覚(フカク)」とは、不注意や油断からおこる失敗。「不覚をとる」。

字通

[形声]旧字は覺に作り、見の上部が声符。〔説文〕八下に「寤(さ)むるなり」とあり、〔詩、王風、兔爰〕「尚(ねが)はくは寢(い)ねて覺むること無(なか)らん」のように用いる。

貉/狢(カク・13画)

貉 金文 貊 金文
「貉」𩵦貉𥮉・春秋早期/「貊」𡩝鼎・西周早期

初出:初出は西周早期の金文

字形:「むじなへん」頭の大きなけもの+「各」。「各」は音符でなければ、「スイ」”あし”+「𠙵」”くち”で、やってくること。日本名「むじな」のユーラシアでの汎用種「アナグマ」は、畑の作物を荒らす害獣でもあるらしく、呼ばないのにやってくるけものを指すか。

音:カールグレン上古音はmăk(入)。

用例:西周早期~春秋末期までの用例は、ほとんどが人名または地名。

西周早期または中期の「新收殷周青銅器銘文暨器影彙編」NA0698に「用射絼、□虎、貉、白鹿、白狼于辟池,咸□。」とあり、トラ・シカ・オオカミでない狩猟対象となるけものと解せる。

備考:「貉」がアナグマを指すのか、タヌキを指すのか、似たような別のけものを指すのかは、極めて判断しがたい。「貊」măk(入)の異体字とされる。「貊」の初出は西周早期の金文。同義語の「狢」の初出は不明、カールグレン上古音は不明、藤堂上古音はɦak。「豸」も「犭」もけものを指すことに変わりなく、「貉」の異体字として扱ってよい。

ただアナグマもタヌキも共に毛や革を目的に狩猟対象となるが、アナグマの頭が細いのに対し、タヌキは丸く大きい。従って漢字の字形から見れば、「貉」はタヌキ、「狢」がアナグマと判断する根拠はある。現代中国語ではアナグマを「狗獾」(コウファン)という。イヌのたぐいと見られていることになる。

学研漢和大字典

形声。「犬+(音符)各」。

形声。「豸+(音符)各」。「むじな」は「狢」とも書く。

貊(バク)

形声。「豸+(音符)百」。

語義

狢(カク)
  1. {名詞}むじな。たぬきに似た獣の名。《同義語》⇒貉。
カク(入)

{名詞}むじな。たぬきに似た獣の名。《同義語》⇒狢。

バク(入)

{名詞}古代、中国東北地方から朝鮮北部にかけて住んでいたツングース系の民族。《同義語》⇒貊。「貉道(バクドウ)(=貊道。北方異民族のやり方)」。

貊(バク)

{名詞}古代、中国東北地方から朝鮮北部にかけて住んでいたツングース系の民族。《同義語》⇒貉。

字通

(条目無し)

[形声]声符は各(かく)。〔説文〕九下に「北方の豸種(ちしゆ)なり」とするのは蛮貊の意。〔論語、子罕〕の「狐貈」はまた「狐貉」に作り、貉・貈・貊の三字の間に混乱を生じている。貈は■(匚+貈)(かく)の初文で、つつしむ。貉はむじな。貊は蛮貊の字。〔説文〕九下に「貈は狐に似て、善く睡る獸なり」とし、貈をむじな、貉を貊の意とする。

(条目無し)

獲(カク・16画)

獲 甲骨文 隻 金文
甲骨文/「隻」哀成叔鼎・春秋末期

初出:初出は甲骨文。金文は戦国末期のものが初出。

字形:「鳥」+「又」”手”で、鳥を捕るさま。原義は”取る”。古くは「隻」と分化していない。

音:カールグレン上古音はɡʰwăk(入)。

用例:「甲骨文合集」00190正.13に「弗其獲兕」とあり、”捕獲する”と解せる。

西周中期の「󱞅𣪕」(集成4322)に「隻(獲)馘百」とあり、”獲得する”と解せる。

学研漢和大字典

会意兼形声。矍(カク)は、隹(とり)を又(手)でつかまえて、目をきょろきょろさせるさまを示す会意文字。獲の右側は、それを略した字で、作物をつかんで手に入れることを示す。獲はそれを音符とし、犬を加えた字で、動物をつかまえる、手で囲んでつかまえておくこと。郭(外側を囲むわく)・攫(カク)(わしづかみ)・護(外側を囲んでとられないようにする)などと同系。類義語に捕。異字同訓に得。

語義

  1. {動詞}える(う)。外側を囲むようにしてとらえる。転じて、つかまえる。《類義語》攫(カク)。「捕獲」「獲得」。
  2. {名詞}つかまえて手に入れたもの。また、とりこやぶんどったもの。えもの。とり入れ。「収獲」。
  3. {名詞}とらえて奴隷にした女。「臧獲(ソウカク)(しもべ)」。

字通

[形声]声符は蒦(かく)。卜文・金文に隻を獲の意に用いており、隻がその初文。隹(とり)を又(手)に執る形で会意の字である。〔説文〕十上に「獵の獲(う)る所なり。犬に從ひ、蒦聲」とあり、犬は猟犬を意味する。獲の初文である隻は、あるいは鷹を用いたものであろうか。卜辞に「象を隻(え)んか」「羌を隻んか」のように、獣や異族を対象としていうことが多く、また金文には〔小盂鼎〕「聝(くわく)三千八百を隻たり」「百三十七聝を隻たり」、〔楚王アン 外字カン 外字(あんかん)鼎〕「戰ひて兵銅を隻たり」のように軍獲をもいう。

鞹(カク・20画)

革 金文
「革」康鼎・西周末期

初出は後漢の説文解字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はkʰwɑk(入)。同音は廓のみ。部品の革kæk(入)が論語時代の置換候補となる。

学研漢和大字典

会意兼形声。「革(かわ)+(音符)郭(中身をとりさった外わく)」。

語義

  1. {名詞}毛や肉をとり去ったかわ。

字通

[形声]声符は郭(かく)。虢(かく)の形声字。虢は虎皮を治める形。字はまた鞟に作る。〔説文〕三下に「毛を去りし皮なり」とし、「論語に曰く、虎豹の鞹」と〔論語、顔淵〕の文を引く。虢字条参照。

[会意]寽(らつ)+虎。〔説文〕五上に「虎の攫畫(くわくくわく)する所の明文なり」とするが、文義が明らかでなく、〔段注〕に「虢字の本義久しく廢して、用ふるもの有ること罕なり」という。金文の字形によると、虎皮を剥取して治める形。金文の賜与に「朱虢旂」の語がみえ、旗桿に虎皮を捲いて飾ったものであろう。字はまた鞹・鞟に作り、〔論語、顔淵〕に「虎豹の鞹」とあり、車軾の中央に巻く皮を鞹鞃(くわくこう)という。

樂/楽(ガク/ラク・13画)

楽 甲骨文 楽 金文
甲骨文/𤼈鐘・西周中期

初出:初出は甲骨文

字形:甲骨文の字形は、木の枝に鈴を付けた楽器の象形。原義は楽器、音楽。

音:漢音「ガク」(入)で”奏でる”を、「ラク」(入)で”たのしい”・”たのしむ”を意味する。カールグレン上古音はŋlŏɡ(去)または”奏でる”ŋlŏk(入)または”たのしい”glɔk(入)。

用例:甲骨文の用例は、欠損が多くて判然としないが、地名や人名と解せる例が多い。『甲骨文合集』36501.2に「丙午卜在商貞今日步于樂無災」とあり、「丙午卜う、商に在りて貞う、今日樂にきて災い無からんか」と読める。36501.3に「己酉卜在樂貞今日王步于喪無災」とあり、「己酉卜う、樂に在りて貞う、今日王喪に步きて災い無からんか」と読める。

論語と同時代、春秋末期の金文「嘉賓鐘」に、「用樂嘉賓。父󱜂大夫。倗友。」とあり、「用いて嘉き賓、父󱜂大夫、朋友を楽しません/にかなでん。」と読め、”楽しむ”または”奏でる”の語義を確認できる。

漢語多功能字庫」によると、甲骨文で地名に用いられた。金文では春秋末期の「敬事天王鐘」に”楽しませる”の意があるという。

学研漢和大字典

象形。木の上に繭のかかったさまを描いたもので、山まゆが、繭をつくる櫟(レキ)(くぬぎ)のこと。そのガクの音を借りて、謔(ギャク)(おかしくしゃべる)・嗷(ゴウ)(のびのびとうそぶく)などの語の仲間に当てたのが音楽の楽。音楽でたのしむというその派生義をあらわしたのが快楽の楽。▽古くはゴウ(ガウ)の音があり、好むの意に用いたが、今は用いられない。類義語に愉。

旧字「樂」は人名漢字として使える。▽付表では、「神楽」を「かぐら」と読む。▽「音曲を演奏すること」の意味は「ガク」と読み、「苦労や心配がなくて快い気分である」「物事のよさを味わったり、好きなことをして心身を休めたりする」「物事がたやすい」「興行の終わり、または終わりの日」の意味は「ラク」と読む。

意味〔一〕ガク

  1. {名詞}音楽。にぎやかな音を配合したしらべ。また、それをかなでる楽器。「奏楽」。
  2. {動詞}かなでる(かなづ)。楽器をならす。「楽人(音楽をかなでる人)」。

意味〔二〕ラク

  1. {動詞}たのしむ。心がうきうきする。《対語》⇒憂。「快楽」「歓楽」「楽以忘憂=楽しみては以て憂ひを忘る」〔論語・述而〕
  2. {動詞}たのしむ。心から好む。喜んでとけこむ。「楽天知命=天を楽しみ命を知る」〔易経・繫辞上〕
  3. 《日本語での特別な意味》
    ①らく。たやすい。安楽なこと。「仕事が楽だ」。
    ②らく。「楽焼(ラクヤキ)」の略。
    ③らく。「千秋楽」の略。興行の最後の日。

字通

柄のある手鈴の形。白が鈴の部分。〔説文〕六上に「鼓へいの形に象る。木はそのきょ(台)なり」(唐写本)という。鼓鼙はふり太鼓。これを楽器台におく形とするが、全体が手鈴の形である。古代のシャーマンは鈴を鳴らせて神をよび、神を楽しませ、また病を療したので、療の初文は𤻲に作る。

褐(カツ・8画)

褐 秦系戦国文字
睡虎地簡15.91・戦国最末期

初出:初出は秦系戦国文字

字形:「衤」”ころも”+「曷」”かわく”。干からびた色の服。

音:カールグレン上古音はɡʰɑt(入)。同音は「曷」「毼」”毛織物”「鶡」”ヤマドリ”「蝎」”キクイムシ”(すべて入)。「葛」はkɑt(入)。論語語釈「葛」を参照。

用例:戦国最末期「睡虎地秦簡」金布90に「囚有寒者為褐衣。」とあり、”毛織物”と解せる。

論語時代の置換候補:「毼」の初出は不明。文献上の初出は年代不明の『逸周書』、南北朝の『後漢書』。『大漢和辞典』に同音同訓は無い。

学研漢和大字典

会意兼形声。「衣+(音符)曷(かわいた、かすれた)」。

語義

  1. {名詞}ひからびて、ごつごつした繊維の布。毛織りの粗末な衣服。また、麻や葛(クズ)の繊維で織った衣服。
  2. {形容詞・名詞}身なりが粗末な。貧しい。「褐夫(カップ)」。
  3. {名詞}かわいた感じの茶色。「褐色(カッショク)」。
  4. 《日本語での特別な意味》かち。かちいろ。濃紺色。

字通

[形声]声符は曷(かつ)。〔説文〕八上に「枲(あさ)を編みたる韤(くつ)なり。一に曰く、粗衣なり」とあり、靴たびや粗衣の類をいう。あらい毛織の衣を着たものを褐寛博(かつかんはく)といい、どてら風のふだん着である。仕官することを「褐を釋(ぬ)ぐ」という。褐色の意は、枲麻の布の色である。

适(カツ・10画)

适 金文
楚子适鼎・春秋末期

初出:初出は春秋末期の金文

唐開成石経

字形:〔辶〕+〔舌〕。原義不明。唐石経は最後の一画を欠く。唐徳宗李适の避諱

音:カールグレン上古音は不明。董同龢上古音はkuɑt(入)。

学研漢和大字典

会意兼形声。「辵+(音符)舌(カツ)(くびる)」。弾力をつけて進むこと。▽舌(カツ)は、もと、舌(ゼツ)(した)とは別字で、括・活の音符にもなる。适は、現在、中国では適の簡体字に使われる。活(くわっくわっと水が勢いよく流れる)と同系。

語義

  1. {形容詞}はやい(はやし)。勢いよくはやい。《類義語》活。

字通

(条目無し)

新漢語林

形声。辶(辵)+舌(音)。

  1. はや-い(はやし)。すみやか。
  2. 人名。南宮适(ナンキュウカツ)は、魯(ロ)の人。孔子の弟子。南宮括とも書く。

葛(カツ・11画)

葛 秦系戦国文字
陶彙5.458・戦国秦

初出:初出は戦国文字。

字形:「艹」+「曷」”干からびた”。蔓を発酵させ干からびさせて繊維を取る植物”クズ”の意。

音:カールグレン上古音はkɑt(入)。同音は「割」(入)のみ。「褐」はɡʰɑt(入)。論語語釈「褐」を参照。

用例:「上海博物館蔵戦国楚竹簡」孔子詩論16に「孔子曰:「□(吾)㠯(以)〈□(葛)□(覃)〉得氏(祗)初之□(詩),民眚(性)古(固)肰(然)。」とあり、つる性の植物と解せる。

論語時代の置換候補:『大漢和辞典』に同音同訓は無い。

割(カツ・12画)

割 金文 割 金文
󱝯乍周公𣪕・西周早期/無鼎・西周末期

初出:初出は西周早期の金文。「小学堂」による初出は春秋早期の金文

字形:字形は「害」”車輪にくさびを入れる”の四隅に「十」”切り込み”を加えた形。現行字形は「害」+「刂」”刀”。

音:カールグレン上古音はkɑt(入)。

用例:西周早期「󱝯乍周公𣪕(周公𣪕、井󱠫𣪕」(集成4241)に「王…曰:□(割)井(邢)侯服」とあり、□は「割」と釈文される。”分割する”と解せる。

西周末期「無󰼬鼎」(集成2814)に「用割󱱉壽萬年子孫永寶用。」とあり、「割」は「カツ」の意で”願う”の意とされる。

学研漢和大字典

形声。害(ガイ)は、かご状のふたを口の上にかぶせることを示し、遏(アツ)と同じくふさぎ止めること。割は「刀+(音符)害」で害の原義とは関係がない。契(ケイ)(きる)・丯(カイ)(二つにわける)・介(カイ)(二つにわける)・界(二つにわける)と同系。類義語に剖。異字同訓に裂。

語義

  1. {動詞}わる。さく。刀で二つにきりさく。転じて、広く、二つにわること。▽漢文では「わる」という訓は用いず「さく」という。「割胯焉用牛刀=胯を割くにいづくんぞ牛刀を用ゐんや」〔論語・陽貨〕
  2. {動詞}さく。分割する。「割地=地を割く」「令楚王割東国以与斉=楚王をして東国を割き以て斉にあたへ令む」〔史記・孟嘗君〕
  3. {動詞}《俗語》きる。途中できってとる。「割麦(麦の穂をきりとる)」。
  4. 《日本語での特別な意味》
    ①わる。計算で、除法を行う。「割り算」。
    ②わる。標準と考えられる一定の限度をはずれて下まわる。「百円の大台を割る」。
    ③わり。比率をあらわすことば。一割は、十分の一のこと。

字通

[形声]声符は害(がい)。害は把手のある大きな針で、祝禱を収めた器(𠙵(さい))を刺し通し、その呪能を害する意。それにまた刀を加えて、ものを割裂する意をあらわす。〔説文〕四下に「剝ぐなり」とするが、剝とは獣皮を剝ぐことで、字義が異なる。宰割のように切り開くときに用いる。金文に「用(もつ)て眉壽を割(もと)む」のように、匄求(かいきゆう)の意に用いる。

※匄(カイ、カツ):”もとめる・あたえる”。

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