論語時代史料:『史記』原文-書き下し-現代日本語訳
端木賜子貢(たんぼくし・しこう)その五
子貢は呉王に報告して言った。
「私め、敬んで大王の言葉を越王に告げました。越王は大いに恐れて言いました。私め越王は天の情けも得られず、人徳が少いために先祖のご加護を失い、国内では身の程を知らず、呉国に罰せられるようなことをしでかし、軍は敗れてこの身は辱められ、会稽に住んで、国は廃墟同然となりました。呉の大王のお恵みに頼って、供え物を先祖の霊に奉って、祭祀を正しく行えるようになりました。このご恩は死んでも忘れません。なのにどうして、悪だくみをたくましくしましょうか。と。」
その五日後、越は家老の種を呉に使わし、這いつくばって呉王に言せた。
「大王様の東海のしもべ、勾践の使者臣種、下っ端の分際ではございますが、思い切って大王様のご家来衆に伺います。今、もれ伺う所に拠りますと、呉の大王は今にも大いなる正義を盛んにするため、強きをくじき弱きを助け、横暴な斉国を困しめて周王室のみ心を安んじようとなされている、と。
そこで越国内の兵三千人をこぞって、越王め自らお願いして、鎧を着、鋭い武器を手に取り、呉軍の先を進んで、敵の矢や石を受け防ごうと思います。ですからこうして越の賤しき家臣の種めは、越が先祖から受け継いだ宝物・鎧二十領・斧・名器屈盧の矛・名剣歩光の剣を差し上げ、呉のいくさ奉行様の行く末をお祝い致します。」
呉王夫差は大いに喜び、子貢に言った。
「越王めは自らワシに従って斉を伐つと言う。よいだろうか。」
子貢「いけません。そもそもよその国を空っぽにして、よその人々を根こそぎ動員し、その君主を従えるというのは、正義ではありません。呉王様、越のよこした物資だけ受け取り、越軍の参戦は免除し、越王の参戦も断って下さい。」
呉王は子貢の言葉に従い、すぐさま越王に感謝した。こうした呉王は、すぐさま全国九郡から徴兵して斉を伐とうとした。
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