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『太平広記』水族六:現代語訳

  • 隠者と美少女・微生亮(ビセイリョウ)

原文

明月峽中有二溪東西流,宋順帝昇平二年,溪人微生亮釣得一白魚長三尺,投置舡中,以草覆之。及歸取烹,見一美女在草下,潔白端麗,年可十六七。自言高堂之女。偶化魚游,為君所得。亮問曰。既為人,能為妻否。女曰:「冥契使然,何為不得。」其後三年為亮妻,忽曰:「數已足矣,請歸高唐。」亮曰:「何時復來。答曰:「情不可忘者,有思復至。」其後一歲三四往來,不知所終。出《三峽記》。

書き下し

明月峡の中に二つ渓(たにがわ)有り、東西に流る。宋の順帝昇平二年、渓人(たにびと)微生亮釣りて、一の白き魚、長さ三尺を得。舡(セン)中に投げ置きて、草を以て之を覆う。帰るに及びて取りて烹(に)んとするに、一美女の草の下に在るを見る。潔らかに白くして端ずしく麗わしく、年は十六七なる可し。自ら高堂(せんかい)之女(むすめ)と言う。偶ま魚と化して游ぐに、君の得たる所と為ると。亮問曰く、既に人為り。能く妻為るや否やと。女曰く、「冥契(いわざるこころ)然ら使めり、何ぞ為すを得不る」と。其後三年、亮の妻為り。忽(にわ)かに曰く、「数(とし)已に足ち矣(たり)。請う高唐(せんかい)に帰らん」と。亮曰く、「何れの時復た来たらん」と。答えて曰く、「情いは忘るる可から不る者あり、復た至らんとする思い有り」と。其の後一歳にして三四たり往き来たり。終る所を知ら不。《三峡記》に出ず。

現代日本語訳

明月峡の中に谷川がふたすじあって、東西に流れている。宋の順帝の昇平*二年、谷に住む微生亮が、1m弱の白い魚を釣り上げた。魚を舟の上に置いて、上に草をかぶせた。家に帰って煮魚にしようとすると、美女が一人草の下にいた。見るからに清げで肌は透き通るように白く、整った顔が麗しい。歳は十六七ぐらいだろうか。

微生亮「お前さんはだれだい?」「私は仙界の娘です。魚に化けて泳いでいましたら、たまたまあなたに釣り上げられたのです。」微生亮はごくりと生唾を飲み込んだ。
「それで、そのあれだ、今は人間なのだから、ど、どうかな、私の妻になってくれないか。」「はい。仰らずとも心は分かります。あなたとめおとになりましょう。」

その後三年の間、微生亮と仙女は夫婦として過ごした。しかしある日のこと。
仙女「お別れでございます。定めの時が参りました。仙界に帰らせて頂きとうございます。」「定めって…また戻ってくれるんだろ?」「はい。お情けは忘れがたく存じます。きっとまた戻ります。」

それからは、年に三、四度戻ったという。しかし二人の最後はわからない。『三峡記』より。

訳注

*宋の順帝昇平二年:『太平広記』は北宋の時代の成立だが、北宋に「順帝」はおらず(南宋にいる)、南北朝時代の劉宋最後の皇帝が順帝だが、その年号は「昇明」。この間違いとすると、「昇平」二年はAD478。

なお高唐には「仙界」の意と、「男女が密会する場所」の意がある。またつまらんことを書いてしまった。

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論語内容補足
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