論語と算盤・現代語訳(43)理想と迷信6

『論語と算盤』真正なる文明

論語と算盤 つ

現代語訳

文明と野蛮は相対的な概念だから、その境界ははっきりしないが、仮に基準を選ぶとするなら、英独仏米は文明国だろう。その理由は国体が明瞭で、有形無形のインフラが整っているからだ。しかしそれだけでは十分ではない。国を活動させる実力がいる。兵力や警察力や地方自治の団体がその一部分だ。

それらが十分調和して、重点が片寄るとか統一に欠けることが無い状態を、文明と言えるだろう。言い換えると制度や設備が整っていても、それを処理する人の能力が伴わないと、真正の文明国とは言えない。形式と実質が伴って、財力も加わってやっと、真の文明と言える。

古来の実例を見ると、文明は先ず文化が先に進歩して、実力が後からついてくるように見える。国によっては武力が先で、財力がことさらに遅れる例も多い。我が国の現状はそう見える。国体もインフラも維新以来整ってきたのに、まだ時間が足りなくて、財力に乏しい。

その充実に国民こぞって努力するにしても、文明の体面を整えるために、軍備や外交に経費を割かねばならない場面もある。しかしそこに偏りがあると、肝心の文明を損ないかねない。インフラも形だけになり、野蛮に戻ってしまうかも知れない。

我が国の文明を真正なものにするには、財力と武力が釣り合わねばならないが、現在の状況では、財力を損なってしまう傾向がある。これは上下一致、文武協力して釣り合いを取らねばならない。

『論語と算盤』発展の一大要素

現代語訳

明治の時代は新しい事物を入れて進歩に努力した。長い間努力して、ある点では西洋に恥じないまでになった。これは明治天皇の聖明と、官吏の誘導と、国民の努力の賜物だった。

そして大正になって、もはや創業の時期は過ぎたと言って、世間では守成を言う人がいるが、国民は互いに、そんな小さな成功に気を抜いてはいけない。国土が狭いのに人口が多く、これからさらに増えるのだから、引き籠もっていないで外に打って出なければならない。

農業にも肥料や農法に工夫すれば、五俵が七俵、所によって二倍も収穫が増えるだろう。耕地が狭いからと言って、効率的な活用を忘れてはならない。北海道のような新領土にも、必要な資金を投入して、出来るだけ事業を成り立たせねばならない。

海外で発展するには、利益の見込めるところに目がいくのは自然だ。しかしここで心配なのは、アメリカとの関係だ。現在のような摩擦があるのは、お互いに残念だ。向こうに大きな我が儘があり、不道理を言ってきてはいるが、こうまでになったのは、我が国民にも反省すべき点がある。

この問題は現在進行形だから、詳細に立ち入って論じられないが、国民の期待をどこまでも果たす勇気を持って、しかも出来るだけの忍耐を伴って、大和民族の世界発展の道を開き、どこの地方でも嫌われないように心掛けることが、つまりは発展の大要素だ。

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