- 小匡篇・悪金以てオノを鋳るべし
- 地数篇・鉄を出すの山
原文
桓公曰:「卒伍定矣。事已成矣,吾欲從事於諸侯,其可乎?」管子對曰:「未可,若軍令,則吾既寄諸內政矣,夫齊國寡甲兵,吾欲輕重罪而移之於甲兵。」公曰:「為之柰何?」管子對曰:「制重罪入以兵甲犀脅二戟,輕罪入蘭盾鞈革二戟,小罪入以金鈞分宥薄罪,入以且鈞。無坐抑而訟獄者,正三,禁之而不直,則入一束矢以罰之。美金以鑄戈劍矛戟,試諸狗馬。惡金以鑄斤斧鉏夷鋸欘,試諸木土。」
…
桓公曰:「地數可得聞乎?」管子對曰:「地之東西二萬八千里,南北二萬六千里,其出水者八千里,受水者八千里,出銅之山四百六十七山,出鐵之山三千六百九山,此之所以分壤樹穀也。」
書き下し
桓公曰く、「卒伍定まり矣。事已に成り矣、吾諸侯於(を)従え事えしめんと欲す。其れ可なる乎」と。管子対えて曰く、「未だ可ならざり。若し軍令あらば、則ち吾れ既に諸を內政に寄せ矣。夫れ斉国は甲兵寡く、吾軽重の罪をし而之を甲兵於移さんと欲す」と。公曰く、「之を為すに柰何」と。管子対えて曰く、「制して重罪は兵の甲犀を以て入らしめ、二戟を脅めしむ。軽罪は蘭盾と鞈革と二戟を入らしめ、小罪は金の鈞を以て入らしめ、分かちて薄罪を宥し、且に鈞を以て入らしめん。坐を無くし而獄を訟うる者を抑え、正して三たり之を禁し而直なら不らば、則ち一束の矢を入らしめて以て之を罰す。美金は以て戈剣矛戟を鋳、諸を試すに狗馬をもってせん。悪金は以て斤斧鉏夷鋸欘を鋳、諸を試すに木土をもってせん」と。
…
桓公曰く、「地数は得て聞く可き乎」と。管子対えて曰く、「地之東西は二万八千里、南北二万六千里なり。其の水を出だす者八千里、水を受くる者八千里。銅を出すの之山は四百六十七山、鉄を出だすの之山は三千六百九山あり。此れを之れ壌を分かちて穀を樹うる所以也。」
現代日本語訳
桓公が管仲に言った。「軍の整備は終わった。用意は整った。私は諸侯を従えたいと思うが、どうか?」
管仲が答えた。「まだいけません。もし出兵したいのであれば、内政と一致させて行わねばなりません。そもそも我が斉国は兵器が十分ありません。ですから軽重の罪人を許して、代わりに兵器を納めさせたいと存じます。」
桓公「具体的には?」
管仲「重罪人はサイの革の鎧とほこ二本を、軽い罪人は兵器の架台と革の盾とほこ二本を、微罪の者は罰金として青銅を、それ以下の罪も青銅を納めさせたいと存じます。連座制を廃止して訴訟を減らし、容疑者は三日捕らえてウソが発覚したら、矢を一束納めさせましょう。
青銅は貴重ですから剣や矛を鋳て、鉄はふんだんにありますから農具や工具にしましょう。剣や矛は犬や馬で試し斬りし、農具や工具は木や土で試しましょう。」
…
桓公曰く、「天下の大きさはどれぐらいか。」管仲が答えた。「大地の東西は二万八千里、南北は二万六千里です。水を出す土地が八千里あり、水を受ける土地も八千里です。銅山は四百六十七ケ所、鉄山は三千六百九ケ所です。土地を耕して穀物を植える地面というのは、これで全てです。」
コメント