『孔子家語』現代語訳:五儀解第七(4)

孔子家語・原文

哀公問於孔子曰:「夫國家之存亡禍福,信有天命,非唯人也?」孔子對曰:「存亡禍福,皆己而已;天災地妖,不能加也。」公曰:「善!吾子言之,豈有其事乎?」孔子曰:「昔者殷王帝辛之世,有雀生大鳥於城隅焉。占之曰:『凡以小生大,則國家必王而名益昌。』於是帝辛介雀之德,不脩國政,亢㬥無極,朝臣莫救,外寇乃至,殷國以亡。此即以己逆天時,詭福反為禍者也。又其先世殷王太戊之時,道缺法圮,以致妖蘖,桑穀于朝,七日大拱。占之者曰:『桑穀,野木而不合生朝,意者國亡乎?』大戊恐駭,側身脩行,思先王之政,明養民之道。三年之後,遠方慕義,重譯至者,十有六國。此即以己逆天時,得禍為福者。故天災地妖所以儆人主者也;寤夢徵怪所以儆人臣者也。災妖不勝善政,寤夢不勝善行。能知此者,至治之極。唯明王達此。」公曰:「寡人不鄙固此,亦不得聞君子之教也。」

哀公問於孔子曰:「智者壽乎?仁者壽乎?」孔子對曰:「然!人有三死而非其命也,己自取也。夫寢處不時,飲食不節,逸勞過度者,疾共殺之;居下位而上干其君,嗜慾無厭而求不止者,刑共殺之;以少犯眾,以弱侮強,忿怒不類,動不量力,兵共殺之。此三者,死非命也,人自取之。若夫智士仁人,將身有節,動靜以義,喜怒以時,無害其性,雖得壽焉,不亦宜乎!」

孔子家語・書き下し

哀公孔子に問うて曰く、「夫れ国家之存亡禍福、信に天命に有るか、唯だ人に非る也(や)」と。孔子対えて曰く、「存亡禍福は、皆己(おのれ)而已(のみ)。天災地妖,加いり能わざる也」と。公曰く、「善(よ)し。吾が子之を言え、豈に其の事有る乎」と。孔子曰く、「昔者(むかし)殷王帝辛之世に、雀の大鳥を生むもの城隅に有り焉(き)。之を占いて曰く、『凡そ小を以て大を生むは、則ち国家必ず王たり而(て)名益〻昌んならん』と是に於いて帝辛、雀之徳を介(たのみ)て、国政を脩めず、㬥の亢ぶるや極り無ければ、朝臣救う莫く、外冦乃ち至り、殷国以て亡べり。此れ即ち己を以て天に逆う時、詭(いつわ)りの福反りて禍いと為る者也。又た其の先世、殷王太戊之時、道は欠け法は圮(くず)れ、以て妖蘖致り、桑穀朝にありて、七日にして大いに拱(かか)う。占之者曰く、『桑穀は野木に而て朝に生うは合わず。意者(は)国の亡び乎』と。大戊恐れ駭き、身を側(ちぢ)めて行いを脩め、先王之政を思い、養民之道を明かにす。三年之後、遠方義を慕い、訳(わけ)を重ねて至る者、十有六国。此れ即ち己を以て天に逆う時、禍を得て福を為す者なり。故に天災地妖は人主を儆(いた)ましむる所以の者也。寤夢・徴怪は人臣を儆ましむる所以の者也。災妖は善政に勝たず、寤夢は善行に勝たず。能く此を知る者は、治之極に至らん。唯だ明王此を達す」と。公曰く、「寡人此く鄙しく固くならざらば、亦いに君子之教を得て聞かざる也」と。

哀公孔子に問うて曰く、「智者は寿(いのちなが)き乎。仁者は寿き乎」と。孔子対えて曰く、「然り。人に三死有り而(て)其れ命に非る也、己自ら取る也。夫れ寝ぬるに時ならずに処り、飲食を節(つ)まず、労めを逸れすこと度を過ぐ者は、疾、共に之を殺す。下位に居り而上其の君を干(せ)め、慾を嗜みて厭う無く、而て求めて止まざる者は、刑共に之を殺す。少を以て眾を犯し、弱を以て強を侮り、忿怒すること類わず、動きて力を量らざるは、兵共に之を殺す。此の三者,死は命に非る也。人自ら之を取る。若し夫れ智士仁人にして、将に身に節(つむ)有り、動静は義を以てし、喜怒は時を以てし、其の性を害う無からば、寿きを得焉(たり)と雖も、亦いに宜しからず乎」と。

孔子家語・現代語訳

哀公が孔子に問うた。「そもそも国家の存亡や盛衰は、天命が原因か、人間の仕業か。」
孔子が答えて言った。「存亡盛衰は、全部人間の仕業です。妖怪の仕業ではありません。」
哀公「よろしい。では我が師よ、教えてくれ、実際の例を。」

孔子「むかし殷王・帝辛(紂王)の時代に、スズメが大きな鳥を生んで、都城の隅に巣をかけた事がありました。これを占ったところ、『小が大を生んだのだから、我が国は必ず王位を確保し、ますます栄えるであろう』とご託宣が出ました。

そこで王の帝辛は、たかがスズメの御利益を期待して、国政に励まず、乱暴の限りを尽くしたので、家臣も救いようが無く、外敵が攻め寄せて、殷は滅びてしまいました。つまり身から出たさびで天に逆らい、かりそめのめでたいしるしがあだになったのです。

それより先、殷王太戊の時、政道は無茶苦茶で法は無いも同然、怪しい兆しが現れて、朝廷に桑と楮(こうぞ)が生えました。七日たつ内にみるみる育って、両手で抱えるほどになりました。占いの者の曰く、『桑穀は野の木で朝廷に生えるのは不吉。国が滅ぶでしょう』。

大戊は恐れおののいて、身を縮めて行いを改め、先王の政治を見習い、せっせと民を養いました。三年過ぎると遠方の者どもが、ああだこうだ言って服属を願い、その数十有六国。これもやはり身から出て天に逆らったのですが、災いのしるしが福をもたらしたのです。

つまり天変地異が起きたり大妖怪が出たりするのは、君主を戒めるためです。昼間見た事を夢に見たり、お化けが出るたぐいは、家臣を戒めるためです。まがまがしい妖怪も善政には勝てず、白昼夢も善行に勝ちません。このことわりを知っている者は、最高の政治を実現できるでしょうが、それはただ聖王のみができることです。」

哀公「私が愚か者でなかったら、そなたのような君子の教えを聞けなかっただろう。」

哀公が孔子に問うた。「智者は長寿か? 仁者は長寿か?」
孔子が答えた。「その通りです。人には三種類の変死があって、それは運命ではありません。自分で自分を殺すのです。

まず時間でもないのに眠り、飲食を慎まず、度を超してだらける者は、病気がとりついて殺します。目上を攻め、欲張りで何でも欲しがり、飽きる事が無い者は、刑罰が殺します。無勢なのに多勢にちょっかいを出し、弱いのに強者をあなどり、怒りっぽい事たぐいまれで、身の程知らずな行動に出る者は、兵がこれを殺します。

この三者は、その死は運命ではありません。好きこのんで自分を殺したのです。智恵ある者、情け深い者が、生活習慣を慎み、動くも休むも正しく行い、いつまでも怒ったり笑ったりせず、その本能を傷付けなければ、長寿であっても大いに宜しいではありませんか。」

孔子家語・訳注

なし

孔子家語・付記

1は劉向『説苑』の「カラス」を「大鳥」に変えたほぼコピペ、2もほとんどそのコピペ。

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