論語詳解144雍也篇第六(27)君子はひろく文’

論語雍也篇(27)要約:古典を学んで行動を礼法で締めくくることが、孔子塾ではよく教えられました。当時まだ礼法は教科書になっていませんから、むしろ孔子先生は、礼法を弟子と共に作り上げたと言っていいかも知れません。

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論語:原文・書き下し →項目を読み飛ばす

原文

子曰、「君子*博學於文、約之以禮、亦可以弗畔矣夫。」

校訂

武内本

釋文、一本君子の二字なし。

定州竹簡論語

曰:「君子a[博b於]文,約之以[禮,亦]可以弗之c畔矣夫!」133

  1. 君子、『釋文』云「一本無”君子”字。」
  2. 今本「博」下有「學」字。
  3. 之、今本無。

→子曰、「君子博於文、約之以禮、亦可以弗之畔矣夫。」

復元白文(論語時代での表記)

子 金文曰 金文 君 金文子 金文博 金文於 金文文 金文 要 金文之 金文㠯 以 金文礼 金文 亦 金文可 金文㠯 以 金文弗 金文之 金文反 金文已 矣金文夫 金文

※約→要・畔→反・矣→已。論語の本章は、「以」の用法に疑問がある。

書き下し

いはく、君子くんしぶんひろくして、これぶるにれいもちゐば、おほいもつさきそむきあらなるかな

論語:現代日本語訳 →項目を読み飛ばす

逐語訳

孔子 切手
先生が言った。「諸君は幅広く知識を学んで、それをまとめるのに礼法を用いれば、この先仲間割れしない可能性が大いにあるだろうな。」

意訳

孔子 水面キラキラ
諸君、幅広く勉強するとよいが、すればするほど、お互いに学問上の見解の相違が出てくるだろう。その時は貴族らしい振る舞いの原則に立ち返ってくれ。そうすれば必ず、ケンカせず仲良く仕官できるだろうよ。

従来訳

下村湖人
先師がいわれた。――
「君子は博く典籍を学んで知見をゆたかにすると共に、実践の軌範を礼に求めてその知見にしめくくりをつけて行かなければならない。それでこそはじめて学問の道にそむかないといえるであろう。」

下村湖人『現代訳論語』

現代中国での解釈例

孔子說:「廣泛學習、遵紀守法,就不會誤入歧途!」

中国哲学書電子化計画

孔子が言った。「幅広く学び、規則を守れば、つまり間違った道に入ることがありえない。」

論語:語釈 →項目を読み飛ばす

君子

論語の本性では”諸君”という呼びかけ。詳細は論語における「君子」を参照。

博 金文 博
(金文)

論語の本章では”幅広く”。『大漢和辞典』の第一義は”あまねくゆきわたる”。

『学研漢和大字典』によると会意兼形声文字で、甫は、圃の原字で、平らで、ひろい苗床。それに寸を加えた字(音フ・ハク)は、平らにひろげること。博はそれを音符とし、十(集める)をそえた字で、多くのものが平らにひろがること。

また、拍(ハク)(うつ)や搏(ハク)(うつ)に当て、ずぼしにぴたりとうちあてる意をあらわす。普(ひろく平ら、あまねし)・溥(ハク)(ひろく行き渡る)と同系のことば、という。詳細は論語語釈「博」を参照。

文 甲骨文 文 金文
(甲骨文・金文)

論語の本章では武に対する文で、”知識”。詳細は論語語釈「文」を参照。

約 金文大篆 約
(金文)

論語の本章では、”知識の要とする基準”。原義はヒモでキュウとまとめ上げること。この文字の初出は戦国文字で、論語の時代に存在しないが、同音の「要」(締める)は存在した。詳細は論語語釈「約」を参照。

之(シ)

之 甲骨文 之 字解
(甲骨文)

論語の本章では”これ”。初出は甲骨文。原義は進むこと。”これ”という指示代名詞に用いるのは、音を借りた仮借文字だが、甲骨文から用例がある。「…の」や、直前の動詞を強調する用法は、戦国時代以降にならないと現れない。詳細は論語語釈「之」を参照。

以(イ)

以 甲骨文 以 字解
(甲骨文)

論語の本章では”用いる”・”それで”。初出は甲骨文。人が手に道具を持った象形。原義は”手に持つ”。論語の時代までに、”率いる”・”用いる”の語義があったが、「もって」と読んで接続詞や助詞に用いる例は確認できない。詳細は論語語釈「以」を参照。

礼 金文 揖 拝礼
(金文)

論語の本章では”礼儀作法”。新字体は「礼」。初出は甲骨文。へんのない豊の字で記された。『学研漢和大字典』によると、豊(レイ)(豐(ホウ)ではない)は、たかつき(豆)に形よくお供え物を盛ったさま。禮は「示(祭壇)+(音符)豊」の会意兼形声文字で、形よく整えた祭礼を示す、という。詳細は論語語釈「礼」を参照。

畔(ハン)

畔 金文大篆 遺産 離 畔
(金文大篆)

論語の本章では”仲間割れする”。原義は田畑の”あぜ”。「叛」に音が通じて”そむく・乱れる”の意とされるが、漢字の系統的にありえず、学をてらった儒者どもの、くだらない言葉のもてあそびに過ぎない。

初出は戦国文字で、論語の時代に存在しない。「叛」の初出はさらに遅く、後漢の『説文解字』。カールグレン上古音はbhwɑnで、同音に般と磐・盤などそれを部品とする漢字群。藤堂上古音はbuanで、甲骨文から存在する反puǎnと音通するかは微妙。

『字通』によると声符を半(カ音pwɑn、藤音puan)としている。カ音pwɑnの同音は般”めぐる”・靽”きずな”。藤堂音を使うと、畔buan→半puan→反puǎnと繋がりそうに見えるが、実情は上記の通り、儒者どもの幼稚な自己顕示欲に過ぎず、付き合っていられない。

とりあえず論語の時代の置換候補として、反の字を挙げておく。

『学研漢和大字典』によると会意兼形声文字で、「田+〔音符〕半(ハン)(二つにわかれる)」。詳細は論語語釈「畔」を参照。

亦(エキ)

亦 甲骨文 学而 亦 エキ
(甲骨文)

論語の本章では”おおいに・たいそう”。初出は甲骨文。原義は”人間の両脇”。詳細は論語語釈「亦」を参照。

亦可以弗之畔矣夫

ここでの「之」の解釈が難しい。通説ではここを、次の通り訓む。

おほいもつこれむかなるかな

しかし「之ってなんだ?」と疑問に思う。ゆえに解釈を変えて直前が動詞であることの記号だとすると、「弗」は「もとる」と読んで”しりぞける・避ける”の意になり、文意が通じなくなる。否定の副詞「ず」だと読むほか無いが、すると「之」をどう解したものか?

「不己知」と同様の、否定辞+目的語+動詞、の古い形なのだろうか。

『学研漢和大字典』弗

漢代以前は、「弗+動詞」=「不+動詞+之」と目的語を省略した動詞の否定の場合に用いる。漢代以後は、「不」と同じ用法で、形容詞や動詞を否定する。

ただし「不己知」もそうだが、「己」「之」ともに目的語代名詞ではなく、連体・連用修飾語と解する方が文法が簡単になる。「之」の原義は”ゆく”であり、接尾辞”の”や代名詞”これ”は音通による派生義だから(→論語語釈「之」)、”さきの”の意だろうか?

おおいに以てさきそむきあらる可きなるかな

間違いなく、それでこの先に仲間割れすることが無いと言えてしまうなあ。

これなら、仲間割れを恐れる武装革命集団の孔子塾に、相応しい言葉になる。

論語:解説・付記

論語顔淵篇15とほぼ同文。論語学而篇1ですでに記したが、孔子一門は野心に燃える若者の集団であり、かつ武装していた。従って最も恐れるべきなのは内ゲバで、組織の性格を同じくしながらこの処理に失敗した新撰組は半ば自滅し、ナチ突撃隊は親衛隊の組下に置かれた。

本章はそれを踏まえた孔子の訓戒と思われる。

警告

漢文業界の者は嘘つき中国人そっくりで、微塵も信用ならぬ(→理由)ので、数言申し上ぐ。


出典明記の引用は自由だし、訳者に連絡のお気遣いも不要だが(ただしネット上では可動リンク必須)、盗用・剽窃は居合を嗜む有段者の訳者が、櫓櫂の及ぶ限り追い詰める。

言い訳無用。訳者が「やった」と思えば全国どこでも押し込む。頭にきたら海外にも出かけ、バッサリやってすぐ帰る。暇であるし、惜しむものを持っていないし、面倒が苦にならぬゆえ、こうして古典を研究している。空港の刃物検査通過は、やったことがあるが存外簡単だ。

刀の手入れは毎日している。そして未だ人を斬ったことが無い。

盗作・剽窃の通報歓迎。下手人を成敗した後、薄謝進呈。他人にやらせた者も同罪、まずそ奴から追い回してぶっ○○る。もし長生きしたいなら、悪いことはせぬものだ。朴ったら○すぞ。それでもやるなら、覚悟致せ。



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