論語詳解476子張篇第十九(5)日に其の亡き所を知り

論語子張篇(5)要約:毎日自分に足りない点を補い、毎月身につけたことを失わないように気を付けるなら、それは学を好むと言っていい、と高弟の子夏。はあそうですか、というしかないお説教ですが、肉声とは思えない点が。

論語:原文・白文・書き下し →項目を読み飛ばす

原文・白文

子夏曰、「日知其所亡、月無忘其所能、可謂好學也已矣。」

書き下し

子夏しかいはく、ところり、つきくするところわするるからば、がくこのむとふべき已矣のみ

論語:現代日本語訳 →項目を読み飛ばす

逐語訳

子夏が言った。「毎日自分にない所を知り、毎月自分に出来ることを忘れないのなら、学問を好むと評価してしまってよい。」

意訳

子夏「自分に出来ない事を身につけようと毎日励み、出来たことを忘れぬよう毎月稽古するなら、学問好きだと言って良いだろうな。」

従来訳

論語 下村湖人

子夏がいった。――
「日ごとに自分のまだ知らないことを知り、月ごとに、すでに知り得たことを忘れないようにつとめる。そういう心がけであってこそ、真に学問を好むといえるだろう。」

下村湖人『現代訳論語』

論語:語釈 →項目を読み飛ばす

子夏

論語 子夏

論語では孔子の弟子で孔門十哲の一人、ボク商子夏のこと。

其(キ)

論語 其 金文 論語 其 解字
(金文)

論語の本章では多様な解釈があり得る。原義は農具ので、漢文では多くの場合”その”という指示詞。本章では指事代詞として”自分の”として解しうるが、他に疑問の”もし”とも解せるし、意味内容を持たない助辞として解することも出来る。詳細は論語語釈「其」を参照。

所亡

論語 所 金文 論語 亡 金文
(金文)

論語の本章では”欠けた部分”。被修飾語←修飾語の語順は甲骨文時代の漢文の文法で、論語の時代ではすでに逆順になっていた。しかし完全に逆順に取って代わられはせず、結果として漢文の文法を原則のないものにした。

本章はほぼ間違いなく孔子没後の付け足しで、おそらくは漢代に論語が膨張する過程で付加された章だろうが、付け足した儒者が古文をてらって敢えてこのような語順にしたかどうかまでは断定できない。しかし古そうに見せようとする意図があったとは言える。

「所」について詳細は論語語釈「所」を参照。

謂(イ)

論語 謂 金文
(金文)

論語の本章では、”~だと評価する”。同じ「いう」でも、価値判断を行って品定めすることを意味する。

也已矣

伝統的な読みでは、三字で「のみ」と読み下す。「也」は断定、「已」は”終わる”、「矣」もまた断定・完了。直訳すると”~であってしまったのである・~であってしまってしまった”。

論語:解説・付記

論語の本章はまことにつまらないお説教であり、人を奮い立たせる点がまるでないのだが、それに対応するように、言い廻しがもって回っている上にニセ古文の疑いがある。おそらくは漢代の儒者が、ハッタリと膨らましのために書いた作文だろう。

そもそも孔子の思想では、「学を好む」ことにそれほど価値はなかった。論語為政篇14にあるように、「学問を好むだけでは君子と言えない」。学問はあくまで修養の入り口であり、本章の言うように、自分に欠けた点を常に意識しているなら、その段階をとうに超えている。

「知るを知るとし、知らざるを知らざる」なら、それはすでに「知」だから(論語為政篇17)。本章を捏造したと思しき漢代の儒者は、孔子の意図を理解できなかったか、あるいは自分たちが独占した「知」というものを、よほど価値あるものとして売り出したかったらしい。

本章の成立のうさんくささと内容の空疎は、いみじくも中華思想の神髄がどこにあるかを示している。繰り返しで恐縮だが、実利はことのほか重んじるが、事実はどうでもいいのだ。それゆえに中華文明は比類無い強靱さを示し、今日唯一生き残った古代文明として存在している。

こんにちの世界で、今だ独裁制を続ける中国を、とりわけ経済界の人は高く評価したがる傾向にある。確かに目覚ましい経済成長を遂げ、民主制の国には出来ないある種の効率性を持っている。しかしそれが望ましいのだろうか。自分事として、そんな国に住みたいのだろうか。

にわか中国通には用心した方がいい。まるでものが見えていないおそれがあるからだ。

警告

漢文業界の者は嘘つき中国人そっくりで、微塵も信用ならぬ(→理由)ので、数言申し上ぐ。


出典明記の引用は自由だが(ネット上では可動リンク必須)、盗用・剽窃は居合を嗜む有段者の訳者が、櫓櫂の及ぶ限り追い詰める。言い訳無用。訳者が「やった」と思ったら、全国どこでも押し込む。頭にきたら海外にも出かけ、バッサリやってすぐ帰る。訳者は暇であるし、惜しむものを持っていないし、面倒が苦にならぬゆえ、こうして古典を研究している。未だ人を斬ったことが無い。刀(登録証付)の手入れは毎日している。

盗作・剽窃の通報歓迎。下手人を成敗した後、薄謝進呈。他人にやらせた者も同罪、まずそ奴から追い回す。覚悟致せ。
斬首
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