論語詳解278A先進篇第十一(25)子路曽皙冉有公西華*

論語先進篇(25)要約:塾生では年長組の、子路と曽子の父の曽点。さらに若い冉有ゼンユウと公西赤も加わって、孔子先生のおそばにいました。それぞれの抱負を聞きたがる先生。いわいでか、と子路が真っ先に答えたのですが…。

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論語:原文・書き下し →項目を読み飛ばす

原文

子路、曾皙、冉有、公西華侍坐。子曰、「以吾一日長乎爾、毋*吾以*也。居則曰、『不吾知也。』如或知爾、則何以哉。」子路率爾而對曰、「千乘之國、攝乎大國*之閒、加之以師旅、因之以饑*饉、由也爲之、比及三年、可使有勇、且知方也。」夫子哂之。

校訂

武内本:無、唐石経毋に作る。釈文云、吾以鄭本已に作る、已は止也。唐石経、國下之の字あり。飢、唐石経饑に作る。

書き下し

子路しろ曾皙そうせき冉有ぜんいう公西華こうせいくわはべりてる。いはく、われじつなんぢけるをもつて、われひきゐるなりとするなかれ。るときはすなはいはく、われられずなりと。あるいなんぢるあらば、すなはなにもつてせむ子路しろ率爾そつじとしてこたへていはく、千じようくに大國たいこくあひだはさまり、これくはふるに師旅しりよもつてし、これるに饑饉ききんもつてするも、いうこれをさまば、三ねんおよころほひいさありてみち使なりと。夫子ふうしこれわらふ。

論語:現代日本語訳 →項目を読み飛ばす

逐語訳

子路・曽セキ(曽子の父)・ゼン公西華が先生のそばに控えていた。
先生が言った。「私がわずかに年長だからと言って、私に遠慮するな。君たちが私のそばにいる時は、自分は理解されないと言っているな。もし君たちを理解する者がいたら、どのようにするか。」
子路が即座に言った。「中程度の国々が、大国に挟まれて、あるいは軍隊を送りつけ、飢饉に付け込む事があっても、私がその国を治めれば、三年が過ぎる頃には、立ち向かう勇気と、国の進むべき方法を知らしめてやります。」
先生はそれを聞いて笑った。

意訳

ある日子路・曽皙・冉有・公西華が先生のそば近くに控えていた。

論語 孔子 楽
孔子「どうかね君たち、今日は一つ、私に遠慮無く抱負を語って貰いたい。普段ぶつくさと、仕官できないと嘆いているが、求人があったらどうだね?」

論語 子路
子路「いわいでか。我が魯国のような中原諸侯国は、西北は晋、東は斉、南は楚といった大国にいいようにされ、飢饉に付け込んでは攻め寄せられます。私が国政を預かるなら、三年で兵を鍛え、教育を充実し、なめられないようにして見せます。」

論語 孔子 せせら笑い
孔子「ホーッホッホッホッホッ。」

従来訳

論語 下村湖人

子路と曾皙と冉有と公西華が先師のおそばにいたとき、先師がいわれた。――
「私がお前たちよりいくらか先輩だからといって、何も遠慮することはない。今日は一つ存分に話しあって見よう。お前たちは、いつも、自分を認めて用いてくれる人がないといって、くやしがっているが、もし用いてくれる人があるとしたら、いったいどんな仕事がしたいのかね。」
 すると、子路がいきなりこたえた。――
「千乗の国が大国の間にはさまって圧迫をうけ、しかも戦争、饑饉といったような難局に陥った場合、私がその国政の任に当るとしましたら、三年ぐらいで、人民を勇気づけ、且つ彼等に正しい行動の基準を与えることが出来ます。」
 先師は微笑された。

下村湖人『現代訳論語』

論語:語釈 →項目を読み飛ばす

吾一日長乎爾

論語 長 金文
「長」(金文)

論語の本章では、”私が君たちより少しばかり年長だからと言って”。「爾」は「なんじ」、”君たち”。「乎」は「より」と呼んで、論語の本章では比較を表す助辞。

ただし孔子は弟子たちと比べて、いずれも一日ばかりの年長ではないので、これは孔子の謙遜。

毋吾以也

論語 毋 金文大篆 論語 毋
「毋」(金文)

論語の本章では、”私に遠慮するな”。

毋吾也。

文法的には三つの解釈がありうる。一つは「以」を”率いる”という動詞に読む解釈で、「吾ひきいる也とするなかれ」。訳は”私を指導者と思うな”。

もう一つは「以」を名詞の”理由”と解釈するもので、「吾がゆえ也とする毋れ。」訳は”私を理由にするな”。結局意味は変わらないから、どちらでもよいように思う。

なお「也」を”完成した”という動詞に解釈し、「吾るとする毋れ」と読み、”私を完成した人間だと思うな”と読めなくはない。しかし『大漢和辞典』にも『学研漢和大字典』にも、動詞としての用例はないから、これは不可。

「毋」の音は「ブ・ム」で、「無」と通じて”ない・…するな”。『学研漢和大字典』によると指事文字で、「女+━印」。女性をはずかしめてはならないとさし止めることを━印で示したもの。無(ム)・(ブ)や莫(マク)・(バク)と同系で、ないの意味を含む。

特に禁止の場合に多く用いられる、という。

不吾知也

論語 知 金文 論語 知 訟
「知」(金文)

論語の本章では、”自分は知られないのだ”。無主語のnot-O-Vの倒置表現。『学研漢和大字典』による「知」の原義は、真っ直ぐに事実を言い当てること。

千乘(乗)之國(国)

論語 乗 金文 論語 乗
「乗」(金文)

論語の本章では、魯国程度の、中ぐらいの国のこと。”戦車千乗を持つ大国”と伝統的に解釈されるが、調べると魯国程度の国のことであるらしいし、季氏の当主・季康子は、自国を「千乗の国」と言っている。

『学研漢和大字典』によると「乗」は会意文字で、「人+舛印(左右の足の部分)+木」で、人が両足で木の上にのぼった姿を示す。剩(ジョウ)(=剰。水準より上にのぼる→あまり)の音符となる。

蒸発の蒸(水気が上にのぼる)・昇(のぼる)・陞(ショウ)(のぼる)・騰貴(トウキ)の騰(のぼる)・登(のぼる)と同系のことば、という。

攝(摂:ジョウ)

論語 摂 金文大篆 論語 摂 篆書
(金文・篆書)

論語の本章では”はさまる”。最も知られた語義は、”とる”。この文字の初出は後漢の『説文解字』で、論語の時代に存在しない。代替候補も見つからない。詳細は論語語釈「摂」を参照。

師旅

論語 師 金文 論語 旅 金文
(金文)

論語の本章では”軍隊・軍事”。「師」も「旅」も、本来は”軍隊”。現代日本語でも「師団・旅団」という言葉が残る。

因之以饑(飢)饉

論語 飢 金文大篆 論語 饉 金文
「飢饉」(金文)

論語の本章では、”飢饉に付け込んで”。藤堂本では「因」を「かさぬる」と読んでおり、軍隊で威嚇された上に、飢饉が重なると解釈している。

『学研漢和大字典』によると「饑」は会意兼形声文字で、「食+(音符)幾(わずか、いくらもない)」。飢(食物がわずか)・肌(キ)(きめのこまかいはだ)と同系。僅(キン)(わずか)・饉(キン)(食物がわずか)は、その語尾がnに転じたことば、という。

「饉」は会意兼形声文字で、「食+(音符)僅(とぼしい)の略体」。▽飢・饑の語尾が転じたことば。僅(キン)(わずか)と最も近い、という。

哂(シン)

論語 哂 金文大篆 論語 哂
(金文)

論語の本章では、”あざけるように笑うこと”。または微笑むこと。

『学研漢和大字典』によると会意兼形声文字で、西は、ざるを描いた象形文字。すきまから水や息が漏れ去る意を含む。哂は「口+(音符)西」で、口もとから息が漏れること。遷(セン)(中身が抜け去る)と縁が近い、という。

論語:解説・付記

本章は論語の中で最も長い章なので、分割して記す。

あらかじめ断っておけば、本章はほぼ間違いなく後世の捏造で、ただの数あわせのために付け足されたに過ぎない。話の筋立ても、『孔子家語』致思第八(1)そっくりであり、話の成立もかなり時代が下り、あらすじを換骨奪胎して曽子のおやじ・曽点を権威づけたに過ぎない。

その理由はおいおい書いていくが、論語にはこうしたろくでもない話まで含まれている。

警告

漢文業界の者は嘘つき中国人そっくりで、微塵も信用ならぬ(→理由)ので、数言申し上ぐ。


出典明記の引用は自由だが(ネット上では可動リンク必須)、盗用・剽窃は居合を嗜む有段者の訳者が、櫓櫂の及ぶ限り追い詰める。言い訳無用。訳者が「やった」と思ったら、全国どこでも押し込む。頭にきたら海外にも出かけ、バッサリやってすぐ帰る。訳者は暇であるし、惜しむものを持っていないし、面倒が苦にならぬゆえ、こうして古典を研究している。

そして未だ人を斬ったことが無い。

盗作・剽窃の通報歓迎。下手人を成敗した後、薄謝進呈。他人にやらせた者も同罪、まずそ奴から追い回してぶった○る。覚悟致せ。

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