論語詳解278B先進篇第十一(26)求なんじは何如*

論語先進篇(26)要約:ある日の孔子塾でのおしゃべり風景。まだ年若い冉有ゼンユウと公西赤に、政治への抱負を尋ねる孔子先生。控えめな二人はそれぞれに、控えめな答えを返しました、という作り話。

このページの凡例

論語:原文・書き下し →項目を読み飛ばす

原文

「求、爾何如。」對曰、「方六七十、如五六十、求也爲之、比及三年、可使足民*。如其禮樂、以俟君子。」「赤、爾何如。」對曰、「非曰能之*、願學焉。宗廟之事、如會同、端章甫、願爲小相焉。」

校訂

武内本

清家本により、民の下に也の字を補う。之の下に也の字を補う。

定州竹簡論語

「求!壐何]如?」對曰:「[方六七十,如五六十,求也為]301……對曰:「非曰能之也a,願學焉。宗廟之事,[如會同,端]302……甫,願為小相焉。」

  1. 也、今本無。

→「求、壐何如。」對曰、「方六七十、如五六十、求也爲之、比及三年、可使足民。如其禮樂、以俟君子。」「赤、爾何如。」對曰、「非曰能之也、願學焉。宗廟之事、如會同、端章甫、願爲小相焉。」

復元白文

求 金文 爾 金文何 金文如 金文 対 金文曰 金文 方 金文六 金文七 金文十 金文 如 金文五 金文六 金文十 金文 求 金文也 金文為 金文之 金文 論語 比 金文及 金文三 金文年 金文 可 金文使 金文足 金文民 金文 如 金文其 金文礼 金文楽 金文 㠯 以 金文君 金文子 金文 赤 金文 爾 金文何 金文如 金文 対 金文曰 金文 非 金文曰 金文能 金文之 金文也 金文 論語 原 金文学 學 金文安 焉 金文 宗 金文廟 金文之 金文事 金文 如 金文論語 会 金文同 金文 耑 金文 父辛耑觚 <img src=章 金文甫 金文 論語 原 金文為 金文小 金文相 金文安 焉 金文

※壐→爾・願→原・焉→安。論語の本章は俟の字が論語の時代に存在しない。也の字を断定で用いている。本章は前漢の儒者による捏造である。

書き下し

きうなんぢ何如いかんこたへていはく、はう六七十、しくは五六十、きうこれをさまば、三ねんおよころほひたみ使し。禮樂れいがくごときは、もつ君子くんしたむ。せきなんぢ何如いかんこたへていはく、これくすとふにあらざるなりねがはくはまななん宗廟そうべうことしくは會同くわいどうに、端章甫たんしやうほして、ねがはくは小相せうしやうなん

論語:現代日本語訳 →項目を読み飛ばす

逐語訳

〔承前〕

論語 孔子 論語 冉求 冉有
先生が言った。「冉求ゼンキュウよ、お前はどうだ。」冉求が答えて言った。「四方六七十、あるいは五六十の小国を私が治めれば、三年ほどで民の衣食住を満たしてやります。礼楽の教育は、誰か君子の方にお任せします。」

論語 孔子 論語 公西赤
先生が言った。「公西赤よ、お前はどうだ。」公西赤が答えて言った。「私に政治が務まるとは思いません。出来れば実地で学びたいです。国君の祖先祭殿の事、あるいは諸侯の会合の席で、礼服を着けて、出来るなら下働きをしたいと思います。」

意訳

ニセ孔子 冉有
孔子「冉求や、お前は。」
冉求「小さな国を任せて頂き、三年ほどで衣食住に不自由しないようにしてやりたいです。教育についてはちょっと…自信のある方にお願いします。」

ニセ孔子 公西赤
孔子「公西赤よ、お前は。」
公西赤「政治は…ちょっと。ただ礼法に興味があるので、国の祖先祭殿とか、外交の席で、きちんと礼服を着て、小役人でいいですからそう言った場に出てみたいです。」

従来訳

論語 下村湖人

そして、いわれた。
「求よ、お前はどうだ。」
 冉求はこたえた。――
「方六七十里、あるいは五六十里程度のところでしたら、三年ぐらいで、人民の生活を安定させる自信があります。尤も、礼楽といった方面のことになりますと、私はそのがらではありませんので、高徳の人の力にまたなければなりません。」
 先師、――
「赤よ、お前はどうだ。」
 公西華がこたえた。――
「まだ十分の自信はありませんが、稽古かたがたやって見たいと思うことがあります。それは、宗廟のお祭りや、国際会談といったような場合に、礼装して補佐役ぐらいの任務につくことです。」

下村湖人『現代訳論語』

現代中国での解釈例

「冉求,你怎樣?」答:「方圓幾十里的地方,我來治理,衹要三年,可使百姓衣食充足,至於精神文明,要等能人來教化。「公西赤,你怎樣?」答:「我不敢說能幹好,但願意學習。祭祀的事,外交的事,我願穿著禮服,做個助理。

中国哲学書電子化計画

「冉求、お前はどうする?」答えた。「数十里四方の土地を、私が治めたら、たったの三年で、住民の衣食を完備し、精神文明方面については、その能の有る人に来て貰って教育して貰います。」「公西赤、お前はどうする?」答えた。「私には言い出すほどの才能はありませんが、実地に演習がしたいです。祭祀の事、外交の事で、私は礼服を着て、助手の一人になります。」

論語:語釈 →項目を読み飛ばす

孔子の弟子、冉求子有のこと。後世、子路と共に政才を評価され新興武装士族だった冉一族のおそらく当主。武将としても活躍した。詳細は論語の人物・冉求子有を参照。

爾→壐

論語の本章では”お前”。壐は古くさく見せるための、漢儒者のハッタリに過ぎない。本来”お前”の語義は持たないが、本字の「爾」の原義が”判子”であることからの転用。詳細は論語語釈「爾」を参照。

方六七十、如五六十

論語 方 金文 論語 方
「方」(金文)

論語の本章では、”六七十里四方、または五六十里四方の小国”。

ここでの「如」は、”もしくは”という選択を表す助辞。これも前章の「率」と同様、前漢儒者のやらかしたハッタリで、本章を古くさく見せるため、「與」ȵi̯o(平)”…と”と書くべきところ、音の近い「如」zi̯o(上)を引っ張ってきて、無理やり”…と”という語義をこしらえた。こんな読み方は、後世の猿真似を除けば、やはり前漢儒者がでっち上げた『儀礼』の「公如大夫」ぐらいしかない。詳細は論語語釈「如」を参照。

「六七十・五六十」では「里」が省略されているが、里はもともと三百歩四方の面積の単位であり、論語時代の1歩は約1.3mとwikipediaに言う。すると長さ1里≒390mであり、50里四方だと1辺19.5km四方、70里四方だと1辺27.3km四方となる。おおむね日本の地方都市ぐらいの規模だろうか。

ただし爵位によってこのような領地の広さに規定があると言い出したのは、孔子より一世紀後の孟子で、伯爵が七十里、子爵男爵が五十里らしい。もちろんそんな制度など、孟子のでっち上げである。論語語釈「方」も参照。

論語の本章では”だいたいそれぐらい”。原義は”背比べ”で、そこから発生した、同程度の、という派生義。詳細は論語語釈「比」を参照。

禮樂/礼楽

論語の本章では”礼儀作法と音楽”。儒教的教育のこと。論語語釈「礼」論語語釈「楽」も参照。

論語の本章では”待つ”。初出は前漢の隷書。論語の時代に存在しない。詳細は論語語釈「俟」を参照。

君子

論語の本章では”教養人”。孔子の生前では、「君子」はただ単に貴族を意味するだけだったが、やはり孔子より一世紀後の孟子により、教養人とか道徳に優れた人とか言った、面倒くさい語義がねじ込まれた。詳細は論語における君子を参照。

論語の本章では”願う”。初出は戦国文字で、論語の時代に存在しない。部品の「原」には、”たずねる・根本を推求する”の語釈を『大漢和辞典』が載せる。詳細は論語語釈「願」を参照。

論語の本章では”…しよう”。初出は戦国時代末期の金文。論語の時代に存在しない。論語時代の置換候補は近音の「安」。詳細は論語語釈「焉」を参照。

宗廟如會同

ここでの「如」も、上掲「如五六十」と同じ儒者のハッタリ。”…と”。「宗廟」はここでは国公の祖先祭殿。「會(会)同」は、諸侯同士の会合。

端章甫(タンショウホ)

論語の本章では、”玄端(黒の礼服)と章甫(黒色の冠)”のこと。「端」については詳細は論語語釈「端」を参照。
論語 孔子家語 五経図彙 章甫之冠

「甫」は論語では本章のみに登場。漢音・呉音は「フ」、初出は甲骨文。カールグレン上古音はpi̯wo(上)。「ホ」は慣用音。詳細は論語語釈「甫」を参照。

儒者にはパブロフ反応があって、礼服とか儀式とかがチロとでも出ると、馬のションベンみたいにウンチクを書き付ける癖がある。『論語集釋』にはうんざりするほどそれらが記されているが、本章を理解するのに何の役にも立たず、バカバカしいので記さない。

小相

論語 小 金文 論語 相 金文
(金文)

論語の本章では、”小役人”。「相」は大臣を意味することもあるが、論語の時代では”事務担当者”の意味で使われることが多い。

『学研漢和大字典』によると「小」は象形文字で、中心の┃線の両わきに点々をつけ、棒を削ってちいさく細くそぐさまを描いたもの。消(火をちいさくする)・宵(日光がちいさくなる夕方)・肖(肉づきをちいさく削る)・削(サク)(ちいさくけずる)などと同系のことば、という。

一方『字通』では貝または玉を示すであろうと言い、微少なものの形という。詳細は論語語釈「小」を参照。

「相」は『学研漢和大字典』によると会意文字で、「木+目」。木を対象において目でみること。AとBとがむきあう関係をあらわす。爽(ソウ)(離れて対する)・霜(離れてむきあうしも柱)と同系。胥siag・sioは、その語尾がgに転じたことばで、相と同じ意、という。詳細は論語語釈「相」を参照。

論語:解説・付記

冉求は言葉通り、季氏の領地・費邑の代官として大過なく勤めているから、この言葉には後日の裏付けがある。但し本章そのものは前漢帝国の儒者によるでっち上げである。

この章、つづく。

警告

漢文業界の者は嘘つき中国人そっくりで、微塵も信用ならぬ(→理由)ので、数言申し上ぐ。


出典明記の引用は自由だが(ネット上では可動リンク必須)、盗用・剽窃は居合を嗜む有段者の訳者が、櫓櫂の及ぶ限り追い詰める。言い訳無用。訳者が「やった」と思ったら、全国どこでも押し込む。頭にきたら海外にも出かけ、バッサリやってすぐ帰る。訳者は暇であるし、惜しむものを持っていないし、面倒が苦にならぬゆえ、こうして古典を研究している。

刀の手入れは毎日している。そして未だ人を斬ったことが無い。

盗作・剽窃の通報歓迎。下手人を成敗した後、薄謝進呈。他人にやらせた者も同罪、まずそ奴から追い回してぶっ○○る。もし長生きしたいなら、悪いことはせぬものだ。それでもやるなら、覚悟致せ。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

関連記事(一部広告含む)