論語詳解112公冶長篇第五(20)甯武子、邦に’

論語公冶長篇(20)要約:利口の真似はバカにも出来るが、利口がバカの真似をしているのを真似るのは、簡単にできる事ではありません。食うか食われるかの政界で、みごと生き残った隣国の家老を、孔子先生は高く評価するのでした。

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論語:原文・書き下し →項目を読み飛ばす

原文

子曰、「甯武子、邦有道則知。邦無道則愚。其知可及也、其愚不可及也。」

復元白文

子 金文曰 金文 論語 甯 金文大篆論語 武 金文子 金文 邦 金文有 金文道 金文則 金文智 金文 邦 金文無 金文道 金文則 金文禺 愚 金文 其 金文智 金文可 金文論語 及 金文也 金文 其 金文禺 愚 金文不 金文可 金文論語 及 金文也 金文

※甯→(金文大篆)。論語の本章は也の字を断定で用いているとすると、戦国時代以降の儒者による捏造の可能性がある。

書き下し

いはく、甯武子ねいぶしは、くにみちらばすなはなり、くにみちからばすなはなり。にはおよなりにはおよからざるかななり

論語:現代日本語訳 →項目を読み飛ばす

逐語訳

論語 孔子
先生が言った。「甯武子ネイブシは、国政に原則があれば知者であり、国政に原則がなければ愚者だった。その知だけは真似できても、愚は真似ることが出来ないことよ。」

意訳

論語 孔子 褒める
大したものだ、甯武子は。政道がまともなら賢者として活躍し、まともでなければバカのふりをして丸く収めた。賢者の真似は誰でも出来るが、バカのふりは真似できない芸当だよ。

従来訳

論語 下村湖人
 先師がいわれた。――
甯武子ねいぶし)は国に道が行われている時には、見事に腕をふるって知者だといわれ、国が乱れている時には、損な役割を引きうけて愚者だといわれた。その知者としての働きは真似が出来るが、愚者としての働きは容易に真似の出来ないところだ。」

下村湖人『現代訳論語』

現代中国での解釈例

孔子說:「寧武子這人,國家太平時,就聰明,國家混亂時,就愚笨。他的聰明可以學得來,他的愚笨別人學不來。」

中国哲学書電子化計画

孔子が言った。「寧武子という人は、国家が安定しているとき、まさしく聡明で、国家が混乱しているとき、まさしく愚かだった。彼の聡明は真似できるが、彼の愚かは別人に真似できない。」

論語:語釈 →項目を読み飛ばす

甯武子(ネイブシ)

論語 甯 金文大篆 論語 武 金文 論語 子 金文
「甯」(金文大篆)・「武子」(金文)

孔子より約一世紀前に活躍した、衛国の大夫。忠臣として知られた。姓は姫、氏は甯、名は兪(→wiki)。礼法にも明るく、孔子好みの人物だから「賢者として活躍」はわかるが、「バカの真似」は同時代資料を読まねば分からない。

主君の成公が、晋に圧迫されて都城を朝歌(殷の古都)から帝丘(夏の古都)へ移した際、夢占いから夏の神を祭ろうとした時、「鬼神はその族類でなければ、祭祀を受け付けません」と言って諫止したという。論語為政篇(24)その鬼にあらずしての元ネタは、甯武子かもしれない。

なお甯武子は魯に招かれた際、天子の宴会で奏される音楽でもてなされたが、聞こえないふりをした。理由を聞かれて「楽団が本番前の練習しているのかと思いまして」と答え、魯の顔も潰さず、礼法も守ったとされている。この当意即妙の応対が「バカの真似」かも知れない。孔子なら存外、真っ赤になって「無礼ですぞ!」と言い出しかねないからである。

なお甯武子は、『史記』孔子世家ではキョウのまちで包囲された孔子(論語子罕篇5)を救った正義の味方として登場するが、時代が合わない。同名の人が論語時代にいたのか、それとも子孫か、ただの司馬遷のポカミスかは分からない。

甯の字の初出は後漢の『説文解字』で、カールグレン上古音は不明だが、藤堂音では寧と同音neŋで、”やすい・むしろ”の意で音通する。詳細は論語語釈「寧」を参照。

論語 愚 金文 論語 猿 愚
(金文)

論語の本章では”バカのふり。原義は”愚かなモノまね猿”。詳細は論語語釈「愚」を参照。

論語:解説・付記

論語の本章は「定州竹簡論語」に無く、成立が前漢宣帝期より下る可能性がある。もしそうなら「也」も断定で用いており、後世の作り話である可能性がある。本章についてはこれで終わりだが、ついでに儒者の感想文を見ておこう。

古注『論語義疏』

子曰甯武子註馬融曰衛大夫甯俞也武諡也邦有道則智邦無道則愚其智可及也其愚不可及也註孔安國曰詳愚似實故曰不可及也疏子曰至及也 此章美武子徳也云邦有道則智者言武子若值邦君有道則肆已智譏以贊明時也云邦無道則愚者若值國主無道則卷智藏明詳昬同愚也云其智可及也者是其中人識量當其肆智之目故為世人之可及也云其愚不可及也者時人多衒聰明故智識有及於武子者而無敢詳愚隠智如武子者故云其愚不可及也

本文「子曰甯武子」。
注釈。馬融「衛の大夫、甯俞のことである。武はおくり名である。」

本文「邦有道則智邦無道則愚其智可及也其愚不可及也」。
注釈。孔安国「バカのふりをしたので”真似が出来ない”と言われた。」

付け足し。先生は人間の可能性の限りを言った。本章は寧武子の徳をたたえたのである。邦有道則智とは、寧武子はもし使えるに値する君主だったら、知能を尽くして賢臣として振る舞ったことを言うのである。邦無道則愚とは、バカ殿の場合は才能をくらましてバカの振りをしたことを言うのである。其智可及也とは、人が利口そうに振る舞うときには、多寡が世間の誰にでも知れるから、及ぶべき、と言ったのである。其愚不可及也とは、当時の人が寧武子の利口の真似をしていたが、バカの振りは真似できなかったので、”バカの振りは真似できない”と言ったのである。

警告

漢文業界の者は嘘つき中国人そっくりで、微塵も信用ならぬ(→理由)ので、数言申し上ぐ。


出典明記の引用は自由だが(ネット上では可動リンク必須)、盗用・剽窃は居合を嗜む有段者の訳者が、櫓櫂の及ぶ限り追い詰める。言い訳無用。訳者が「やった」と思ったら、全国どこでも押し込む。頭にきたら海外にも出かけ、バッサリやってすぐ帰る。訳者は暇であるし、惜しむものを持っていないし、面倒が苦にならぬゆえ、こうして古典を研究している。

刀の手入れは毎日している。そして未だ人を斬ったことが無い。

盗作・剽窃の通報歓迎。下手人を成敗した後、薄謝進呈。他人にやらせた者も同罪、まずそ奴から追い回してぶっ○○る。覚悟致せ。

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