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論語詳解353憲問篇第十四(21)その言のとがめ’

論語憲問篇(21)要約:批判されない提案は、実現は難しいと孔子先生。新しい価値を作る人間は、それに反論しつつよりよい方法を探らないと、成功しません。しかし干からびた儒者はよってたかって、論語を書き換えたのでした。

論語:原文・書き下し

原文

子曰、「其言之不怍、則*爲之也難*。」

校訂

武内本

清家本により、則の下其の字を補う。唐石経、其の字なく、難也を也難に作る。後漢書皇甫規伝引其の字あり、此本(=清家本)と同じ。

定州竹簡論語

……「其言之不乍a,則□之也難b。」386

  1. 乍、今本作”怍”。
  2. 則□之也難、阮本作”則爲之也難”、皇本作”則其爲之難”、高麗本作”則其爲之難也”。

→子曰、「其言之不乍、則爲之也難。」

復元白文(論語時代での表記)

子 金文曰 金文 其 金文言 金文之 金文不 金文作 金文 則 金文為 金文之 金文也 金文難 金文

※論語の本章は、「則」の用法に疑問がある。

書き下し

いはく、こととがめざるは、すなはこれかたし。

論語:現代日本語訳

逐語訳

孔子
先生が言った。「言った言葉に”それは間違っている”と言われないようでは、実現するのは難しい。」

意訳

孔子
「それは違う」と反論されないような提案では、実現しないぞ。

従来訳

下村湖人

先師がいわれた。―― 「恥かしげもなく偉らそうなことをいうようでは、実行はあやしいものである。」

下村湖人『現代訳論語』

現代中国での解釈例

孔子說:「說話大言不慚,做起來就難了。」

中国哲学書電子化計画

孔子が言った。「法螺を吹いて恥じないようでは、実現は難しい。」

論語:語釈

、「 ()、 。」


怍(サク)→乍

怍 金文大篆
(金文大篆)

論語の本章では、”顔色が変わるぐらい強く後悔すること”。ただしこれは後漢儒者による勝手な改造。

『学研漢和大字典』によると会意兼形声文字で、乍(サク)・(サ)は、ざくと切れめを入れたさまを描いた象形文字で、短切な動作を起こす意を含む。作の原字。俊は「心+〔音符〕乍」で、心中にざくと切りこみを入れたように、強いショックを起こすこと、という。詳細は論語語釈「怍」を参照。

儒者の注釈は以下の通り(論語憲問篇21注釈)。例によって根拠が書いてない。

古注『論語集解義疏』

馬融曰怍慙也內有其實則言之不慙積其實者為之難也

馬融
馬融「怍ははじである。中身が充実していない嘘つきは、言葉と顔に必ず恥じる様子がある。中身が充実している人は、顔色に恥がないようなものだ。」

新注『論語集注』

大言不慚,則無必為之志,而不自度其能否矣。欲踐其言,豈不難哉?

論語 朱子 新注
大法螺を吹いて恥じないのは、必ず実行しようとする志がないのだ。そのくせ自分に出来るかどうかも考えない。言ったことを実践しようと思うなら、どうして難しいことがあろうか。

「乍」は人を呼び止める声で、とがめの声。従って「其言之不乍」とは、”とがめられることの無い発言”。詳細は論語語釈「乍」を参照。

則(ソク)

則 甲骨文 則 字解
(甲骨文)

論語の本章では、”~の場合は”。初出は甲骨文。字形は「テイ」”三本脚の青銅器”と「人」の組み合わせで、大きな青銅器の銘文に人が恐れ入るさま。原義は”法律”。論語の時代=金文の時代までに、”法”・”のっとる”・”刻む”の意と、「すなわち」と読む接続詞の用法が見える。詳細は論語語釈「則」を参照。

論語:付記

中国歴代王朝年表

中国歴代王朝年表(横幅=800年) クリックで拡大

(思案中)

『論語』憲問篇:現代語訳・書き下し・原文
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