論語詳解389衛霊公篇第十五(11)顔淵国をつくるを

論語衛霊公篇(11)要約:今日もフィギュア趣味がぴったし合った顔回と、孔子先生はファンタジーの世界にひたります。創造した主人公を、どんな世界で活躍させようか! 余人には入ることの出来ない二人だけの世界が繰り広げられます。

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論語:原文・書き下し →項目を読み飛ばす

原文

顏淵問爲邦。子曰、「行夏之時、乘殷之輅*、服周之冕、樂則韶舞、放鄭聲、遠佞人。鄭聲淫、佞人殆。」

復元白文

論語 顔 金文論語 淵 金文論語 問 金文論語 為 金文論語 邦 金文 論語 子 金文論語 曰 金文 論語 行 金文論語 夏 金文之 金文止 金文論語 日 金文 論語 乗 金文論語 殷 金文之 金文論語 服 金文論語 周 金文之 金文論語 楽 金文論語 則 金文論語 舞 金文 放 金文論語 鄭 金文聲 甲骨文 論語 遠 金文論語 人 金文 論語 鄭 金文聲 甲骨文淫 佞論語 人 金文

※時→止日・聲→甲骨文。論語の本章は上記の赤字が論語の時代に存在しない。本章は漢帝国の儒者による捏造である。

校訂

武内本:釈文、輅一本路に作る。路は輅の仮借字。

書き下し

顏淵がんえんくにつくるをふ。いはく、ときおこなひ、いんくるまり、しうべんかむり、がくすなはせうひ、ていおとて、佞人ねいじんとほざけよ。ていおとみだらなり、くちうまひとあやふし。

論語:現代日本語訳 →項目を読み飛ばす

逐語訳

論語 顔回
顔淵が国を作る方法を尋ねた。先生が言った。「夏の暦を使い、殷の車に乗り、周の冠をかぶり、音楽は韶の音楽に舞踏を伴うのがよい。鄭の音楽は捨て、口のうまい者を遠ざけろ。鄭の音楽はみだらだ。口のうまい者は危険だ。」

意訳

顔回「国の設定はどうすればいいでしょうか。」

論語 孔子 喜
孔子「暦は夏、車は殷、冠は周、音楽は韶の曲に合わせて舞わせるといい。鄭の曲はいかん、色っぽ過ぎる。そして口のうまい者を入れるな。世界が壊れるぞ。」

従来訳

論語 下村湖人

顔渕が治国の道をたずねた。先師がいわれた。――
「夏の暦法を用い、殷の輅に乗り、周の冕をかぶるがいい。舞楽は韶がすぐれている。鄭の音楽を禁じ、佞人を遠けることを忘れてはならない。鄭の音楽はみだらで、佞人は危険だからな。」

下村湖人『現代訳論語』

現代中国での解釈例

顏淵問怎樣治理國家,孔子說:「用夏朝的曆法,乘商朝的車輛,戴周朝的禮帽,提倡高雅音樂,禁止糜糜之音,疏遠誇誇其談的人。糜糜之音淫穢,誇誇其談的人危險。」

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顔淵がどうやって国を治めるかを問うた、孔子が言った。「夏王朝のこよみを用い、殷王朝の車に乗り、周王朝の礼冠をかぶり、高尚な音楽を推奨し、腐った音楽を禁止し、ほら吹きを遠ざけよ。腐った音楽は淫猥で、ほら吹きは危険だ。」

論語:語釈 →項目を読み飛ばす

顏(顔)淵(渕)

論語 顔 金文 論語 淵 金文
(金文)

孔子の弟子、顔回子淵のこと。論語時代の人物で唯一、孔子に仁者と評された。詳細は論語の人物:顔回子淵を参照。

爲(為)邦

論語 為 金文 論語 邦 金文
(金文)

論語の本章では、「為」は”おさめる”と伝統的に読む。しかし「為」を「治」の意味に読むのはかなり特殊で、原義に近い”つくる”と読んだ方が論語の原意に忠実だと訳者は考える。理由は下記の解説を参照。

夏之時

論語 夏 金文 論語 時 金文
「夏」「時」(金文)

”夏王朝の暦”。なぜ夏暦がよいのかについて、既存の論語本では藤堂本で、季節によく合う太陽暦だからとする。一方で『大漢和辞典』では、夏暦を太陰暦とする。wikipediaによると、現伝の夏暦は太陰太陽暦で、ただし漢代に偽作されたという。

現伝の『史記』が伝える伝説では、夏王朝を開いたの二代前の帝王、ギョウが、自ら天体観測をして暦を作ったことになっている。

今となっては、なぜ孔子が夏暦をいいとしたか、古代の闇の中に消えて分からない。

殷之輅(インのラク)

論語 殷 金文 論語 輅 金文大篆
「殷」「輅」(金文)

”殷王朝の車”。「輅」は”車”。藤堂本では、殷の車は堅牢だという。「輅」の初出は後漢の『説文解字』で、論語の時代に存在しない。

周之冕(シュウのベン)

論語 周 金文 論語 之 金文 論語 冕 金文大篆
(金文)

”周の冠”。「冕」は冠のこと。家老格以上がかぶる冠で、天頂にまな板状の板が付き、前後または前だけにすだれが付く。「冕」の初出は楚系戦国文字で、論語の時代に存在しない。
論語 冕冠

韶舞(ショウブ)

「韶」はシュン王が作ったことになっている古代の音楽。ただし舜は想像上の人物で、後世の仮託。孔子が斉で聞いて、三ヶ月肉の味を忘れたという。「韶舞」は、韶に合わせた舞とする説と、「舞」を周の武王作とされた「武」の曲とする説がある。

これも事実は古代の闇の中でわからない。

「韶」の初出は後漢の『説文解字』で、論語の時代に存在しない。

鄭聲(声)(テイセイ)

論語 鄭 篆書 論語 声 篆書
(篆書)

鄭国の歌。現伝する『詩経』を見る限り、歌詞には男女のことを扱った曲が多い。ただそれは多くの他国にも言えることで、孔子がなぜ「みだら」と言ったかは分からない。

佞人(ネイジン)

論語 佞 金文大篆
「佞」(金文大篆)

論語の本章では、”口車が回る者”。佞の字の初出は後漢の『説文解字』で、論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はnieŋで、同音に寧、寍(寧の古字)、濘(ぬかるみ、清い)。寧は丁寧の寧で、”ねんごろ”の意がある。つまり置換候補になりうるものの、”口車”としか解せない本章では不可。詳細は論語語釈「佞」を参照。。

淫(イン)

論語 淫 金文大篆
(金文)

”みだら”。性的にみだらなことをいう。この文字の初出は楚・秦の戦国文字で、論語の時代に存在しない。

殆(タイ)

論語 殆 金文大篆
(金文)

論語の本章では”あぶない・危険”。この文字の初出は後漢の『説文解字』で、論語の時代に存在しない。

論語:解説・付記

以下は間抜けにも、論語の本章が史実だとして記したあれこれである。

論語の本章を、現実の政治論と捉えてはならない。これは孔子と顔回という、不世出のオタクのコンビが、二人だけのファンタジーを語ったもので、それゆえ民政や財政や国防の話が一切出ない。師弟で架空の地図を書き、架空の制度を考え、ラノベを書こうとしているのだ。

外からこのページに降り立った方のために書き添えると、仁とは孔子があこがれながら創造した理想の人間像で、その詳細なスペックが礼で、その礼を知ることが論語で言う知だった。つまり現代の造形師が、理想の異性を創造し、髪色やスリーサイズを決めていくような光景。
論語 仁 フィギュア 単体

論語の本章は、この仁フィギュア趣味の定例会を孔子と顔回だけで開いているのであり、フィギュア=主人公が活躍するファンタジーの舞台を、二人して創作している光景。孔子の弟子の多くは、そのオタクぶりに呆れて付き合わなかったが、顔回は孔子と趣味が一致した。

だからこそ孔子は、論語の時代に生きた人物ではただ一人、顔回を仁者と評した(論語雍也篇7)。対して実務家のゼン有は、「先生の趣味には付き合えません」と実直に言ってしまったため(論語雍也篇12)、論語を見る限り弟子の仲で唯一、破門された(論語先進篇16)。
論語 冉求 冉有

実際顔回はその才能を孔子に最も高く評価された弟子にもかかわらず、生涯仕官しなかった。ファンタジーの世界に生きることを喜び、現実政治には興味がなかったと思われる。孔子もまたそれを賞賛したが(論語為政篇9)、それは自分の趣味の、最高の理解者だったからだ。

孔子一門にはこうした、姫無きオタサーの側面がある。

警告

漢文業界の者は嘘つき中国人そっくりで、微塵も信用ならぬ(→理由)ので、数言申し上ぐ。


出典明記の引用は自由だが(ネット上では可動リンク必須)、盗用・剽窃は居合を嗜む有段者の訳者が、櫓櫂の及ぶ限り追い詰める。言い訳無用。訳者が「やった」と思ったら、全国どこでも押し込む。頭にきたら海外にも出かけ、バッサリやってすぐ帰る。訳者は暇であるし、惜しむものを持っていないし、面倒が苦にならぬゆえ、こうして古典を研究している。

刀の手入れは毎日している。そして未だ人を斬ったことが無い。

盗作・剽窃の通報歓迎。下手人を成敗した後、薄謝進呈。他人にやらせた者も同罪、まずそ奴から追い回してぶっ○○る。覚悟致せ。

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