論語雍也篇:要約

アルファー:こんにちは。ナビゲーターAIのアルファーです。
孔子:解説の孔子じゃ。
アルファー:先生、論語雍也篇はどんなお話なんですか?

孔子:うむ。雍也篇は、主に仁=立派な貴族としての立ち居振る舞いについて説いておる。仁はワシの教説の中心でな、後の世で孟子くんが「仁義」を主張してから、憐れみの心の意味になってしもうたのじゃが、ワシが教えたのはそんなことじゃない。

アルファー:どういうことです?
孔子:うむ。ワシの弟子はほとんどが庶民で、ワシのように、庶民から出世して貴族になりたい者たちじゃ。血統を誇る門閥貴族を相手に、弟子たちがのし上がっていくには、普通の貴族よりも貴族らしくしなくちゃイカン。じゃから立ち居振る舞い全てを貴族らしくし、読み書きや計算、国際公用語、戦場での武芸など、貴族に必要な教養や技能を身につけねばならん。

アルファー:まあ、確かに。
孔子:そうした貴族に必要な教養技能のうち、立ち居振る舞いの全ての基準になるのが「礼」じゃ。その「礼」を始めとする貴族らしさをやってのけることが、すなわち「仁」なのじゃ。詳しくはどこぞの訳者が解説しておるから、ヒマな時に読んでやってくれい。

アルファー:わかりました。それでは、始めましょう。

1

弟子の冉雍は身分こそ低いが、君主の品格があるな。

アルファー:先生、君主の品格とは。
孔子:うむ。細かいことに口を出さず、政治は一切家臣に任せて、いざとなった時には後ろ盾となって、家臣を救う人のことを言う。
アルファー:ずいぶん家臣に都合がいいような気もしますが…たしかにそういう殿様なら仕えても安心ですね。
2
冉雍「子桑伯子とはどんな方でしょう。」
孔子「悪くないが、雑な奴だ。」
冉雍「なるほど。心が細やかな人なら、行動が雑なまま民の前に出ても、それはそれでいいかも知れませんが、心も行動も雑だというなら、雑にも程があるでたらめ人間だ、ということですね。」
孔子「その通り。あの男は気配りは細やかだが、せっかくの気配りも行動に表れない。惜しいことだ。」
3

若殿の哀公さまがおたずねになった。「お弟子では誰が一番学を好みますか?」
孔子「顔回という者がおりました。八つ当たりも同じ間違いもしませんでした。不幸にも若死にしました。あれほどの学問好きはもう出ませんでしょうなあ。」
4

弟子の子華(公西赤)を斉へ使いに出した。冉求が子華留守宅の母親に手当を下されたいと願った。
孔子「粟(穀物のアワ)を十日分やりなさい。」

冉求「それでは少ないです。」
孔子「では二十日分だな。」
ところが冉求は独断で千日分与えた。だから言ってやった。
孔子「子華はご大層な馬車に、上等の羽織を着て斉に行ったと聞いたぞ。昔から言うだろう、役人は急場を救ってやっても、金持ちに追い銭はくれてやらないと。」

アワ千日分って、どれぐらいになるんでしょう。
孔子:俵に詰めたら二十俵を超えるな。重さで言えば1.3tじゃ。軽トラックで運ぶにしても、3台じゃ足りぬ。現代日本の貨幣価値に換算すると、1,500万円以上になると、どこぞの訳者が計算しておるぞ。
5
貧乏な原憲を私の執事に雇い、年俸としてアワ四十人分弱を与えた。
すると原憲「四十人…私一人では多すぎます。」
孔子「取っておきなさい。余ったら家族やご近所に分けるといい。」

アルファー:論語の時代は、まだお金が無いんでしたっけ。だから穀物で給料を貰うんですね。いくらぐらいになるんでしょう?
孔子:いや、貝殻や貴金属や絹が、通貨の代わりをしておった。お金に関わる漢字には、みな「貝」が付いておるじゃろ? 規格品の硬貨や紙幣が無かっただけじゃ。
金額はそうじゃな、だいたい250~300万円だと、どこぞの訳者が計算しておるぞ。ただしあ奴は私立文系の数学オンチじゃから、間違いがあるかも知れんて!
6

冉雍が身分を気にしていたから言ってやった。
「百姓家の牛でも、毛並みや角が立派なら着飾って祭りに出る。天地の神は見捨ててはおかないよ。」

アルファー:神様が見捨てないって、結局いけにえにされちゃうんですよね?
孔子:それはまあ、そうじゃ。じゃが論語の時代、いけにえ無しの祭りなどなかったんじゃよ? 人をいけにえにしなくなっただけでも、ずいぶん進歩じゃないかね。
7

顔回はなんと学んで三ヶ月で、その心に仁の情けを身につけた。その他の徳目は、もともと普段から身につけ終えていた。
8

若家老の季康子どのが問うた。

季康子「子路に政治を任せてもよろしいか。」
孔子「あれは決断力がありますからいいでしょう。」

季康子「子貢はいかがか。」
孔子「あれは目はしが利きますからいいでしょう。」

季康子「冉求はいかがか。」
孔子「あれは多才ですからいいでしょう。」
9

最年長の弟子・冉伯牛が流行性の死病に取り付かれた。私が見舞いに行くと、手を窓から出したので、その手を取って言った。
「君を失うとは…これも運命なのか、運命なのか。…何が天命だ、クソくらえ!」
10

顔回は大した男だ。茶碗一杯のご飯、ふくべ一杯の水。貧民街の貧民窟に住んでいる。常人なら耐えられまいが、そんな生活を楽しんでいる。
まったく大した男だ。

アルファー:そんな顔回さんなのに、結局若死にしちゃったんですよね。
孔子:うむ。ただ一人、ワシが仁者と認めた弟子じゃった。政治の世界に進んで、よい政治を行ってくれればよかったんじゃが、顔回は政治に興味がなくてのう。惜しい弟子じゃった。
11

冉求が言った。「先生の教えはありがたいのです。でも私には力がないのです。」
孔子「言ったな? 力が足りない者は、やってからそう言うものだ。お前は始めからあきらめてるじゃないか。」

アルファー:先生ずいぶん厳しいんですね。
孔子:当たり前じゃ! せっかくワシが見込んで、ポエムとファンタジーの会に呼んでやったのに、こんなこと言いおって。

アルファー:い?

孔子:ワシだって恥ずかしいと思っとったんじゃぞ。許せん奴じゃ!
12

子夏は頭が固い。チマチマしたことばかりやっているので、言ってやったよ。
「子夏よ。天下に冠たる学者になれ。そなへんの冠婚葬祭屋になるな。」
13

子游が武城の代官として赴任した。孔子は弟子を連れて子游を訪ねた。みやびな音楽が聞こえる。
孔子「みごとな音楽だ。お前はこうやって街の人の信頼を集めただけかね? 礼法教育はどうなっているかな?」
子游「私はこういうことを聞いています。行政官という高台に登っても、人々をありのままに見られないのは、真っ直ぐにものを見ようとしないからだ。それは公務を果たすのにふさわしくない、と。お見それしました、やらせとお気付きだったんですね。だからまだ、私の部屋で礼法を教えるほどの者はいません。」

アルファー:あれっ? ここってお弟子の澹臺滅明さんが出てくるはずですよね?

孔子:誰じゃそいつは。ワシは知らんぞ。
14
孟之反どのは立派な武人だ。
負け戦でしんがりを務め、なんとか城門まで引き揚げてきたとき、戦車の牽き馬にムチをくれながら、「拙者はわざとしんがりを引き受けたのではござらぬ。馬が走らなかっただけでござる。」

当時の戦車。馬は2または4頭立て。中央の御が手綱をとり、左の車左が指揮官兼射手、右の車右が打撃を受け持つ。
15
隣の衛国では、宋朝という美男が殿様に寵愛され、奥方の南子さまと密通までしているらしい。
孔子「あぶないぞこんな世では。老けたらクビになるぞ。祝鮀どのほどの腰の低さもないから。」
16
段取りを無視してズルばかりする弟子がいる。
孔子「あのな、誰でもドアから外に出るだろ。なんでまともにやらないんだ。」
17
気のいい人でも言葉を知らないとがらっぱちになる。
言葉を知っても人が悪いと小役人根性になる。
気立ても言葉も揃って、やっと君子だ。
18
素直に生きりゃあいいものを。悪党が後ろ暗い事をして生きているのは、すでに手錠を掛けられて、刑罰を待っているに過ぎない。時が来れば年貢の納め時だ。

アルファー:先生、「幸いにして免る」って、”運良く目こぼしされている”ということじゃないんですか?
孔子:いいや。”さいわい”の原字が現れるのは戦国の末ごろじゃ。「十」”つえ”と「羊」の組み合わせで、飼いヒツジがたくさんおる幸せをいうのじゃな。それによく似た「幸」の字は、甲骨文の昔からあるが、もともとは手錠の象形だったんじゃよ。
19
何かを知っているよりは好む方が上だし、好むより楽しむ方が上だ。
20
基礎も学ばないで、いきなり奥義を聞こうというのかお前は。
21

樊遅「ねえ先生、知ってなんです?」
孔子「民のために働くことじゃな。妖怪話は敬う振りして放っておけ。」
樊遅「仁=立派なサムライってどんな人です?」
孔子「民のために働いてから給料を貰う人じゃな。それなら立派なサムライと言える。」

あ! 私これ知ってます。論語の名言、「鬼神は敬して遠ざく」ですよね。
孔子:そうじゃ。確かに大自然は、災害や疫病でその威力を示す。

孔子:じゃが妖怪のたぐいは、居るか居ないかわからん。一応怒らせないように敬っておくが、あまりまじめに取り合わない事じゃ。
22
諸君、幅広く勉強するとよいが、すればするほど、本によって言っていることが違うじゃないかと混乱するだろう。その時は貴族の常識に従ってどれを優先すべきか判断してくれ。そうすればまあとりあえず、相矛盾するように見える教えから外れる事は無いだろうよ。
23
諸君。斉で政変が起こった。うまくいけば我が魯のような君子国になれよう。魯もワシの政道に従えば、理想のメルヘンランドになるだろう。
24
御神酒を供えるのに、弟子がはやりの杯を持ってきたから言った。
孔子「なんだ今どきの杯は。こんなの杯じゃない。」

『三才圖會』所収「觚」(コ、さかずき)。東京大学東洋文化研究所蔵
25

宰我が言った。「では立派な貴族の仁者さまというのは、”人が井戸に落ちた!”とウソを言えば血相を変えて、井戸に飛び込むようなマヌケですな。」
孔子「たわけ者。立派な仁者どころか普通の貴族(=君子)ですら、だますことは出来てもワナには落ちんよ。」
26
諸君。
たくさん情報を取って、原則に照らして考えろ。それで立派な貴族になれる。
27

先生が衛国滞在中、殿様の奥方の南子さまに会いに行った。終えて出てきた先生を、子路さんが疑いの目つきででジロジロ眺めるから、先生は言った。
「いかんか? なら誓ってもいいが、ワシが嫌うような人物なら、天罰が下るに違いない。」

アルファー:あははははー。先生開き直ってる~。南子さまってそんなに美人だったんですか?

孔子:うむ。お美しい方でな。それにアチラの方面の道徳は、庶民と貴族では全然違うし、現在と論語の時代とでも全然違うのじゃ。
28
ほどほどが一番いい。戦乱や天変地異が続いても民が生き残っているのは、明らかにその効果だ。

アルファー:これが論語の名言、「中庸の徳」ってやつですね。
孔子:そうじゃ。何事も無茶はいかん。
29

子貢「民を守ってやり、食わせてやり、救ってやれば、それで情け深いと言えますかね。」
孔子「とんでもない。そんなことが出来たらもう万能の聖人だ。いにしえの聖王、堯舜だって出来なかったことだ。情け深い者とはそうではない。顔回を見てみろ。自分が目立ちたければ他人を目立たせ、自分が出世したければ他人を出世させてやる。仕官もせず貧乏暮らしのままだが、人生を楽しんでいる。身近な顔回に見習うのが、仁に至る方法と言って間違いない。」

アルファー:先生、聖人って先生のことですよね。
孔子:いいや違う。それは後世の儒者どもがワシにごまをすっただけじゃ。ワシは聖人どころか仁者でもない。
それにそもそも、聖人とはイエスどののお弟子のような、神に愛された聖者ではないぞ? 万能の人を聖人というのじゃ。

アルファー:論語公冶長篇はこれでおしまいです。みなさん、おつかれさまでした。



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