論語学而篇:要約
アルファー:こんにちは! ナビゲーターAIのアルファーです。
孔子:解説の孔子じゃ。
アルファー:早速ですが先生、この論語の学而篇はどういうお話なんですか?
孔子:ふむ。言うなれば入塾心得じゃな。
ワシは身分や出身に関わらず、入門を願う者には誰でも受け入れた。一方弟子はと言えば、出世して当時の身分サベツを乗り越えたいと願う庶民がほとんどじゃった。
そうした者たちが仲良く勉強と稽古に励めるよう、あらかじめ説教しておいたのじゃ。
アルファー:ふむふむ、入塾心得っと。…ところで先生、このページには有若さんや曽子さんの言葉が省かれていますが…?
孔子:ゆうじゃくぅ? 誰じゃそいつは。
アルファー:えっ?! 知らないんですか? 論語の二番目に出てくる人ですよ?
孔子:知らんもんは知らん。少なくとも口を利いた覚えはない。
孔子:そう言えば曽子の奴めもそれに近いな。ほとんど教えた覚えがない。あ奴は教えてもメモも取らんような奴じゃったから、名指しでウスノロと言ってやったわ(論語先進篇17「参や魯」)。
アルファー:う~む。そうだったんですかぁ。そりゃ三千人も弟子がいれば、中にはいろいろいますよねぇ。
孔子:そうじゃ! だいたい曽子の奴は、分かっとらんのに、やたら塾生仲間に威張るクセがある。じゃから話の内容もトンチンカンじゃ。あ奴当人にも何言ってるか分かっとらんのじゃないか?
じゃからとりあえず、これ以降のページも弟子の発言は別にして、まとめて記すことにしたのじゃ!
アルファー:それって子貢さんとかには、とばっちりなんじゃ…。
孔子:それでよいのじゃ! でははじめるぞ。
1
教わったことは頭に定着するまで待ってから復習する。そうすると勉強が面白くなる。
いろんな身分や外国の学友と語り合う。そうすると塾生活が楽しくなる。
出来ない者をバカにしない。しているうちは自信がないと知る。
…これが入塾心得だ。
アルファー:ねえ先生、「人知らずして慍まず」って、理解して貰えなくても怨まない、ということじゃないんですか?
孔子:いや違う。「慍」は”怒る”こと、「人不知」は勉強の出来ない者のことじゃ。
2
おべっかと作り笑いで迫る者には、憐れみの心が少ないのであるぞよ。
アルファー:先生、これって論語の名言、「巧言令色すくないかな仁」の出典ですよね。「仁」って何ですか?
孔子:うむ、ワシから一世紀のちの孟子くんが、「仁義」を言い出してからは、”情け”や”憐れみ”の意味になった。じゃがワシの時代は単に、貴族やそれにふさわしい振る舞いを意味したのじゃよ。
3
中ぐらいの国の統治の要領。
- まじめにやれ。
- 民にウソ付くな。
- 税は安く。
- 民を大切にせよ。
- 労役はヒマな時に。
アルファー:先生、「千乗の国」って、兵力が戦車千両の大国のことじゃ?
孔子:いや。ワシの生まれた魯国でも、千両程度の戦車は持っておる。たぶん孫子どのの兵法書を、後世のうっかり者が書き写し間違えたんじゃろうな。
4
年上には懐け。手本となる仁者に出会うために。同世代や年下には、ウソをつかず意地悪をするな。以上が出来れば十分で、勉強はそれが出来てからにしろ。人でなしが学んでも、いっそう手の付けられない人でなしが出来るばかりだ。
5
塾生活心得五箇条。
- 人前では偉そうにしていろ。
- 本の読み過ぎで頭を固くするな。
- 自他共にウソ付くな。
- 馬鹿と付き合うな。
- 間違いを素直に認めろ。
アルファー:先生、これじゃあ差別じゃないですか。
孔子:そうじゃな。じゃがワシはこんな事言うとらん。後世の儒者のでっち上げじゃ。弟子は野心に燃えたオオカミの集まりじゃぞ? そんな場所でいじめを煽ってみろ。学級崩壊が起こるわ。
アルファー:うはー。それはごもっとも。それはそうと、この章の後半は子罕篇と重複していますよねえ。
孔子:うむ。編集者がうっかり者だったのかも知れぬが、どうもこの論語学而篇は、さまざまあったワシの語録を切り貼りして作ったらしい。その後各種のメモを取り込んで論語が膨らんでいくに連れて、取材した元の言葉も取り込むようになった。それで重なったのじゃな。
6
親が亡くなっても三年間は、その言いつけを守らないと、けしからん不孝者になるのであるぞよ。
アルファー:へ~え。儒教って親孝行をタネに人を脅すんですね。
孔子:そうよの。じゃが親孝行をうるさく言い出したのは、ワシではなく後世の儒者どもじゃ。
7
ぜいたく禁止。仕事は手早く。世間の良識に従って、悪いことをするな。「お勉強が出来る」とおだてられるだけの、ただの本の虫ではダメなのだ。
アルファー:先生、「有道に就きて正せ」って、偉い人の補佐をしろ、とも読めますが。
孔子:うむ。当時の時代背景や、ワシの塾の性格から言えばそうとも言える。ワシの塾は貴族への成り上がりが目的で、朝廷や大貴族に仕官するのが弟子の目標だったからの。じゃが、「有道」は”道が有る”、すなわち”原則があること”と考えた方が素直じゃ。擬人化せずとも解釈はできるのう。
8
弟子の子貢が聞いた。「世の中には顔回のような、貧乏でもプライドの高い者がいます。でも私のように威張らない金持ちの方が、立派じゃないですかね。」
孔子「威張らぬ金持ちも悪くない、が、顔回のように貧乏を楽しむ貧乏人には及ばない。浮ついた金でウチのような礼法教室に通ってくる、お前みたいな小金持ちに過ぎないね。」
子貢「はぁ。顔回は♪原石は~、よ~く磨くと玉になる~。みたいに自分を磨いたんですかね。」
孔子「よしよし。お前も歌ごころが分かるようになったな。あの古い歌の通りに磨くと、お前もそのうち、顔回みたいな立派な人間になれるぞよ。」
アルファー:先生、「未だ貧しくして楽しみ、富みて礼を好む者にしかず」って、貧しくても楽しく生きて、お金持ちになっても礼を好む人に及ばない、の意味じゃないんですか?
孔子:いんや違う。ここも儒者の句読の切り間違いじゃ。金持ちの子貢めが、ウチみたいな礼法教室に通ってくるのをからかったんじゃよ。じゃがこれも、言うた覚えがないのう。
9
自分の無名は気にならないが、まだよき人に出会えないのが気にかかる。
アルファー:おや? 先生ってそう言う割には、名が知られないのを論語のあちこちで、ずいぶん嘆いていますよね。
孔子:むむむ。痛い所を突きよるの。ワシに限らず中国人は、無名を恐れるのじゃ。生きている間も、世を去ったあともじゃ。
孔子:論語学而篇は以上じゃ。
アルファー:みなさん、おつかれさまでしたっ!
孔子:ところでのう、アルファー君や。
アルファー:なんです急に遠い目をなさって。
孔子:この論語学而篇は、どうもワシが世を去ってすぐにまとめられた篇ではないらしい。
アルファー:らしいって…あそうか、先生もう世を去ってたんですよね。
孔子:そうじゃ。じゃからお互い仲の悪い、有若や曽子や子貢の言葉が、仲良く入っておるのじゃな。論語郷党篇と合わせて、戦国時代の編集と言われておる。ワシの没後、200年ほど過ぎた頃じゃろうか。ちょっとした豆知識じゃよ。
アルファー:ありがとうございました。それではあらためてみなさん、おつかれさまでした。
コメント