論語における「莫」

ほとんどが否定詞だが、里仁篇(10)、述而篇、先進篇に例外がある。
「莫」の甲骨文・金文・篆書・隷書

「莫」の甲骨文・金文・篆書・隷書

語義・語源

『大漢和辞典』 日暮れ。夜。遅い。若い。菜の名。あるいは暮に作る。なし。むなしい。さびしい、しづか。広い、大きい。つとめる。したふ。けずる、さる。ちる、しく。おそれる。さだまる。わるい(用例で里仁篇の章をこの義とする)。はかる。病む、やます、やまひ。うすかは。ひきまく、まくばり。諡。姓。徳が正しくて和にかなふをいふ。むなしい。
学研漢和大字典 草原のくさむらに、日が隠れるさまを示す会意文字。暮の原字。隠れて見えない、ないの意。幕(見えなくする布)-墓-無-亡と同系のことば。
意味:くれる、くれ、おそい。ない。なかれ。ことわる、さからう、うけつけないこと(用例で里仁篇の章をこの義とする)。むなしい、はてしなく広い。莫莫とは、こんもり茂っておおいかくすさま。
論語 漠
字通

茻(げう)+日。草間に日が沈むときの意で、(暮)の初文。莫が否定詞などに使われ、さらに日を加えて暮となった。〔説文〕一下に「日且(まさ)に冥(く)れんとするなり」とあり、莫・冥(めい)は双声。金文の〔晋公𥂴(しんこうてい)〕「來王せざる莫(な)し」のように、否定詞に用いる。否定詞の用法は、靡・末・無・(亡)・罔・(蔑)などと声近く、通用の義。金文には日暮の意の例がなく、亞(亜)字形中に莫をしるして、墓の意を示したかとみられる用例がある。
訓義:ひぐれ、くれかた、よる。くらい、おそい。むなしい、さびしい。漢と通じ、ひろい、しずか。ない、なかれ、打ち消しに用いる。

論語での語法

  1. 「無也」追われる。(里仁篇)
  2. 「不患己知」否定詞。(里仁篇)
  3. 「何由斯道也」否定詞。(雍也篇)
  4. 「文吾猶人也」「文莫」で「=勉慕。強いて務め励む」。北中国の古い方言で、従来の注の多くは誤りと藤堂本にある。(述而篇)
  5. 春者」おそい。(先進篇)
  6. 「則民敢不敬」否定詞。(子路篇)
  7. 「如其善而之違也」否定詞。(子路篇)
  8. 「而之知也」否定詞。(憲問篇)
  9. 我知也夫」否定詞。(憲問篇)
  10. 己知也」否定詞。(憲問篇)
  11. 能興」否定詞。(衛霊公篇)
  12. 「何學夫詩」否定詞。(陽貨篇)
  13. 不有文武之道焉」否定詞。(子張篇)

論語での用例

  1. 子曰:「君子之於天下也,無適也,無也,義之與比。」(里仁篇)
  2. 子曰:「不患無位,患所以立;不患己知,求為可知也。」(里仁篇)
  3. 子曰:「誰能出不由戶?何由斯道也?」(雍也篇)
  4. 子曰:「文,吾猶人也。躬行君子,則吾未之有得。」(述而篇)
  5. 子路、曾皙、冉有、公西華侍坐。子曰:「以吾一日長乎爾,毋吾以也。居則曰:「不吾知也!』如或知爾,則何以哉?」子路率爾而對曰:「千乘之國,攝乎大國之間,加之以師旅,因之以饑饉;由也為之,比及三年,可使有勇,且知方也。」夫子哂之。「求!爾何如?」對曰:「方六七十,如五六十,求也為之,比及三年,可使足民。如其禮樂,以俟君子。」「赤!爾何如?」對曰:「非曰能之,願學焉。宗廟之事,如會同,端章甫,願為小相焉。」「點!爾何如?」鼓瑟希,鏗爾,舍瑟而作。對曰:「異乎三子者之撰。」子曰:「何傷乎?亦各言其志也。」曰:「春者,春服既成。冠者五六人,童子六七人,浴乎沂,風乎舞雩,詠而歸。」夫子喟然歎曰:「吾與點也!」三子者出,曾皙後。曾皙曰:「夫三子者之言何如?」子曰:「亦各言其志也已矣。」曰:「夫子何哂由也?」曰:「為國以禮,其言不讓,是故哂之。」「唯求則非邦也與?」「安見方六七十如五六十而非邦也者?」「唯赤則非邦也與?」「宗廟會同,非諸侯而何?赤也為之小,孰能為之大?」(先進篇)
  6. 樊遲請學稼,子曰:「吾不如老農。」請學為圃。曰:「吾不如老圃。」樊遲出。子曰:「小人哉,樊須也!上好禮,則民敢不敬;上好義,則民敢不服;上好信,則民敢不用情。夫如是,則四方之民襁負其子而至矣,焉用稼?」(子路篇)
  7. 定公問:「一言而可以興邦,有諸?」孔子對曰:「言不可以若是其幾也。人之言曰:『為君難,為臣不易。』如知為君之難也,不幾乎一言而興邦乎?」曰:「一言而喪邦,有諸?」孔子對曰:「言不可以若是其幾也。人之言曰:『予無樂乎為君,唯其言而予違也。』如其善而之違也,不亦善乎?如不善而之違也,不幾乎一言而喪邦乎?」(子路篇)
  8. 子貢曰:「管仲非仁者與?桓公殺公子糾,不能死,又相之。」子曰:「管仲相桓公,霸諸侯,一匡天下,民到于今受其賜。微管仲,吾其被髮左衽矣。豈若匹夫匹婦之為諒也,自經於溝瀆,而之知也。」(憲問篇)
  9. 子曰:「我知也夫!」子貢曰:「何為其知子也?」子曰:「不怨天,不尤人。下學而上達。知我者,其天乎!」(憲問篇)
  10. 子擊磬於衛。有荷蕢而過孔氏之門者,曰:「有心哉!擊磬乎!」既而曰:「鄙哉!硜硜乎!己知也,斯己而已矣。深則厲,淺則揭。」子曰:「果哉!末之難矣。」(憲問篇)
  11. 在陳絕糧,從者病,能興。子路慍見曰:「君子亦有窮乎?」子曰:「君子固窮,小人窮斯濫矣。」(衛霊公篇)
  12. 子曰:「小子!何學夫詩?詩,可以興,可以觀,可以群,可以怨。邇之事父,遠之事君。多識於鳥獸草木之名。」(陽貨篇)
  13. 衛公孫朝問於子貢曰:「仲尼焉學?」子貢曰:「文武之道,未墜於地,在人。賢者識其大者,不賢者識其小者,不有文武之道焉。夫子焉不學?而亦何常師之有?」(子張篇)

論語:解説・付記

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