論語語釈「ヨ」

目的の項目が表示されるまでに時間が掛かる場合があります。もしurl欄に目的の漢字が無い場合、リンクミスですので訳者にご一報頂けると幸いです。
語釈 urlリンクミス

與/与(ヨ・4画)

論語 與 与 金文
𦅫鎛・春秋中期

初出は春秋中期の金文。カールグレン上古音はzi̯o(平/上/去)。同音多数。現伝の論語で「與」となっているのを、定州竹簡論語で「予」と書いており、今音同訓の「」dio(平)またはdi̯o(上)の置換候補。

與のカールグレン上古音zi̯oは、耶のzi̯ɔときわめて近い。

論語では、”したがう”・”…より”・”…か”と、一般動詞、比較辞・疑問辞の三つに使われている。『大漢和辞典』の第一義は”くみ・なかま”。もったいを付けた同訓に「」がある。

学研漢和大字典

論語 与 論語 与 解字
会意兼形声文字で、与は牙(ガ)の原字と同形で、かみあった姿を示す。與はさらに四本の手をそえて、二人が両手でいっしょに物を持ちあげるさまを示す。「二人の両手+〔音符〕与」で、かみあわす、力をあわせるなどの意を含む。

舁(ヨ)(力をあわせてかつぎあげる)・輿(ヨ)(力をあわせて持ちあげるみこし)・擧(キョ)(=挙。力をあわせて持ちあげる)などと同系のことばという。

意味

  1. {動詞}くみする(くみす)。力をあわせる。広く、いっしょに物事をするために仲間になる。「易与=くみし易し」。
  2. {名詞}組。仲間。「与党」「与国」。
  3. {動詞}あずかる(あづかる)。参加する。▽去声に読む。「参与」「而王天下、不与存焉=しかうして天下に王たるは、あずかり存せず」〔孟子・尽上〕
  4. {副詞}ともに。→語法「1.」。
  5. {前置詞}と。→語法「2.」。
  6. {接続詞}…と…と。→語法「3.」。
  7. {前置詞}より。→語法「4.」。
  8. {動詞}あたえる(あたふ)。▽賜予の予に当てた用法。「供与」「可以与、可以無与=以てあたふべく、以てあたふる無かるべし」〔孟子・離下〕
  9. {助辞}か。→語法「6.7.8.」▽平声に読む。

語法

  1. 「ともに」とよみ、「いっしょに」「つれだって」と訳す。従属の意を示す。「不欲与争列=与(とも)に列を争ふを欲せず」〈(廉頗と)二人で席次を争う機会を避けた〉〔史記・廉頗藺相如〕
  2. 「~と」とよみ、「~と」と訳す。対象の意を示す。「与朋友交=朋友と交はる」〈朋友と交わる〉〔論語・学而〕
  3. 「~と…と」とよみ、「~と…と」と訳す。並列の意を示す。「富与貴、是人之所欲也=富と貴きとは、これ人の欲する所なり」〈富と貴い身分とは、誰もが得たいと思うものだ〉〔論語・里仁〕
  4. 「より」とよみ、「~よりは」と訳す。比較して選択する意を示す。
    (1)「与其~寧…」は、「その~よりは、むしろ…」とよみ、「~よりも…がよい」と訳す。「礼与其奢也寧倹=礼はその奢(おご)らんよりは寧ろ倹なれ」〈礼ははでやかにするよりも、ひかえめのほうがよい〉〔論語・八佾〕
    (2)「与(其)~、豈若…=(その)~よりは、あに…にしかんや」「与(其)~不如…=(その)~よりは、…にしかず」「与(其)~執若…=(その)~よりは、…にいずれぞ」も、意味・用法ともに同じ。「与其煩於薦饗、孰若行其教=その薦饗(せんきゃう)に煩(わづら)はさるるよりは、その教を行ふに孰若(いづれ)ぞ」〈供え物をして祭ることに煩わされるよりは、(儒学の)教えを行う方がよい〉〔新唐書・劉禹錫〕
  5. 「孰与~」は、「いずれぞ」とよみ、「~にくらべてどちらが」と訳す。比較して選択する意を示す。「沛公曰、孰与君少長=沛公曰く、君の少長に孰与(いづれ)ぞ」〈沛公は、君(張良)とどちらが年上かと聞いた〉〔史記・項羽〕
  6. 「か」とよみ、「~であろうか」と訳す。疑問の意を示す。文末・句末におかれる。「子謂冉有曰、女弗能救与=子冉有に謂ひて曰く、女(なんぢ)救(や)むること能はざるかと」〈先生が冉有に向かって、お前にはやめさせることができないのかと言われた〉〔論語・八佾〕
  7. 「や」とよみ、「~であろうか(いやそうではない)」と訳す。反語の意を示す。文末・句末におかれる。「先事後得、非崇徳与=事を先にして得ることを後にするは、徳を崇(あが)むることに非(あら)ずや」〈仕事を優先して利益を後回しにするのが、徳を高めることじゃなかろうか〉〔論語・顔淵〕
  8. 「か」「かな」とよみ、「~であるなあ」と訳す。詠嘆の意を示す。文末・句末におかれる。「語之而不惰者、其回也与=これに語(つ)げて惰(おこた)らざる者は、それ回なるか」〈話をしてやって、それに怠らないのは、まあ回だね〉〔論語・子罕〕

字通

[会意]旧字は與に作り、与を四手をもって捧げている形。更に下に手を加えると、挙(擧)げる意となり、挙げ運ぶことをいう。〔説文〕三上に「黨與なり」とし、古文一字を録する。与は象牙二本を組み合わせた形とみられ、そのように貴重なものを、共同して奉じて運ぶ意であろう。共同の作業であるから、ともにする意となり、運んで他に移すので、賜与の意となる。象は殷代には江北の地にも多く棲息しており、その蹤迹は六朝のころまで認められる。象牙は、殷墟の侯家荘遺址や婦好墓からは、それに雕飾(ちようしよく)を施した精巧な遺品が出土している。与は牙の形に近く、その一双を組み合わせた形であろう。〔説文〕十四上に「賜予なり。一勺を与と爲す。此れ予と同じ」(義証)とするのは、与の字形を一勺の二字に分解して説き、一勺を以て人に与える意とするものであろうが、根拠のない説である。

豫/予(ヨ・4画)

論語 予 篆書 論語 吾
(篆書)

「予」の字の初出は戦国時代の金文で、カールグレン上古音はdio(平)またはdi̯o(上)。同音に、野などで、「余・予をわれの意に用いるのは当て字であり、原意には関係がない」と『学研漢和大字典』はいう。”あたえる”の語義では、現伝の論語で「與」となっているのを、定州竹簡論語で「予」と書いており、「」(=与)zi̯o(平/上/去)が置換候補。

『字通』では織物の横糸を通すチョ(ひ)で、杼から糸が垂れた姿という。音が余に通じて”わたし”の意となった。本来は天子の一人称という。

論語 豫 篆書 論語 豫
「豫」(篆書)

「豫」は甲骨文からある本来別の字で、『学研漢和大字典』によると会意兼形声文字で、「象(動物のぞう→のんびりしたものの代表)+(音符)予(ヨ)」で、のんびりとゆとりをもつこと、という。

学研漢和大字典

象形。まるい輪をずらせて向こうへ押しやるさまを描いたもので、押しやる、伸ばす、のびやかなどの意を含む。杼(ジョ)(横糸を押しやる織機の杼(ヒ))の原字と考えてもよい。豫・預・野(ヤ)(広く伸びた原や畑)・舒(ジョ)(伸ばす)・抒(ジョ)(伸ばす)などの音符となる。代名詞に当てたのは仮借(カシャ)である。

語義

  1. {動詞}あたえる(あたふ)。面前のものを他人の前まで押しやってあたえる。「賜予(シヨ)」。
  2. {代名詞}われ。一人称の代名詞。▽平声に読む。《同義語》⇒余。「予不得已也=予已むことを得ざるなり」〔孟子・公下〕
  1. {動詞・形容詞}のんびりとゆとりをとる。うちとける。また、そのさま。▽猶予の予。「逸予」。
  2. {副詞}あらかじめ。ゆとりを置いて。前もって。▽予定の予。《同義語》⇒預。「予備」。
  3. {動詞}あずかる(あづかる)。あずける(あづく)。物をあたえて持たせておく。▽付与の与に当てた用法。「予託」。
  4. {名詞}昔の中国の九州の一つ。今の河南省。風土がのんびりと広いことからの命名。
  5. {名詞}周易の六十四卦(カ)の一つ。陟隍(坤下震上(コンカシンショウ))の形で、喜び楽しむさまを示す。
  6. 《日本語での特別な意味》「伊予(イヨ)」の略。「予州」。

字通

[象形]織物の横糸を通す杼(ひ)の形で、機杼(きじよ)の杼の初文。〔説文〕四下に「推し予(あた)ふるなり。相ひ予ふる形に象る」とするが、字形は両手相与える形とはみえず、下に長く垂れているのは糸。〔説文〕は下文に幻を録し、「相ひ詐惑(さわく)するなり。反予に從ふ」とするが、幻は機杼の往来する形で、その機巧の知るべからざるを幻という。〔爾雅、釈詁〕に「賜ふなり」とあるのは、與(与)の仮借義。また〔論語、述而〕に「天、徳を予(われ)に生ず」と一人称に用いるのは、余通用の義。予の本義は、その形声字の杼のうちに残されている。天子には「予一人」、幼少ならば「予小子」という。

[形声]旧字は豫に作り、予(よ)声。〔説文〕九下に「象の大なる者なり。賈侍中(逵)の説に、物に害あらず」とするが、両義ともその用例はない。〔書、顧命〕に「王、豫(たの)しまず」、〔孟子、梁恵王下〕に「我が王、豫(あそ)ばず」など、不予・悦予・逸予の意に用いる。心部十下に悆(よ)の字があり、「忘るるなり。嘾(ゆる)やかなるなり。周書に曰く、疾有りて悆(たの)しまずと。悆は喜(たの)しむなり」とあって、〔書、金滕〕の文を引き、字を悆に作る。〔敦煌唐写隷古定尚書残巻〕にも、「逸予」の字を悆に作る。「猶予」は形況の連語で、舒緩の意。力部十三下に「勨(やう)は繇(えう)、緩やかなるなり」とあって、その声に舒緩の意があるのであろう。また予定・予占の意に用いるのは、象を予占のことに用いたかと思われるが、そのことを確かめがたい。〔易〕の十翼に〔象伝〕がある。

餘/余(ヨ・5画)

論語 余 甲骨文 論語 余 金文
(甲骨文・金文)

「餘」の初出は戦国文字。カールグレン上古音はdi̯o(平)。「余」の初出は甲骨文。カールグレン上古音はdi̯o(平)。平声で麻-禅の音は不明。

『大漢和辞典』の第一義は”あまる”。『字通』によると、一人称の「余」と”あまる”の余は、本来別の字だという。『説文解字』という古い中国の字書によると、「余」=「饒」(饒舌ジョウゼツの饒)で、食べ物が余ることだという。

学研漢和大字典

論語 余 解字
会意兼形声文字で、「餘」は、「食+〔音符〕余(ヨ)」で、食物がゆったりとゆとりのある意を示す。ゆとりがあることから、あまってはみ出るの意。余・徐(ゆったり歩く)・舍(=舎。ゆったり休む家)と同系のことば。

また新字体の「余」は会意文字で、「スコップで土を押し広げるさま+八印(分散させる)」で、舒(ジョ)(のばす、ゆったり)の原字。ゆったりとのばし広げるの意を含む。余・予をわれの意に用いるのは当て字であり、原意には関係がない。

語義〔余〕

  1. {代名詞}われ。一人称の代名詞。《同義語》⇒予。「余聞而愈悲=余聞いて而愈悲しむ」〔柳宗元・捕蛇者説〕

語義〔餘〕

  1. {名詞・形容詞}あまり。必要以上の余計な分。余計なさま。「余分」「人民少而財有余=人民少なくして財余り有り」〔韓非子・五蠹〕。「行有余力=行ひて余力有れば」〔論語・学而〕
  2. {名詞}あまり。はみ出た端数。「年余(一年あまり)」「西出都門百余里=西のかた都門を出でて百余里」〔白居易・長恨歌〕
  3. {名詞}あまり。そのほかの物事。「慎言其余=慎みて其の余りを言へば」〔論語・為政〕
  4. {名詞}…のすえ。…のあと。「激怒之余(ゲキドノヨ)」。
  5. {動詞}あまる。のこる。のこる。また、のこす。「残余」「此地空余黄鶴楼=此の地空しく余る黄鶴楼」〔崔莇・黄鶴楼〕

字通

[仮借]余は把手(とつて)のある細い手術刀。これで膿漿を盤(舟)に除き取るを艅(よ)といい、兪(ゆ)(愈・癒)の初文とみられる。余は〔説文〕二上に「語の舒(ゆる)やかなるなり」とするが、静かに刀を動かすを徐という。卜文に王子中の一人に艅・余というものがあり、また我というものもあって、余・我はもと身分称号的な語であったらしいが、金文では余は一人称主語に、眹(朕)は所有格的に用いることが多い。〔左伝、僖九年〕「小白(斉の桓公の名)余」のように、その名にそえて、複称的にいうこともある。余一人・余小子のように用いる。余は手術刀、他は仮借の義である。いま餘の常用漢字として用いる。

[形声]旧字は餘に作り、余(よ)声。〔説文〕五下に「饒(おほ)きなり」とあり、前条に「饒(ぜう)は飽くなり」とあって、食余をいう。すべて残余・余意の存する状態をいう。一人称の余とは別の字であるが、いま余の字を餘の常用漢字として用いる。

譽/誉(ヨ・13画)

初出は楚系戦国文字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はzi̯o(平)。同音の與(与)zi̯o(去)を「譽に通ず」と『大漢和辞典』が言う。

学研漢和大字典

会意兼形声。与(ヨ)は、牙(ガ)の原字と同形で、かみあった姿。與(ヨ)は「四本の手+(音符)与」からなり、みんなの手をかみあわせてもちあげること。譽は「言+(音符)與」で、みんなでことばをあわせてもちあげて、ほめそやすこと。擧(=挙。みんなでもちあげる)と同系。類義語に奨。

語義

  1. {名詞}ほまれ。みんなにもてはやされる、よい評判。ほめそやされること。「名誉」「栄誉」「与其有誉於前、孰若無毀於其後=其の前に誉れ有らんよりは、其の後ろに毀無きにいづれぞや」〔韓愈・送李愿帰盤谷序〕
  2. {動詞}ほめる(ほむ)。みんなでもちあげてほめる。転じて、高い評価を与える。《対語》⇒毀(キ)(そしる)。《類義語》称。「称誉」「毀誉褒貶(キヨホウヘン)(ほめることと、そしること)」「誰毀誰誉=誰をか毀(そし)り誰をか誉めん」〔論語・衛霊公〕

字通

[形声]旧字は譽に作り、與(与)(よ)声。〔説文〕三上に「稱(ほ)むるなり」という。〔詩、周頌、振鷺〕「以て永く譽を終へん」の〔箋〕に「聲美なり」とあり、称誉・名声をいう。〔詩、大雅、韓奕〕の「燕譽」は「燕豫」の仮借である。

輿(ヨ・17画)

論語 輿 金文
閼輿戈・戰國晚期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はzi̯o(平)。

学研漢和大字典

会意兼形声。舁(ヨ)は、四本の手をそろえて、かつぎあげるさま。輿は「車+(音符)舁」で、平均をたもってかつぎあげ、その上に人や物をのせるこしや車の台。與(ヨ)(=与。いっしょにそろう)・擧(=挙。そろってもちあげる)などと同系。類義語に輦。

語義

  1. {名詞}こし。車軸の上に置いて、その上に人や物をのせる台。転じて、人や物をのせて、かついで運ぶ乗り物。《同義語》⇒舁(ヨ)。「車輿(くるま、くるまやかご)」「乗輿(ジョウヨ)(乗り物)」「肩輿(ケンヨ)(肩にかつぐかご)」。
  2. {動詞}かつぐ。のせる(のす)。なん人かが手をそろえてかつぎあげる。また、手輿(タゴシ)にのせてかつぐ。《同義語》⇒舁。《類義語》挙(キョ)。「輿以行之=輿ぎて以てこれを行る」〔春秋左氏伝・昭二一〕
  3. {名詞}万物をのせる台。すなわち大地。「輿地(ヨチ)(大地)」「堪輿(カンヨ)(天と地)」「坤輿(コンヨ)(大地)」。
  4. {形容詞}みんなが力をそろえるさま。みんなの。《同義語》与。「輿論(ヨロン)(=与論。みんなの意見)」「輿衆(ヨシュウ)(=与衆)」。

字通

[会意]車+舁(よ)。舁は左右上下よりもつ形。〔説文〕十四上に「車の輿(こし)なり」とあり、舁声とするが、四偶に手をかけて輦(てぐるま)をかつぐ形。車をかつぐ人を輿人、その言うところを輿論として、民衆の声とされた。〔左伝、僖二十八年〕に「輿人の誦」という語があり、誦とは本来は呪誦をいう。

歟(ヨ・18画)

初出は後漢の『説文解字』カールグレン上古音は、文末の疑問辞の場合平声と決まっているのでzi̯o。「與(与)」(カールグレン上古音zi̯o)にもったいをつけた書体だろう。

学研漢和大字典

によると形声文字で、「欠(からだをかがめて息を出す)+(音符)與(ヨ)」で、文末につけて、はあと息を出して疑問・反問の調子をあらわす助辞。乎(はあと息を出す)と同じ、という。

意味

{助辞}か。文末につけて疑問・反問の語気をあらわす助辞。▽多くは与(=與)で代用する。類義語に。「葛天氏之民歟」〔陶潜・五柳先生伝〕

字通

[形声]声符は與(与)(よ)。欠(けん)はその語気を出す形。〔説文〕八下に「安らかなる气(き)なり」とあり、ゆるい詠嘆や、かるい疑問の語気を示す。古くは與をその意に用いた。

夭(ヨウ・4画)

論語 夭 金文
亞夭白豆疋爵・殷代末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はʔi̯oɡ(平)。上声の音は不明。

学研漢和大字典

象形。人間のしなやかな姿を描いたもの。幼(細く小さい)・妖(ヨウ)(しなやかな女性)・優(しなやかな動作をする俳優)などと同系。

語義

  1. {形容詞}わかい(わかし)。しなやかでわかい。《対語》⇒老。
  2. (ヨウス)(エウス){動詞}わかじにする(わかじにす)。草木がまだしなやかな若芽のうちに枯れる。また、人が少年のうちに死ぬ。▽上声に読む。現在ではyāo。《対語》⇒寿。「夭折(ヨウセツ)」「不夭斤斧=斤斧に夭せられず」〔荘子・逍遥遊〕

字通

[象形]人が頭を傾け、身をくねらせて舞う形。夭屈の姿勢をいう。〔説文〕十下に「屈するなり。大に從ふ。象形」とし、〔繫伝〕に「其の頭頸を夭嬌(えうけう)するなり」という。若い巫女が手をあげ、髪を乱して舞う形は芺(しよう)で、笑の初文。その前に祝詞の器である𠙵(さい)をおく形は若、ゆえに夭若の意がある。その祝詞を捧げて舞う形は呉、神を娯(たの)しませることをいう。若・呉には笑い娯しむ意がある。もと神を娯しませる意であった。また早折を夭といい、災いを殀(よう)という。その鬱屈の象をとるものであろう。

用(ヨウ・5画)

論語 用 金文
我方鼎・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はdi̯uŋ(去)。

学研漢和大字典

論語 用 解字
会意文字で、「長方形の板+ト印(棒)」で、板に棒で穴をあけ通すことで、つらぬき通すはたらきをいう。転じて、通用の意となり、力や道具の働きを他の面にまで通し使うこと。庸(ヨウ、つき通す、ならす)・通と同系のことば。甬(ヨウ)(つらぬきとおす)とも縁が近い。「傭」の代用字としても使う。「雇用」。

意味

  1. {動詞}もちいる(もちゐる・もちふ)。力・人・道などをある面にまで及ぼして使う。▽訓の「もちゐる」は「もち(持)+ゐる(将)」から。「使用」「用心=心を用ふ」「用武之地=武を用ゐるの地」「割胯、焉用牛刀=胯を割くに、いづくんぞ牛刀を用ゐん」〔論語・陽貨〕
  2. {名詞}本質を体というのに対して、外にあらわれた働きのこと。はたらき。「作用」「礼之用、和為貴=礼の用は、和を貴しと為す」〔論語・学而〕
  3. {名詞}使う資財や資金。もとで。「国用(国の財政)」「費用」。
  4. {名詞}道具。「器用(道具や、うつわ)」。
  5. {動詞・前置詞}もって。…でもって。《類義語》以。「是用=是を用て」「用夏変夷=夏を用て夷を変ず」〔孟子・滕上〕
  6. 《日本語での特別な意味》
    ①よう。処理すべきである仕事。「用事」「公用」。
    ②よう。大小便をする。「小用」。

字通

象形。木を組んで作った柵の形。〔説文〕三下に「施行すべきなり。卜に従い、中に従う」という。字を卜と中とに分解し、卜してあたるとき、それは施すべきものであるとするが、卜文・金文の字形は木を編んだ木柵の形。中に犠牲をおくので、犠牲とすることを「用う」という。〔春秋、僖十九年〕「邾人、鄶子を執えて之を用う」とは、その鼻を撲って血を取り、牲血として用いる意で、古い用義法である。卜辞の占兆の辞に「茲れを用いよ」とあるのも、古くは用牲の意であろうが、のち施行の意になったものと思われる。金文の〔曽姫無䘏壺〕に「後嗣之れをもちいよ」、また〔左伝、隠元年〕「もちうること無れ」のように甬・庸を用い、みな通用の義。木柵の用に、上から土を塗りこんだのが庸、用にもつ所をつけたのが甬で桶の初文である。

訓義

  1. かき、犠牲を入れ、犠牲として用いる。
  2. もちいる、つかう、ほどこす。
  3. おこなう、はたらき。
  4. そおなえ、用意、ついえ。
  5. たから、道具、役立つもの。
  6. 以と通じ、もって、なす、よる。

大漢和辞典

用 大漢和辞典

羊(ヨウ/ショウ・6画)

論語 羊 金文
羊作父乙卣・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はzi̯aŋ(平)。

学研漢和大字典

象形。ひつじを描いたもの。おいしくて、よい姿をしたものの代表と意識され、養・善・義・美などの字に含まれる。

語義

ヨウ(平)
  1. び{名詞}ひつじ。家畜の名。肉は食用、毛は糸・織物の原料となり、皮も利用される。
ショウ(平)
  1. {形容詞}よい。めでたい。《同義語》⇒祥。「吉羊(=吉祥)」。

字通

[象形]羊を前からみた形で、牛と同じかきかたである。〔説文〕四上に「祥なり」と畳韻を以て訓する。漢代の鏡銘や瓦塼(がせん)の類に、羊を祥(祥)の字に用いることが多いが、省文にすぎない。羊は羊神判に用い、祥・善の字は羊に従う。卜辞に羌人を犠牲とするものが多いが、かれらが牧羊族であったことと関連があるかもしれない。

洋(ヨウ・9画)

洋 甲骨文
(甲骨文)

初出は甲骨文。カールグレン上古音は不明(平)。藤堂上古音はġiaŋ。

学研漢和大字典

形声。「水+(音符)羊」。羊(ひつじ)とは関係がない。揚(のびる)・敞(ショウ)(広い)と同系。

語義

  1. {名詞}うみ。ひろびろと広がる外海。また、大きなうみの名につけることば。「海洋」「大洋」「洋上」「渡洋」「太平洋」。
  2. {名詞}世界を東西の二つにわけた一つ。「東洋」「西洋」。
  3. {名詞}外国。ことに西洋のこと。また、事物の名の上につけて、外国の事物をあらわすことば。▽中国では、日本のことを「東洋」という。東方にある外国の意。「洋服」「洋酒」。
  4. {動詞}いっぱいに広がる。みちあふれる。「洋溢(ヨウイツ)(みちあふれる)」。
  5. 洋洋とは、
    ①広々として果てしないさま。「牧野洋洋=牧野洋洋たり」〔詩経・大雅・大明〕
    ②水がいっぱいに満ちているさま。「善哉、洋洋兮若江河=善い哉、洋洋として江河のごとし」〔列子・湯問〕
    ③人や物などが、多いさま。「万舞洋洋=万舞洋洋たり」〔詩経・魯頌・罘宮〕
    ④りっぱで美しいさま。「聖謨洋洋=聖謨洋洋たり」〔書経・伊訓〕
    ⑤一面に満ちているさま。「其喜洋洋=其の喜び洋洋たり」〔范仲淹・岳陽楼記〕
    ⑥いくあてもないさま。よるべのないさま。「焉洋洋而為客=ここに洋洋として客と為る」〔楚辞・哀郢〕
    ⑦胸中にわだかまりがないさま。「洋洋乎与造物者遊而不知其所窮=洋洋乎として造物者と遊びて其の窮まる所を知らず」〔柳宗元・始得西山宴游記〕
    ⑧ゆったりするさま。「少則洋洋焉=少くすれば則ち洋洋たり焉」〔孟子・万上〕

字通

[形声]声符は羊(よう)。〔説文〕十一上に洋水を斉の水名とするが、〔爾雅、釈詁〕に「多きなり」とあり、水の洋洋たるをいう。洋にまた祥(祥)(しよう)の音があり、「湯湯(しやうしやう)」というのと同じ。

要(ヨウ・9画)

要 金文
是要簋・西周中期

初出は西周早期の金文。カールグレン上古音はʔi̯oɡ(平)。

学研漢和大字典

会意。「⺽(両手)+㐫(あたま)もしくは呂(せぼね)+女」で、左右の手でボディーをしめつけて細くするさま。女印は、女性のこしを細くしめることから添えた。腰・去(ヨウ)(細い声でなく)・竅(キョウ)(細くしまった穴)・約(ヤク)(しめくくる)などと同系。異字同訓にいる⇒入。草書体をひらがな「え」として使うこともある。

語義

  1. {名詞}こし。細くしまったこし。《同義語》⇒腰。「細要(=細腰)」。
  2. {名詞・形容詞}かなめ。要点の要。こしは人体のしめくくりの箇所なので、かんじんかなめの意となる。たいせつな。▽去声に読む。「要点」「提要(要点だけをあげた概説)」「要領(こしと、くび→たいせつな要点)」「重要」。
  3. (ヨウス)(エウス){動詞}物事をしめくくる。つづめる。《類義語》約。「要約」。
  4. {接続詞}「要之=これを要するに」「要は」などの形で用い、前文をしめくくってまとめることば。▽去声に読む。「要之以仁義為本=これを要するに仁義を以て本と為す」〔史記・漢興以来諸侯王年表〕
  5. {動詞}もとめる(もとむ)。しめつけてしぼり出す。要求する。「強要」「以要人爵=以て人爵を要む」〔孟子・告上〕
  6. (ヨウス)(エウス){動詞}まつ。しむける。そうなるようにしむけてまちうける。《同義語》邀。「要撃(=邀撃。まちぶせ)」「要我乎上宮=我を上宮に要つ」〔詩経・眇風・桑中〕
  7. (ヨウス)(エウス){動詞}必要とする。いりようである。しなくてはならない。なくてはならない。「須要(シュヨウ)(=需要)」▽去声に読む。
  8. 《俗語》「将要…」とは、これからの意志やなりゆきをあらわすことば。…しようとする。▽去声に読む。「将要行(行こうとする)」。
  9. 《俗語》「要是」とは、仮定をあらわすことば。もし…ならば。如是。▽去声に読む。

字通

[象形]女子の腰骨の形で、腰の初文。〔説文〕三上に「身の中なり。人の要(こし)に象る」という。⺽(きよく)の部分は腰部の骨盤の形。人体の最も枢要な部分であるから、重要の意となり、要約の意となる。邀(むか)える意は、邀(よう)との音の通用の義である。

容(ヨウ・10画)

論語 容 金文

初出は上掲戦国末期の金文。カールグレン上古音はdi̯uŋ(平)。同音に庸とそれを部品とする漢字群、甬とそれを部品とする漢字群、用。いずれも、”いれる・かたち”の語義は無い。

現行の書体では宀+谷だが、もとは宀+公だったとされる。すると姓の「宮」と字の「公」”朝廷の庭”が対応し、理屈が通る。ただしこれは固有名詞だから通る理屈であり、一般の品詞では通用しない。

学研漢和大字典

会意兼形声。谷は、中がくぼんで水のはいるたに。容は「宀(いえ)+(音符)谷」で、からのわくの中に物を入れること。またその中身。人間のからだの輪郭の中におさまったすがたも容姿という。ヨウの音はヨクの語尾が鼻音となって伸びたもの。浴(水の中にからだを入れる)・慾・欲(中がくぼんで、物を入れたくなる)と同系。類義語に入・許。

語義

  1. {動詞}いれる(いる)。中に物をいれる。また、とりこむ。「収容」「瓠落無所容=瓠落して容るる所無し」〔荘子・逍遥遊〕
  2. {名詞}中身。中にはいっているもの。またその量。「内容」。
  3. {名詞}かたち。すがた。わくの中におさまった全体のようす。かっこう。「容貌(ヨウボウ)」「斂容=容を斂む」「女容甚麗=女の容甚だ麗し」〔枕中記〕
  4. {動詞}かたちづくる。すがたを整える。また、化粧する。「転側為君容=転側して君が為に容る」〔蘇軾・法恵寺横翠閣〕
  5. {動詞}ゆるす。いれる(いる)。ゆるす。また、ききいれる。受けいれる。「許容」「不容=容さず」。
  6. {形容詞}ゆとりがあるさま。「容与」。

語法

  1. 「まさに~すべし」とよみ、「~すべきである」と訳す。再読文字。当然の意を示す。「今日之事、不容復言=今日の事、容(まさ)にまた言ふべからず」〈今日の事態については、いまさら言ってもはじまらない〉〔世説新語・方正〕
  2. 「当容」も、「まさに~すべし」とよみ、意味・用法ともに同じ。「名士無多人、故当容平子知=名士多人無(な)し、故より当容(まさ)に平子に知らるべし」〈名士になるには、たくさんの人に認めてもらう必要はない。平子(王澄)に認めてもらえばそれでよい〉〔世説新語・賞誉〕

字通

[会意]宀(べん)+谷(よく)。宀は廟屋、谷は祝詞を収める器の𠙵(さい)の上に、彷彿として神気があらわれる形。容とは神容をいう。その神容を拝することを願うを欲という。容・欲・裕・浴の従うところは、谿谷の谷とは別の字である。〔説文〕七下に「盛んなるなり。宀谷に從ふ」とするが、その会意の意を説かず、古文としてまた公に従う字形をあげる。公は公廷・中廷の象で、儀礼の場所をいう。神容・容姿の意からいえば、谷に従うのがよい。

庸(ヨウ・11画)

初出は甲骨文。カールグレン上古音はdi̯uŋ(平)。

学研漢和大字典

会意兼形声。庚(コウ)は、Y型に立てたしん棒。庸は「庚+(音符)用」で、棒を手にもって突き通すこと。通と同じく、通用する、普通の、などの意を含む。また、用(もちいる)と同じ意にも使われる。

語義

  1. {動詞}もちいる(もちゐる・もちふ)。利用する。採用して働かせる。《同義語》⇒用。「登庸」。
  2. {名詞}雇い人。《同義語》⇒傭。「庸人(ヨウニン)(=傭人)」「沢居苦水者、買庸而決竇=沢居して水に苦しむ者は、庸を買ひて竇を決す」〔韓非子・五蠹〕
  3. {形容詞}つね。世の中に通行する、一般なみのさま。普通の。《類義語》凡(ボン)。「凡庸(ボンヨウ)」「知其非庸人也=其の庸人に非ざるを知れり」〔史記・荊軻〕
  4. {名詞}どこでもだれにでも通用する事がら・やり方。「中庸」。
  5. (ヨウス){動詞}ねぎらう。仕事の報酬を出す。「酬庸(シュウヨウ)」。
  6. {名詞}租・庸・調の三つの税の一つ。一定の期間、公の労役に服すること。▽そのかわりに、布や米をおさめて代償とすることが多かった。
  7. ゃ{副詞}なんぞ。→語法

語法

  1. 「なんぞ」「いずくんぞ」「あに」とよみ、「どうして~であろうか(いや~ではない)」と訳す。反語の意を示す。「吾庸敢虧覇王乎=吾庸(なん)ぞ敢(あ)へて覇王を虧(かろ)んぜん」〈私はどうして覇者王者となることに無関心でいられるだろうか〉〔呂氏春秋・慎大〕
  2. 「庸何」「庸安」「庸遽」「庸毫」も、「なんぞ」「いずくんぞ」「あに」とよみ、意味・用法ともに同じ。「其庸毫可乎=それ庸毫(なん)ぞ可ならんや」〈どうしてそれはよいことだろうか(いや、よくないことだ)〉〔荘子・人間世〕

字通

[会意]庚(こう)+用。庚は午(杵(きね))を両手でもつ形、用は木を柵のように組む形。そこに土を入れ、杵でつき固める。いわゆる版築の法に近いもので、こうして土墉(どよう)を作る。ゆえに庸は墉の初文。〔説文〕三下に「用ふるなり。用に從ひ、庚に從ふ。庚は事を更(あらた)むるなり」とするが、更新の意をもつ字ではない。〔詩、大雅、崧高〕「以て爾(なんぢ)の庸(しろ)と作(な)せ」とあるのが、字の本義。城の小なるものを庸といい、諸侯の微なるものを附庸という。〔左伝、僖二十七年〕「車服、庸を以てす」は功庸、その功に応じて車服を賜与する意。また庸常・中庸の意から、凡庸の意となる。用と通用する。庸が多義化するに及んで、その原義を示す墉が作られた。

※訳者注:墉→かきね。

葉(ヨウ/ショウ・12画)

葉 金文
拍敦・春秋

初出は春秋時代の金文。カールグレン上古音はdi̯ap(入)。

学研漢和大字典

会意兼形声。旦は、三枚の葉が木の上にある姿を描いた象形文字。葉は「艸+(音符)枼(ヨウ)」で、薄く平らな葉っぱのこと。薄っぺらなの意を含む。牒(チョウ)(薄く平らな木の札)・蝶(チョウ)(羽の薄いちょう)と同系。付表では、「紅葉」を「もみじ」と読む。▽草書体をひらがな「は」として使うこともある。

語義

ヨウ(入)
  1. {名詞}は。草木の茎・枝などについている薄く平らなもの。
  2. {名詞}花びら。また、ぺらぺらした薄いもの。「千葉桃」「前頭葉」。
  3. {単位詞}紙など薄いものを数えることば。《同義語》⇒頁。《類義語》枚。
  4. {名詞}袋とじの書物で、紙の表裏の関係にある二ページ。▽昔の木板印刷では、板木で刷った紙を中央より折り、袋状にしてとじた。
  5. {名詞}時代。▽あい重なる葉にたとえた。「中葉」「末葉」。
  6. {形容詞}薄っぺらで小さい。「一葉扁舟(イチヨウノヘンシュウ)」。
ショウ(入)
  1. {名詞}春秋時代、楚(ソ)にあった町の名。今の河南省葉県にあった。▽今では、人名も地名もヨウと読む。
  2. 《日本語での特別な意味》脳や肺などの一区切りの部分。「前頭葉」。

字通

[形声]声符は枼(よう)。枼は新しい枝の出た形、その枝上のものを葉という。〔説文〕一下に「艸木の葉なり」とあり、葉のようにうすいものは、葉を以て数える。金文に百世を「百葉」としるし、〔詩、商頌、長発〕「在昔中葉」の〔伝〕に「世なり」とあり、金文に世・枼・葉をすべて世の意に用いる。

雍(ヨウ・13画)

論語 雍 金文
水口隹目女簋・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はʔi̯uŋ(平/去)論語八佾篇では、音楽の名。食事が終わった後に奏でる。既存の論語本では吉川本など多くの先学が、天子専用の歌「ヨウ」であるという。

『大漢和辞典』は「雍」について、『淮南子』の注「雍、已食之楽也」を引いて”食事の終わったときに奏する”と記し、通説の言う祭祀のさの字も書いてない。原文は次の通り。

當此之時,鼛鼓而食,奏《雍》而徹,已飯而祭灶,行不用巫祝,鬼神弗敢祟,山川弗敢禍,可謂至貴矣。(『淮南子』主術訓)

当時は太鼓や鼓を叩いて食事し、雍の歌で食器を下げた。食事が終わってからかまどを祭ったが、その時にみこを呼ばなかった。それでも亡者の亡霊や自然界の精霊は祟りを起こさず、山川の神も災害を起こさなかった。だからこそ貴いと評価できる。

『淮南子』の注が高誘のものか許慎のものかは定かでないが、いずれにせよ後漢の儒者であり、当時も祭祀に限定してはいなかったと知れる。

また雍の字は、雍也篇以降では、孔子の弟子・冉雍仲弓の名として現れる。

学研漢和大字典

によると会意兼形声。邕(ヨウ)は「水+邑(村里)」の会意文字で、堀をめぐらして、守った村や建物をあらわす。雝は、雍のもとの字で「隹(とり)+(音符)邕」。外わくで囲んで鳥を安全に守ることをあらわす。外部との道をふさいで、内部をなごやかに保つこと。雍は、雝の字の変化した異体字。

語義

  1. {形容詞・動詞}やわらぐ(やはらぐ)。やんわりとつつんださま。やんわりとかかえこむ。また、なごやかに保つ。《類義語》邕(ヨウ)。「雍和(ヨウワ)」「曷不粛雍=なんぞ粛み雍がざらんや」〔詩経・召南・何彼橙矣〕
  2. {動詞}ふさぐ。ふさいで、通路を通じなくする。また、ふさがれて通じない。《同義語》壅。「毋雍泉=泉を雍ぐ毋かれ」〔春秋穀梁伝・僖九〕
  3. (ヨウス){動詞}いだく。両手と胸の間にだく。《同義語》擁。「雍樹(ヨウジュ)」。
  4. {名詞}まわりに堀をめぐらした建物。学校。《同義語》廱。「辟雍(ヘキヨウ)(学校)」。
  5. {名詞}中国古代の九州の一つ。今の陝西(センセイ)省北西部から、甘粛(カンシュク)省にかけての地。雍州(ヨウシュウ)。▽去声に読む。
  6. {名詞}秦の都。今の陝西省中部の宝鶏・岐州のあたり。紀元前六七八年頃、徳公が遷都。以来二八〇年間、戦国時代に櫟陽(ヤクヨウ)に遷都するまでの国都。秦はここに祖廟を置き、以後秦王政(後の始皇帝)までの歴代君主が成人式を行った。▽去声に読む。

字通

[会意]金文の璧雝(へきよう)を経籍に璧雍・辟雍に作り、雝は雍の初文、雍は雝の省略形と考えられる。雍は〔説文〕未収。雝は川・邑・隹(とり)の会意。金文には川+吕(宮室の象)+隹の会意の形に作る。水が池・沢となるところに、渡り鳥が時節を定めてくることを、祖霊が鳥形霊となって飛来するものと考え、そこに吕(宮)を作って祀った。水が璧のように四方をめぐり、その中島に祀所を建てたものを璧雝という。ゆえに雍容・雍和の意がある。雍は應(応)と声義近く、應は廟所に祈り、隹(鳥)卜いなどをして、神の反応があり、応諾を得ることをいう。鷹は鳥占(とりうら)に用い、いわゆる「うけひ狩り」をしたものであろう。

養(ヨウ・15画)

論語 養 金文 論語 養 甲骨文
𢼝父丁罍・殷代末期/(甲骨文)

初出は甲骨文。カールグレン上古音はzi̯aŋ(上/去)。

『大漢和辞典』の第一義は、”食べ物を与えて養う”こと。古い書体の形は「羊+杖+手」で、『字通』では、羊を飼うことを示す字という。

この甲骨文と金文は台湾の中央研究院と歴史語言研究所が共同で開設している「漢字古今字資料庫」http://xiaoxue.iis.sinica.edu.tw/ccdbには記載が無く、白川静博士独自の採取と思われるが、『字通』に「古文の字形は卜文・金文にもみえ、牧羊のことを示す字である」とある。暫定的に博士を信用して、孔子在世当時にあった文字だと判定する。

学研漢和大字典

会意兼形声文字で、昔の中国では、羊はおいしくて形よいものの代表とされた。養は「食+〔音符〕羊」で、羊肉のように力をつける食物をあらわす。善は、羊のようにうまいこと。美は、羊のようにうつくしいこと。義は、羊のようにかっこうがよいこと。いずれも羊をよい物の代表としている。

意味

  1. {動詞}やしなう(やしなふ)。食物を与えて力づける。「養育」「養老=老を養ふ」。
  2. {動詞}やしなう(やしなふ)。子どもを育てる。また、妻子やめかけを食べさせて生活させる。「生養」「乳養」「養妾(ヨウショウ)(めかけをかこう)」。
  3. {動詞}やしなう(やしなふ)。心や知恵などにプラスするものを与えて、力強く育てる。「教養」「養気=気を養ふ」「養其性=其の性を養ふ」〔孟子・尽上〕
  4. {名詞}やしない(やしなひ)。よい食べ物。▽漢方医学では、こなれた食物のエキスのこと。「滋養」「栄養」。
  5. {動詞・名詞}食事をしつらえる。また、その人。「廝養(シヨウ)(炊事人)」。
  6. {動詞}うむ。子どもをうむ。《類義語》生。「季遂立而養文王=季遂に立ちて文王を養む」〔韓詩外伝〕
  7. {動詞}やしなう(やしなふ)。下の者が上の人の飲食をととのえて仕える。▽去声に読む。「奉養」「供養」。
  8. 「養気」とは、酸素のこと。▽今は氧と書く。

字通

[形声]声符は羊(よう)。〔説文〕五下に「供養するなり」とあり、〔広雅、釈詁一〕に「樂なり、使なり」、〔玉篇〕に「育なり、守なり、畜なり、長なり」とあり、養育し、長養することをいう。古文の字形は、卜文・金文にもみえ、牧羊のことを示す字である。

弋(ヨク・3画)

弋 金文
𠑇匜・西周末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はdi̯ək(入)。

学研漢和大字典

象形文字で、上端にまたのついた棒ぐいを描いたもので、棒ぐいの形をした矢にひもをつけて放つので弋射(ヨクシャ)のこととなり獲物をからめとる意ともなった。杙(くい)の原字。

語義

  1. {名詞}いぐるみ。鳥をからめて落とすために矢にひもをつけて射るようにしかけたもの。また、それを射る方法。「弋射(ヨクシャ)」。
  2. {名詞}くい(くひ)。棒ぐい。《同義語》⇒杙(ヨク)。
  3. (ヨクス){動詞}とる。獲物をからめとる。「弋獲(ヨクカク)」「弋不射宿=弋するには宿を射ず」〔論語・述而〕
  4. 「遊弋(ユウヨク)」とは、警備の船が、敵を求めて航行すること。
  5. {形容詞}くろい(くろし)。

字通

[象形]いぐるみの矢の形。その矢に紐をつけた形は弔で、繳(しやく)の初文。〔説文〕十二下に「橛(けつ)なり。折木の衺(なな)めに鋭く著く形に象る。𠂆(えい)に從ふ。物の之れに挂(かか)るに象るなり」とあり、鋭くうちこんだ杙(くい)の形であるとするが、字は弋射の象。叔(しゆく)の音でよみ、金文に伯叔。また淑善の意に用いる。

抑(ヨク・7画)

抑 金文
毛公鼎・西周末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はʔi̯ək(入声。ʔは咳の出始めの音に近い)。同音に「憶」など「意」を旁に持つ文字。しかしそれらに甲骨文・金文は存在しない。

『大漢和辞典』の第一義は”おさえる”。この文字は秦帝国期の金文大篆が最古で、部品の「卬」(ゴウ)も甲骨文・金文に見られない。孔子在世当時は「即」tsi̯əkと書かれていたと考えたいが、音通しているとは言いかねる。

即 金文 葉 金文
「即」(「秦公鎛」春秋早期)・「葉」(「拍敦」春秋)

音ヨク近音、訓”おさえる”の漢字
カールグレン上古音 藤堂音
上古周秦 中古隋唐 現代北京語 ピンイン
抑(ヨク)ʔi̯ək ・ɪək ・ɪək iəi i
即(ソク)tsi̯ək isiək isiək isiəi tši
葉(ヨウ)di̯ap ḍiap yiɛp ie ie

学研漢和大字典

論語 抑 解字
会意文字で、卬(ゴウ)は「手+人のひざまずいたさま」からなり、人を手でおさえつけたさま。抑は「手+卬(おさえる)」で、上から下へと圧力をかけておさえること。類義語に推。異字同訓に押。

意味

  1. {動詞}おさえる(おさふ)。上から下へとおしつけて止める。また、あばれたり起きたりするものをおさえつける。《対語》⇒揚。「抑止」「禹抑洪水=禹洪水を抑ふ」〔孟子・滕下〕
  2. {接続詞}そもそも。→語法「②」。
  3. {接続詞}そもそも。→語法「①」

語法

①「そもそも」とよみ、「しかしながら」「そうではあるが」「それとも」と訳す。話を一度おさえて、話題や内容を転換する意を示す。「抑王興甲兵危士臣=抑(そもそも)王は甲兵を興こし士臣を危ふくす」〈いったい王は、軍隊を動員し、将兵を危険にさらしています〉〔孟子・梁上〕
②「~乎(与・邪)、抑…乎(与・邪)」は、「~か、そもそも…か」とよみ、「~か、あるいは…か」「~か、それとも…か」と訳す。話を一度おさえて、反対の見解を示し、どちらかを選択する意を示す。「夫子至於是邦也、必聞其政、求之与、抑与之与=夫子のこの邦(くに)に至るや、必ずその政(まつりごと)を聞く、これを求むるか、抑(そもそも)これを与ふるか」〈先生(孔子)はどこの国に行かれても、必ず政治の相談を受けられる、それをお求めになったのでしょうか、それとも持ちかけられたのでしょうか〉〔論語・学而〕

字通

[会意]手+卬(こう)。卬は印の反文の形。〔説文〕九上にその形を正字とし、「按(おさ)ふるなり。反印に從ふ。俗に手に從ふ」とする。印を押捺するように、人を抑える意であるとするが、本来は、人を仰向けにし、上から手で抑える形であろう。ただ古い字形がなくて確かめがたい。

大漢和辞典

押す。おさえる。ふさがる。沈む。美しいさま。そもそも、さて。こまやか、つつしむ。詩経・大雅・蕩之什の篇名。通じて懿に作る。

浴(ヨク・10画)

浴 金文
倗缶(金)・春秋末期

初出は甲骨文というが、「温」との混同と思われる。確実な初出は春秋の金文。カールグレン上古音はgi̯uk(入)。

学研漢和大字典

会意兼形声。谷は「水が八型にわかれるさま+口(あな)」の会意文字で、くぼんだ穴から泉の出る谷川をあらわす。くぼんだ穴の意を含む。浴は「水+(音符)谷」で、くぼんだ滝つぼや湯船の中に、からだを入れること。欲(腹がくぼむ→中へ何かを入れたくなる)・容(中へ入れる)と同系。類義語の沐(モク)は、水を頭からかぶることで、木(葉を頭からかぶるき)と同系。付表では、「浴衣」を「ゆかた」と読む。

語義

  1. (ヨクス){動詞}ゆあみする(ゆあみす)。水や湯の中にからだをつける。また、水や湯でからだをあらう。《類義語》沐(モク)。「水浴」「斎戒沐浴(サイカイモクヨク)(水をあびて心身を清める)」「新浴者必振衣=新たに浴する者は必ず衣を振るふ」〔楚辞・漁父〕
  2. {名詞}ゆあみ。水あび。「入浴」「春寒賜浴華清池=春寒くして浴を賜ふ華清の池」〔白居易・長恨歌〕
  3. (ヨクス){動詞}その中にひたる。こうむる。「浴徳=徳に浴す」。
  4. 《日本語での特別な意味》あびる(あぶ)。つ頭から水や液体をかぶる。「水浴び」づまともに影響をこうむる。「戦火を浴びる」。

字通

[形声]声符は谷(よう)(容)。谷に容(よう)・裕(ゆう)・欲(よく)の声があり、谿谷の谷(こく)とは別の字。容は廟に祈って、先人の霊が彷彿(ほうふつ)としてその形容をあらわす意。口は𠙵(さい)、祝詞を収める器。八を重ねた形は、その神気を示す。そのことを祈るを欲という。浴は廟に祈るためにみそぎする意の字である。〔説文〕十一上に「身を洒(あら)ふなり」とあり、浴・欲・容は一系の字。〔国語、斉語〕に、管仲が捕らえられて、斉につれ帰されたとき「三釁(さんきん)三浴」したことがしるされているが、これは虜囚のけがれを祓い、一たび死し、また蘇る儀礼としてなされるもので、招魂続魄の意味がある。髪を洗うことを沐といい、沐浴はみそぎの法であった。

慾/欲(ヨク・11画)

欲 楚系戦国文字 谷
「欲」(楚系戦国文字)・「谷」(金文)

初出は戦国文字。カールグレン上古音はgi̯uk(入)。同音は存在しない。

同訓近音の「要」も金文以前には遡れない。「貣」(トク・もとめる)ならば春秋末期から見られるが、上古音はカールグレン・藤堂明保共に不明。中古音は「徳-透」あるいは「徳-定」の半切だが、「欲」のそれは「燭-以」。論語時代の「欲」として置き換えられるかどうかは微妙。

別の候補として「欲」の藤堂上古音はġiukであり、「卜」(ボク・もとめる)はpuk。太古の甲骨文から尊znaiするが、両者が音通しているとは断言しかねる。ただし『字通』に、「金文では谷を欲として用いる」とある。

学研漢和大字典

会意兼形声。谷は「ハ型に流れ出る形+口(あな)」の会意文字で、穴があいた意を含む。欲は「欠(からだをかがめたさま)+(音符)谷」で、心中に空虚な穴があり、腹がへってからだがかがむことを示す。空虚な不満があり、それをうめたい気持ちのこと。孔(コウ)(あな)・空(むなしい)・容(中みが空虚で、ものを入れこめる)・浴(くぼみの水の中にはいる)と同系。「慾」の代用字としても使う。「欲・名誉欲・大欲・性欲・愛欲・強欲・物欲・無欲・色欲・食欲」。

慾は「心+(音符)欲」で、心中がうつろでもの足りず、それを埋めたいと求めること。

意味

  1. {動詞}ほっする(ほっす)。ほしがる。また、望む。…したいと思う。▽日本語の「ほっす」は、古い日本語の「ほる」(むさぼるの「ほる」)が「ほりす」となり、音便で変化したもの。→語法「①」。
  2. {助動詞}ほっする(ほっす)。→語法「②」。
  3. {助動詞}ほっする(ほっす)。数詞の上につけて、やがてそれだけの量になろうとする、の意をあらわすことば。「欲二年矣=二年ならんと欲す」。
  4. {名詞}ほしくてたまらない気持ち。また、情欲や欲望。《同義語》⇒慾(ヨク)。「欲求」「従耳目之欲=耳目の欲に従ふ」〔孟子・離下〕
  1. {名詞}足りないものをほしがる気持ち。「慾望」「喜怒哀懼悪慾、皆忘矣=喜怒哀懼悪慾、皆忘れたり矣」〔杜子春〕
  2. (ヨクナリ){形容詞}欲ばりである。「貪慾(ドンヨク)」「弔也慾=弔也慾なり」〔論語・公冶長〕
  3. {名詞}《仏教》望むものを得ようと執着する心の作用。《同義語》⇒欲。

語法

①「ほっす」とよみ、「~したいと思う」「~した方が望ましい」と訳す。願望の意を示す。「耕者皆欲耕於王之野=耕者は皆王の野に耕(たがや)さんと欲す」〈耕す者はみな王の田野で耕作したいと願う〉〔孟子・梁上〕
②「ほっす」とよみ、「今にも~しようとする」「今にも~になりそうだ」と訳す。未来の意志・状態を推量する意を示す。《類義語》且・将・方。▽六朝以前は「将(まさに…せんとす)」または「且(まさに…せんとす)」を用い、六朝・唐代からのち、「欲」を多く用いる。「山青花欲然=山青くして花然(も)えんと欲す」〈山は青々として、花は今にも燃え上がらんばかりに赤い〉〔杜甫・絶句〕

字通

[形声]声符は谷(よう)。谷に容(よう)・浴(よく)・裕(ゆう)の声があり、容は神容、浴・欲はその神容に接する法をいう。〔説文〕八下に「貪欲(たんよく)なり」と訓する。〔段注〕に谷を空虚、欠(けん)は口を開いて欲する意であるとするが、そのような造字の法はない。金文に谷を欲の意に用いる。容は廟中に祈って、彷彿として神容のあらわれる意、その神容を拝するを願うを欲、その神容に接するを裕という。〔礼記、祭義〕「其の之れを薦むるや、敬にして以て欲なり」とあり、〔注〕に「欲は婉順の貌なり」という。神につかえる態度をいう語である。人の欲望には慾という。

[形声]声符は欲(よく)。欲は先人の遺容を拝し、その霊につかえることをねがう意の字。〔玉篇〕に「貪るなり」とあり、人の欲望を慾という。欲に対して、名詞として用いることが多い。

閾(ヨク・16画)

初出は後漢の説文解字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はxi̯wək(入)。同音に殈”さける、卵が壊れて孵化しない”、洫”みぞ”、侐”静か”、緎”縫い目”、淢”早瀬・逆らう”。部品の或gʰwək(入)に”敷居”の語義は無い。「イキ」は呉音。

学研漢和大字典

会意兼形声。或は「領域を上下の境界線でかこむ+戈(ほこ、武器)」の会意文字で、くぎりをしてその中を守ること。域の原字。閾は「門+(音符)或」で、門のところで、内部と外部との区域をわけること。

語義

  1. {名詞}しきみ。門の下部にあって、とびらをとめ、内部と外部とをわける境の横木。しきい。《類義語》罩(コン)。「行不履閾=行くに閾を履まず」〔論語・郷党〕
  2. {動詞・名詞}くぎる。くぎり。内部と外部とのしきりをつける。また、しきり。「識閾(シキイキ)」。

字通

[形声]声符は或(よく)。或にものを区画し、限定する意がある。〔説文〕十二上に「門の𣕋(しきみ)なり」という。〔論語、郷党〕に「行くに閾を履(ふ)まず」とあり、閾をふむことは失礼の行為とされた。

憶(ヨク・16画)

初出は不明。論語の時代に存在したと言えない。カールグレン上古音はʔi̯ək(入)。同音は億、臆”胸(の骨)・心”、繶”つかねる”、醷”梅酢”、檍”モチノキ”、抑。憶、臆は論語の時代に存在しない。「オク」は呉音。論語語釈「億」も参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。意は「音(口をふさぐ)+心」の会意文字で、口には出さず心で思うこと。憶は「心+(音符)意」で、口に出さず胸が詰まるほど、さまざまにおもいをはせること。意(おもう)・臆(オク)(胸の中でおもい巡らす)と同系。類義語に思。「臆」の代用字としても使う。「憶説・憶測」。

語義

  1. {動詞}おもう(おもふ)。口には出さず、あれこれとおもいをはせる。また、さまざまなことを考える。「追憶」「憶昔=憶ふ昔」「帰心日夜憶咸陽=帰心日夜咸陽を憶ふ」〔賈島・渡桑乾〕
  2. {動詞}おぼえる(おぼゆ)。心の中にとめておく。忘れない。「記憶」。

字通

[形声]声符は意(おく)。意は音に従い、音によって示される神意をはかり、さとることをいう。〔説文〕十下に字を𢡃に作り、「滿なり」「一に曰く、十萬を𢡃と曰ふ」と億の意とするが、憶は神意をはかる意に従う字である。

翼(ヨク・17画)

翼 金文
秦公鎛・春秋早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はgi̯ək(入)。

学研漢和大字典

会意兼形声。原字は、つばさを描いた象形文字。のちそれに立をそえて、つばさをたてることを示す。翊(ヨク)(つばさ)はその系統を引く字。翼は「羽+(音符)異(イ)」で、一つのほかにもう一つ別のがあるつばさ。翌(もう一つ別の日)・異(もう一つ別の)と同系。類義語に羽。

語義

  1. {名詞}つばさ。二つで対(ツイ)をなしたつばさ。また、つばさのように左右に二つはり出たもの。《同義語》⇒翊(ヨク)。《類義語》羽。「左右翼(左と右の支隊や陣。左と右にいる守り手)」。
  2. {動詞}たすける(たすく)。つばさで卵やひなを守るようにかばう。「輔翼(ホヨク)(そばについてかばう)」「翼賛」「翼卵」。
  3. 「翼翼」とは、傷つけられぬようにかばうさま。ひやひやと不安なさま。「小心翼翼」〔詩経・大雅・烝民〕
  4. {名詞}二十八宿の一つ。規準星は今のコップ座に含まれる。たすき。
  5. {名詞}あす。あくる日。▽翌に当てた用法。「翼日」。

字通

[形声]〔説文〕十一下に正字を𩙺に作り、異(よく)声。「翅(はね)なり」と訓し、また羽部四上に「翅(し)は翼なり」とあって互訓。金文に翼戴・輔翼の字をみな異に作り、「異臨(よくりん)」「休異(きうよく)」のようにいう。異は翼の初文。異は鬼形の神の象で、敬翼の意があり、また輔翼・翼蔽の意がある。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

関連記事(一部広告含む)