通(ツ/ツウ・10画)
追(ツイ・9画)
甲骨文/余贎乘兒鐘・春秋末期
初出:初出は甲骨文。
字形:甲骨文の字形は「𠂤」”師”+「止」”あし”で、軍隊が追撃する事を示す。
音:カールグレン上古音はti̯wər(平)。
用例:「漢語多功能字庫」によると、西周早期の「夨令方尊」に、すでに”故人に供え物をしてまつる”の意があるという。
『甲骨文合集』490.2に「呼びて羌を追わんか」とある。
西周早期の『殷周金文集成』4073「伯□(虎木)𣪕」に「用追考(孝)于氒(厥)皇考」とあり、”追善”の語義を確認できる。
学研漢和大字典
形声。右側の字(音タイ・ツイ)は、物を積み重ねたさまを描いた象形文字。堆(タイ)と同じ。追においては音をあらわすだけで、その原義とは関係がない。順や循(ジュン)(あとに従う)は、追の語尾がnに転じた語で、追と同系。類義語の逐(チク)は、つつくようにしておい払うこと。
語義
- {動詞}おう(おふ)。先にいくもののあとをおう。ルートをたどっておいかける。《類義語》逐(チク)。「追跡」「追我者誰也=我を追ふ者は誰ぞや」〔孟子・離下〕
- {動詞}おう(おふ)。事のすんだあとからおいかけて、必要な事をつけ加える。「追記」「追認」。
- {動詞}おう(おふ)。逃がさないようにつかまえる。おいつく。《類義語》及。「追及」「来前猶可追=来たる前はなほ追ふべし」〔論語・微子〕
字通
[会意]𠂤(し)+辵(ちやく)。〔説文〕二下に「逐ふなり」とし、𠂤(たい)声とする。次条に「逐は追ふなり」と互訓し、逐を会意とするが、追・逐とも会意である。〔説文〕は𠂤を小阜(ふ)にして堆土の意とするが、𠂤は卜文・金文に師旅の師の字に用い、その初文。軍を派遣するとき、軍社の祭肉を奉じてゆくが、𠂤はその祭肉の象。遣は𠂤を両手で奉じてゆく形。追とは軍を派遣して追撃することをいう。逐は田猟に用い、獣を逐う意である。また鎚(たい)と通用し、うちきたえることをいう。
墜(ツイ・15画)
初出は甲骨文だが、「隊」dʰwəd(去)と書き分けられていない。現伝字形の初出は説文解字。カールグレン上古音はdʰi̯wəd(去)。同音は「懟」(去)”うらむ”のみ。論語子張篇21の漢石経では「隧」dzi̯wəd(去)と記す。論語語釈「隧」も参照。
漢語多功能字庫
本作「隊」,後增「土」旁,寫作「墜」。「墜」從「土」,「隊」聲。本義是墜下、墜落。
もとは「隊」と記し、後に「土」が付加され、「墜」と書かれるようになった。「墜」は「土」の字形に属し、「隊」の音。原義は”降りる”・”落ちる”。
学研漢和大字
会意兼形声。隊の右側の字(音スイ)は、太ってずっしりと重い豚。隊(タイ)はそれに鷀(おか)を加えた会意兼形声文字で、丘の重い土が、ずしんとおちること。堆(タイ)(太く重い集積)と同系のことば。隊は、のち、人間の集団を意味するのに専用されたので、さらに土を加えた墜(ツイ)の字で、隊の原義をあらわすようになった。墜は「土+(音符)隊」。鎚(ツイ)(ずしんと重くおちかかる金づち)・槌(ツイ)(木づち)・碓(ツイ)(重くのしかかる石うすや重し)などと同系。
語義
- {動詞}おちる(おつ)。おとす。重い物がずしんとおちる。また、おとす。「墜落」「文武之道、未墜於地=文武の道、いまだ地に墜ちず」〔論語・子張〕
字通
[形声]声符は也(や)。也に池・馳(ち)の声がある。字の初文は墜に作り、その字は会意。神梯を示す𨸏(ふ)の前に、犬牲などをおき、土(社)神を設けて、陟降する神を祀るところ。神の降りたつことを隊という。墜はのち墜落の意となり、墜に代わる形声の字として地が作られた。〔説文〕十三下に「元气初めて分れ、輕淸にして昜(やう)(陽)なるものは天と爲り、重濁して陰(いん)(陰)なるものは地と爲る。萬物の敶列(ちんれつ)する所なり」(段注本)とあって、地と敶(陳)の双声によって訓している。〔経籍䉵詁〕にあげる「底なり。大なり。諟なり。諦なり。施なり。易なり。土なり」などの訓も、音の関係を以て訓するものであるが、本義は神の降り立つところをいう。〔説文〕に籀文(ちゆうぶん)として墬をあげるが、墬は䧘(たん)声で声が異なり、土部の〔説文新附〕にあげる墜(つい)が、地の初文であろう。金文に墜の初文を■(阝+上下に八+豕)・■(上下に八+豕)に作る。地には異体の字が多く、埊は則天武后の新字十九字の一で山・水・土を合わせたもの、他に〔新撰字鏡〕に上古文二字、古文三字を録し、〔竜龕手鏡〕にも埊を含めて古文三字を録している。
コメント