論語語釈「ト」

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土(ト・3画)

論語 土 金文
大盂鼎・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はtʰoまたはdʰo(共に上)。「ド」は慣用音。

学研漢和大字典

象形。土を盛った姿を描いたもの。古代人は土に万物をうみ出す充実した力があると認めて土をまつった。このことから、土は充実したの意を含む。また、土の字は、社の原字であり、やがて土地の神や氏神の意となる。のち、各地の代表的な樹木を形代(カタシロ)として土盛りにかえた。▽「説文解字」に、「土は地の万物を吐生するものなり」とある。堵(ト)(土を詰めた垣(カキ))・肚(ト)(物を詰める腹)・吐(いっぱい詰まった物をはき出す)・貯(詰めこむ)などと同系。類義語に壌。付表では、「土産」を「みやげ」と読む。

語義

  1. {名詞}つち。「土砂」「粘土」「此道今人棄如土=此の道今人棄てて土のごとし」〔杜甫・貧交行〕
  2. {名詞}大地。田畑。また、ふるさと。「土地」「凡民之食於土者出其十一=凡そ民の土に食する者は其の十一を出だす」〔柳宗元・送薛存義序〕。「小人懐土=小人は土を懐ふ」〔論語・里仁〕
  3. {名詞}領有する土地。「領土」「姉妹弟兄皆列土=姉妹弟兄皆土を列す」〔白居易・長恨歌〕
  4. {形容詞}その土地本来の。《対語》⇒他・外。「土法」「土着」。
  5. {形容詞}いなかふうで、ひなびている。《対語》⇒雅。《類義語》俗。「土臭(ドシュウ)(ひなびて土くさい)」。
  6. 「土司」とは、元(ゲン)・明(ミン)・清(シン)代、皇帝から官爵号を受けた地方政権で、土地・人民を管轄した。「土官」とは、西南中国の少数民族の首長を地方官に任命して、部族を管理させたものをいう。
  7. {名詞}五行の一つ。方角では中央、色では黄色、時では夏の土用、味では甘、内臓では胆に当てる。
  8. {名詞}星の名。土星。鎮星(チンセイ)。
  9. {名詞}八音(八種の楽器)の一つ。土を焼いてつくった楽器。油(フ)や股(ケン)など。
  10. {名詞}土盛りをして土地の神をまつったもの。▽社の原字であり、のち、土地の神となる。「亳土(ハクド)(=亳社。古代の殷(イン)人の氏神の名)」「土公(土地の神)」「諸侯祭土=諸侯土を祭る」〔春秋公羊伝・僖三一〕
  11. {動詞}はかる。▽度に当てた用法。「以土圭土其地=土圭を以て其の地を土る」〔周礼・大司徒〕
  12. 《日本語での特別な意味》
    ①ど。七曜の一つ。土曜日の略。
    ②「土佐(トサ)」の略。「薩摩土肥」。
    ③「土耳古(トルコ)」の略。トルコのこと。「露土戦争」。

字通

[象形]土主の形。土を饅頭形にたて長にまるめて台上におき、社神とする。卜文にはこれに灌鬯(かんちよう)する形のものがあり、社(社)の初文として用いる。〔説文〕十三下に「地の萬物を吐生する者なり」(小徐本)とし、二は地、丨(こん)は物の出る形であるとするが、土主を台上におく形である。のち土地一般の意となり、示を加えて社となった。卜文・金文は土を社の意に用い、社は中山王諸器に至ってみえる。古い社の形態は、モンゴルのオボの形態に近く、中山王器の社の字には土の上に木を加えている。〔説文〕には土を吐(と)の音を以て説くが、〔周礼、考工記、玉人、注〕には「度(はか)るなり」と度(ど)の音を以て説き、〔広雅、釈言〕に「瀉(そそ)ぐなり」と瀉(しや)の音を以て説く。土は社神のあるところ、地も古くは墜に作り、神梯(𨸏(ふ))の前に犠牲をおき、社神を祀るところであった。土地一般をいうのは、後起の義である。

圖/図(ト・7画)

図 金文
散氏盤・西周末期

初出は西周早期の金文。カールグレン上古音はdʰo(平)。

学研漢和大字典

会意。圖の中は、鄙(ヒ)の字に含まれ、米倉のある農村の所領を示す。圖はそれと囗(かこい)を合わせた字で、領地を囗印の紙面のわく内に書きこんだ地図をあらわし、貯と近く、狭いわく内に押しこめた意を含む。また著や着と同系で、定着させる意を含むから、図形を書きつけて紙上に定着させる意とも考えられる。類義語に測・計。異字同訓に計る「時間を計る。計り知れない恩恵。まんまと計られる」 測る「水深を測る。標高を測る。距離を測る。面積を測る。測定器で測る」 量る「目方を量る。升で量る。容積を量る」 謀る「暗殺を謀る。悪事を謀る」 諮る「審議会に諮る」〔国語審〕。

語義

  1. {名詞}狭い紙面に物の形や地形を押しこめて書きつけたもの。《類義語》画・書。「地図」「図窮而匕首見=図窮まりて而匕首見はる」〔史記・荊軻〕
  2. {動詞}えがく(ゑがく)。形を書きつける。「使画工図形=画工をして形を図かしむ」〔西京雑記〕
  3. {動詞}はかる。得失や手だてを検討する。《類義語》度。「図不軌=不軌を図る」「願図国事於先生也=願はくは国事を先生に図らん」〔史記・荊軻〕
  4. {名詞}はかりごと。計画。「企図」「図謀」。
  5. 「不図(ハカラザリキ)」とは、文頭につき、思いもよらないことにの意をあらわすことば。《同義語》不料(ハカラザリキ)。「不図為楽之至於斯也=図らざりき楽を為すことの斯に至らんとは」〔論語・述而〕
  6. 《日本語での特別な意味》
    ①「図に当たる」は、物事が自分の思ったとおりになること。
    ②「図に乗る」は、調子にのってつけあがること。

字通

[会意]旧字は圖に作り、囗(い)+啚(ひ)。啚は倉廩の形。圖は倉廩の所在を記入した絵図で、その耕作地を図面化したもの、いわゆる地図である。〔説文〕六下に「畫計すること難きなり」とし、「啚は難の意なり」という。〔説文〕五下に啚を吝嗇(りんしよく)の意とするが、それは倉廩の形。その在る所を鄙という。耕作地の状況を示す地図は、その経営のもとであるから、図謀の意となる。〔左伝、襄四年〕に「難を咨(はか)るを謀と爲す」とあり、〔説文〕はその意によって「畫計すること難きなり」としたのであろうが、〔左伝〕の文は字説とは関係がない。〔周礼、地官、大司徒〕「建邦の土地の圖と、其の人民の數とを建つることを掌る」、〔周礼、天官、内宰〕「版圖を書するの灋(法)を掌る」とあるのが原義。金文の〔散氏盤〕は土地の契約関係を内容とするもので、疆域画定の次第をしるしている。その銘末に「圖を夨(そく)王より、豆の新宮の東廷に受(さづ)けられたり」という。また〔宜侯夨𣪘(ぎこうそくき)〕に「武王・成王の伐ちたまへる商圖(殷の版図)を省(巡察)し、■(彳+止+口)(い)でて東國の圖を省す」とあって、その版図・領域を図という。中山王墓からはその塋域図が出土しており、また馬王堆第三号漢墓からは、湘南の九疑山を含む詳細な地図、また駐軍図・街坊図などが出ている。

徒(ト・10画)

論語 徒 金文
魯大𤔲徒厚氏元𥮉・春秋早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はdʰo(平)。

学研漢和大字典

形声。「止(あし)+彳(いく)+(音符)土」で、陸地を一歩一歩とあゆむことで、ポーズをおいて、一つ一つ進む意を含む。渡(ト)(水を一歩一歩わたる)・度(ド)(手尺で一さし一さしとわたってはかる)などと同系。草書体をひらがな「つ」として使うこともある。▽「ただ」は「只」「唯」とも書く。

語義

  1. {動詞}かちありきする(かちありきす)。一歩一歩と歩く。「徒歩」「徒渉(トショウ)(歩いて川を渡る)」「舎車而徒=車を舎てて徒す」〔易経・賁〕
  2. {名詞}かち。歩いて行く兵隊。歩兵。足軽。《対語》⇒騎(馬に乗った兵)。「公徒三万(歩兵三万)」〔詩経・魯頌・罘宮〕
  3. {名詞}ともがら。下級の仲間。▽数多い歩兵の意から。「衆徒」「徒党」。
  4. {名詞}門下のでし。「徒弟」「非吾徒也=吾が徒に非ざるなり」〔論語・先進〕
  5. {形容詞}むなしい(むなし)。何も物を持たないさま。▽車も馬もない意から。「徒搏(トハク)(素手でうちかかる、すもう)」。
  6. {副詞}いたずらに(いたづらに)。→語法「④」。
  7. {副詞}ただ。→語法「①」。
  8. {名詞}苦行を科した刑。「徒罪」。

語法

①「ただ~のみ」とよみ、「ただ~だけ」「ただ~に過ぎない」と訳す。範囲・状態を限定する意を示す。▽「徒~耳=ただ(なる)のみ」と用いることもある。「項王謂漢王曰、天下匈匈数歳者、徒以吾両人耳=項王漢王に謂ひて曰く、天下匈匈たること数歳なるは、ただに吾両人をもってなるのみ」〈項王が漢王に言った、天下が何年も(戦乱に明け暮れ)騒然としているのは、ひとえに我ら二人のためだ〉〔史記・項羽〕

②「非徒~」は、「ただに~のみにあらず」とよみ、「ただ~だけではない」と訳す。範囲・条件が限定されない意を示す。▽後節に「又(亦)…=また…」「且…=かつ…」と続けて、「~だけでなく、…もまたそうである」と訳す。後節では、さらに累加する意を示す。「非徒無益、而又害之=ただに益無(な)きのみに非(あら)ず、而(しか)もまたこれを害す」〈これでは無益であるばかりか、かえって害がある〉〔孟子・公上〕▽「不徒~=ただに~のみならず」も、意味・用法ともに同じ。

③「豈徒~(乎)」は、「あにただに~のみならんや」とよみ、「どうしてただ~のみであろうか」「まさか~ばかりではあるまい」と訳す。範囲・条件が限定されない反語の意を示す。「今之君子、豈徒順之、又従為之辞=今の君子は、あにただにこれに順ふのみならんや、また従つてこれが辞を為す」〈今の君子は、過ちをそのまま押し通すばかりでなく、その上理屈をつけて弁解までする〉〔孟子・公下〕

④「いたずらに」とよみ、「むなしく」「むだに」と訳す。結果が得られない意を示す。「斉師徒帰=斉の師徒(いたづら)に帰る」〈斉軍は手ぶらで立ち去った〉〔春秋左氏伝・襄二五〕

字通

[形声]初形は𨑒に作り、土(と)声。辵(ちやく)の形をかえて徒となる。〔説文〕二下「𨑒は、歩して行くなり」とあり、車乗に対して歩行することをいう。装備のない従者・歩卒をいう。装備のないことから、徒手・徒跣のように用いる。副詞の「ただ」「ひとり」の意がある。

涂(ト・10画)

涂 甲骨文
(甲骨文)

初出は甲骨文。金文は未発掘。カールグレン上古音はdʰo(平)論語語釈「塗」論語語釈「途」も参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。「水+(音符)余(ヨ)・(ト)(のびる)」。

語義

  1. {名詞}みち。長くのびる道路。《同義語》⇒塗・途。

字通

[形声]声符は余(よ)。余に途(と)の声がある。〔説文〕十一上に益州の水名とし、また汚字条に「涂(ぬ)るなり」とあって、塗の初文とする。〔説文〕には途の字がなく、〔周礼、夏官、量人〕に「邦國の地と、天下の涂數とを掌り、皆書して之れを藏す」とあり、涂にまた途の用義がある。〔荀子、勧学〕にも「涂巷の人」という語がある。余は把手のある大きな針。これを途(みち)に刺して除道を行ったので、その清められた道を途という。

途(ト・10画)

初出は楚系戦国文字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はdʰo(平)論語語釈「涂」論語語釈「塗」も参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。「辶+(音符)余(おしのばす)」で、長くのびるの意を含む。塗(土をのばしてぬる)・餘(=余。のびる、あまる)・除(おしのける)と同系。類義語に道。「杜」の代用字としても使う。「途絶」。

語義

  1. {名詞}みち。長く平らにのびた道路。また、みちのり。《同義語》⇒覇・塗。「途中」「前途」。
  2. {単位詞}みちのりの一段一段、または、みちすじを数える語。「一途(イット)・(イチズ)」。

字通

[形声]声符は余(よ)。余に涂(と)の声がある。〔玉篇〕に「途路なり」とみえる。古くは涂を用い、卜文に涂に作り、漢碑にもなお「涂陸」のようにいう。余は把手のある針器。これで地を刺して祓除することを除道という。除は聖所の地を祓う意。水に対して行うを涂、道路に対しては途といった。

塗(ト・13画)

初出は前漢の隷書。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はdʰo(平)論語語釈「涂」論語語釈「途」も参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。余は、こてや、スコップでおしのけることを示す会意文字で、どろを伸ばしぬる道具を示す。涂(ト)は、どろどろの液体をこてで伸ばしてぬること。塗は「水+土+(音符)余」。涂に、さらに土を加えた。舒(ジョ)(伸ばす)と同系。類義語の摱は、泥をぬっておおいかくすこと。

語義

  1. {動詞}ぬる。泥や粘った汁を伸ばしてぬる。「糊塗(コト)(表面をとりつくろってごまかす)」。
  2. {名詞}どろ。「曳尾於塗中=尾を塗中に曳く」〔荘子・秋水〕
  3. {動詞}まみれる(まみる)。どろどろによごれる。「肝脳塗地=肝脳地に塗る」〔漢書・蘇武〕
  4. {名詞}みち。もと、どろを平らに伸ばしたみち。のち、広く、みちのこと。《同義語》途。「塗不拾遺=塗に遺ちたるを拾はず」〔史記・孔子〕

字通

[形声]声符は涂(と)。涂は塗の初文。〔孟子、公孫丑上〕「塗炭に坐す」の〔注〕に「混なり」とあり、〔説文新附〕十三下も同訓。塗りこめることは、呪禁の方法として用いられることが多く、殯(かりもがり)のとき、棺に収めて塗りこめることを塗殯(とひん)という。途と通用し、「塗歌邑誦」、「道聴(てい)塗説」のように用いる。

怒(ド・9画)

初出は戦国文字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はno(上/去)。同音は奴を部品とする漢字群。「奴」に”いかる”の語釈は『大漢和辞典』に無い。

学研漢和大字典

会意兼形声。奴は、力をこめて働く女の奴隷のこと。怒は「心+(音符)奴」で、強く心を緊張させること。努(力をこめる)・弩(ド)(力のこもる大弓)などと同系。類義語の憤(フン)は、いちじにふき出すようにおこること。嚇(カク)は、まっかになっておこること。慍(ウン)は、胸に不平がつかえ、むかついていかること。恚(イ)は、心をかどだてておこること。忿(フン)は、かっと破裂するように急におこること。傷(ヒ)は、心がはりさけるようでむかむかすること。

語義

  1. {動詞}いかる。おこる。《対語》⇒喜。《類義語》憤(フン)。「激怒」「発怒(ハツド)(かっとおこる)」「項王大怒=項王大いに怒る」〔史記・項羽〕
  2. {動詞}漢方医学で、ストレスをおこすこと。
  3. {名詞}いかり。おこること。また、その感情。「積怒=怒りを積む」「不遷怒=怒りを遷さず」〔論語・雍也〕
  4. {動詞・形容詞}はげむ。はげしい(はげし)。ぐっと緊張していきおいこむ。また、そのさま。《同義語》努。「怒而飛其翼若垂天之雲=怒んで飛べば其の翼は垂天の雲のごとし」〔荘子・逍遥遊〕。「乱世之音、怨以怒=乱世之音は、怨にして以て怒し」〔詩経・大序〕

字通

[形声]声符は奴(ど)。〔説文〕十下に「恚(いか)るなり」とあり、はげしく人を責める心情をいう。〔論語、雍也〕に、孔子が顔回をほめて「怒りを遷(うつ)さず、過ちを貳(ふたた)びせず」と評している。

刀(トウ・2画)

刀 金文
子刀父辛方鼎・殷代末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はtog(平)。

学研漢和大字典

象形。刃のそったかたなを描いたもの。曲線状にそる意を含み、沼(底が曲線をなした大きな水たまり)・招(手の平を下向きにしてまねく)と同系。類義語に剣。付表では、「太刀」を「たち」「竹刀」を「しない」と読む。

語義

  1. {名詞}かたな。刃が曲線をなしてそった片刃のかたなやナイフの総称。《類義語》剣。「牛刀(牛を料理する包丁)」「庖丁釈刀=庖丁刀を釈く」〔荘子・養生主〕
  2. {名詞}刀の形をした古代の貨幣。「刀貨」「刀銭」。
  3. {名詞}ふね。刀のようにそった形をした小舟。▽あるいは、昔の字体が似ていたための誤写か。「曾不容刀=曾ぞ刀を容れざらん」〔詩経・衛風・河広〕

字通

[象形]刀の形。〔説文〕四下に「兵なり。象形」とあり、兵とは武器をいう。左右両刃は剣。刀は一刃、上部に握環がある。のち通貨にその形を用いて刀銭・刀幣という。また簡札を削るのに用いたので、書記のことを刀筆の吏という。

斗(トウ・4画)

斗 金文
秦公簋・春秋中期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はtu(上)。「ト」は慣用音。呉音は「ツ」。

学研漢和大字典

象形。柄のたったひしゃくを描いたもの。柄がまっすぐたつさまに着目した。豆(トウ)(つきたつたかつき)‐頭(トウ)(まっすぐにたつあたま)などと同系とみてよい。「ます」は普通「升」「枡」と書く。中国では鬪(闘)の簡体字に用いる。

語義

  1. {名詞}ひしゃく。液体をすくう柄つきのひしゃく。また、転じて、液体の量をはかる角型・円型のます。「玉斗(ギョクト)(酒をくむ玉のひしゃく)」「熨斗(ウット)(ひのし)」。
  2. {単位詞}容量の単位。一斗は一〇升。▽一斗は、周代には約一・九四リットル。隋(ズイ)・唐代には約六リットル。清(シン)代には約一〇リットル。日本の一斗は約一八リットル。「五斗米(わずかな俸禄(ホウロク)のたとえ)」。
  3. {名詞}ひしゃくの形をした星座。「北斗」「南斗」。
  4. {名詞}二十八宿の一つ。規準星は今のいて座にふくまれる。ひつき。
  5. {形容詞}小さいさま。また、わずかなさま。「斗城(トジョウ)(小さな城)」「斗勹之人(トショウノヒト)(小人物)」。
  6. {副詞}にわかに(にはかに)。にわかに、はっとの意をあらわすことば。▽聆(ト)・突に当てた用法。「斗然(=聆然)」。
  7. {動詞}《俗語》たたかう(たたかふ)。▽闘に当てた用法。
  8. 「科斗(カト)」とは、おたまじゃくしのこと。「科斗文字(初画がまるく、そのあとは尾を引いたおたまじゃくしのような形をした古代文字)」。
  9. 「外斗(チョウト)」とは、銅製の舌状のものが振れて鳴る、柄つきの銅羅(ドラ)。

字通

[象形]柄のある匕杓(ひしやく)の形。その小なるものは升、大なるものを斗という。〔説文〕十四上に「十升なり。象形。柄(え)有り」とあり、その頭の部分が勺(しやく)である。北斗七星は、その形が斗に似ているところから名をえている。穀量をはかる器として用い、十升を斗という。

同(トウ・6画)

初出は甲骨文。カールグレン上古音はdʰuŋ(平)。「ドウ」は慣用音。呉音は「ズウ」。

学研漢和大字典

会意。「四角い板+口(あな)」で、板に穴をあけて突き通すことを示す。突き抜ければ通じ、通じれば一つになる。転じて、同一・共同・共通の意となる。通(とおす)・衝(突き抜く)と同系。また筒(トウ)(つつ)・胴(つつ型の胴体)・洞(ドウ)(突き抜けたほら穴)とは特に縁が近い。

語義

  1. {形容詞}おなじ。等しいさま。いっしょであるさま。《対語》⇒異・殊。「歳歳年年人不同=歳歳年年人同じからず」〔劉廷芝・代悲白頭翁〕
  2. {動詞}おなじくする(おなじくす)。いっしょに共有する。同じにそろえる。「同席」「与民同之=民とこれを同じくす」〔孟子・梁下〕
  3. {動詞}あつまる。「会同」「福禄攸同=福禄の同まる攸」〔春秋左氏伝・襄一一〕
  4. (ドウズ){動詞}見境もなくいっしょに仲間となる。▽心から調和するのを和という。「付和雷同」「君子和而不同=君子は和して同ぜず」〔論語・子路〕
  5. {副詞}ともに。いっしょに。《類義語》共。「踏花同惜少年春=花を踏みて同に惜しむ少年の春」〔白居易・春夜〕

字通

[会意]卜文・金文の字形は、凡と口とに従う。凡は盤の形で、古く酒盃にも用いた器であろう。口は祝禱を収める器である𠙵(さい)の形。会同のとき、酒を飲み、神に祈り誓ったものと思われ、会同の儀礼をいう。またその酒杯の名に用い、〔書、顧命〕は康王即位継体の大礼をしるすものであるが、そのとき新王と、聖職者太保との間に、同・瑁という酒器による献酬が行われている。土主に酒を灌(そそ)ぐ儀礼を示す興(きよう)、また灌鬯(かんちよう)を意味する釁(きん)の字形中に含まれている同が、その酒器である。それは会同盟誓などのときに用いるものであるから「あつまる」意となり、和合・同一の意となる。〔説文〕七下に、この字を重覆を意味する𠔼(もう)部に属し、「合會するなり」と訓し、𠔼と口との会意とするのは、合議の意とするものであろうが、口は古い字形では祝禱や盟誓をいう。

當/当(トウ・6画)

當 当 黨 當 金文
攻敔王光劍・春秋末期

初出は春秋末期の金文。カールグレン上古音はtɑŋ(平)。

学研漢和大字典

形声。當は「田+(音符)尚(ショウ)」。尚は、窓から空気のたちのぼるさまで、上と同系。ここでは単なる音符にすぎない。當は、田畑の売買や替え地をする際、それに相当する他の地の面積をぴたりと引きあてて、取り引きをすること。また、該当する(わく組みがぴったりあてはまる)意から、当然そうなるはずであるという気持ちをあらわすことばとなった。擋(トウ)(面をおしあててはばむ)・賞(それに相当する礼を払う)・傷(面をぶちあてこわす)などと同系。類義語の直は、ちょうどその番になる。抵は、値うちがそれに相当する。異字同訓に充てる「建築費に充(当)てる。保安要員に充(当)てる」。旧字「當」の草書体をひらがな「た」として使うこともある。

語義

  1. {動詞}あたる。あてる(あつ)。面と面とがぴたりとあたる。まともに対抗する。「一騎当千(一騎で千騎に対抗できる)」「天下莫能当=天下に能く当たるものなし」。
  2. {動詞}あたる。まともに引き受ける。「担当」「当国=国に当たる」。
  3. {動詞}あたる。相当する。あてはまる。「該当」「不能当漢之一郡=漢の一郡に当たること能はず」〔史記・匈奴〕
  4. {動詞}あたる。その時、その場に当面する。「当時」「当坐者=坐に当たる者」→語法「②」。
  5. {助動詞}まさに…すべし。→語法「①」。
  6. {名詞}ぴたりとあてる面。器の底の面。▽去声に読む。「瓦当(ガトウ)(端かわらの面)」。
  7. {名詞}借金にひきあてる物品。しち。しちぐさ。▽去声に読む。「抵当」。
  8. 《日本語での特別な意味》「当選」の略。「当落」「当確」。

語法

①「まさに~すべし」とよみ、

  1. 「~すべきである」と訳す。再読文字。当然の意を示す。《類義語》応。「嗟乎、大丈夫当如此也=嗟乎(ああ)、大丈夫当(まさ)にかくの如(ごと)くなるべきなり」〈ああ、男とはあのようでなくてはならない〉〔史記・高祖〕
  2. 「きっと~するにちがいない」と訳す。再読文字。期待・推量の意を示す。「頃之、襄子当出、予譲伏於所当過之橋下=これを頃(しばら)くして、襄子出づるに当たり、予譲当(まさ)に過ぐべき所の橋下に伏す」〈しばらく経ち、襄子の外出を知り、予譲は襄子が通るはずの橋の下に待ち伏せた〉〔史記・刺客〕

②「~にあたりて」とよみ、「~のときに」「~で」と訳す。時間・空間・状況に直面する意を示す。「当仁、不譲於師=仁に当たりては、師にも譲らず」〈仁徳(を行う)に当たっては、先生にも遠慮はいらない〉〔論語・衛霊公〕

③「もし~」とよみ、「もし~ならば」と訳す。順接の仮定条件の意を示す。▽「当使~」は、「もし~しめば」とよみ、意味・用法ともに同じ。「当使虎豹失其爪牙、則人必制之矣=当(も)し虎豹をしてその爪牙を失は使めば、則(すなは)ち人必ずこれを制せん」〈もしも虎や豹がその爪と牙をとを失ったらば、人間の方がきっとそれらを抑えるようになるだろう〉〔韓非子・人主〕

字通

[形声]旧字は當に作り、尚(しよう)声。尚に堂(どう)・棠(とう)の声がある。尚は神明を迎える窓。上部の八は神気の下る形。田は田土。もと農耕儀礼を示す字であったと考えられ、新嘗(にいなめ)の嘗とも、字形の上で関係がある。嘗は旨に従い、旨は詣(いた)るの意。その詣る神を迎えることを𩒨首(けいしゆ)といい、金文に、「稽首」に「𩒨首」の字を用いる。〔説文〕十三下に「田、相ひ値(あた)るなり」とは、抵当の意であろうが、その意には古く典を用い、金文の〔倗生𣪘(ほうせいき)〕に「格伯の田を典(てん)す」のようにいう。當ものちには「典当」の意にも用いるが、當は古くは嘗と通用することが多い。〔荀子、君子〕「先祖當(かつ)て賢ならば、子孫必ず顯(あら)はる」、〔荀子、性悪〕「當試(こころみ)(嘗試)に君上の勢を去らん」などの例がある。農耕では時宜によって祀ることが行われ、〔管子、宙合〕に「變に應じて失はざる、之れを當と謂ふ」とはその意であろう。時宜にあたること、それよりして時に当たり、所に当たる意となり、当面・順当・相当・当然・当為の意となったのであろう。

豆(トウ・7画)

論語 豆 金文
豆閉簋・西周中期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はdʰu(去)。

学研漢和大字典

象形。たかつきを描いたもので、じっとひと所にたつの意を含む。のち、たかつきの形をしたまめの意に転用された。頭(じっと棒状にたつあたま)・逗(トウ)(じっとひと所にとどまる)などと同系。類義語の菽(シュク)は、まめ、小さい粒のこと。付表では、「小豆」を「あずき」と読む。▽「手足にできるまめ」は「肉刺」とも書く。

語義

  1. {名詞}たかつき。食物や供え物をのせる器。▽多くは木や素焼きで、細長くつくって、たてて用いる。「俎豆(ソトウ)(供え物をのせる台や、たかつき)」。
  2. {名詞}まめ。穀物の名。大豆(ダイズ)(中国では黄豆)・小豆(アズキ)(中国では紅豆)・緑豆などがある。《同義語》⇒荳。「豆腐」「豆滓(トウシ)」「納豆(ナットウ)」。
  3. {単位詞}中国の春秋時代のますめの単位。一豆は、四掬(キク)で、約〇・八リットル。
  4. 《日本語での特別な意味》
    ①まめ。まめ形をしたもの。「足に豆ができる」。
    ②小さいものをあらわすことば。「豆人形」。
    ③「伊豆(イズ)」の略。「豆州」。

字通

[象形]足の高い食器の形。〔説文〕五上に「古、肉を食する器なり」とあり、〔国語、呉語〕に「觴酒(しやうしゆ)豆肉」の語がある。儀礼のときには数十豆を用いることがあった。いま存するものには春秋期以後のものが多く、「蒸ソン 外字豆(じようそんとう)」「善簠(ぜんほ)」と銘するものがあり、簠系統の器とされたのであろう。簠は黍稷(しよしよく)をいれる器であった。儀礼の際に塩物、ひたし物、飲み物に用い、古い儀礼が失われたのちには、豆は祭器としてのみ用いられた。また、荅(とう)に通じ、豆菽をいう。

侗(トウ・8画)

初出は後漢の『説文解字』で、論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はdhuŋまたはthuŋ(ともに平)。前者の同音は同とそれを部品とする漢字群、童、動など。後者の同音は瞳、通、痛など。上声の音は不明。

学研漢和大字典

会意兼形声。「人+(音符)同(つつぬけ)」。筒(つつ)・洞(ドウ)(つつぬけのほらあな)と同系。

語義

  1. (トウナリ){形容詞}筒抜けで頭の中のからっぽなさま。愚かなさま。「倥迂(コウトウ)・(クウトウ)(からっぽで愚かな)」「迂而不愿=迂にして愿ならず」〔論語・泰伯〕
  2. {名詞}中国の少数民族の名。貴州・湖南省および広西壮(チワン)族自治区に住むタイ系の民族。▽去声に読む。

字通

(条目無し)

大漢和辞典

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東(トウ・8画)

論語 東 金文 東大応援団
保卣・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はtuŋ(平)。

学研漢和大字典

象形。中にしん棒を通し、両端をしばった袋の形を描いたもの。「木+日」の会意文字とみる旧説は誤り。嚢(ノウ)(ふくろ)の上部と同じ。太陽が地平線をとおしてつきぬけて出る方角。「白虎通」五行篇に、「東方者動方也」とある。トウとは、通(とおす)・棟(屋根をとおすむな木)・動(上下につきぬけてうごく)などと同系。草書体をひらがな「と」として使うこともある。

語義

  1. {名詞}ひがし。日の出る方角。五行では木、色では青に当てる。《対語》⇒西。
  2. {動詞}ひがしする(ひがしす)。ひがしの方へ行く。
  3. {副詞}ひがしのかた。ひがしの方で。ひがしに向かって。「東敗於斉=東のかた斉に敗る」〔孟子・梁上〕
  4. 「東隴(トウロウ)」とは、じめじめしたさま。《同義語》⇒凍隴。
  5. {名詞}あるじ。主人。▽鄭(テイ)の国が楚(ソ)に対して、「東方の主」と称したことから。「房東(家ぬし)」「股東(株主)」。
  6. 《日本語での特別な意味》
    ①あずま(あづま)。京都からひがしの地方。▽時代によって範囲が違うが、平安時代ごろから、箱根山以東の地方をいった。関東。
    ②「東京」の略。「東大」「東名」。

字通

[仮借]東はもと槖(ふくろ)の象形字で、橐(たく)の初文。のち仮借して方位の東の意に用い、本義の橐(ふくろ)の意に用いることはない。本義を失った字であるから、仮借とする。〔説文〕六上に「動くなり」と訓するのは、春に蠢動(しゆんどう)する意とするもので、音義説である。曹はもと二東に従う形で、裁判を求める当事者が、束矢鈞金(きんきん)を橐に入れて提供し、裁判が行われた。東が橐の形であることは、そのことからも知られる。〔説文〕に字形を「日の木中に在るに從ふ」とし、榑桑(ふそう)神木の意とするのは誤りである。

到(トウ・8画)

致 金文
伯到壺・西周末期

初出は西周中期の金文。カールグレン上古音はtoɡ(去)。

学研漢和大字典

会意兼形声。到は「至+(音符)刀」。至は、矢が一線に届くさま。刀は、弓なりにそったかたな。まっすぐ行き届くのを至といい、弓なりの曲折をへて届くのを到という。似た字(倒・到)の覚え方「たおれる人あり(倒)、いたる人なし(到)」。

語義

  1. {動詞}いたる。目的の場所や時間に届く。《類義語》至。「到着」「夜半鐘声到客船=夜半の鐘声客船に到る」〔張継・楓橋夜泊〕▽「到今」は今に到るまで、「到処」は到る処(トコロ)と訓読する。「民到于今受其賜=民今に到るまで其の賜を受く」〔論語・憲問〕
  2. {動詞}いたる。奥底・すみまでとどく。「周到」「到底」「雖隆薛之城到於天=薛の城を隆(たか)くして天に到ると雖(いへど)も」〔戦国策・斉〕
  3. {動詞}いける所までいく。出し尽くす。▽「傾倒」の「倒」と同じ。「精神一到何事不成=精神一到何事か成らざらん」〔朱子語類〕

字通

[会意]至+人。金文の字形は■(至+人)に作り、至と人とに従う。至は矢の到達する所。そこに人が立つ形。〔説文〕十二上に「至るなり」とし、刀(とう)声とするが、金文の〔舀鼎(こつてい)〕に「用(もつ)て兹(こ)の人を■(至+人)(いた)す」と致の義に用いる。致送して至ることをいう。至は地をえらぶとき、矢を放って、その至るところをみて定める占地のしかたをいう。

党/黨(トウ・10画)

『大漢和辞典』の第一義は”むら・さと”。第二義が”ともがら”。初出は戦国末期の金文。カールグレン上古音はtɑŋ(上)。同音に當(当)があり、その語釈として『大漢和辞典』は”ならぶ”を載せる。また「国学大師」は、「偏袒。通“黨”。《莊子·天下》:“公而不當,易而無私。”」という。

當は春秋末期の金文から見られる。
當 当 金文
「攻敔王光劍」春秋晚期

従来言われてきた語源、”煮炊きのかまどの火を共にするような仲間”は、考え直す必要がありそうだ。従う部品は「黒」ではなく、「當」だからだ。

学研漢和大字典

声。「遯+(音符)尚」。多く集まる意を含む。仲間でやみ取り引きをするので遯(=黒)を加えた。▽党は本来黨とは別の字であったが、近世から黨の俗字として用いられた。都(人々の集まる所→みやこ)・諸(多く集まる)と同系。

語義

  1. {名詞}なかま。やから。人間の集まり。同志のグループ。「政党」「朋党」。
  2. {名詞}同じ村里に集まって住む人人。▽周代の行政区画では、五百家を一党という。のち、郷里の人々を郷党という。
  3. {名詞}親族の仲間。同族の集まり。「妻党(妻の一族)」。
  4. (トウス)(タウス){動詞・形容詞}仲間どうしでひいきをする。えこひいきしがちな。《対語》⇒公。「比党(仲間びいき)」「吾聞君子不党=吾聞く君子は党せずと」〔論語・述而〕
    め姓や民族名に用いる。「党項(タングート)」。

字通

尚+八+黒で、尚は神を迎えて祀る窓際の形、八は神気の降った形、黒は煮炊きして黒ずむところ。党は神聖なかまどで、かまどを共にし、その祭りを共にする祭祀共同体で、元は血縁集団だったのが、意味が拡大して地縁集団や村落を表すようになった。

唐(トウ・10画)

論語 唐 金文
唐子且乙爵・殷代末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はdʰɑŋ(平)。

学研漢和大字典

会意。「口+庚(ぴんとはる)」で、もと、口を張って大言すること。讜(トウ)と同じ。その原意は「荒唐」という熟語に保存されたが、単独ではもっぱら国名に用いられる。「大きな国」の意を含めた国名である。

語義

  1. {名詞}王朝名。李淵(リエン)が隋(ズイ)を滅ぼしてたてた。二十代二百九十年間(六一八~九〇七)続き、後梁(コウリョウ)に滅ぼされた。都は長安。李唐。
  2. {名詞}王朝名。五代の一つ。李存轄(リソンキョク)が後梁(コウリョウ)についでたてた。四代十四年で、後晋(コウシン)に滅ぼされた。後唐(コウトウ)ともいう。
  3. {名詞}王朝名。五代十国の一つ。李即(リベン)が五代の末にたてた国。三代三十九年で、宋(ソウ)に滅ぼされた。南唐ともいう。
  4. {名詞}上古の帝尭(ギョウ)のこと。▽尭の姓を「陶唐氏」といったことから。「唐虞(トウグ)之際」〔論語・泰伯〕
  5. {動詞・形容詞}口を大きく開いていう。大言する。大きく、なかみのないさま。「荒唐無稽(コウトウムケイ)」。
  6. {名詞}から。中国のこと。▽唐代は国威の輝いた時代なので、唐の滅亡後も外国では中国を唐といい、中世以降の中国人もまた唐人と自称することがある。▽「から」という訓は、韓(カン)のなまりという。「唐餐(トウサン)(中国料理)」「唐話(トウワ)(中国語)」「唐衣(カラコロモ)」。
  7. {名詞}つつみの上の道。▽塘に当てた用法。
  8. {動詞・形容詞}ぶらつく。とりとめのないさま。▽蕩に当てた用法。「唐子(=蕩子)」。

字通

[会意]庚(こう)+口。庚は康の従うところで、杵(きね)で脱穀する形。口は祝彤を収める器(𠙵(さい))の形。その前に杵をおいて祈る意。〔説文〕二上に「大言なり」と訓し、〔荘子、天下〕にいう「荒唐の言」にあたる。殷の始祖大乙は、卜辞には「唐」、金文には「成唐」、〔詩〕〔書〕には「湯・成湯」という。〔爾雅、釈宮〕に「廟中の路、之れを唐と謂ふ」とあり、また隄唐(ていとう)・場ともいう。場は祭祀壇場の意で、唐と声義が通じる。それで殷の唐を、のち湯と称するのであろう。唐の古文は啺に作る。

討(トウ・10画)

初出は秦代の篆書。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はtʰ(上)。同音多数。音トウ訓しらべる、訓もとめるで、別字は『大漢和辞典』に存在しない。音トウ訓たずねるは「温」があるが、カールグレン上古音はʔwən(平)で音通しない。

学研漢和大字典

形声。「言+(音符)肘(チュウ)の略体」で、ことばですみずみまで追求すること。搗(トウ)(すみずみまでつく)・匋(トウ)(すみまでまんべんなくこねる)などと同系。類義語の伐は、武器で切ること。異字同訓にうつ⇒打。

語義

  1. {動詞}うつ。すみまでまわって敵をうってとる。追求して攻めたてる。また、非をせめたてる。《類義語》伐。「討伐」「討不忠也=不忠を討つなり」〔春秋左氏伝・僖四〕
  2. {動詞}たずねる(たづぬ)。すみずみまで、まんべんなく詳しくしらべる。ていねいにしらべる。「検討」「討究」「世叔討論之=世叔これを討論す」〔論語・憲問〕
  3. {動詞}もとめる(もとむ)。あさってまわる。財物を得ようとしてあさりまわる。「討飯=飯を討む」。

字通

[形声]声符は寸(すん)。寸に肘(ちゆう)の声がある。〔説文〕三上に「治むるなり」とし、寸は法の意で会意とするが、形声の字とみてよい。〔書、皋陶謨(こうようぼ)〕「天、有罪を討つ」、〔孟子、告子下〕「天子は討じて伐たず」のように、上より討伐を加える意で、殊・誅と声義が近い。

通(トウ・10画)

速 金文
『字通』所収金文

初出は甲骨文。カールグレン上古音はtʰuŋ(平)。「ツウ」は呉音。漢音の又音は「ツ」。

学研漢和大字典

会意兼形声。用(ヨウ)は「卜(棒)+長方形の板」の会意文字で、棒を板にとおしたことを示す。それに人を加えた甬(ヨウ)の字は、人が足でとんと地板をふみとおすこと。通は「辶(足の動作)+(音符)甬」で、途中でつかえてとまらず、とんとつきとおること。類義語の徹は、つきぬけてとおる。透は、すきとおる。

語義

  1. (ツウズ){動詞}とおる(とほる)。とおす(とほす)。つきぬける。つらぬきとおす。「貫通」「通暢(ツウチョウ)(さわりなくつきぬける)」「通江淮=江淮を通す」〔春秋左氏伝・哀九〕
  2. (ツウズ){動詞}さわりなくいききさせる。「通商=商を通ず」「通其財利=其の財利を通ず」〔周礼・合方氏〕
  3. (ツウズ){動詞・形容詞}すらすらと事がはこぶ。また、さわりなく出世する。つかえることがないさま。《対語》⇒窮(キュウ)。「亨通(コウツウ)(運がよい)」「窮則通=窮すれば則ち通ず」。
  4. (ツウズ){動詞・形容詞}みんなに知らせる。また、すべてを知っている。「通報」「通才(物知り)」「通乎学=学に通ず」。
  5. (ツウズ){動詞}かよう(かよふ)。いききする。男女がまじわる。「私通」「内通」。
  6. {形容詞}とおりがよい。全部をつらぬいているさま。「共通」「通用」「通計」。
  7. 「一通」とは、ひととおり。《類義語》一遍。
  8. 《俗語》「通共(トンクン)」とは、みんなで、全部をとおして、の意をあらわすことば。
  9. 《日本語での特別な意味》
    ①つう。すみずみまでよく知っている人。「通人」「芸能通」。
    ②「通じ」とは、便通のこと。
    ③とおり(とほり)。まっすぐとおった道。「大通り」。
    ④かよう(かよふ)。一定の所にしげしげといく。「塾(ジュク)に通う」。
    ⑤かよい(かよひ)。しげしげといって、金品の受け渡しの覚えをしるす帳面。「通帳(ツウチョウ)・(カヨイチョウ)」。
    ⑥手紙を数えることば。

字通

[形声]声符は甬(よう)。甬に桶(とう)の声がある。〔説文〕二下に「達するなり」とあり、通達の意。金文に「通祿永命」という語があり、通とは全体にわたり、終始に及ぶことをいう。字はまた𢓶に作る。

祷/禱(トウ・11画)

論語 祷 金文
(金文)

初出は戦国文字で、この金文は漢字古今字資料庫/国学大師には見られないが、『字通』所載の年代不詳の上掲金文には、戦国期特有の細長い流麗さが無く、論語の時代の文字と信じて差し支えないように思われる。ただし確証は無い。カールグレン上古音は子音のtのみ。藤堂上古音はtog。日本語で音通する禂の初出は後漢の『説文解字』。䛬の初出も同様。

部品の「壽」(=寿)には、”ことほぐ”の語釈が『大漢和辞典』にあり、論語時代の置換候補となる。金文の上部は「神」で、下は祝詞を収めた器の𠙵さいに見える。しかし『字通』では、音符を寿=田チュウ=耕された土地とし、その間に𠙵を記した字で、穀物の豊穣を祈ることだという。

上記金文は白川フォントによるものだが、「神」+「𠙵」(サイ)と考えたくなる。
論語 神 金文 論語 器 口 サイ 金文
「神」「𠙵」(金文)

『説文解字』によると、祈るなかでも、神明に事を告げて幸福を求めること。

学研漢和大字典

会意兼形声。壽の原字は「長い線+口二つ」の会意文字で、長々と告げること。音は、トウ。祷の本字はそれを音符とし、示(祭壇)を加えた字で、長々と神に訴えていのること。道(長いみち、長々とのべる)・疇(チュウ)(長いあぜ道)・壽(ジュ)(=寿。年齢が長くのびる)・濤(トウ)(長々とうねる波)などと同系。類義語の祈は、近と同系で、願う事がらに近づきたいといのること。

「いのる」「いのり」は普通「祈る」「祈り」と書く。▽異体字「祷」は簡易慣用字体。

語義

{動詞・名詞}いのる。いのり。長々と神に訴えていのる。《類義語》祈。「祈禱(キトウ)」「黙禱(モクトウ)」「無所禱也=禱(いの)る所無きなり」〔論語・八佾〕

字通

[形声]声符は壽(寿)(じゆ)。壽に擣・濤(とう)の声がある。壽の初形は田疇(でんちゆう)の形。その田疇の間に、祝禱を収めた器の形である𠙵(さい)をしるす形のものが卜文にあり、もと農穀の豊穣を祈る意であったと思われる。〔説文〕一上に「事を告げて福を求むるなり」とし、告・求・禱は古韻の合する字であるが、田疇の祝告をいう字とすべきである。譸は詶(のろ)う。禱の対待の義をなす字である。

偸/偷(トウ・11画)

初出は前漢の隷書。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はtʰu(平)。同音に媮”悪賢い”、黈”黄色”。近音の「盜」(盗。カ音dhog、藤音dɔg)は、甲骨文から存在する。藤堂上古音はt’ug。「ツ」が呉音、「チュウ」は芥川かおじゃる公家のうっかりによる慣用音。

論語語釈「俞」も参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。兪(ユ)は、中を抜きとった丸木船。偸は「人+(音符)兪」。中身を抜きとる動作や物を抜きとるどろぼうのこと。輸(車で物をごっそり抜きとって運ぶ)・逾(ユ)(中間を抜いて向こうへ乗り越える)・踰(ユ)(中間を抜いて向こうへ乗り越える)などと同系。類義語に窃。

語義

  1. {動詞}ぬすむ。そっと中の物を抜きとる。人に気づかれないよう手に入れる。《同義語》⇒濠。「偸窃(トウセツ)」「存者且偸生=存する者は且く生を偸む」〔杜甫・石壕吏〕
  2. {名詞}すりや盗人。「偸盗(チュウトウ)・(トウトウ)」。
  3. {形容詞}ひそかに。こっそりするさま。「偸看(トウカン)」。
  4. {形容詞}うすい(うすし)。うわべだけで軽薄なさま。▽中身を抜きとってあるの意から。《同義語》⇒濠。「偸薄(トウハク)」「故旧不遺、則民不偸=故旧遺れざれば、則ち民偸からず」〔論語・泰伯〕

字通

[形声]声符は兪(ゆ)。兪に愉(とう)・鍮(ちゆう)の声がある。兪は舟と余とに従う。舟は盤、余は手術刀の形。手術刀で膿血を盤に移し除いて、治癒することを兪という。これによって一時の偸安をうることができる。ゆえに一時の、かりそめのものをいう。また偸薄・偸盗の意に用いる。

盜/盗(トウ・11画)

盗 金文
秦公鎛・春秋早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はdhoɡ(去)。

下掲『学研漢和大字典』・『字通』の説にかかわらず、訳者には皿+火+隹+水2つ、つまり中華鍋でトリの炒め物の最中にじゃぶじゃぶと水を注ぐ姿に見える。

学研漢和大字典

会意。盗の上部は「水+欠(人が腹をくぼめ、あごを出すさま)」からなり、物をほしがってよだれを流すこと。羨(セン)(うらやましがる)の原字。盜はそれと皿を合わせた字で、皿のごちそうをほしがることを示す。物の一部分をとくにぬきとること。釣(チョウ)(つりとる)・挑(一部をとりはなす)・掉(チョウ)(ぬき出す)などと同系。類義語に窃。旧字「盜」は人名漢字として使える。

語義

  1. {動詞}ぬすむ。他人の物をぬきとる。《類義語》偸(トウ)(ぬすむ)・窃。「窃盗」「掩耳盗鈴=耳を掩ひて鈴を盗む」。
  2. {動詞}ぬすむ。自分にそれだけのねうちもないのに、自分のものとする。「盗名=名を盗む」「盗用」。
  3. {名詞}ぬすみ。ぬすむこと。また、ぬすびと。《類義語》賊。「盗賊」「君子不為盗=君子は盗を為さず」〔荘子・山木〕
  4. 《日本語での特別な意味》野球で、「盗塁」の略。「二盗」「重盗」。

字通

[会意]旧字は盜に作り、㳄(ぜん)+皿(べい)。皿はおそらくもと血に作り、血盟の盤。それに㳄(唾)してこれをけがし、無効とする行為をいう。血盟に離叛し、共同体の盟約から逸脱するもので、〔左伝〕において盗とよばれている者は、みな亡命者であった。魯の僭主的な権力者であった陽虎も、その対立者であった孔子も、亡命中は盗とよばれ、格別の身元保証人がなければ、無籍者であった。〔詩、小雅、巧言〕「君子、盜を信ず」「盜言孔(はなは)だ甘し」などの句によって、そのような政治的亡命者が、その亡命先で種々の政治的活動をしていたことが知られる。〔左伝、襄十年〕に「群不逞の徒」という語がみえるが、孔子も一時はその徒であった。〔詩、小雅、十月之交〕に「噂沓(そんたふ)」という語があり、誹謗の意。沓は祝禱あるいは盟誓の器である曰(えつ)に水を注ぎ、その書をけがし無効とする行為をいう。血盟の盤に唾し、水をそそぐ行為と似ており、字の立意もそれに近い。〔説文〕八下に「厶(私)(ひそ)かに物を利するなり。㳄に從ふ。㳄は皿を欲する者なり」とするが、盜は皿中のものを欲するようなものではなく、政治的な亡命者であった。〔石鼓文〕に沝(すい)に従う形に作る。

陶(トウ・11画)

陶 金文
陶子盤・西周早期

初出は西周早期の金文。カールグレン上古音はdʰ(平)。

学研漢和大字典

会意兼形声。匋(トウ)は「缶(ほとぎ)+勹(まんべんなくかこむ)」の会意文字で、陶の原字。陶は「阜(つち)+(音符)匋」で、粘土をわくの中に入れて、まんべんなくこねること。まんべんなく行きわたるの意を含む。のち、匋のかわりに用いる。掏(トウ)(すみずみまでこねまわす)・蹈(トウ)(まんべんなくふみならす)・築(土をすみずみまでつきかためる)と同系。

語義

トウ
  1. {名詞}すえ(すゑ)。土をこねて焼いてつくった器。やきもの。せともの。「黒陶」「陶器」。
  2. (トウス)(タウス){動詞}粘土をこねてやきものをつくる。《類義語》掏(トウ)。「陶河浜=河浜に陶す」〔史記・五帝〕
  3. {動詞}粘土をこねて形をつくるように、物の姿をかえる。教化する。《類義語》冶(ヤ)。「陶冶(トウヤ)」「陶化」「薫陶」。
  4. (トウス)(タウス){動詞・形容詞}うちとける。気持ちがとけあって楽しい。「陶陶」「陶酔」「共陶暮春時=共に陶す暮春の時」〔謝霊運・酬従弟恵連詩〕
    め{動詞・形容詞}型やわくの中にとじこめられてもやもやする。うっとうしい。ゆううつになる。「鬱陶(ウットウ)」。
ヨウ
  1. {形容詞}うちとけるさま。「陶陶(ヨウヨウ)」。
  2. {形容詞}ゆらゆらと長く続くさま。▽遥(ヨウ)に当てた用法。
  3. 「皐陶(コウヨウ)」とは、帝舜(シュン)の臣の名。

字通

[形声]声符は匋(とう)。匋は窯の中に缶(ふ)(ほとぎ)をおいて焼く形。〔説文〕十四下に「再成の丘なり」とし、〔釈名、釈丘〕に「陶竃(たうさう)の如く然るなり」というが、その上り窯の形が匋である。〔礼記、郊特牲〕「器に陶匏(たうはう)を用ふ」とあって、天帝を祀る郊祭には素焼きのものを用いた。そのような祭器を焼く窯は、聖所に近く設けられるので、神梯の象である𨸏(ふ)に従って、陶に作る。帝尭陶唐氏の堯(尭)は、素焼きの器を積みあげた形。これに火を加えて焼成するを燒(焼)という。陶・堯は関連のある名である。

棖(トウ・12画)

論語 申棖

初出は後漢の『説文解字』。カールグレン上古音はdʰăŋ(平)。

論語では孔子の弟子・申棖の名として登場。

学研漢和大字典

会意兼形声。「木+(音符)長」で、長い棒。

語義

  1. {名詞}ほうだて(はうだて)。門柱の両側にたてて、とびらをとめるための細長い棒。
  2. {動詞}ふれる(ふる)。さわる。さわって止める。「棖触(トウショク)」。

字通

[形声]声符は長(ちよう)。〔説文〕六上に「杖なり。~一に曰く、法なり」、〔爾雅、釈宮〕「棖、之れを楔と謂ふ」の〔注〕に「門の兩旁の木なり」、また〔広雅、釈詁三〕に「止むるなり」とみえる。

道(トウ/ドウ・13画)

論語 道 金文
禹殳鼎・西周中期

初出は西周早期の金文。「国学大師」は甲骨文と言う。道と導はカールグレン上古音dh(上)で同音。藤堂上古音はdog。「ドウ」は呉音。

原義は”原則”、”行くに相応しい道筋”。孔子一門の目標は、仁=貴族になることだった。それゆえ論語の各章のうち史実であるものについては、道=貴族になるための方法、あるいは貴族らしい行動規範。

学研漢和大字典

しんにょう(足の動作)+音符首」の会意兼形声文字で、首(あたま)を向けて進みいくみち。また、テキ(みち)と同系と考えると、一点から出てのびていくみち。▽首はthiogから変化してʃıəuと発音するようになったので、道dogの音符となりえた。路は、連絡の絡と同系で、横の連絡みち。塗は、土をおしのばしたみち。
意味:みち。みちばたで、途中で。人の行うべきみち。基準とすべきやり方。宗教の教え。道家・道教。行政区画の名。〔俗〕いう。みちびく。〔国〕武芸や趣味・芸術などについて、一派をなしたもの。

意味

  1. {名詞}みち。頭を向けて進んでいくみち。ある方向にのびるみち。《類義語》路。「道阻且長=道は阻にして且つ長し」〔詩経・秦風・蒹葭〕
  2. {副詞}みちばたで。途中で。「道聴而塗説=道に聴きて而塗に説く」〔論語・陽貨〕
  3. {名詞}みち。人の行うべきみち。「道徳」「正道」「道不行=道行はれず」〔論語・公冶長〕
  4. {名詞}基準とすべきやりかた。専門の技術。「王道」「覇道(ハドウ)」「医道」。
  5. {名詞}宗教の教え。信仰をもとにした組織。「伝道」「仏道」「一貫道」。
  6. {名詞}道家・道教のこと。老子を祖とし、無欲を旨として長寿を願う教え。「道観(道教の寺)」「道術」。
  7. {名詞}行政区画の名。漢代には少数民族の居住区で県と同級、唐代には全国を十道にわけ、明(ミン)・清(シン)代には、一省をいくつかの道にわけた。「道台(道の長官)」。
  8. {動詞}《俗語》いう(いふ)。のべる。▽唐代以後の俗語では、「謂曰…(いひていはく)」を「説道…」という。去声に読む。
  9. {動詞}みちびく。先にたってある方向へと引っぱる。▽去声に読む。《同義語》導。「道之以政=これを道くに政を以てす」〔論語・為政〕

《日本語での特別な意味》

  1. みち。武芸や趣味・芸術などについて一派をなしたもの。「合気道(アイキドウ)」「茶道」。
  2. 「北海道」の略。「道南」。

字通

論語 道 古文
(古文)

しゅちゃく。古文は首と寸とに従い、首を携える形。異族の首を携えて除道を行う意で、導く意。祓除を終えたところを道という。〔説文〕二下に「行く所の道なり」とし、会意とするが、首に従う意について解くところがない。途ははりを刺して除道すること、路は神を降格して除道すること。道路はまた邪霊のゆくところであるから、すべて除道をする。その方法を術という。術は呪霊をもつ獣(じゅつ)によって祓う意で、邑中の道をまた術という。そのような呪法の大系を道術という。

訓義

みち、みちをきよめる、みちびく、ひらく。とおる、みちゆく、ゆく、かよう。ことわり、はたらき、てだて、おしえ、道理。したがう、おこなう、よる、ただしい。いう、かたる。道術、道教、道士、才芸。行政単位。

大漢和辞典

論語 道 正字
もと𨖁に作る。会意文字。𩠐と辵の合字。𩠐は首の本字で、人の身体の頂上にあるもの、即ち行きつく所の意を示し、辵はゆく意。二字を合して、歩行のみち、殊に、ひとすぢみちの義を表す。引伸して、普く道徳等のみちの義に用いる。

字解

みち。みちする。したがう。おこなう。すぐ、ただしい。大きい。みちのかみ、道祖神。祭りの名。道教。道士。仏教。僧侶。首尾の完具した篇章。くに、蛮夷の住む国。唐の行政区域の名。国の名。〔仏〕有漏道、無漏道、仏果。いう、かたる。治める。由る。由り、通って。みちびく。みちびき。教える。助ける。開く。精通する。

童(トウ・12画)

論語 童 金文
毛公鼎・西周末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はdʰuŋ(平)。「ドウ」は慣用音。

学研漢和大字典

会意兼形声。東(トウ)(心棒をつきぬいた袋、太陽がつきぬけて出る方角)はつきぬく意を含む。童の下部の「東+土」は重や動の左側の部分と同じで、土(地面)をつきぬくように↓型に動作や重みがかかること。童は「辛(鋭い刃物)+目+(音符)東+土」で、刃物で目をつき抜いて目を見えなくした男のこと。棟(トウ)(つきぬくむねの木)・通(トウ)・(ツウ)(つきぬく)などと同系。類義語の僕は、朴(=樸、あら木)と同系で、あらけずりの野蛮な男のこと。転じて、へり下った自称のことばとなった。奴・妾は女どれい。豎(ジュ)は、子どものどれい。

語義

  1. {名詞}もと、目を刃物で突きぬいて見えなくした男のどれい。また、男の罪人をどれいとしたもの。のち、雑用をする男の召使。男のしもべ。《同義語》⇒僮。《類義語》僕。「童僕(男のどれいや召使)」。
  2. {名詞}わらべ。わらわ(わらは)。まだ物事のはっきり判断できない幼い子ども。おさなご。▽十五歳で成人して冠者となる。「童蒙(ドウモウ)(道理のわからない子ども)」「童子」。
  3. {名詞}幼い子どものようなようす。また、ぼうず頭。「童山(はげ山)」。

字通

[形声]金文の字形は東(槖(ふくろ))に従い、東(とう)声。のち重に従う字形があり、重(じゅう)声。里はその省略形。上部の立の部分は、古くは辛と目とに従い、目の上に入墨する意で、受刑者をいう。童は僮(どう)の初文。〔説文〕三上に「男の辠(つみ)有るを奴と曰ふ。奴を童と曰ひ、女を妾と曰ふ」とし、字は䇂(けん)に従って重の省声であるという。結髪を許されず、それで童髪のものを童という。童幼の義はのちの転義。金文の〔毛公鼎〕に「死(をさ)めて童せしむること毋(なか)れ」とあり、動の意に用いる。童謡はもと童僕の徒の労働の歌。〔左伝〕や〔史記〕〔漢書〕にみえる童謡は、服役者が労働のときに歌ったもので、これを歌占(うたうら)として用いることがあった。わが国の〔天智紀〕などにみえる童謡も、その類のものである。僮は農奴的な身分のものをいう。

等(トウ・12画)

初出は楚系戦国文字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音は不明。藤堂上古音はtəŋ(上)。董同龢上古音の同音に戴、初出は前漢の隷書

学研漢和大字典

形声。「竹+(音符)寺」で、もと竹の節、または、竹簡の長さがひとしくそろったこと。転じて、同じものをそろえて順序を整えるの意となった。寺の意味(役所、てら)とは直接の関係はない。治(ジ)・(チ)(でこぼこをそろえる)と同系。類義語に斉。「ひとしい」は「均しい」「斉しい」とも書く。

語義

  1. {形容詞}ひとしい(ひとし)。同じようにそろっている。《類義語》斉。「斉等」「等分」。
  2. {動詞}ひとしくする(ひとしくす)。そろえる。同じものをそろえて整理する。同じ等級にそろえる。ならべてくらべる。「等諸臣之爵=諸臣の爵を等しくす」〔周礼・大行人〕
  3. {名詞}たぐい(たぐひ)。同じものをそろえてほかのものと区別した段階・順序。ランク。「等級」「同等」。
  4. {単位詞}階段の段を数えることば。また、転じて、物事の段階・順序を数えることば。「土階三等(土のきざはし三段。質素な住居のこと)」「出降一等=出でて一等を降る」〔論語・郷党〕
  5. {助辞}ら。ほかにも同じものがあることをあらわすことば。「卿等(ケイラ)(あなた方)」「…等等(トウトウ)(…など)」。
  6. {名詞}同じ大きさをした、はかりの分銅。「等子」。
  7. {疑問詞}《俗語》なに。どんな。《類義語》何。「死公云等道=死公等道をか云ふ」〔後漢書・禰衡〕
  8. {動詞}《俗語》まつ。まちのぞむ。《類義語》待。「等待(トンタイ)」。

字通

[形声]声符は寺(じ)。寺に待(たい)・特(とく)の声がある。〔説文〕五上に「齊(ひと)しき簡なり。竹に從ひ、寺に從ふ。寺は宮曹の等平なり」と官寺の意を含むとするが、形声とみてよい。〔孟子、公孫丑上〕「百世の後よりして、百世の王を等(はか)るに、之れに能(よ)く違ふ莫(な)きなり」、〔周礼、夏官、司勲〕「以て其の功を等(はか)る」のように、差等をはかる意。もと木簡の大小を整える意であろう。「まつ」の意は、待と通用の義である。

湯(トウ・12画)

湯 金文
仲枏父簋・西周中期

初出は西周中期の金文。カールグレン上古音はtʰɑŋ(平)。

学研漢和大字典

会意兼形声。昜(ヨウ)は「日+T印(上へとあがる)」の会意文字で、太陽が勢いよくあがること。陽や揚(あがる)の原字。湯は「水+(音符)昜」で、ゆが勢いよく蒸気をあげてわきたつことを示す。

語義

トウ
  1. {名詞}ゆ。ゆげがたちあがるまでに熱した水。また、熱いスープ。「熱湯」「冬日則飲湯=冬日には則ち湯を飲む」〔孟子・告上〕
  2. {名詞}殷(イン)(商)の初代の王、湯(トウ)王のこと。「禹湯文武(夏(カ)の禹(ウ)、殷(イン)の湯(トウ)王、周の文王・武王などの古代の聖王)」。
  3. {動詞}おす。ゆり動かす。▽蕩(トウ)に当てた用法。去声に読む。
  4. 「湯婆(タンポ)」とは、妻君(婆)のかわりにだいてねるゆたんぽ。▽タンポは唐宋(トウソウ)音。
  5. {名詞}《俗語》スープ。「湯跟(タンミエン)」。
  6. {名詞}煎じ薬。「葛根湯」。
ショウ
  1. 「湯湯(ショウショウ)」とは、わきたつような勢いで流れるさま。「江漢湯湯」〔詩経・大雅・江漢〕
  2. 《日本語での特別な意味》ゆ。ふろ。温泉。「湯にはいる」。

字通

[形声]声符は昜(よう)。昜に瑒(とう)・暢(ちよう)・傷(しよう)の声がある。昜は台上に玉をおき、その玉光が下方に放射する形で、玉光を示す。その玉光によって魂振りが行われる。神梯の前におくときは陽、万物に霊気を与える根源の力であり、玉光を瑒(よう)という。〔説文〕十一上に「熱き水なり」とあり、熱湯の意とする。湯滌のようにあらう意があり、水勢を「湯湯(しようしよう)」という。蕩・盪(とう)はその派生字である。

答(トウ・12画)

初出は後漢の隷書(楊君石門頌、建和二年=148年)。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はtəp(入)。同音は一時的に不明。

学研漢和大字典

会意。「竹+合」で、竹の器にぴたりとふたをかぶせること。みと、ふたとがあうことから応答の意となった。類義語に応。

語義

  1. {動詞}こたえる(こたふ)。相手のしたことに対してこちらの態度を示す。返事をする。また、むくいる。《同義語》⇒荅。「応答」「夫子不答=夫子答へず」〔論語・憲問〕。「礼人不答反其敬=人を礼して答へられざれば其の敬を反りみよ」〔孟子・離上〕
  2. {動詞}こたえる(こたふ)。問題を解いてこたえを出す。「解答」。
  3. {名詞}こたえ(こたへ)。問題に対する解答。また、質問に対する返事。「確答」。

字通

[形声]声符は合(ごう)。〔説文〕一下に「荅(たふ)は小尗(せうしゆく)(小豆)なり」とみえ、答の字は未収。〔爾雅、釈言〕に「畣(たふ)は然りとするなり」とあり、また金文には斉器の〔陳侯因■(上下に次+月)敦(ちんこういんしたい)〕に「厥(そ)の德に合揚(たふやう)(答揚)す」とあって、合・畣が答の初文であった。〔宣賢本、書、洛誥〕に「厥(そ)の師に畣(こた)ふ」、また〔左伝、宣二年〕「旣に合(こた)へて來り奔る」のように、文献になおその字を用いる例がある。合は祝禱・盟誓の器に蓋(ふた)する形で、神明に答揚する意であり、古く荅・答の声があったものと思われる。

※荅の初出は戦国中期の金文、あるいは秦系戦国文字。畣の初出は古文

媮/婾(トウ/ユ・12画)

初出は定州漢墓竹簡論語。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はtʰu(平)。異体字の「偷」の初出は前漢の隷書。同音は黈”黄色”(上)のみ。「媮」も「偷」も『大漢和辞典』に条目が無い。グリフウィキでの異体字は「婾」のみ。

兪の巜(カイ)は”大溝”であり、俞の刂(トウ)は”やいば”で、全然違う字だが異体字として扱われ(論語語釈「兪」を参照)、真にやむを得ず本条目では「婾」として扱う。

その「婾」の語釈に”わるがしこい・ぬすむ”があり(→大漢和辞典)、「偷」(論語語釈「偷」)に酷似した漢字に、芥川の小説で有名な「偸」”かりそめ・ぬすむ”がある(→大漢和辞典)。

『大漢和辞典』で同音同訓の盜(盗)dʰoɡ(去)の初出は甲骨文。但し音が遠くて音通と言えない(論語語釈「盗」)。結論として、論語時代の置換候補は無い。

学研漢和大字典

会意兼形声。兪(ユ)は、木の中身をくり抜いてつくった丸木舟のこと。婾は「女+(音符)兪」で、女にありがちな、中身のぬけたうわべだけの虚飾を示す。

語義

トウtōu
  1. {動詞}ぬすむ。こっそり中身を抜きとる。《同義語》⇒偸(トウ)。
  2. {形容詞}うすい(うすし)。うわべだけで、中身がぬけて、うつろなさま。誠実でないさま。《同義語》⇒偸。「婾薄(トウハク)」。
ユyú
  1. {動詞}たのしむ。《同義語》⇒愉。

字通

[形声]声符は兪(ゆ)。兪に偸・愉(とう)の声がある。兪は舟(盤)と余(外科用の曲刀)に従い、余を以て膿血を盤に輸(おく)り除く意で、それによって疾が癒(い)え、心が愉(たの)しくなる。〔説文〕十二下に「巧黠(かうけつ)なるなり」とあり、また偸と声義が近い。一時の僥倖を貪ることをもいう。

慟(トウ・14画)

初出は後漢の説文解字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はdʰuŋ(去)。同音に同とそれを部品とする漢字群、童とそれを部品とする漢字群、動など。動が「慟に通ず」と『大漢和辞典』は言う。「ドウ」は慣用音。呉音は「ズウ」。

学研漢和大字典

会意兼形声。動は、上下に突きぬけるようにうごかすこと。慟は「心+(音符)動」で、からだを上下に動かして悲しむこと。痛(トウ)(上下に突きぬけるほど心を痛める)と同系。

語義

  1. (ドウス){動詞}なげく。ひどく悲しむ。「慟哭(ドウコク)」「子哭之慟=子これを哭して慟す」〔論語・先進〕

字通

[形声]声符は動(どう)。〔説文新附〕十下に「大いに哭するなり」とあり、弔問のとき声をあげ、身をふるわせて泣くことをいう。〔論語、先進〕に「顏淵死す。子(孔子)之れを哭して慟す。從者曰く、子、慟せり」とあり、肉親でなければ、哭するのが礼であった。哭とは、声を呑んで泣くことをいう。

蕩(トウ・15画)

初出は後漢の『説文解字』で、論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はdhɑŋ(上/去)で、同音に唐とそれを部品とする漢字群、堂、棠、宕”広い”など。唐の字にも”おおげさ”の意がある。

学研漢和大字典

会意兼形声。「艸+(音符)湯(ゆれうごく水)」で、大水で草木がゆれうごくこと。

語義

  1. {動詞・形容詞}広くゆきわたる。ゆらゆら広がっているさま。「蕩蕩乎、民無能名焉=蕩蕩乎として、民能く名づくること無し」〔論語・泰伯〕。「王道蕩蕩=王道蕩蕩たり」〔書経・洪範〕
  2. (トウス)(タウス){動詞}うごく。うごかす。やぶる。ゆらゆらとうごかす。ゆれうごいてこわれ崩れる。「蕩析(トウセキ)」「蕩尽(トウジン)」「斉侯、与蔡姫乗舟于囿、蕩公=斉侯、蔡姫と舟に囿に乗り、公を蕩す」〔春秋左氏伝・僖三〕
  3. (トウス)(タウス)・(トウナリ)(タウナリ){動詞・形容詞}酒色などにおぼれる。また、物事にしまりがなくでたらめであるさま。「放蕩」「好知不好学、其蔽也蕩=知を好みて学を好まざれば、其の蔽や蕩なり」〔論語・陽貨〕
  4. (トウス)(タウス){動詞}勢いよく洗い流す。よごれやじゃまなものをきれいに除く。《同義語》⇒盪。「掃蕩(ソウトウ)」「蕩滌(トウテキ)」「蕩天下之陰事=天下の陰事を蕩す」〔礼記・昏義〕
  5. (トウス)(タウス){動詞}うごきはじめる。胎動する。「諸生蕩=諸生蕩す」〔礼記・月令〕

字通

[形声]声符は湯(とう)。〔説文〕に字を水部十一上に属し、水名とする。湯に盪揺(とうよう)の意があり、蕩滌(とうでき)の意となり、また蕩蕩として広大の意となる。字は昜(よう)の声義を承け、昜は陽光が放射しゆらぐ意。それを他に及ぼして湯・蕩のようにいう。

滕(トウ・15画)

滕 金文
吾作滕公鬲・西周早期

初出は西周早期の金文。カールグレン上古音はdʰəŋ(平)。

学研漢和大字典

会意兼形声。「水+(音符)朕(上に出る、あがる)」。

語義

  1. {名詞}春秋・戦国時代の国名。周の文王の子の叔墸(シュクシュウ)が、ここに封ぜられた。今の山東省滕(トウ)県。魯(ロ)の南にあった小国。
  2. {動詞}水がわきでる。《類義語》騰。

字通

[形声]声符は外字 ヨウ(よう)。外字 ヨウに騰・謄(とう)の声がある。外字は盤中のものを捧げて賸(おく)る意。〔説文〕十一上に「水、超涌するなり」とあって、水がわき上がることをいう。〔詩、小雅、十月之交〕「百川沸騰(ふつとう)す」を、〔玉篇〕に引いて「沸滕」に作る。水が盤中にゆれ動くことから、わき上がる水勢をいう字となったのであろう。

盪(トウ・17画)

初出は後漢の説文解字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はdʰɑŋ(上)。同音に唐とそれを部品とする漢字群、堂とそれを部品とする漢字群、昜を部品とする漢字群。”ゆらす”を意味し、かつ金文以前に遡り得る漢字が見つからない。

学研漢和大字典

会意兼形声。「皿+(音符)湯(ゆらゆらする水)」。

語義

  1. {動詞}うごかす。うごく。ゆりうごかす。ゆれうごく。「不盪胸中則正=胸中に盪かざれば則ち正し」〔荘子・庚桑楚〕
  2. {動詞}あらう(あらふ)。どっと水をそそいであらい流す。「聊以盪意平心=聊か以て意を盪ひ心を平らかにす」〔漢書・芸文志〕
  3. 「盪盪(トウトウ)」とは、広々とした水面がゆれるさま。

字通

[形声]声符は湯(とう)。〔説文〕五上に「器を滌(あら)ふなり」という。〔論語、憲問〕に「奡(がう)(人の名)、舟を盪(うご)かす」とあり、舟をゆする意。盪とはゆするようにはげしく動かして洗うことをいう。蕩と通用することがある。

蹈(トウ・17画)

初出は後漢の説文解字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はdʰ(去)。同音多数。

学研漢和大字典

舀(トウ)は、手(爪)で臼(ウス)の中をまんべんなくついてこねることを示す会意文字。蹈は「足+(音符)舀」で、足でとんとんとつくこと。匋(トウ)(型の中で粘土をとんとんとつきこむ)・搗(トウ)(つく)などと同系。類義語の踏(トウ)は、ぺたぺたと足ぶみをすること。践(セン)は、小きざみにふむ、小さくふみくだくこと。蹍(テン)は、足に重みをかけ、上からふみつけてのばすこと。蹂(ジュウ)は、足をひねってふむこと。「踏」に書き換えることがある。「踏・踏襲」。

語義

  1. {動詞}ふむ。臼(ウス)でつくように、まんべんなくとんとんと足ぶみする。《類義語》踏。「舞蹈(ブトウ)」「不知手之舞之足之蹈之也=手の舞ひの足の蹈むをの知らざるなり」〔礼記・楽記〕
  2. {動詞}ふむ。足でふむ。また、ふんでいく。また、ふみ行う。《類義語》踏・践(セン)。「蹈践(トウセン)」「高蹈(コウトウ)(行いすましたやり方)」「白刃可蹈也=白刃も蹈むべきなり」〔中庸〕

字通

[形声]声符は舀(よう)。舀に滔・稻(稲)(とう)の声がある。舀は臼の中のものをとり出す形。〔説文〕二下に「踐(ふ)むなり」とあり、足しげくふむことをいう。〔礼記、楽記〕に「手の舞ひ、足の蹈むを知らず」とは、欣喜して雀躍する意。また武王克殷の楽舞とされる大武の舞容は「發揚蹈厲(たうれい)」と形容され、蹈厲には反閉(へんばい)のような呪儀としての意味があった。踏(とう)・蹋(とう)と声義近く、踏・蹋もそれぞれ呪的な意味をもつ所作であった。


※踏(上古音不明)、蹋dʰɑp(入)。両者は異体字とされ、初出不明

鬭/闘(トウ・18画)

初出は秦系戦国文字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音は不明(去)。『大漢和辞典』で音トウ訓たたかうに部品の鬥tŭɡ(去)があり、甲骨文より存在する

学研漢和大字典

会意兼形声。中の部分の字(音ジュ)は、たてる動作を示す。鬪は、それを音符とし、鬥(二人が武器を持ってたち、たたかうさま)を加えた字で、たちはだかって切りあうこと。闘は鬥を門にかえた俗字で、常用漢字に採用された。豆(トウ)(たつ)・逗(トウ)(たちどまる)・豎(ジュ)(たつ)・樹(ジュ)(たつ)などと同系。類義語の戦は、もと、なぎたおして平らにすること。争は、とりあいをすること。異字同訓にたたかう⇒戦。常用漢字表の旧字体は「鬭」。▽「たたかう」「たたかい」の意味で俗に「斗」を用いることがある。

語義

  1. {動詞}たたかう(たたかふ)。たたかわす(たたかはす)。両方がたちはだかって、切りあいや組み打ちをする。互いに対抗してあらそう。《類義語》戦・争。「決闘」「闘智=智を闘はす」「闘妙争能爾不如=妙を闘はし能を争ふ爾も如かず」〔白居易・胡旋女〕
  2. {名詞}たたかい(たたかひ)。互いに譲ろうとしないあらそい。「凡有闘怒者成之=凡そ闘怒有る者はこれを成ぐ」〔周礼・調人〕

字通

[会意]正字は鬭に作り、鬥(とう)+斲(たく)。斲は左に盾を執り、右に斤(おの)を執って戦う形。鬥は髪をふり乱して手格して争う形。鬪の初文で、卜文にはその字を用いる。合わせて戦闘の意とする。〔説文〕三下に「遇ふなり」とし、斲声とする。遭遇して相闘う意。戰(戦)は單(盾の形)と戈(か)とに従い、斲と立意の同じ字である。

堂(ドウ・11画)

論語 堂 金文 論語 堂
兆域圖銅版・戰國晚期

『大漢和辞典』の第一義は”表座敷”。”正殿”などもっとも立派な建物を指す。”堂々”など、立派なさまをも意味する。日本の道ばたにある地蔵堂のようなものではない。吉川本では「ざしき」とふりがなを振っている。

初出は戦国晩期の「兆域圖銅版」で、論語の時代までさかのぼることが出来ない。カールグレン上古音はdʰɑŋ(平)、同音に唐とそれを部品とする漢字群、湯を部品とする漢字群など、宕”岩屋”。唐に”庭”の語釈を『大漢和辞典』が載せる。
唐 大漢和辞典

尙 尚 金文 棠 金文 論語 土 金文
「尚」「棠」「土」(金文)

漢字の部品的には、上掲三文字が論語の時代も存在するから、「堂」もあって不思議は無いが、可能性の指摘に留める。

学研漢和大字典

会意兼形声文字で、尚(ショウ)は、窓から空気が高くたちのぼるさまを示し、広く高く広がる意を含む。堂は「土+(音符)尚」で広く高い土台のこと。転じて、広い高い台上にたてた表御殿。敞(ショウ)(広く高い)・場(広く高い土台)・陽(日当たりのよい高台)などと同系のことば。
論語 中国家屋

語義

  1. {名詞}広く高く、南向きに設けた表向きの広間。表座敷。《対語》⇒室(奥のへや)。「花冠不整下堂来=花冠整はず堂を下りて来たる」〔白居易・長恨歌〕
  2. {名詞}公の仕事をする広く高い御殿。表御殿。「廟堂(ビョウドウ)(朝廷)」「王坐於堂上=王堂上に坐す」〔孟子・梁上〕
  3. {名詞}広く高い土盛り。また、台地。《類義語》場。
  4. 「堂堂(ドウドウ)」とは、大きく広いさま。「張侯堂堂身八尺=張侯は堂堂身八尺」〔黄庭堅・次韻答張沙河〕
  5. 「北堂(ホクドウ)」とは、母のこと。
  6. 「令堂(レイドウ)」「尊堂(ソンドウ)」とは、相手を尊敬して、その母をいうことば。
  7. 「堂兄弟(同堂兄弟)」とは、父方のいとこのこと。
  8. 《日本語での特別な意味》
    ①神仏をまつる建物。
    ②多くの人を入れる広い建物。「礼拝堂」。
    ③屋号・雅号などにつけることば。

字通

[形声]声符は尚(しよう)。尚に棠・黨(党)(とう)の声がある。尚は向(まど)近くに神を迎えて祀り、そこに神気のあらわれる形。八は神気を示す。土は土壇。土壇のある祀所を堂という。〔説文〕十三下に「殿なり」とあり、古文と籀文とを録する。その字形からみると、明堂のように室のない高台上の建物であったらしく、〔釈名、釈宮室〕に「高顯の貌なり」という。また〔広雅、釈詁四〕に「明なり」とあるのも、高明の意であろう。

動(ドウ・11画)

初出は西周末期の金文。カールグレン上古音はdʰuŋ(上)。

学研漢和大字典

会意兼形声。重は「人が地上を足で突く形+(音符)東(つらぬく)」の会意兼形声文字。体重を足にかけ、足でとんと地面を突いたさま。動は「力+(音符)重」で、もと、足でとんと地を突く動作。衝(どんとつく)や踊(とんとんと上下にうごいて重みを足にかける)と近い。のち広く、静止の反対、うごく意に用いられる。

語義

  1. {動詞}うごく。もと、とんとんと上下にうごく意。のち広く、運動や行動の意に用いる。《対語》⇒静。「運動」「動作」「非礼勿動=礼に非ざれば動くこと勿かれ」〔論語・顔淵〕
  2. {動詞}うごかす。「是動天下之兵也=是れ天下の兵を動かすなり」〔孟子・梁下〕
  3. (ドウス){動詞}うごかす。うごく。どんと衝撃を与える。また、受ける。ショックを与える。また、受ける。《類義語》衝。「感動」「動聴=聴を動かす」。
  4. {動詞}うごかす。静止しているのをやめて、動作をはじめる。「動工(工事の起工)」「動筆=筆を動かす」。
  5. {副詞}ややもすれば。→語法

語法

「ややもすれば」とよみ、「どうかするといつも」と訳す。前の状況に連動して、後の状況がおこる意を示す。
▽「動輒=ややもすればすなわち」と多く用いる。俗語では「動不動(トンプトン)」という。「歳時賞賜、動輒億万=歳時賞賜し、動(やや)もすれば輒(すなは)ち億万なり」〈毎年金品や官位を与え、どうかするとすぐに億や万(の金品)になる〉〔後漢書・南匈奴〕

字通

[形声]声符は重(じゆう)。金文に童を動の意に用いており、もと童(どう)声。童の上部は、目の上に入墨した形で僮。下部は東(槖(ふくろ))の形で声符。力は耒(すき)の象形。僮僕が耒を執って農耕に従うことをいう。〔説文〕十三下に「作(な)すなり」とあり、耕作する意。〔孟子、滕文公上〕に「終歳勤動す」とあり、勤も農作に従う意。のちひろく行動・動作の意となる。

農(ドウ・13画)

農 金文
史農觶・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はn(平)。「ノウ」は呉音。

学研漢和大字典

会意。古い字は「林+辰(かい)」の会意文字で、林をやき、貝がらで土を柔らかくすることを示す。のち「辰(かい)+頭のうみを両手でしぼるさま」で、かたい土を貝がらで掘って、ねっとりと柔らかくすること。膿(ねっとりしたうみ)・濃(ねっとり)と同系。草書体をひらがな「の」として使うこともある。

語義

  1. {動詞・名詞}田畑の土を柔らかくする。かたい土をほぐしてねっとりさせる。たがやす。また、畑仕事。《類義語》耕。「農耕」「務農(畑仕事をする)」。
  2. {名詞}畑仕事をする人。「貧農」「佃農(デンノウ)(小作農)」「吾不如老農=吾老農に如かず」〔論語・子路〕
  3. 「先農」とは、農業の開祖とされる、神農氏のこと。
  4. 《日本語での特別な意味》「農林水産省」の略。「農相」。

字通

[会意]金文の字形は田+辰(しん)。辰は蜃器。古くは蜃(しん)(はまぐり)など貝の切片を耕作の器に用いた。蓐・耨(じよく)は草切ることをいう。〔説文〕三上に「䢉は耕す人なり」(段注本)とし、字を「䢅(しん)に從ひ、囟(しん)聲」とするが、声が合わず、〔繫伝〕に凶(きよう)声とするのも声が異なる。卜文の字形は林と辰とに從い、もと草莱(草はら)を辟(ひら)くことを示すものであろう。のち林の部分が艸になり、田になり、曲はさらにその形の誤ったものである。䢉は膿(のう)・醲(じよう)系統の字で、濃密の意。もと農と関するところはない。

得(トク・11画)

初出は甲骨文。カールグレン上古音はtək(入)。

学研漢和大字典

会意兼形声。箇(トク)は「貝(かい)+寸(て)」の会意文字で、手で貝(財貨)を拾得したさま。得は、さらに彳(いく)を加えたもので、いって物を手に入れることを示す。横にそれず、まっすぐずぼしに当たる意を含む。直(チョク)(まっすぐ)・徳(まっすぐな心)と同系。類義語の能は、能力があってできる、その負担にたえられること。可は、さしつかえない事情がそれを許す場合などに用いる。異字同訓に得る「勝利を得る。許可を得る。得物を振り回す」 獲る「獲物をねらう」。

語義

  1. {動詞}える(う)。手に入れる。自分のものにする。《対語》⇒失。「獲得」「納得」「得罪於君=罪を君に得たり」〔韓非子・説難〕。「不得魚=魚を得ず」〔孟子・梁上〕
  2. {動詞}える(う)。うまくあたる。つぼにはまる。《対語》⇒失(はずれる)。「得意=意を得」「不思而得=思はずして得」〔中庸〕
  3. {動詞・名詞}もうける。もうけ。《対語》⇒失・損。「損得」「得失」。
  4. {助動詞}える(う)。→語法「①②」。
  5. 「安得(イズクンゾエン)」とは、なんとかしてそうありたいものだという願いをあらわすことば。「安得猛士兮守四方=いづにか猛士を得て四方を守らん」〔漢高祖・大風歌〕
  6. {助動詞}《俗語》事情に迫られてそうしなければならない。せざるをえない。▽d-iと読む。「得去(テイチュイ)(行かねばならない)」。
  7. {助辞}《俗語》動詞や形容詞について、状態や程度をあらわすことば。▽deと読む。「画得好(ホワトハオ)(書き方がうまい)」。

語法

  1. 「~するをう」とよみ、「~できる」と訳す。可能の意を示す。「張儀遂得以見秦恵王=張儀遂(つひ)にもって秦の恵王に見ゆるを得たり」〈かくして張儀は、秦の恵王に目通りがかなった〉〔史記・張儀〕
    ▽漢詩などでは、動詞の後につけ、「~しうる」とよみ、「~しうる」「~できる」と訳す。「繋得王孫帰意切=王孫の帰意の切なるを繋(つな)ぎ得る」〈(楊柳は)帰郷の思いにかられる貴公子をつなぎとめて、この地を去らせない〉〔温庭勣・楊柳枝〕
    ▽「得・不得」は、機会・条件による判断を示す。「能・不能」は、主観的に自身の本来的・生理的な能力・資格による判断を示す。「可・不可」は、「能・不能」より客観的に、状況・道理による判断を示す。
  2. 「得而~」は、「えて~す」とよみ、「~することができる」と訳す。
    ▽「得~=~する(こと)をう」と同じ。「得」と「~」の間に「而」が入ると、よみ方がかわる。「漁者得而并擒之=漁者得てこれを并(あわ)せ擒(とら)へたり」〈漁師は二つあわせて捕らえることができた〉〔戦国策・燕〕

②「不得~」は、「~するをえず」とよみ、「できない」と訳す。「得」の否定形。「群臣侍殿上者、不得持尺寸之兵=群臣の殿上に侍する者、尺寸の兵を持つことを得ず」〈宮殿の上に侍する臣は、どんな小さな武器でも持つことを許されない〉〔史記・刺客〕

▽漢詩などでは、「~不得」と、語順が逆になり、「~しえず」「~すれどもえず」とよみ、「どうしても~できない」「~しようにもできない」と訳す。「宮使駆将惜不得=宮使駆り将きて惜しめども得ず」〈宮中の使者が駆りたてるのがくやしいが、どうしようもない〉〔白居易・売炭翁〕

字通

[会意]彳(てき)+貝+又(ゆう)。彳は行路。又は手。他に赴いて貝貨(財産)を取得することをいう。卜文の字形は貝をもつ形。〔説文〕二下に「行きて得る所有るなり」とみえる。金文に「之れを得たり」というのは獲得の意。〔左伝、定七年〕「凡そ器用を獲るを得と曰ふ」とあり、本来財貨を収奪し、獲得することをいう。また贖(とく)と通用し、古くはその義があった。

※「贖」のカールグレン上古は声母無しのi̯uk(入)であり、「得」tək(入)と「通用し」という説には疑問を覚える。白川は上古音についての知識が不十分で、簡単に受け入れられない。語義は下掲『大漢和辞典』参照。

贖 大漢和辞典

督(トク・13画)

督 甲骨文
(殷代甲骨文:粹499・合30599)

初出は甲骨文。カールグレン上古音はt(入)。

”みる”類義語の一覧については、論語語釈「見」を参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。叔は「尗(棒に巻きついたつる)+又(手)」の会意文字で、心棒を中心にして締まる、散在した物をとりまとめるの意を含む。菽(シュク)(つる豆)の原字。督は「目+(音符)叔」で、みはって引き締めること。淑(引き締まる)と同系。統率の統(引き締めてまとめる)は督の語尾がŋに転じたことば。

語義

  1. {動詞}みる。みはって悪いことをしないように引き締める。ただす。「監督」「督察」。
  2. (トクス){動詞}部下をとり締まって率いる。すべる。《類義語》統。
  3. {名詞}軍を率いる指揮官。「提督」。
  4. {名詞}中心になるもの。「督脈」。
  5. 《日本語での特別な意味》かみ。四等官で、衛門府・兵衛府の第一位。

字通

[形声]声符は叔(しゆく)。叔に俶(てき)・惄(でき)の声があり、督はその転音。〔説文〕四上に「察するなり」と督察の意とし、また「一に曰く、目痛きなり」とするが、痛は病の誤りであろう。〔爾雅、釈詁〕に「正すなり」、〔方言、六〕に「理(をさ)むるなり」、〔広雅、釈言〕に「促すなり」などの訓がある。叔は尗(しゆく)(戚(まさかり)の頭の部分)を持つ意で、指揮監督を加える意。督察の意を以て目を加える。尗(戚)はおそらく儀器。王は大鉞、士は小鉞の刃部の形、父は斧鉞(ふえつ)の斧、みな儀器として督察の意をもつものである。

德/徳(トク・14画)

論語 徳 金文
毛公鼎・西周晚期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はtək(入)。論語における徳も参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。その原字は悳(トク)と書き「心+(音符)直」の会意兼形声文字で、もと、本性のままのすなおな心の意。徳はのち、それに彳印を加えて、すなおな本性(良心)に基づく行いを示したもの。直(まっすぐ)と同系。旧字「鑷」は人名漢字として使える。

語義

  1. {名詞}本性。うまれつきの人がら。「全徳=徳を全うす」「君子之徳風、小人之徳草=君子之徳は風なり、小人之徳は草なり」〔論語・顔淵〕
  2. {名詞}ものに備わった本性。▽五行説では、秦(シン)は水徳、漢は火徳などといい、また、春の徳は木、夏の徳は火、秋の徳は金、冬の徳は水、中央の徳は土という。
  3. {名詞}道徳。「失徳=徳を失ふ」。
  4. {名詞}本性の良心をみがきあげたすぐれた人格。「有徳之人」「為政以徳=政を為すに徳を以てす」〔論語・為政〕
  5. {名詞}恩恵。《類義語》恵。「記徳=徳を記す」「何以報徳=何を以てか徳に報いん」〔論語・憲問〕。「負戴之徳、何可忘哉=負戴の徳、何ぞ忘るべけん哉」〔捜神記〕
  6. (トクス){動詞}恩恵を与える。《類義語》得。「吾為若徳=吾若の為に徳せん」〔史記・項羽〕
  7. (トクトス){動詞}恩を感じる。ありがたく思う。「然則徳我乎=然らば則ち我を徳とするか」〔春秋左氏伝・成三〕
  8. {形容詞}恵みがこもった。ありがたい。「徳政」。
  9. {名詞}利益。もうけ。▽得に当てた用法。「徳用」。
  10. 《俗語》「徳国(トオクオ)」とは、ドイツのこと。

字通

[会意]彳(てき)+省+心。篆文の字形は悳に従い、悳(とく)声。金文の徳はもと心に従わず、のちに心を加える。〔説文〕二下に「升(のぼ)るなり」とあり、陟升の意とする。〔易、剝〕(釋文、董遇本)に「君子、車に徳(のぼ)る」、〔礼記、曲礼上〕「車に徳り、旌(はた)を結ぶ」などの例によるものであろうが、字の本義ではない。〔広雅、釈詁三〕に「得なり」とするのも同音の訓。字は省の初文と近く、省は目に呪飾を加えて省道巡察を行う。彳は諸地を巡行する意。その威力を心的なものとして心を加え、徳という。のち徳性の意となる。

讀/読(トク・14画)

初出は前漢の隷書。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はdʰuk(入)。同音は賣・蜀とそれらを部品とする漢字群多数。『大漢和辞典』で”よむ”の語釈があるのは讀・訓(初出は西周早期の金文・カ音xi̯wən去)、詁(初出は燕の戦国文字・カ音ka上)、籀(初出は後漢の説文解字・カ音dǐu去)で、いずれも音が通じない。

「ドク」は呉音。

学研漢和大字典

会意兼形声。讀の右側の字(音イク・トク)は、途中でしばしばとまる音を含む。讀はそれを音符とし、言を加えた字で、しばし息をとめて区切ること。逗(トウ)(とまる)・駐・必(トク)(一区ずつ水をとめて流すみぞ)・黷(トク)(とまったあか)・啄(タク)(一動作ずつとめてつつく)などと同系。異字同訓に
よむ 読む「本を読む。字を読む。人の心を読む。秒読み」 詠む「和歌を詠む。一首詠む」。付表では、「読経」を「どきょう」と読む。

語義

ドク
  1. {{動詞}よむ。一語一句ごとに、短い休止を入れつつ文章をよむ。「熟読(ジュクドク)」「読其書=其の書を読む」〔孟子・万下〕
トウ
  1. {動詞}とまる。一時とまる。また、区切って短いポーズを入れる。《同義語》⇒逗。
  2. {名詞}べた書きの文章の区切れに段落印をつけるのを句といい、より短いことばの切れめをあらわすしるしとして丶印をつけることを読(トウ)という。「句読点」「主人習其読而問其伝=主人其の読を習ひて其の伝を問ふ」〔春秋公羊伝・定元〕
  3. 《日本語での特別な意味》
    ①よむ。推察して見抜く。「心を読む」。
    ②よみ。洞察(ドウサツ)力。また、漢字のよみ方。
    ③文章の区切りにつける「丶」。▽「。」は句点という。「句読点」。

字通

[形声]声符は賣(しよく)。賣に瀆・牘(とく)の声がある。〔説文〕三上に「書を誦するなり」、また籀(ちゆう)字条五上に「書を讀むなり」とあり、声義が近い。〔史籀篇〕の「大史籀書」とは、王国維の説に、「大史、書を籀(よ)む」の意であるという。〔穀梁伝、僖九年〕に「書を讀みて牲の上に加ふ」とあり、祝詞や盟誓の文をよみあげることをいう。金文の冊命形式の文は、王が史官にその冊命をよませるのが例で、〔免𣪘(めんき)〕に「王、作册尹(さくさくゐん)に書を受(さづ)け、免に册命(さくめい)せしむ」とみえる。それが「大史、書を籀む」であった。

※賣は西周中期の金文から有るが、カ音はtʃe(去)、讀は上掲の通りdʰuk(入)、そして籀はdǐu(去)。白川博士の「声が近い」は信用しない方がいい。

慝(トク・14画)

論語 匿 金文
「匿」大盂鼎・西周早期

初出は後漢の隷書。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はtʰnək(入)。同音無し。部品の「匿」ni̯ək(入)初出は殷代末期の金文。論語時代の置換候補となる。

学研漢和大字典

会意兼形声。匿(トク)は「匸+若」の会意文字。柔らかい桑の葉(若)を匸印の囲いの中に隠すことをあらわす。慝は「心+(音符)匿」で、隠しだてをする心。

語義

  1. {名詞}隠しだて。内密の悪事。また、人に知られずに悪事をなす心。「邪慝(ジャトク)」「民乃作慝=民乃ち慝を作す」〔孟子・梁下〕
  2. {名詞}心中に隠して出さない恨み。「修慝(シュウトク)(恨みの気持ちを改める)」。

字通

(条目無し)

新漢語林

形声。心+匿。音符の匿(トク)は、かくれるの意味。かくれた悪事の意味を表す。

篤(トク・16画)

初出は戦国文字で、論語の時代に存在しない。カールグレン上古音は子音のt(入)のみ判明。藤堂上古音はtok。日本語音と藤堂上古音で音通する(tok)督は、甲骨文から存在し、”しらべる・かんがえる・ただす”の語釈を『大漢和辞典』が載せる。
督 大漢和辞典

学研漢和大字典

会意兼形声。竹は、周囲を欠けめなくとりまいたたけ。篤は「馬+(音符)竹」。全身に欠けめのない馬のことをいい、ゆきとどいた意となる。竺(ジク)(ゆきわたった欠けめのない竹)と同系。類義語に厚。

語義

  1. {形容詞}あつい(あつし)。かけめなくゆきわたっている。人情がゆきとどいて手あつい。きまじめ。また、一つの事がらにうちこむさま。もっぱら。「篤実」「懇篤(ていねいでゆきとどいた)」「君子篤於親、則民興於仁=君子親に篤ければ、則ち民仁に興る」〔論語・泰伯〕
  2. {形容詞}あつい(あつし)。病気がいくところまでいったさま。病気が重い。「危篤」。

字通

[会意]竹+馬。竹は竺(じく)の省文。〔爾雅、釈詁〕に篤・竺をならべ挙げて、「厚きなり」と訓している。竺は毒として棄てる意。篤とは重篤、馬が困弊して、用をなさぬ状態をいう。〔説文〕十上に「馬行きて頓(つまづ)き、遲きなり」とあり、また〔爾雅、釈詁〕に「固(かた)きなり」というのは堅篤の意。古くから篤厚の意に用い、〔書、洛誥〕「前人の威烈を篤くす」、〔詩、大雅、公劉〕「篤いかな公劉」、〔礼記、儒行〕「篤行して倦まず」などは、みなその義。これらの用義はおそらく毒と通用するもので、毒にも篤厚の意がある。毒は妻たる婦人が廟祭につかえるために、髪に多く飾りを加える形。その繁縟のさまを毒という。

瀆(トク・18画)

初出は前漢の篆書。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はdʰuk(入)。同音は「賣」(売)を部品とした漢字群多数。「賣」に”ひろめる・あざむく・うらぎる”の語釈はあるが、”みぞ”は『大漢和辞典』にない。

余談ながら「讀賣新聞」とは、”読者をあざむく言葉を広める新聞”という意を含んでいるのだろうか?

学研漢和大字典

会意兼形声。賣(イク)は「貝(財貨)+睦(ボク)(目をよせ合う)の略体」からなり、衆目をごまかして財物をぬきとること。必は「水+(音符)賣」で、水をぬきとる通水溝。贖(ショク)(金品を払って人質をぬき出す)と同系。また洞duŋ(水のぬけ通る穴)は必dukの語尾kがŋに転じたことば。

語義

  1. {名詞}みぞ。穴があいて、水をぬき出すみぞ。通水路。《類義語》溝(コウ)。「溝瀆(コウトク)(みぞ。また人家のないさびしい所のたとえ)」「自経於溝瀆=溝必に自経す」〔論語・憲問〕
  2. {動詞}けがす。けがれる(けがる)。どぶの水をかけるように、きたなくけがす。また、けがれる。「干瀆(カントク)(相手にめいわくをかける)」「瀆職(トクショク)(汚職)」「褻瀆(セットク)(礼にかなわないきたないやり方)」。
  3. 「四瀆(シトク)」とは長江・黄河・淮水(ワイスイ)・済水の四つの川のこと。中国を貫通する四つの大きな水路である。

字通

[形声]声符は賣(しよく)。賣に櫝(とく)・竇(とう)の声があり、細長い形のものをいうことが多い。〔説文〕十一上に「溝なり」、また溝字条に「水瀆なり」とあって互訓。大川をもいい、江・河・淮・済を合わせて四瀆という。濁・黷(とく)とも通用の義がある。。

櫝(トク・19画)

初出は楚系戦国文字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はdʰuk(入)。同音に独・賣を部品とする漢字群多数。異体字で日本語音で同音同訓の匵(カ音不明)の初出は後漢の説文解字、樚の初出は不明。

学研漢和大字典

『学研漢和大字典』によると会意兼形声文字で、右上(音イク)は、必要な物を抜きとることをあらわす会意文字。賣(イク)・(トク)は「貝(財貨)+(音符)イク」の会意兼形声文字。櫝は「木+(音符)賣」で引き出しつきの箱。

語義

  1. {名詞}ひつ。引き出しつきの小箱。「玉櫝(ギョクトク)」「亀玉、毀於櫝中=亀玉、櫝の中に毀る」〔論語・季氏〕
  2. {名詞}ひつぎ。死体を入れる棺。《類義語》柩(キュウ)。
  3. {動詞}引き出しや箱にしまいこむ。

字通

[形声]声符は賣(しよく)。賣に瀆・犢(とく)の声がある。〔説文〕六上に「匱(はこ)なり」とあり、木びつをいう。〔広雅、釈器〕に「棺なり」とあり、小棺。〔説文〕にまた「一に曰く、木名。又曰く、大梡なり」とあり、「大梡」は〔段注〕に「木枕」の誤りであるという。櫝櫨(とくろ)は、ろくろをいう。

獨/独(ドク・9画)

蜀 金文
「蜀」班簋・西周早期

初出は秦系戦国文字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はdʰuk(入)。同音に蜀を部品とする漢字群、賣を部品とする漢字群多数。部品の蜀に”ひほつ・ひとり”・”山の孤立するもの”との語釈を大漢和辞典が載せる。蜀ȡi̯uk(入)の初出は甲骨文。論語時代の置換候補となる。

学研漢和大字典

会意兼形声。蜀(ショク)は、目が大きくて、桑の葉にくっついて離れない虫を描いた象形文字。ひつじは群れをなし、犬は一匹で持ち場を守る。獨は「犬+(音符)蜀」で、犬や桑虫のように、一定の所にくっついて動かず、他に迎合しないこと。觸(=触。くっつく)・屬(ゾク)・(ショク)(=属。くっついて離れない)などと同系。類義語に寡。

語義

  1. {形容詞・名詞}ひとり。他は動き離れても、それだけがあくまでしがみついて動かないさま。また、ひとりでその状態を守るさま。ひとり者。《対語》⇒双(ふたつ)・衆・群。《類義語》孤・寡。「孤独」「老而無子曰独=老いて子無きを独と曰ふ」〔孟子・梁下〕
  2. {副詞}ひとり。「独行」「独断専行」→語法「①」。
  3. 《日本語での特別な意味》「独逸(ドイツ)」の略。「独文」。

語法

①「ひとり~(のみ)」とよみ、「ひとりだけ~」「ただ~だけ」と訳す。限定の意を示す。《類義語》特・唯。「挙世皆濁、我独清、衆人皆酔、我独醒=世を挙げて皆濁り、我独り清めり、衆人皆酔ひ、我独り醒めたり」〈世の中は全て濁っているが、私ひとりだけが清廉、多くの人は酔っぱらっているが、私ひとりだけがさめている〉〔楚辞・漁父〕

②「独~乎(哉)」は、「ひとり~や」とよみ、「どうして~か(いや~でない)」「まさか~ではあるまい」と訳す。反語の意を示す。「相如雖駑、独畏廉将軍哉=相如駑なりと雖(いへど)も、独り廉将軍を畏(おそ)れんや」〈わしはたしかに愚鈍ではあるが、どうして廉将軍など恐れることがあろうか〉〔史記・廉頗藺相如〕

③「非独~」「不独~」は、「ひとり~(のみに)あらず」「ひとり~(のみ)ならず」とよみ、「ただ~だけでない」と訳す。「非独賢者有是心也、人皆有之=独り賢者のみこの心有るに非(あら)ざるなり、人皆これ有り」〈この心は賢者だけが持っているわけではない。人は誰でも持っているのだ〉〔孟子・告上〕▽後節に「而亦=しかるにまた」と続けて、「ただ~だけでなく、そのうえまた…でもある」と訳し、累加の意を示す。

字通

[形声]声符は蜀(しよく)。蜀に韣(とく)の声がある。〔説文〕十上に「犬相ひ得て鬥(たたか)ふなり」(段注本)とし、「羊を群と爲し、犬を獨と爲す」とするが、犬も群集を性とするものである。蜀は牡獣の象形。虫の部分は性器。牝獣を尾といい、尾と蜀と相連なることを屬(属)という。牡器を縊取(いしゆ)して去勢するを蠲(けん)、豛(たく)して去勢することを斀(たく)という。これらの字形を以ていえば、獨とは牡獣。牡獣は群を離れていることが多い。〔孟子、梁恵王下〕に「老いて子無きを獨と曰ふ」とあり、また人の孤独の意に用いる。

※韣:弓袋。

訥(トツ・11画)

訥 吶 甲骨文
正字「」(甲骨文)

初出は後漢の『説文解字』で、論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はnwət(入)で、同音は存在しない。藤堂上古音はnuəp。近音nuətで同義語の吶(トツ、カ音不明)は、甲骨文から存在する。周法高上古音はnjiwatで、同じく訥はnwət。

学研漢和大字典

会意兼形声。「言+(音符)内(ダイ)(中にこもる)」。

語義

(トツナリ){形容詞・動詞}話し方がなめらかでない。どもりである。口ごもる。にぶい。《同義語》⇒吶。「訥口(トッコウ)」「君子欲訥於言、而敏於行=君子は言に訥にして、行に敏ならんことを欲す」〔論語・里仁〕

字通

[形声]声符は内(ない)。吶の正字は (とつ)に作り、会意。訥の従う は の省形。〔説文〕三上に「言ふこと難きなり」とし、字を会意とする。吶・咄(とつ)などみな擬声語で、訥も同じ。〔論語、子路〕「剛毅木訥(ぼくとつ)」、また〔論語、里仁〕に、「君子は言に訥」など、訥を美徳とする考えかたがあった。

豚(トン・11画)

豚 金文
士上盉・西周早期

初出は甲骨文。ただし字形は「豕」。現行字体の初出は西周早期の金文。カールグレン上古音はdʰwən(平)。

学研漢和大字典

会意。「肉+豕」。屯(トン)(ずっしりと中にこもる)・鈍(ずっしりと重い)などと同系。類義語に豕。

語義

  1. {名詞}ぶた。家畜の一種。ずしりとして重いぶた。
  2. 「河豚(カトン)」とは、ふぐのこと。▽ずんぐりとした形がぶたに似ていることから。

字通

[会意]肉+豕(し)。豕は豚の象形。〔説文〕九下に「小さき豕なり。彖(たん)の省に從ふ。象形」とし、また「又(いう)(手)の肉を持ちて、以て祠祀に給するに從ふ」と重文の字形を以て説く。卜文・金文の字形は、豕の腹部に肉形をそえており、おそらく胎孕(たいよう)のあることを示すものであろう。〔国語、楚語〕に「士に豚犬の奠(てん)有り」とみえ、犠牲の最も軽いものである。〔礼記、曲礼下〕に「豕には剛鬣(がうれふ)と曰ひ、豚には腯肥(とつひ)と曰ふ」とあり、腯肥とはよく肥えたものをいう。彘(てい)の卜文の字形は、その体に矢の貫く形で、もと野猪をいう字であろう。

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コメント

  1. […] 後世のでっち上げを除き、論語では「道」を、一切道徳的な意味で使っていない。詳細は論語語釈「道」を参照。 […]