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論語語釈「シュン・ジュン」

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語釈 urlリンクミス

恂(シュン・9画)

恂 斉系戦国文字 恂 篆書
陶彙3.1052・戦国斉/説文解字・後漢

初出:初出は斉系戦国文字。ただし現行字体とまるで字形が違い、前後の文脈も公開されていないので賛成できない。確実な初出は後漢の説文解字。

字形:「忄」+音符「旬」dzi̯wĕn(平)。i̯wĕnの音に”従う”の意があり、初出甲骨文の「順」は近音のi̯wən(去)。

音:カールグレン上古音はsi̯wĕn(平)。同音に「旬」とそれを部品とする漢字群など膨大。異体字「洵」の初出も説文解字。「ジュン」は慣用音。

用例:文献上の初出は論語郷党篇1。戦国時代の『荘子』『列子』がそれに次ぐ。

論語時代の置換候補:部品の「旬」に”まこと”の語釈は無い。『大漢和辞典』での同音同訓に「惇」(初出説文解字)「𢞧」「㰬」「衠」(初出不明)「敦」(初出甲骨文)「純」(初出西周末期金文)「詢」(初出秦系戦国文字)。うち「敦」は甲金文では器名のほか”攻撃”の意で、論語時代の置換候補にならない。「純」も”丁寧”・”従う”の意は春秋末期までに確認できず、置換候補にならない。詳細は論語語釈「純」を参照。

備考:論語郷党篇の「恂恂」は、漢帝国の儒者が近音の「順順」i̯wən(去)を古風に仕立てもっともらしくした作為で、要するにコケ脅し。

学研漢和大字典

会意兼形声。旬は「日+(音符)勻の略体」からなり、甲乙丙…と進んでひと巡りした十日間のこと。恂は「心+(音符)旬」で、心をすべての面に行き巡らすこと。恤(ジュツ)(思い巡らす)と同系。

語義

  1. {名詞}まこと。行き届いた心。《類義語》誠。
  2. 「恂恂(ジュンジュン)」とは、ねんごろなさま。「孔子於郷党恂恂如也=孔子の郷党におけるや恂恂如たり」〔論語・郷党〕
  3. {動詞・形容詞}気を配ってつつしむ。また、行き届くさま。「恂慄(ジュンリツ)」。

字通

[形声]声符は旬(じゅん)。〔説文〕十下に「信(まこと)の心なり」とあり、おそれつつしむさまをいう。〔論語、郷党〕「恂恂如たり」のように、形況の語として用いる。〔漢書、李広伝〕に「恂恂として鄙人の如く、口に辭を出だすこと能はず」というような、誠実のさまをいう。字はまた洵に作ることがある。

春(シュン・9画)

春 甲骨文 春 金文
合40633/蔡侯墓殘鐘四十七片・春秋晚期

初出:初出は甲骨文

字形:甲骨文の字形は多様で、現行字形の祖と思われる形は「木」+”木の芽”+「日」。

音:カールグレン上古音はtʰi̯wən(平)。

用例:甲骨文には「今春」「来春」「于春」などが見え、”はる”の意と解せる。

西周期には用例が一旦途絶えるが、”はる”を何と記したか明らかでない。

学研漢和大字典

会意兼形声。屯(トン)・(チュン)は、生気が中にこもって、芽がおい出るさま。春はもと「艸+日+(音符)屯」で、地中に陽気がこもり、草木がはえ出る季節を示す。ずっしり重く、中に力がこもる意を含む。頓(トン)(ずっしりと頭を下げる)・純(ずっしりとたれた縁どり)・蠢(シュン)(中にこもってうごめく)などと同系。草書体をひらがな「す」として使うこともある。

語義

  1. {名詞}はる。四季の第一。立春から立夏までの間。陰暦の一月・二月・三月の季節。陽暦の三月から五月はじめ。陽気が地中にうごめいて、外に出てくるころ。「尋春=春を尋ぬ」「春省耕而補不足=春には耕を省みて不足を補ふ」〔孟子・梁下〕
  2. {名詞}はる。若く元気な時期。若さや精力。「青春」「春気勃勃(ボツボツ)(若さが盛んなさま)」「回春(若さを取りもどす)」「踏花同惜少年春=花を踏みて同に惜しむ少年の春」〔白居易・春夜〕
  3. {名詞}はる。男女の慕い合う心。仲春に、歌垣(ウタガキ)を催して、若い男女を結ばせる習慣があった。「有女懐春=女有りて春を懐ふ」〔詩経・召南・野有死麕〕
  4. {名詞}男女の情欲。エロス。「春情」「春画」。

字通

[形声]正字は萅に作り、屯(ちゅん)声。〔説文〕一下に「推なり」と訓し、字形について「日と艸と屯とに從ひ、屯の亦聲」(段注本)とする。屯の声義をとるとすれば、屯を屯蒙の象として、草木初生の時とするものであるが、屯はもと屯頓(ちゆんとん)の意ではなく、衣の純縁(へりぬい)の象である。ただ金文の春の字に若の初形に従うらしい形があり、草木の初生を以て春とする考えかたはあったものと思われる。「推なり」は春と双声の訓。〔礼記、郷飲酒義〕に「蠢(しゆん)なり」とするのは、啓蟄(けいちつ)(虫が地下よりはい出す)の意をとるものであろう。卜辞中に四季の名を確かめる資料はなく、後期の列国期の金文に至って、〔越王鐘〕「隹(こ)れ正月孟春、吉日丁亥」のようにいう。

純(シュン/トン・10画)

純 甲骨文 純 屯 金文
甲骨文/頌簋蓋・西周晚期

初出:「国学大師」による初出は甲骨文。論語の春秋時代までは「屯」と書き分けられていなかった。現行字体の初出は戦国時代の金文

唐開成石経

字形:「糸」+「屯」”カイコ”。絹糸の意。唐石経は最後の一画を欠く。唐憲宗李純の避諱

音:「ジュン」は呉音。漢音では、”まじらない”の意では「シュン」(平)、”ふち・はし”の意では「シュン」(上)、”つつむ・まとめる”の意では「トン」(平)と読む。カールグレン上古音はȡi̯wən(平)またはȶi̯wən(上)。

用例:西周中期「庚季鼎」(集成2781)に「屯䜌旂。」とあり、”きぬ”と解せる。

「漢語多功能字庫」屯条によると、甲骨文では”一対の”・”あいだじゅう”を意味した。金文では”厚い”・”大きい”(秦公鐘・西周)、”衣類のふち”(頌簋・西周末期)を意味した。戦国の竹簡では、”すべて”を意味した。つまり”混ざらない”の語義は、戦国時代以降になる。

「屯」は”行き悩む”の場合カールグレン上古音がti̯wən、”たむろする”の場合dʰwən。「純」もまた”へり・ふち”の場合ȶi̯wən、”まじりけなし”の場合ȡi̯wən。行き悩む→へり、は理屈が通る。たむろする→まじりけなし、は無理がある。

学研漢和大字典

会意兼形声。屯(チュン)・(トン)は、芽が地上に出かねてずっしりと精気をたくわえたさま。純は「糸+(音符)屯」で、布地の両はしの房がずっしりと垂れたことを示す。房の糸は単色で、他の色がまじらないので、純色の糸の意となる。醇(ジュン)(まじりけのない酒)・淳(ジュン)(まじりけのない水)などと同系。また端(垂れたはし)とも近い。類義語に粋。

語義

シュン(平声)
  1. {名詞}模様織りの端にはみ出た地糸。また、赤は赤、黄は黄のように、色のまじらない糸。《対語》⇒雑。「純糸」「今也純=今也純なり」〔論語・子罕〕
  2. (ジュンナリ){形容詞}まじりけがないさま。《対語》⇒雑。《同義語》⇒淳(ジュン)。「純一」「清純」「純白」。
シュン(上声)
  1. {名詞}布の端。布のへり。《類義語》縁(へり)。
  2. {名詞・単位詞}布の端に垂れたふち。また、布地の長さをあらわすことば。一純は布地の端から端まで二十尺のこと。《類義語》端。
トン(平声)

{動詞}つつむ。たばねて一つにまとめる。「白芽純束」〔詩経・召南・野有死麕〕

字通

[形声]声符は屯(じゆん)。屯は織物の糸の末端を結びとめた形。〔説文〕十三上に「絲なり」とし、屯声とするが、金文に屯を純の意に用い、「玄衣黹屯(黻純(ふつじゅん))」「徳を秉(と)ること共屯(恭純)」のようにいう。屯は純の初文。のち屯を屯集、純を純一の意に用いる。

順(シュン・12画)

順 甲骨文 順 金文
甲骨文/𣄰尊・西周早期

初出:初出は甲骨文

字形:人が川をじっと眺める姿で、原義は”従う”だったと思われる。

音:「ジュン」は呉音。カールグレン上古音はi̯wən(去)。藤堂上古音はdhiuən。

用例:「漢語多功能字庫」によると、甲骨文での語釈は不詳。金文では原義のほか、”教え諭す”(𣄰尊・西周)の用例がある。

学研漢和大字典

会意文字で、「川+頁(あたま)」。ルートに沿って水が流れるように、頭を向けて進むことを示す。循(ジュン)・巡(ジュン)(したがう)・馴(ジュン)(おとなしくしたがう)などと同系のことば。遁(トン)(他の物のかげに沿って去る)や盾(ジュン)(そのかげに沿って隠れるたて)などとも縁が近い。

語義

  1. {動詞}したがう(したがふ)。ルールや道すじどおりに進む。《同義語》⇒循。《対語》⇒逆。「順帝之則=帝の則に順ふ」〔詩経・大雅・皇矣〕。「順天者存=天に順ふ者は存す」〔孟子・離上〕
  2. {動詞}したがう(したがふ)。相手のいうことや意図にしたがう。道理に逆らわずに進む。《対語》⇒逆・叛(ハン)。「帰順」「六十而耳順=六十にして而耳順ふ」〔論語・為政〕
  3. {名詞}道すじや次第。「順序」「順番」「六順(君は義、臣は行、父は慈、子は孝、兄は愛、弟は敬)」。
  4. (ジュンナリ){形容詞}さからわずおとなしい。「従順」。
  5. (ジュンナリ){形容詞}順序どおりの。さわりなく、つごうがよい。「順当」「順調」。

字通

[形声]声符は川(せん)。〔説文〕九上に「理(をさ)むるなり」とあり、字を会意とする。〔段注〕に「川の流るるは順の至りなり。故に字は頁(けつ)川に從うて會意、而して川聲を取る」と亦声の字と解する。金文の字形は渉と頁とに従い、頁は儀礼のときの礼容を示す字であるから、字はおそらく水瀕の儀礼をいうものであろう。金文に「順子」「順福」の語があり、字は古くは渉に従う。水瀕で孝祀するような儀礼があったものと考えられる。

循(シュン・12画)

徳 甲骨文 循 秦系戦国文字
合集20547/睡.秦68

初出:「国学大師」によると初出は上掲左の甲骨文。ただし「徳」と全く同形。西周・春秋時代の発掘が一切無く、事実上の初出は戦国最末期の「睡虎地秦簡」とすべきか。

字形:初出の字形は「行」”四つ角”+「目」+軌跡で、見回るさま。現行字形には「广」”屋根”が付く。”したがう”の意だが、字形からの解釈は困難。

循 異体字
慶大蔵論語疏は異体字「〔彳丨𠂉有〕」と記す。上掲「唐洛州滎陽縣頭逸僧法師碑」刻字に近似。

音:カールグレン上古音はdzi̯wən(平)。「ジュン」は呉音。

用例:「英国所蔵甲骨」00626正に「貞王循方」とあり、”巡回する”と解せる。

「甲骨文合集」20548.2に「己巳卜□其循降六月」とあり、”したがう”と解せる。

戦国最末期「睡虎地秦簡」徭律117に「苑吏循之」とあり、”巡回する”と解せる。

同金布68に「列伍長弗告,吏循之不謹,皆有罪。」とあり、”したがう”と解せる。

学研漢和大字典

会意兼形声。盾(ジュン)は、たてによりそって、目を射られないよう隠すことを示す会意文字。楯(タテ)の原字。循は「彳(いく)+(音符)盾」で、何かをたよりにし、それによりそって行くこと。遁(トン)(何かに身をよせつつ隠れて逃げる)と同系。類義語に随。

語義

  1. {動詞}したがう(したがふ)。たよりとなるものに寄り添う。《類義語》遵。「循行」「人物各循其性之自然=人物は各其の性の自然に循ふ」〔中庸・集注〕
  2. {動詞}そう(そふ)。よる。何かによりそう。《類義語》沿。「循牆而走=牆に循りて走る」〔春秋左氏伝・昭七〕
  3. {形容詞}旧来のことにしたがうだけで、独自の行いをしないさま。「因循」。
  4. {動詞}穏やかにしたがわせるためになだめる。「撫循(ブジュン)(なだめる)」。
  5. {動詞}めぐる。あちこちとまわる。▽巡に当てた用法。「循回(ジュンカイ)(=巡回)」。
  6. 「循循(ジュンジュン)」とは、穏やかになだめるさま。「夫子循循然善誘人=夫子は循循然として善く人を誘ふ」〔論語・子罕〕

字通

[形声]声符は盾(じゅん)。盾(たて)をもって巡行し、循撫することをいう。〔説文〕二下に「行くなり」(段注本)と訓する。〔爾雅、釈詁〕に「遹(いつ)・遵・率は循なり」とあり、遹とは矛を台座に樹(た)てて巡行し遹正することをいう。盾や矛を聖器として、巡撫する儀礼があった。

舜(シュン・13画)

舜 金文 舜 楚系戦国文字
金文*/「郭店楚簡」窮.2・戦国

*丁再献、丁蕾《东夷文化与山东·骨刻文释读》十九章第二节,中国文史出版社2012年2月版

初出:初出は戦国文字。上掲の金文は年代が不明。確実な初出は戦国中期の郭店楚簡で、「成書時期は紀元前300年を下ることはなく」とwaikipediaに言う

字形:上下に「㠯」+「亦」+「土」。すきを担いで土の上を汗流してゆく人。ここから、現伝の禹王の治水伝説は、まず舜王のそれとして創作されたのが、のちに作り替えられたものと想像できる。

音:カールグレン上古音はɕi̯wən(去)。同音に蕣”むくげ・あさがお”、瞬、瞚”またたく”、鬊”抜け毛”(全て去)。『大漢和辞典』での同音同訓は訓むくげで「蕣」・「橓」(初出・音不明、去)、訓さといで「懏」(初出・音不明、去)、「䜭」(初出は西周中期の金文、音は不明、平・上・去)。

用例:「上海博物館蔵戦国楚竹簡」子羔05正に「堯之取舜也,從者(諸)卉茅之中,與之言豊(禮)」とあり、いわゆる聖王の”舜”と解せる。

論語時代の置換候補:「䜭」の音シュンはいくつかある音のうちの一つで(→『大漢和辞典』䜭条)、しかも”さとい”の訓での音はエイ。シュンの音での訓は”さらう”、すなわちドブさらいのことで、その音通である。とうてい「舜」の音通とは断じがたい。

結論として、論語の時代の置換候補は無い。

学研漢和大字典

会意。舛(セン)は、左と右の足をふみ出してすばやく動くさま。舜は「炎(ゆれ動くほのお)+匸印+舛」で、炎のゆれや足ぶみのようなすばやい動作を示す。急にさいてはやく散る華やかなむくげの花。また、動作の機敏な華やかな英雄の名として、伝説上の古代聖王に当てられた。

語義

  1. {名詞}《人名》古代、伝説上の聖天子*。姓は有虞氏(ユウグシ)、名は重華(チョウカ)。五帝のひとり。尭(ギョウ)から位を譲られ、また自分の後任には禹(ウ)を推した。
  2. {名詞}むくげ。《同義語》⇒蕣。《類義語》槿(キン)。「顔如舜華=顔は舜の華のごとし」〔詩経・鄭風・有女同車〕

*「天子」の言葉が中国語に現れるのは西周早期で、殷の君主は自分から”天の子”などと図々しいことは言わなかった。詳細は論語述而篇34余話「周王朝の図々しさ」を参照。

字通

[象形]殷の神話的祖神とされる舜の神像。下に両足を垂れている形。卜文の字形に側面形にしるしたものがあり、殷の祖神夔(き)と解されているが、舜も帝嚳(ていこく)ともいわれ、夔も𦥑(きょく)に従う形に近く、神話としても舜・夔・嚳の間に関係がある。〔説文〕五下に舜を䑞に作り、「䑞艸なり。楚には之れを葍(ふく)と謂ひ、秦には之れを藑(けい)と謂ふ。地に蔓(まん)し、生じて華を連ぬ。象形」(段注本)とするが、字形は草の象ではない。蔓地連華の字は蕣(しゆん)。〔説文〕一下に「木堇(もくきん)なり」とする字である。

の譌字(うそ字。間違い)と『大漢和辞典』にある。

閏(ジュン・12画)

初出は楚系戦国文字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音は不明(上)。『大漢和辞典』でほかに”うるう”を意味する漢字は存在しない。”うるおす”の語釈は語釈は『大漢和辞典』にもないから、「潤」の出現後失ったと思われる。呉音は「ニン」。

学研漢和大字典

会意。「門+王」で、暦からはみ出た日には、王が門の中にとじこもって政務をとらないことをあらわす。定数からはみ出る。不正規なものの意を含む。

語義

  1. {名詞・形容詞}うるう(うるふ)。一年の日数、または月数が、きまった数からはみ出て平年より多いこと。「閏年(ジュンネン)」。
  2. {名詞}正統でない天子*の位。《対語》⇒正。「正閏(セイジュン)」。

*「天子」の言葉が中国語に現れるのは西周早期で、殷の君主は自分から”天の子”などと図々しいことは言わなかった。詳細は論語述而篇34余話「周王朝の図々しさ」を参照。

字通

[形声]字は王に従うものとされるが、おそらく壬(じん)声の字であろう。〔説文〕一上に「餘分の月なり。五再にして再び閏す。告朔(こくさく)(月初めの儀礼)の禮、天子宗廟に居り、閏月には門中に居る。王の門中に在るに從ふ」とするが、そのような閏月告朔の礼を証しうるものはなく、古文家の礼説にみえるのみである。〔爾雅、釈天〕に「月、壬に在るを終と曰ふ」とあり、壬に任大・閏余の意がある。卜文・金文には閏月を十三月といい、西周期にも年末置閏のときにはなおその称を用いた。

潤(ジュン・15画)

潤 隷書
居延簡乙435.6

初出:初出は前漢の隷書

字形:「氵」+「閏」ȵ(去、上は不明)”はみ出る”。部品「閏」の初出は戦国時代。

音:カールグレン上古音はȵ(去)。同音多数。濡ȵi̯u(平)は語義を共有するが、初出は秦系戦国文字

用例:文献上の初出は論語顔淵篇6。戦国早期の『墨子』、中期の『孟子』『荘子』、末期の『荀子』『韓非子』にも、ともに”濡れる・濡らす”・”潤う”として見られる。

論語時代の置換候補:日本語で同音同訓は無い。上古音での同義語は無い。

学研漢和大字典

会意兼形声。閏(ジュン)は「門+王」の会意文字で、暦からはみ出た「うるう」のとき、王が門内にとじこもって静養するさまを示す。じわじわと暦の計算の外にはみ出てきた日や月のこと。潤は「水+(音符)閏」で、じわじわとしみ出て、余分にはみ出る水分のこと。類義語に濡。

語義

  1. {動詞}うるおう(うるほふ)。じわじわと水分がしみ出る。「湿潤」。
  2. {形容詞}うるおいがあるさま。《対語》⇒枯・渇。「温潤(あたたかでうるおいがある)」。
  3. {動詞}うるおす(うるほす)。つじわじわと水分をしみわたらせる。「雨露之所潤=雨露の潤す所」〔孟子・告上〕づ金や物を与えてゆとりをつけてやる。「富潤屋、徳潤身=富は屋を潤し、徳は身を潤す」〔大学〕て色つやをつけてりっぱにする。
  4. {名詞}うるおい(うるほひ)。しめり。色つや。転じて、元金からしみ出たもうけ。「利潤」。

字通

[形声]声符は閏(じゅん)。〔説文〕十一上に「水には潤下と曰ふ」と、〔書、洪範〕の文をとる。閏はおそらく壬(じん)声の字で任大・閏余の意をもつ字。水の浸潤の意よりして水に従う。そのさまを潤沢・潤滑・潤余・潤飾という。

論語語釈
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