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論語語釈「コ」

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語釈 urlリンクミス

戶/戸(コ・4画)

戸 甲骨文 戶 金文
甲骨文/聿作父乙簋・殷代末期

初出:初出は甲骨文

字形:片開きのドアの象形。原義は”とびら”。

音:カールグレン上古音はɡʰo(上)。

用例:「漢語多功能字庫」によると、甲骨文では原義に、金文では氏族名に、戦国の竹簡では原義で用いた。

学研漢和大字典

象形。門は二枚とびらのもんを描いた象形文字。戸は、その左半部をとり、一枚とびらの入り口を描いたもので、かってに出入りしないようにふせぐとびら。枑(ゴ)(木を交差させたバリケード)・護(中にはいらぬようふせぐ)・禦(ギョ)(ふせぐ)などと同系。類義語に門。

語義

  1. {名詞}と。家やへやの出入り口。また、出入り口にある片開きの一枚とびら。《類義語》門・扉(ヒ)。「門戸(入り口)」「外戸而不閉=外に戸あれども閉ぢず」〔礼記・礼運〕
  2. {名詞・単位詞}人民の住む家。また、民家を数えることば。「戸口」「購我頭千金、邑万戸=我が頭を千金と、邑万戸とに購ふ」〔史記・項羽〕
  3. {名詞}家の意から転じて、大人の男の人。「大戸」「上戸」。
  4. 《日本語での特別な意味》飲酒の量の程度をあらわすことば。「上戸」。

字通

[象形]一扇の戸。両扉あるものは門。〔説文〕十二上に「護なり。半門を戸と曰ふ」とみえる。啓・肇(ちよう)などに含まれている戸は神戸棚の戸。門戸は内外を分かつ神聖なところで、卜辞に三戸・三門を祀る儀礼がある。

互(コ・4画)

互 甲骨文
合集18478

初出:初出は甲骨文。金文は未発掘。

字形:L形の直角定規または三角定規を点対称に二つ組み合わせた形で、相対する事を示す。

音:カールグレン上古音はgho(去)で、同音に虖”吠える”(金文あり)、胡とそれを部品とする漢字群、壺、戸など多数。

用例:「甲骨文合集」18478に「貞󱩾互󱩾」とあるが、欠損がひどくて文として解読するのは不可能。

文献上の初出は論語述而篇28に「互鄕」として集落の名として見える。

学研漢和大字典

象形。二本の棒に切りこみを入れ、かみあわせてつなぐさまを描いたもの。転じて、かみあう、たがい違いに交差するなどの意をあらわす副詞となった。枑(ゴ)(かみあわせ細工)の原字。五(交差する)と同系。

語義

{副詞}たがい(たがひ)。たがいに(たがひに)。AとBとが入れ違いになって。AからBへ、BからAへと、かみあうさま。「交互」「漁歌互答=漁歌互ひに答ふ」〔范仲淹・岳陽楼記〕

字通

[象形]縄(なわ)巻きの器の形。〔説文〕五上に正字を䇘に作り、「以て繩を收むべきなり。竹に從ひ、象形」とし、「中は人の手の推握する所に象るなり」という。交互に巻き進めるので交互の意となり、相互の意となり、また差互の意となる。

乎(コ・5画)

乎 甲骨文 乎 金文
甲骨文/師酉簋・西周中期

初出:初出は甲骨文

字形:

鐃 乎 字解
ドウ」奈良国立博物館蔵

甲骨文の字形は持ち手の柄を取り付けた呼び鐘を、上向きに持って振り鳴らし、家臣を呼ぶさまで、原義は”呼ぶ”こと。

乎 異体字
慶大蔵論語疏は異体字「〔爫丁〕」と記す。「魏鄭羲碑」(北魏)刻。

音:カールグレン上古音はɡʰo(平)。論語語釈「呼」も参照。

用例:甲骨文の用例は「呼」と釈文されている。春秋末期までの金文も、「呼」と釈文されている。

漢語多功能字庫」によると、甲骨文では”命じる”・”呼ぶ”を意味し、金文も同様で、「呼」の原字となった。句末の助辞として用いられたのは、戦国時代以降になるという。

ただし「烏乎」で”ああ”の意は、沈子它𣪕蓋・西周早期に「烏虖」として見える(『殷周金文集成』04330)。「虖」は「乎」と同音で、戦国時代以降の出土品は主に「虖」と記す。出土史料で検索すると、春秋末期と戦国とで、すっぱり用例が分かれている。

学研漢和大字典

会意文字。下部の伸びようとしたものが一線につかえた形と、上部の発散する形とからなるもので、胸からあがってきた息がのどにつかえて、はあと発散することをあらわす。感嘆・呼びかけ・疑問・反問など、文脈に応じて、はあという息でさまざまのムードをあらわすだけで、本来は一つである。呼(はあとのどをかすらせて呼ぶ)の原字。

草書体をひらがな「を」として使うこともある。▽「乎」の初三画からカタカナの「ヲ」ができた。

語義

  1. {感動詞}はあという息をあらわすことば。「於乎(アア)(あはあという感嘆の声)」。
  2. {助辞}か・や。→語法「①-1」。
  3. {助辞}か。→語法「③」。
  4. {助辞}や。→語法「①-2」。
  5. {助辞}や。→語法「④」。
  6. {助辞}形容詞・副詞につけて、その状態を示す助辞。「巍巍乎若太山=巍巍乎として太山のごとし」〔呂氏春秋・本味〕
  7. {助辞}に。より。→語法「⑤」

語法:

①「か」「や」とよみ、

  1. 「~であろうか」と訳す。疑問の意を示す。文末・句末におかれる。「管仲知礼乎=管仲は礼を知るか」〈管仲は礼をわきまえていたのですか〉〔論語・八佾〕▽「~乎、…乎」は、選択の疑問の意を示す。
  2. 「どうして~であろうか」と訳す。反語の意を示す。文末・句末におかれる。「以臣弑君、可謂仁乎=臣をもって君を弑(しい)す、仁と謂ふ可けんや」〈臣下の身でありながら主君をあやめるとは、仁と申せましょうか〉〔史記・伯夷〕▽「豈=あに」「安=いずくんぞ」「寧=むしろ」とともに多く用いられ、この場合は「や」とよむ。
  3. 「不亦~乎=また~ならずや」「豈不~乎=あに~ならずや」は、「なんと~ではないか」と訳す。「学而時習之、不亦説乎=学びて時にこれを習ふ、また説(よろこ)ばしからずや」〈学んで適当な時期におさらいする、いかにもうれしいことだね〉〔論語・学而〕

②「か」とよみ、「~だろう」と訳す。推測の意を示す。文末・句末におかれる。「魯患其不救乎=魯の患それ救われざらんか」〈魯の災難は救えないでしょう〉〔韓非子・説林上〕

③「か」「かな」とよみ、「~であるなあ」と訳す。感嘆の意を示す。文末・句末におかれる。「子謂顔淵曰、惜乎=子顔淵を謂ひて曰く、惜しいかな」〈先生が顔淵のことをこう言われた、惜しいことだ(彼の死は)〉〔論語・子罕〕

④「や」とよみ、「~よ」と訳す。呼びかけに用いる。「参乎、吾道一以貫之=参や、吾が道は一もってこれを貫く」〈参(シン)よ、我が道は一つのことで貫かれている〉〔論語・里仁〕

⑤「乎~」は、「~に」「~を」「~より」とよむ。起点・対象・比較・受身の意を示す。《同義語》於・于。「君子所貴乎道者三=君子の道に貴ぶ所の者は三つ」〈君子が礼について尊ぶことは三つあります〉〔論語・泰伯〕

字通

板上に遊舌をつけた鳴子板の形。これを振って鳴らす。もと神事に用いられたものであろう。呼の初文。〔説文〕五上に「語の餘なり」というのは、けいと同義の字とみるもので、兮もまた鳴子板の形である。〔説文〕に「聲の上りて越揚するの形に象る」とするが、卜文・金文の字は、板上に小板の列する形に作る。卜文・金文に呼招・使役の意に用いる。これを感動詞に用いるのは、もと神霊をよび、祈るときの発声であったからであろう。

古(コ・5画)

古 甲骨文 古 金文
甲骨文/史墻盤・西周中期

初出:初出は甲骨文

字形;甲骨文の字形は「口」+「中」”盾”で、原義は”かたい”。論語語釈「固」も参照。

音:カールグレン上古音はko(上)。

用例:下掲「漢語多功能字庫」に言う通り、甲骨文では「古貞」と貞人(占い師)の名として見えるが、「甲骨文合集」5906.2に「癸丑卜貞執古子」とあり、「古子をとらえんか」と読め、どうやら占いに失敗して収監の憂き目に遭ったようである。

「甲骨文合集」9560.1には「貞其从王古」とあり、「とう、それ王のいにしえにしたがわんか」と読め、”むかし”・”古い”と解しうる。

漢語多功能字庫」によると、甲骨文では占い師の名、地名に用い、金文では”古い”(史墻盤・西周中期)、「故」”だから”(大盂鼎・西周早期)の意、また地名に用いた。

学研漢和大字典

象形。口印は頭、その上は冠か髪飾りで、まつってある祖先の頭蓋骨(ズガイコツ)を描いたもの。克(重い頭をささえる)の字の上部と同じ。ひからびてかたい昔のものを意味する。固(こちこちにかたい)・枯(ひからびた)と同系。類義語の新旧の旧は、朽と同系で、ふるびて曲がりくぼんだ意。昔は、日かずを重ねたこと。草書体をひらがな「こ」として使うこともある。▽「ふるい」は「旧い」とも書く。

語義

  1. {形容詞}ふるい(ふるし)。ひからびているさま。こちこちのさま。《同義語》⇒故。《対語》⇒新。《類義語》旧。「古書」「古式」。
  2. {形容詞}ふるびたさま。ふるめかしいさま。《対語》俗。「古雅」「高古」。
  3. {名詞}いにしえ(いにしへ)。むかし。《対語》今。《類義語》昔。「尚古=古を尚ぶ」「信而好古=信じて古を好む」〔論語・述而〕

字通

[会意]十(干(たて))+口。口は𠙵(さい)。祝詞などを収める器の形。その器を、聖器としての干で固く守護し、久しくその祈りを機能させようとした。それで先例旧慣の意となり、久古の意となる。〔説文〕三上に字を十口の会意とし、「故なり。~前言を識る者なり」という。〔繫伝〕には多くの人による伝承の意に解するが、古事をいう。古に攴を加えて、その呪能を害することを故といい、事故・災厄を意味する。卜辞に「王の舌を疾(や)めるは、隹(こ)れ古(こと)(故(ゆゑ))シ 外字(あ)るか」と古を故の意に用い、また金文に「古(故)に」のようにいう例がある。故の形義を以ていえば、古が固閉された祝告・盟誓の意であることは疑いがない。〔説文〕に録する古文の字形は、廟中におけるその儀礼を示すものであろうと思われる。

固(コ・8画)

固 金文
十三年壺・戦国末期

初出:初出は春秋の金文(『新收殷周青銅器銘文暨器影彙編』NA1970)とされるが、字形を確認できない。小学堂での初出は戦国末期の金文

字形:「囗」+「十」+「曰」。字形の由来や意味するところは不明。

固 異体字
慶大蔵論語疏では上掲「〔囗右〕」と記し、「固」と傍記している。「唐王美暢夫人長孫氏墓誌銘」刻。

音:カールグレン上古音はko(去)。

用例:『新收殷周青銅器銘文暨器影彙編』NA1970に「楚固之行戈」とあり、人名と見られる。

春秋中期の「秦公鎛」に「厥名曰󻆜〔古丰〕邦」とあり、青銅器の名の一部と思われる。

春秋末期までに、”かたい”・”かたくな”の語義は確認できない。

上掲戦国末期の金文「十三年壺」に「左使車嗇夫孫固」とあり、人名と思われる。

備考:「古」は春秋末期までに、”かたい”を意味した用例がない。

漢語多功能字庫」は、「囗」が周囲を堅固に守る事を意味し、派生義として”かたい”を意味するという。同「古」条では、「古」ko(上)の字形を「口」”くち”+「中」”盾”とし、原義を”堅固”とし、「固」の初文とする。ただし用例を示さない。初出は甲骨文。論語語釈「古」を参照。

同音に古(ふるびた)があり、甲骨文から存在する。瞽(目が見えない、人の意志を図れない)があり、下掲甲骨文が存在する。同じく「罟」(あみ・おきて)は、”こだわる”の意に転じうるが、金文以前に遡れない。同「蠱」(むし)には”うたがう、まどう、みだれる”の意があり、下掲甲骨文が存在する。同「盬」(塩池)には”もろい、あらい”の意があるが、金文以前が存在しない。同「顧」は戦国末期の金文が初出。

瞽 甲骨文 蠱 甲骨文

同音同訓の「冱」には甲骨文・金文が存在しない。「股」(上古音ko)には西周末期の金文があり、『大漢和辞典』に”かたい”の語釈があるが、春秋末期までの出土例は西周末期の「師訇𣪕」(集成4342)のみで、「乍(作)氒(厥)厷(肱)殳(股)」とあって”脚”の意。また再出は戦国最末期の「睡虎地秦簡」まで間が開く。
股 金文

股 古 大漢和辞典

学研漢和大字典

古は、かたくひからびた頭蓋骨を描いた象形文字。固は、「囗(かこい)+音符古」の会意兼形声文字で、周囲からかっちりと囲まれて動きのとれないこと。枯(かたく乾いた木)-各(かたくつかえる石)-個(かたい物)と同系のことば。

語義

  1. {形容詞}かたい(かたし)。しっかりと安定していて、動きもかわりもしないさま。「堅固」「法莫如一而固=法は一にして固きにしくはなし」〔韓非子・五蠹〕
  2. {副詞}かたく。→語法「①」。
  3. (コナリ){形容詞}かたくな。凝りかたまって融通がきかないさま。「頑固(ガンコ)」「固陋(コロウ)」「学則不固=学べば則ち固ならず」〔論語・学而〕
  4. {動詞}かためる(かたむ)。しっかりと安定したものにする。「固国不以山谿之険=国を固むるに山谿の険を以てせず」〔孟子・公下〕
  5. {副詞}もとより。→語法「②」

語法

①「かたく」とよみ、「かたくなに」「あくまでも」と訳す。「聶政驚怪其厚、固謝厳仲子=聶政その厚きに驚き怪しみ、固(かた)く厳仲子に謝す」〈聶政はそのあまりにも高額なのをいぶかって、厳仲子に(申し出を)固辞した〉〔史記・刺客〕

②「もとより」とよみ、「いうまでもなく」「もちろん」「もともと」「なんとしても」と訳す。必然、疑問の余地がない意、あるいは、事実をもとに論を進展させる意を示す。「君子固窮=君子固(もと)より窮す」〈君子はもともと困窮している〉〔論語・衛霊公〕

字通

+古。古は祈禱を収めた器(𠙵さい)の上に、聖器としてのたてをおき、その呪能を固く守る意で、久古の意がある。その古に外囲を加えて、堅固・固定の意となる。その程度をこえることを頑固という。〔説文〕六下に「四塞なり」と四境を固守する意とするが、本来は祝禱に関する字である。

訓義

かたい、かたくまもる。やすんずる、やすらか、ひさしい。もとより、もともと、もっぱら。まことに、つねに。かたくな。錮と通じ、とどめる、おしこめる、すたれる。

呼(コ・8画)

呼 前漢隷書
居延簡甲2361・前漢

初出:現行字体の初出は前漢の隷書。それ以前は「乎」と同じで初出は甲骨文。論語語釈「乎」を参照。

字形:「口」+「乎」で、呼び鐘を鳴らし口でも呼び寄せるさま。原義は”よぶ”。

音:カールグレン上古音はgʰo(平)。

用例:戦国の竹簡には「虎」を「呼」と釈文して「嗚呼」の一部と解する例がある(「清華大学蔵戦国竹簡」清華一・祭公14)。戦国最末期の「睡虎地秦簡」では「謼」を「呼」と釈文し、”呼ぶ”と解する。

備考:「漢語多功能字庫」には見るべき情報がない。

学研漢和大字典

会意兼形声。乎は、息が下から上へと伸びて、ハ型に分散するさま。呼は「口+(音符)乎」。乎・呼は同系だが、乎が文末の語気詞に専用されたため、呼の字で、その原義を示すようになった。類義語の喚は、人に声をかけること。喊は、大声でさけぶこと。叫は、のどをしめてかん高い声でさけぶこと。号は、大声でよぶこと。

語義

  1. {動詞}よぶ。のどを開いて、はあと大きい声を出す。《同義語》⇒淬(コ)。《類義語》喚(カン)。「吏呼一何怒=吏の呼ぶこと一に何ぞ怒れる」〔杜甫・石壕吏〕
  2. {動詞}よぶ。声をかける。他人によびかける。《対語》応(こたえる)。「欲呼張良与倶去=張良を呼びてともに倶に去らんと欲す」〔史記・項羽〕
  3. {動詞}よぶ。命名する。「呼称」「呼曰A=呼んでAと曰ふ」。
  4. {動詞}はあと息を吐く。《対語》吸。「呼吸」。
  5. 「嗚呼(アア)」とは、はあはあと嘆息する声を示す凝声語。

字通

[形声]声符は乎(こ)。乎は呼の初文。乎は板上に遊舌を結びつけた鳴子板の形。もと神を呼ぶときに用いた。〔説文〕二上に「息を外(は)くなり」とし、〔段注〕にこの字を呼招の意に用いるのは誤りであるとするが、乎の繁文とみてよい。乎を助詞・介詞に用い、字が分化したのである。

虎(コ・8画)

虎 甲骨文 虎 金文
合21472/師虎簋・西周中期

初出:初出は甲骨文

字形:虎の象形。

音:カールグレン上古音はxo(上)。

用例:甲骨文合集10200に「狩獲虎一豕」とあり、”トラ”と解せる。

春秋末期「叔尸鐘」(集成276)に「靈力若虎」とあり、”トラ”と解せる。

学研漢和大字典

象形。とらの全形を描いたもの。

語義

  1. {名詞}とら。猛獣の名。鋭い目・爪(ツメ)・牙(キバ)をもち、性質は荒々しい。▽荒くたけだけしいものにたとえる。
  2. {形容詞}とらのように勇猛な。また、凶悪な。
  3. 《日本語での特別な意味》とら。よっぱらいのこと。

字通

[象形]〔説文〕五上に「山獸の君なり」とあり、「虎足は人の足に象る」とするが、その部分は脚・尾の形である。楚では於兔(おと)といい、青銅器にみえる饕餮(とうてつ)の文様は、その展開文であるらしく、語としても関係があるかと思われる。

沽(コ・8画)

沽 金文
散氏盤・西周末期

初出:初出は西周末期の金文

字形:「水」+”水たまりに立てた標識”。深さのある川や湖の意。

音:カールグレン上古音はko(平)。論語語釈「賈」も参照。

用例:西周末期「散氏盤」(集成10176)に「至于大沽」とあり、”みずうみ”と解せる。春秋末期までの用例はこの一件のみ。戦国の竹簡では「涸」”かれる”の意に用いた例がある。

論語では”うる・かう”など商売系の意に用いられたが、いずれも後世の偽作で、初出は前漢初期の賈誼『新書』で、匈奴篇6に「大每一關,屠沽者、賣飯食者、美臛炙膹者,每物各一二百人,則胡人著於長城下矣。」とあり、戦国最末期から前漢初期になって現れた語義と分かる。

学研漢和大字典

形声文字で、「水+(音符)古」で、ためておいた商品をうったりかったりすること。庫(品物をためておくくら)・賈(品物をかいだめておいてうる商人)・価(ねだん)などと同系のことば

語義

  1. {動詞}うる。かう(かふ)。商品と代金を交換する。値をつけて売買する。《同義語》⇒估。「沽酒(コシュ)」「求善賈而沽諸=善賈を求めて諸を沽らんか」〔論語・子罕〕
  2. {名詞}川の名。山東省東部にある。昔の姑水(コスイ)。
  3. {名詞}酒をうることを職業としている人。▽上声に読む。《同義語》⇒估。
  4. {形容詞}あらい(あらし)。大まかであらい。粗悪である。▽苦に当てた用法。上声に読む。

字通

[形声]声符は古(こ)。〔説文〕十一上に水名とするが、〔論語、子罕〕「善賈を求めて諸(こ)れを沽(う)らんか」、〔論語、郷党〕「沽酒市脯は食はず」のように、売買・市販の意に用いる。酒には酤酒のように酤を用いることがある。

故(コ・9画)

故 金文
班簋・西周早期

初出:初出は西周早期の金文。ただし字形が僅かに違い、「古」+「ボク」”手に道具を持つさま”。

字形:「古」は「𠙵」”くち”+「中」”盾”で、”口約束を守る事”。それに「攴」を加えて、”守るべき口約束を記録する”。従って”理由”・”それゆえ”が原義で、”ふるい”の語義は戦国時代まで時代が下る。

音:カールグレン上古音はko(去)。『大漢和辞典』の第一義は”もと・むかし”。攵(のぶん)は”行為”を意味する。類義語の「旧」はもと鳥の名だったが、久(年月をへて曲がった)・朽(キュウ)(曲がってくちる)と音が通じて転用されたことば。

用例:西周早期の「大盂鼎」(集成2837)に「古」を「故」と釈文し、”ゆえに”と解する例がある。

西周早期の「班𣪕」(集成4341)に「公告厥事于上。隹民亡󰾴才。彝忝天令。故亡。允才顯。隹敬德。亡卣違。」とあり、「公それ事を上に告ぐ。これ民□才亡くも、天令にのっとり忝くせば、故に亡きも、まことに才顯れん。ただ徳を敬い、これ違うこと亡かれ」と読め、”ゆえに”と解せる。

漢語多功能字庫」は”ふるい”・”それゆえ”・人名を意味する戦国時代の金文にしか言及がなく、論語の読解に関して見るべき情報が無い。

学研漢和大字典

会意兼形声文字で、古は、かたくなった頭骨、またはかたいかぶとを描いた象形文字。故は「攴(動詞の記号)+〔音符〕古」で、かたまって固定した事実になること。

また、すでにかたまって確立した前提をふまえて、「そのことから」とつなげるので「ゆえに」という意の接続詞となる。固(かたい)・個(かたまった物体)などと同系のことば。

語義

  1. {名詞・形容詞}ふるい(ふるし)。以前にあった物・事がら。以前の。《同義語》⇒古。《対語》⇒新・現。「温故而知新=故きを温めて新しきを知る」〔論語・為政〕
  2. {形容詞・副詞}もと。もとより。→語法「①」。
  3. {名詞}もと。以前の状態。「吏民皆按堵如故=吏民皆按堵すること故のごとし」〔漢書・高帝〕
  4. {名詞}以前からのつきあい。また、以前からのいきさつ。なじみ。「君安与項伯有故=君安(いづ)くんぞ項伯と故有る」〔史記・項羽〕
  5. {名詞}事件や事故など、おこってくるよくない事がら。さしさわり。「事故」「多故(事件が多い)」「兄弟無故=兄弟にも故無し」〔孟子・尽上〕
  6. {動詞}死亡する。「病故」「物故(死ぬこと。没故のなまりという)」。
  7. {名詞}ゆえ(ゆゑ)。根本の事情。また、原因。「無故」「文献不足故也=文献足らざるが故なり」〔論語・八佾〕
  8. {接続詞}ゆえに(ゆゑに)。→語法「②」▽奈良時代には、「かれ」と訓読した。
  9. {副詞}ことさらに。→語法「③」。
  10. 《日本語での特別な意味》死者の名まえにつけて、すでに死んでしまったことをあらわすことば。「故山田氏」。

語法

①「もと」「もとより」とよみ、

  1. 「以前」「過去に」と訳す。「燕太子丹者、故嘗質於趙=燕の太子丹は、故(もと)嘗(かつ)て趙に質たり」〈燕の太子の丹は、以前趙に人質となっていたことがある〉〔史記・刺客〕
  2. 「本来」「まことに」「依然として」と訳す。「懶惰故無匹=懶惰なること故(もと)より匹無(な)し」〈なまけものであることは、もともと比類がなかった〉〔陶潜・責子〕

②「ゆえに」とよみ、「だから」「そこで」と訳す。因果関係の結果を示す接続詞。「吾少也賎、故多能鄙事=吾少(わか)くして賎し、故に鄙事(ひじ)に多能なり」〈私は若いときには身分が低かった、だからつまらないことがいろいろできるのだ〉〔論語・子罕〕

③「ことさらに」とよみ、「わざと」「わけあって」と訳す。「故賞以酒肉=故に賞するに酒肉をもってす」〈ものものしくも褒賞に酒や肉を用いたのだ〉〔柳宗元・送薛存義序〕

  1. 「以故」は、「ゆえをもって」とよみ、「だから」と訳す。前節の事情・理由をうける接続句。「以故荊軻乃逐秦王=故を以て荊軻乃(すなは)ち秦王を逐ふ」〈それゆえ荊軻はここぞとばかり秦王を追いかけた〉〔史記・刺客〕
  2. 「以~之故」は、「~をもってのゆえに」「~のゆえをもって」とよみ、「~のために」と訳す。「此独以跛之故、父子相保=これ独り跛(は)の故をもって、父子あひ保つ」〈片足が不自由であったがために、かの父子だけが生き延びた〉〔淮南子・人間〕

⑤「是故」は、「このゆえに」とよみ、「このようなわけで」と訳す。「是故以天下与人易、為天下得人難=この故に天下をもって人に易(やす)く、天下の為に人を得るは難(かた)し」〈だから天下を人に与えることは簡単だが、天下のために人材を確保することは困難である〉〔孟子・滕上〕

字通

[会意]古+攴(ぼく)。古は祝禱を収める器(𠙵(さい))の上に、聖器としての干(たて)を加え、その呪能を永く守る意。ゆえに古久の意がある。それに攴を加えるのは、その呪能をことさらに害しようとするものであるから、字は故意・事故を原義とする。そのことが原因をなすので事由の意となる。金文の〔大盂鼎(だいうてい)〕に「古(ゆゑ)に天、翼臨して子(いつくし)む」とあり、古を故の意に用いる。また〔小盂鼎〕に「厥(そ)の故(こと)を邎(と)ふ」とは事由の意。〔周礼、天官、宮正〕「國に故(こと)有りり」とは、事故・禍殃のあることをいう。

大漢和辞典

→リンク先を参照

孤(コ・9画)

孤 金文 寡 字解
亞夫父丁觚・商代晚期

初出:初出は殷末期の金文。ただし現行の書体と共通するのは「子」ぐらいで、「瓜」は含まれず、全く字形が違う。

字形:初出の字形は「扌」+「子」”王族”+「曰」で、王族手ずからものを言うさま。おそらく原義は殷代王族の一人称。

音:カールグレン上古音はkwo(平)。同音に瓜を部品とした漢字群。

用例:殷代末期「亞󱲗鼎」(集成2033)など5例に「孤竹」とあり、地名と解せる。西周早期「父丁孤竹罍」(集成9810)も同様であり、春秋末期までの用例は1例を除き全て「孤竹」と記す。

その例外である殷代末期「子弧𣪕」(集成3077)に「子孤」とあり、人名と解せるが、また殷王族の一人称とも考え得る。

”孤独”の語義は戦国の竹簡より見られる。

漢語多功能字庫」によると、金文では地名に用いた(孤竹罍・殷代末期?)。

おそらく殷周革命の結果、重大な言語上の混乱があったと思われる。
孤 カールグレン上古音

学研漢和大字典

会意兼形声。「子+(音符)瓜(カ)」。寡(カ)(すくない、それだけ)と同系。瓜(ウリ)がまるく一つころがっているようなひとりぼっちの子どものこと。寡(カ)(すくない、それだけ)と同系。類義語に寡。

語義

  1. {名詞}みなしご。父に死にわかれた子。《類義語》寡。「孤児」「六尺(リクセキ)之孤」〔論語・泰伯〕
  2. (コナリ){形容詞}ひとりぼっちであるさま。「徳不孤=徳は孤ならず」〔論語・里仁〕
  3. (コナリ){形容詞}それだけ一つ残されるさま。また、一つだけ抜き出て見えるさま。「孤特」「平明送客楚山孤=平明客を送れば楚山孤なり」〔王昌齢・芙蓉楼送辛漸〕
  4. {代名詞}諸侯や国王が自分を謙そんしていうことば。わたし。「孤之有孔明猶魚之有水也=孤の孔明有るはなほ魚の水有るがごとし」〔蜀志・諸葛亮〕
  5. 「三孤」とは、周代、三公の次に位する少師・少傅(ショウフ)・少保の三官のこと。
  6. {動詞}そむく。ひとりだけ離れる。うらぎる。《類義語》辜(コ)。「孤負(=辜負)」「陵雖孤恩漢亦負徳=陵恩に孤くと雖も漢も亦た徳に負く」〔李陵・答蘇武書〕

字通

[形声]声符は瓜(か)。〔説文〕十四下に「父無きなり」とあり、孤児をいう。また尊貴の人の自称に用い、すべて孤独で寂しい状態のものに冠して用いる。

賈(コ/カ・13画)

賈 甲骨文 賈 金文
甲骨文/頌簋・西周末期

初出:初出は甲骨文

字形:字形は「貝」”貝貨”+「」”はこ”で、貝貨を箱に収納したさま。原義は”商売”。

音:カールグレン上古音はko(上)またはkɔ(去)。上声で馬-見の音は不明。”売買”・”商人”の意では「コ」(上声)と読み、”値段”・国名・姓名の場合は「カ」(去声)と読む。

用例:「漢語多功能字庫」によると、甲骨文での語義は不明、金文では”価格”(衛盉・西周中期)、”取引”(祀衛鼎・西周中期)、”商売(人)”(頌鼎・西周末期)、国名(賈子己父匜・西周末期)、人名(中山王方壺・戦国早期)に用いた。

論語では衛の軍務大臣、王孫賈の名として出てくる。

学研漢和大字典

会意。上部は西ではなくて、覆(おおう)の字の上部と同じく、ふたをかぶせたさま。「襾(ふたの形)+貝(財貨)」で、金品におおいをかぶせて隠すことを示す。庫(コ)(物を隠すくら)と同系。類義語について、店の中や倉庫に品物をストックするあきんどを賈といい、行商するのを商といった。のち商と賈を区別せず、ともにあきんどの意に用いる。

語義

コ(上)
  1. {動詞}かう(かふ)。うる。商品をストックしてうりかいする。転じて、あきなう。とりひきする。《類義語》沽(コ)。「賈市(コシ)(あきない)」「賈人(コジン)(あきんど)」。
  2. {名詞}あきんど。商人。《同義語》估。「商賈(ショウコ)(あきんど)」。
カ(去/上)
  1. {名詞}ね。ねだん。《同義語》価。「求善賈而沽諸=善賈を求めて諸を沽らんか」〔論語・子罕〕
  2. {名詞}春秋時代の国の名。晋(シン)に滅ぼされた。今の山西省臨汾(リンフン)市のあたりにあった。▽上声に読む。
  3. 姓の一つ。▽上声に読む。

字通

[会意]襾(か)+貝。襾は物を覆う形。貝は財貨。財貨を蔵するを賈といい、財貨を网(あみ)するを買という。〔説文〕六下に「賈市なり」とし、襾声とするが、買と同じ構造法の字である。

狐(コ・9画)

狐 甲骨文 狐 楚系戦国文字
合10258/楚系戦国文字

初出:初出は甲骨文

字形:初出の字形は「亾」(亡)mi̯waŋ(平)”逃げる”+「犭」”けもの”。悪賢く素早く逃げ去るキツネのさま。甲骨文のあとは戦国の金文まで時代が空いており、現行字形が「犭」+「瓜」になったのは、言語が変わったとしか思えない。

慶大蔵論語疏は「抓」”かく・つまむ・つねる”と記す。おそらく誤字。疏では「𤜶」と記し、宋儒は『集韻』で「㺐」”東南の異族”の異体字と決めたが、「張子平碑」(東晋?)に「狐」の異体字として刻む。

音:カールグレン上古音はgʰwo(平)。

用例:「甲骨文合集」28318.2に「其呼射焛狐擒 吉」とあり、”キツネ”と解せる。「射焛」とは弓術を能くする「リン」という人物か。

戦国早期「令狐君󱸠子壺」(集成9719・9720)に「命(令)瓜(狐)君孠(嗣)子乍(作)鑄尊壺」とあり、「瓜」は「狐」と釈文されている。その他「上海博物館蔵戦国楚竹簡」周易37にも同様の例がある。論語語釈「瓜」を参照。

学研漢和大字典

形声。「犬+(音符)瓜」。クヮクヮと鳴く声をまねた擬声語。

語義

  1. {名詞}きつね。獣の名。からだは細く、尾は太い。毛色は薄茶。毛皮はえりまきに使用される。▽疑い深くてずるがしこい、悪だくみに長じたもののたとえとして用いることがある。

字通

[形声]声符は瓜(か)。〔説文〕十上に「䄏(妖)獸なり。鬼の之れに乘る所なり。三徳有り。其の色は中和、前を小にして後を大にし、死するときは則ち丘首す。之れを三徳と謂ふ」(段注本)とあり、瓜声とする。丘首とは、死するとき故丘に頭を向ける意。狡獪な獣とされる。国語のキツネの語源は擬声語とされるが、狐もその鳴き声をとるものであろう。

瑚(コ・13画)

璉 篆書
「説文解字」篆書

初出:初出は後漢の『説文解字』

字形:「王」”たま”+「胡」で、「胡」は音符。サンゴを意味する。

音:カールグレン上古音はɡʰo(平)。同音は壺、胡を部品とした漢字群、乎、戸など。

用例:論語に次ぐ再出は戦国時代までの儒家の伝説や架空の礼法を記した前漢ごろの『小載礼記』。

論語時代の置換候補:結論として存在しない。

『大漢和辞典』の訓読が複雑に過ぎて同音同訓は探せない。部品の「胡」に「瑚に通ず」と釈文があるが、春秋期末期までの出土例に「胡」を祭器の意味で使っている用例は無い。同音の「壺」の初出は甲骨文で、青銅器の名として多数の用例があるが、それが祭器を意味したとは言えない。

備考:「漢語多功能字庫」には見るべき情報がない。

学研漢和大字典

形声。「玉+(音符)胡(コ)」。

語義

  1. {名詞}赤色の玉石。
  2. {名詞}祭器の名。「瑚茂(コレン)」。
  3. 「珊瑚(サンゴ)」とは、熱帯の海中にすむさんご虫の群体の石灰質の骨格が集積して、樹枝状または塊状をなしたもの。装飾品の材料となる。

字通

[形声]声符は胡(こ)。〔説文〕一上に「珊瑚なり」とあり、珊瑚虫の骨骼によって形成される枝状のもの。赤・白・碧・黒などの色がある。また、瑚璉。黍稷(しよしよく)を盛る礼器。

觚(コ・13画)

觚 隷書
流沙簡.小學1.5・前漢

初出:初出は前漢の隷書

字形:「角」+「瓜」で、「瓜」は音符。おそらく「コ」と呼ばれる、動物の角を使った酒器だった。

音:カールグレン上古音はkwo(平)で、同音に瓜を部品とする漢字群。全て平声で、「孤」”みなしご”(初出殷末金文)→語釈、「苽」”まこも”(楚系戦国文字)、「呱」”乳児の泣き声”(説文解字)、「罛」”漁網”(説文解字)、「軱」”わだかまった骨”(不明)。

用例:論語以降の文献では、『荘子』大宗師篇に「古之真人,其狀義而不朋,若不足而不承,與乎其觚而不堅也」とあり、金谷本では「孤」と釈文している。

『韓非子』問田篇に「楚將宋觚而失其政」とあり、人名として用いている。

論語時代の置換候補:部品の「角」。

上古音の同音には、いずれも”さかずき”の語義が無く、論語時代の金文や甲骨文にも遡れない。

『大漢和辞典』に限れば、盃の意味をもつ近縁の語、𨠋コ・觥コウ・柧コは論語の時代に遡れない。部品の角は甲骨文から、瓜は金文からあるが、あくまで”つの”・”うり”でしかない。ただし『字通』は次の通り、「角」を殷周時代の酒器とする。

[象形]獣角の形。〔説文〕四下に「獸角なり。象形」とし、字形について「角と刀魚と相ひ似たり」とする。漢碑の〔曹全碑〕〔景北海碑〕などの鰥(かん)の字形を、角に従う形に作る。殷周の酒器に角とよばれる酒器があり、古く角を酒器に用いたなごりである。

つまり「觚」は「角」でありうる。「角」の初出は甲骨文。ただしカールグレン上古音はkŭk(入)で、「觚」kwo(平)と音素の共通率は33.3%しかなく、音通するとは言いかねるが、「觚」の部品ではあるため、論語時代の置換候補となりうる。

明の万暦三十五年(1607)に完成した『三才図会』によれば下のような形。しかし論語時代の觚がいかなる姿で、孔子が奇異に思ったはやりの杯がどんな形だったか、もはや誰にもわからない。

備考:「漢語多功能字庫」には見るべき情報がない。

学研漢和大字典

形声。「角+(音符)瓜(カ)・(コ)」。

語義

  1. {名詞}さかずき(さかづき)。昔、中国の量(かさ)の単位で二升(約〇・三八リットル)はいるさかずき。
  2. {名詞}昔、文字をしるした方形の木の札。「觚牘(コトク)」。
  3. {名詞}のり。きまり。《類義語》矩(ク)。
  4. {名詞}物のかど。すみ。また、剣の、手で握る部分。つか。木のまた。《類義語》稜(リョウ)。「觚稜(コリョウ)」。
  5. {名詞}四角。方形。《類義語》矩(ク)。
  6. {名詞}ひとり。仲間や相手がいないこと。▽孤に当てた用法。

字通

(条目無し)

大漢和辞典

リンク先を参照

鼔/鼓(コ・13画)

鼓 甲骨文 鼓 金文
合6945 /洹子孟姜壺・春秋末期

初出:初出は甲骨文

字形:「壴」”日時計に下げられた皮を張った太鼓”+「攴」”ばちを取って打つ”。太鼓を鳴らすさま。

音:カールグレン上古音はko(上)。

用例:甲骨文では”太鼓を打つ”のほか、地名・人名と解せる例がある。

西周中期「𤼈鐘」(集成247)に「其萬年永寶日鼓」とあり、”鳴らす”と解せる。

春秋末期「叔尸鐘」(集成284)に「卑若鐘鼓」とあり、”太鼓”と解せる。

学研漢和大字典

会意。「上にひも飾り、下に台があるたいこのかたち+攴(棒をもってたたく)」。▽正しくは、鼔と書く。瓠(コ)(まるくふくれたうり)・壺(まるくふくれたつぼ)と同系。

語義

  1. {名詞}つづみ。木や土でつくった胴に革を張り、打ち鳴らす楽器。たいこ。「軍鼓」。
    ま(コス){動詞}つづみをうつ。たいこをうち鳴らす。「鹸然鼓之=鹸然としてこれに鼓す」〔孟子・梁上〕
  2. (コス){動詞}ぽんぽんたたく。リズムをつけて動かす。ふるいたたせる。勢いをつける。「鼓腹」「鼓励」「鼓舞」「鼓楫=楫を鼓す」。
  3. {形容詞}ぱんと張ったさま。まるくふくれているさま。

字通

[会意]壴(こ)(鼓の象形)+攴(ぼく)。鼓をうつ形。〔説文〕三下に「鼓を撃つなり」とし、また別に𡔷五上を録して「郭なり。春分の音なり」という。〔周礼、地官、鼓人〕の六鼓の字はその形に作る。〔説文〕は鼓を動詞、𡔷を名詞と解したのであろうが、両者は同字異構とみてよい。

瞽(コ・18画)

瞽 甲骨文 瞽 古文
合16016/四3.11汗(古文)・北宋

初出:初出は甲骨文

字形:甲骨文の字形は「目」+「針」+「人」。視力の無い人のさま、と言うしかないのだが、むしろ杖を突いた人のさまで、むしろ「叟」”おきな”の字ではないかと考える。おそらくは古文を根拠に現代中国の漢学教授が「瞽」だと言うのだが、全き信頼を置きかねる。上掲古文は北宋の時代に収集された「古文字」だが、これがなぜ「瞽」の字なのか誰も説明してくれない。現行字形は音符「鼓」+「目」でまるで違い、別の字だと考えた方が理屈に合う。

瞽 異体字
慶大蔵論語疏では「〔壹皮目〕」と記し、上掲『敦煌俗字譜』に所収の「瞽」に近似。

音:カールグレン上古音はko(上)。

用例:甲骨文の用例は一例を除き断片のみ。「甲骨文合集」16013の4行目は「…貞勿乎多瞽無…」と読めるが、”大勢のめしいを呼ばないで…が無いだろうかと天意を問う”と解せる。

その後は戦国中末期の「郭店楚簡」唐虞9と24まで用例が無い。つまり論語の時代には存在しなかった可能性が高い。しかも「郭店楚簡」の「瞽」の字がネット上で見つからない。

備考:「郭店楚簡」唐虞9には「古(故)亓(其)為□(瞽)寞(盲)子也,甚孝」とあり、24には「古者吳(虞)舜□(篤)事□(瞽)寞(叟),乃弋(式)亓(其)孝」とある。

架空の聖王舜の父親は現伝『史記』では「瞽叟」と伝わっており、子いじめの大好きなバカ親父とされ、それに孝行を尽くしたから舜は帝王になったとされる。「郭店楚簡」の字形がわからない以上想像するしか無いが、上掲古文はむしろ「叟」の字ではないか。

試験秀才ゆえの仕事の手抜きは宋儒の生活習慣病と言ってよく、「叟」の字だとするならとんでもないデタラメを、ざっと千年担ぎ続けていることになる。論語雍也篇3余話「宋儒のオカルトと高慢ちき」を参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。「目+(音符)鼓(皮が張ってあるたいこ→ぴんと張ったままで働かない)」。

語義

  1. {名詞}めしい(めしひ)。目の働かない人。盲人。
  2. {名詞}昔の音楽家のこと。▽音楽家に盲人が多かったことから。「瞽師(コシ)」。
  3. {名詞}物事を見ぬく力の働かない人。

字通

[形声]声符は鼓(こ)。瞽が鼓に従うことについて、〔釈名、釈疾病〕に「瞽は鼓なり。瞑瞑然として、目の平合すること、鼓皮の如し」とするが、楽官に瞽者が多かったからではないかと思う。視力のないものは盲という。〔説文〕四上に「目に但だ朕(ちん)のみ有り」とあり、目睛あるも視力のない意とする。〔国語〕に「瞽史」「瞽師」、また「瞽史の記」などの名がみえ、瞽は古代礼楽の伝承に重要な地位を占めた。殷代の学を瞽宗という。

顧(コ・21画)

顧 金文
沈子它簋蓋・西周早期

初出:初出は西周早期の金文

字形:「雇」+「頁」”目の大きな人”。「雇」は甲骨文では地名に用いられ、原義は鳥の一種だったとされる。定まった季節に渡り鳥が去って行く姿で、その間を回顧するさまを指すか。

音:カールグレン上古音はko(去)で、同音は膨大に存在する。

用例:西周早期「沈子它簋蓋」(集成4330)に「乃沈子其顧懷多公能福。」とあり、”回顧する”と解せる。

西周中期「帥隹鼎」(集成2774)に「乃顀子帥隹。」とあり、「帥隹」は人名であるらしく、「顀」は「顧」”思う”と釈文されている。

備考:日本語音で同音同義なのは、「𪄮」(上古音不明)の字の仮借。「雇」ɡʰo(上)の異体字とされ、「雇」は甲骨文から存在する。ただし語義は”フナシウズラ(ハトの一種)”であり、”やとう・むくいる”。古くは”かえりみる”の語義があった可能性はあるが、断定できない。

学研漢和大字典

会意兼形声。雇(コ)は、わくをかまえて、その中に鳥や動物をかかえこむこと。顧は「頁(あたま)+(音符)雇」で、せまいわくをかぎって、その中で頭をめぐらすこと。嘉(コ)(かかえこむ→やとう)と同系。異字同訓に省みる「自らを省みる。省みて恥じるところがない」。

語義

  1. {動詞}かえりみる(かへりみる)。外をみわたさず、内側だけをみまわす。身辺や後ろをふりかえる。▽訓の「かへりみる」は「かへり(反)+みる(見)」から。「反顧」「右顧左眄(ウコサベン)(左右をかえりみてうろうろする)」。
  2. {動詞}かえりみる(かへりみる)。わが身や過去をふりかえる。「回顧」「自顧非金石=自ら顧みるに金石に非ず」〔曹植・贈白馬王彪〕
  3. {動詞}かえりみる(かへりみる)。気にしてかばう。目をかけてたいせつにする。心を配る。「愛顧」「不顧(気にしない)」「三顧之礼」「先王顧洌天之明命=先王は洌の天の明命を顧みる」〔書経・太甲上〕
  4. {動詞}かえりみる(かへりみる)。周囲に気を配る。「顧全大局=大局を顧全す」。
  5. {動詞}客の来訪をていねいにいうことば。▽来て目をかけてくださる意から。「顧客」「恵顧(おいでくださる)」。
  6. {接続詞}かえって(かへって)。ただ。それとは反対に、の意をあらわすことば。《類義語》但。「卿非刺客、顧説客耳=卿は刺客に非ず、顧て説客なるのみ」〔後漢書・馬援〕
  1. (上){名詞}鳥の名。かごに入れて飼う。
  2. (去){動詞}やとう(やとふ)。賃金を支払って使用人をかかえる。《同義語》⇒嘉。《類義語》傭(ヨウ)。「雇用(=僱用)」。
  3. (去)(コス){動詞}賃金や代金を支払う。「以見銭雇直=見銭を以て直を雇す」〔後漢書・桓帝〕

字通

[会意]雇(こ)+頁(けつ)。雇は神戸棚の前で鳥占(とりうら)をして、神意を問う意。頁は神事の際の礼容。神の顧寵を拝する意である。〔書、太甲上〕「先王、諟(こ)の天の明命を顧みる」、〔詩、大雅、雲漢〕「大命止むに近し 瞻(み)る靡(な)く顧みる靡し」のように、神意の顧念をうることが字の原義であった。〔説文〕九上に「還(めぐ)り視るなり」とあり、後顧の意とするのは、のちの転義である。

五(ゴ・4画)

五 甲骨文 五 甲骨文
(甲骨文)1/2

初出:初出は甲骨文

字形:五本線のものと、線の交差のものとがある。前者は単純に「5」を示し、後者はおそらく片手の指いっぱいを示したと思われる。

音:カールグレン上古音はŋo(上)。

用例:甲骨文の時代から数字の「5」を意味した。西周以降に、人名や官職名の例が見られる。

備考:「漢語多功能字庫」には見るべき情報が無い。

学研漢和大字典

指事。×は交差をあらわすしるし。五は「上下二線+×」で、二線が交差することを示す。片手の指で十を数えるとき、→の方向に数えて五の数で←の方向にもどる。→←の交差点にあたる数を示す。また、語(ゴ)(話をかわす)・悟(ゴ)(感覚が交差してはっと思いあたる)に含まれる。互(ゴ)(互いに交差する)と同系。付表では、「五月雨」を「さみだれ」「五月晴れ」を「さつきばれ」と読む。▽証文や契約書では、改竄(カイザン)・誤解をさけるために「伍」と書くことがある。

語義

  1. {数詞}いつつ。「五刑」。
  2. {数詞}いつ。順番の五番め。「五月五日」。
  3. {副詞}いつたび。五回。五度。「五不克=五たび克たず」〔春秋穀梁伝・成二〕
  4. 《日本語での特別な意味》いつつ。午前八時、または午後八時のこと。▽江戸時代のことば。

字通

[仮借]斜めに交錯する木を以て作られた器物の蓋(ふた)の形。数字の五に用いる。〔説文〕十四下に「五行なり。二に從ふ。陰陽、天地の間に在りて交午するなり」と陰陽の相交わる形とし、古文×をあげて、上下の線を略した形とする。卜文に×を用いることが多く、もと算木をその形において数を示したものであろう。卜文では一より四までは横画を重ね、五に至って交画とする。×の形を以ていえば一・二と同じく指示となるが、古くから五の形もあるので、器蓋の象とし、数に用いるのを仮借とする。文字の要素としては×は吾・交・學(学)などの中にも含まれるが、これらの字は、数としての五の義をとるものではない。

吾(ゴ・7画)

吾 甲骨文 吾 金文
甲骨文/商尊・西周早期

初出:初出は甲骨文

字形:字形は「五」+「口」で、原義は明瞭でない。音を借りて一人称を示す。

音:カールグレン上古音はŋo(平・韻目「模」)、同音は「五」を部品とする漢字多数。平/韻目「麻」は不明。

用例:古くは中国語にも格変化があった名残で、一人称では「吾」(藤堂上古音ŋag)を主格と所有格に用い、「」(同ŋar)を所有格と目的格に用いた。しかし論語でその文法が崩れ、「我」と「吾」が区別されなくなっているのは、後世の創作が多数含まれているためである。西周末期の「毛公鼎」では、「吾」は所有格で用いられている。

王曰:父歆,已曰及茲卿事寮,大史寮,於父即君,命女攝司公族,雩三有司,小子,師氏,虎臣雩朕褻事,以乃族幹王身,取專卅寽,賜汝秬鬯一卣,裸圭瓚寶,朱市,悤黃,玉環,玉瑹金車,繹較,朱囂弘斬,虎冟熏裹,右厄,畫韝,畫輴,金甬,錯衡,金童,金豙,涑燢,金簟笰,魚箙,馬四匹,攸勒,金口,金膺,朱旂二鈴,易汝茲關,用歲於政,毛公對歆天子皇休,用作尊鼎,子子孫孫永寶用。

そもそも「天子」の言葉が中国語に現れるのは西周早期で、殷の君主は自分から”天の子”などと図々しいことは言わなかった。詳細は論語述而篇34余話「周王朝の図々しさ」を参照。

戦国末期の「四年相邦樛斿戈」では、文が短すぎて「吾」の語義を確定しがたい。

備考:武内義雄『論語之研究』によると、斉に伝わった原・論語の一部分である先進篇~衛霊公篇、および子張篇・堯曰篇では格にかかわらず一人称に「予」が使われることを指摘している。ただし「」は戦国文字が初出で、論語の時代に存在しない。

漢語多功能字庫

金文從「口」,「五」聲,毛公鼎從二「五」相疊,從口。借用為第一人稱代詞。


金文は「口」の字形に属し、「五」の音。毛公鼎は二つの「五」の字形が重ねて記され、「口」の字形に属する。音を借りて一人称代名詞に用いる。

学研漢和大字典

会意兼形声。「口+(音符)五(交差する)」。語の原字だが、我とともに一人称代名詞に当てる。▽古くは吾はおもに主格と所有格に用い、我はおもに目的格に用いた。ただし「不吾知=吾ヲ知ラズ」のような代名詞を含む否定文では吾を目的格に用いる。類義語に

語義

{代名詞}われ。わが。一人称の代名詞。《対語》⇒汝(ジョ)・爾(ジ)。《類義語》我。「吾日三省吾身=吾日に三たび吾が身を省みる」〔論語・学而〕

字通

五+口。五は木を交叉して器を蓋するもの。口は𠙵さい、祝禱を収めた器の形。その器に固く蓋して、祝禱の呪能を守るもので、まもる意。金文には五を二重にした形のものがある。〔説文〕二上に「我自らふなり」と一人称代名詞とする。〔毛公鼎〕に「王身を干吾かんぎょせよ」とあって、干吾は攼敔の初文。吾を一人称に用いるのは仮借。金文の〔也𣪘いき〕に「吾がちち」という語が両見し、所有格の用法である。主格・目的格には我を用いることが多い。

吳/呉(ゴ・7画)

呉 甲骨文 期 金文
合集3122/沇兒鎛沇兒鎛・春秋末期

初出:初出は甲骨文。「小学堂」による初出は西周中期の金文

字形:甲骨文の字形は手を振り上げた頭の大きな人。原義は未詳。異体字に「吴」。金文では「虞」で「吳」を記した例がある。

音:カールグレン上古音はŋo(平)。呉音では「グ」。

用例:甲骨文の用例は、破損がひどくて語義が明らかでない。

西周早期「班𣪕」(集成4341)に「王令吳白曰」とあり、国名と解せる。

学研漢和大字典

会意。「口+人が頭をかしげるさま」。人が頭をかしげて口をあけ笑いさざめくさまを示し、娯楽の娯の原字。古くから国名に当てる。

語義

  1. {動詞}大声でさわぐ。
  2. {名詞}国名。周代に泰伯がたて、紀元前四七三年、夫差が越王勾践(コウセン)に敗れ、滅びた。句呉ともいう。
  3. {名詞}王朝名。三国の一つ。後漢末に孫権がたて、今の江蘇(コウソ)・浙江(セッコウ)両省のあたりを保有して、北の魏(ギ)や西の蜀(ショク)と天下を三分した。四代約六十年にわたったが、二八〇年晋(シン)に滅ぼされた。
  4. {名詞}王朝名。五代十国の一つ。楊行密(ヨウコウミツ)がたて、今の江蘇省一帯を領有して四代三十六年にわたったが、九三七年徐知誥(ジョチコウ)に滅ぼされた。
  5. {名詞}地名。昔の呉の地方で、今の江蘇省のうち長江以南の地を中心とする一帯。
  6. 《日本語での特別な意味》
    ①くれ。つ昔、日本で中国をさして呼んだ呼び名。▽日の暮れる西方の国の意。奈良時代の日本では江南の呉の地方を中国の代表と考えたので、呉の字を用いた。づ中国から渡ってきたものをあらわすことば。「呉竹(クレタケ)」「呉服(クレハトリ)・(ゴフク)」。
    ②くれる(くる)。物を与えるという場合の当て字。

字通

[会意]夨(そく)+口。口は祝禱を収めた器(𠙵(さい))の形。夨は人が手をあげて舞う形。片手に祝禱の器をささげて、神前で舞うのは、神を娯(たの)しませる意で、呉は娯・悞の初文とみてよい。〔説文〕十下に「姓なり。亦た郡なり」とし、また「一に曰く、呉は大言するなり」とするが、字は祝禱を掲げて舞う形である。〔詩、邶風、簡兮〕に「碩人(せきじん)(殷の子孫である舞人)俁俁(ごご)として 公庭に萬舞す」とあり、俁俁はその舞う姿を形容する。夨は身を傾けて舞う形。両手をあげ、身を傾けて舞う形は笑。また神を楽しませる所作をいう。そのあでやかな姿を夭・妖(よう)という。呉・笑・妖はみな神前に舞う姿を写す字である。

論語語釈
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