論語語釈「ホ」

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布(ホ・5画)

論布 金文
守宮盤・西周中期

初出は西周早期の金文。カールグレン上古音はpwo(去)。「フ」は呉音。

学研漢和大字典

形声。もと「巾(ぬの)+(音符)父」で、平らに伸ばして、ぴたりと表面につくぬののこと。敷(フ)(平らにしく)・普(あまねく行き渡る)と同系。また舗(ホ)(平らにしく)とも近い。類義語に帛・播。草書体をひらがな「ふ」として使うこともある。

語義

  1. {名詞}ぬの。平らに伸びて膚につくぬの。▽綿・麻・絹などで織るが、単に布といえば、本来は、麻や葛(カツ)(くず)で織ったもの。後世は、綿布のこと。これに対して、絹布を帛(ハク)(しろぎぬ)という。「許子必織布而後衣乎=許子は必ず布を織りてしかる後に衣るか」〔孟子・滕上〕
  2. {動詞}しく。平らに伸べる。また、広く行き渡らせる。《同義語》⇒域・敷。「布陣=陣を布く」「公布」「陽春布徳沢=陽春徳沢を布く」〔古詩・長歌行〕
  3. 「布施(フシ)」とは、広く金品をほどこすこと。「生不布施、死何含珠為=生きて布施せず、死して何ぞ珠を含むことを為さん」〔荘子・外物〕
  4. {名詞}古代の貨幣の一種。平らな形をしている。「泉布」。

字通

[形声]古い字形は父に従い、父(ふ)声。〔説文〕七下に「枲(あさ)の織(おりもの)なり」とあって、ぬの。木綿が作られる以前は、麻布・褐布が普通であった。蚕は卜文にみえ、また金文に「毳布(ぜいふ)」の名がみえるが、みな富貴の人の用いるもので、のちの世になっても、布衣とは身分のないものをいう。布衣は粗衣、わが国では「ほい」とよむ。敷(ふ)と通用する。

保(ホ・9画)

論語 保 金文
大保簋・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音は声母のp(上)のみ。藤堂上古音はpog。

学研漢和大字典

会意兼形声。保の古文は呆で、子どもをおむつでとり巻いてたいせつに守るさま。甲骨文字は、子どもを守る人をあらわす。保は「人+(音符)呆(ホウ)」で、保護する、保護する人の意を示す。▽ホウとは、漢文訓読と地名・年号のほかは、ほとんど読まない。褓(ホウ)(おむつ)・褒(ホウ)(からだを包む大きい衣)と同系。また、包や抱(ホウ)(外から中のものをつつむ)とも非常に縁が近く、宝(たいせつに包むたから)とも縁が近い。「哺」の代用字としても使う。「保育」▽草書体をひらがな「ほ」として使うこともある。▽草書体からひらがなの「ほ」ができた。また、「保」の末画からカタカナの「ホ」ができた。

語義

  1. {動詞}たもつ。外をとり巻いて、中の物をたいせつに守る。「保護」「保民而王=民を保ちて王たり」〔孟子・梁上〕
  2. {動詞}やすんずる(やすんず)。たもつ。外から守って安全を維持する。「保安」「父子相保=父子相ひ保んず」〔淮南子・人間〕
  3. (ホウス)・(ホス){動詞}責任を持って請けあう。「保証」「担保」。
  4. {名詞}付き添っておもりをする役。おもり人。▽昔、「太保」「少保」という官名があった。《類義語》傅(フ)。
  5. {名詞}雇い人。かかえ人。「酒保(俗語で、居酒屋の小僧さん。日本では、軍隊内の売店)」。
  6. {名詞}中国の自治制度で、十戸の単位。▽五戸を甲という。「保甲制度」。

字通

[会意]人+子+褓(むつき)をかけた形。金文の字形はときにホ 保つ 外字の形に作り、上になお玉を加える。玉は魂振り、褓も霊を包むものとして加えたもので、受霊・魂振りの呪具。生まれた子の儀礼を示す字である。〔説文〕八上に「養ふなり」と保養の意とするが、保は聖職者をいい、最高位の人を大保という。王の即位継体の礼を掌る人であった。周初の功臣とされる召公奭(せき)は、金文に「皇天尹大保」、〔書〕には「君奭」とよばれ、保・君はいずれも聖職者の号である。〔書、顧命〕では大保召公が康王の継体受霊の儀礼の司会者であった。保の字形に含まれる褓は、わが国の真床襲衾(まとこおふふすま)にあたる。保の諸義は、新生の受霊とその保持の意から演繹されたものである。

圃(ホ・10画)

論語 圃 金文
□□芻父癸方彝蓋・殷代末期

初出は殷代末期の金文。カールグレン上古音はpwo(上)。

学研漢和大字典

会意兼形声。甫(ホ)・(フ)は、平らな苗床に苗の芽ばえた姿。圃は「囗(かこい)+(音符)甫」で、囲みの中を平らにならして苗の行き渡った畑。普(平らにしきわたる)・敷(平らにしく)と同系。

語義

  1. {名詞}囲いの中を平らにならして苗を栽培する菜園。畑。「田圃(デンポ)」「種圃(シュホ)(苗を育てる畑)」「荒圃(コウホ)(荒れた菜園)」「請学為圃=圃を為すことを学ばんと請ふ」〔論語・子路〕
  2. {名詞}畑づくり。また、農夫。「吾不如老圃=吾老圃に如かず」〔論語・子路〕

字通

[会意]囗(い)+甫(ほ)。甫は苗木。苗木を植え育てるところを圃という。〔説文〕六下に「菜を穜(う)うるを圃と曰ふ」とあり、果樹には園という。〔論語、子路〕に、樊遅(はんち)が孔子に「稼を學び」「圃を爲(つく)る」ことを問うて、不興を招いたことがみえる。

脯(ホ・11画)

初出は楚系戦国文字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はpi̯wo(上)。同音に部品の甫”ますらお・大きい・畑”、父、斧、夫など多数。甫に”ほじし”の語義は無い。

学研漢和大字典

会意兼形声。「肉+(音符)甫(フ)(平らにひろげる)」。

語義

ホ(上)
  1. {名詞}ほじし。むして平らにのばし、ほした肉。「十日九食擽、一日儻有脯=十日に九(ここの)たび擽(せい)を食し、一日儻(たまたま)脯有り」〔梅尭臣・懐悲〕
  2. {名詞}果実のほしたもの。「杏脯(キヨウホ)」。
  3. {名詞}昔の極刑の一つ。罪人を殺して、その肉を平らにのばし、ほして塩漬(ヅ)けにする。「脯醢(ホカイ)」。
ホ(平)
  1. {名詞}むね。胸部。

字通

[形声]声符は甫(ほ)。〔説文〕四下に「乾肉なり」とあり、肉を細く析き、塩を加えて乾したもので、脩・腊の類。〔説文〕の次条に「脩は脯なり」と互訓している。また果物を乾かしたものをもいい、筍脯(しゆんほ)・棗脯(そうほ)のようにいう。字はまた酺と通用する。

※酺:”うたげ・さかもり・疫病神”。

輔(ホ・14画)

論語 輔 金文
師𠭰簋・西周末期

初出は西周末期の金文。カールグレン上古音はbʰi̯wo(上)。

学研漢和大字典

会意兼形声文字で、甫(ホ)は、平らな苗床(ナエドコ)のことで、平らにへばりつく、ぴたりとくっつくの意を含む。圃(ホ)の原字。輔は「車+(音符)甫」。車にくっつけたそえぎ。薄(ハク)(平らにへばりつく)・補(ホ)(布をあてそえる)などと同系のことば。

語義

  1. {名詞}そえぎ(そへぎ)。車を補強するそえぎ。また、車台のそえ板。「輔車相依=輔車相ひ依る」〔春秋左氏伝・僖五〕
  2. {動詞}たすける(たすく)。そばにひたとくっついて力をそえる。《類義語》扶(フ)・補(ホ)。「輔種(ホヒツ)」「輔之翼之=これを輔けこれを翼く」〔孟子・滕上〕
  3. {名詞}たすけ。そばによりそってたすける人。補佐役。《同義語》傅(フ)。「四輔(天子のもり役)」。
  4. {名詞}都のそばにくっついた近郊の土地。「畿輔(キホ)(都の近郊)」「三輔(サンポ)(漢代、長安近郊の京兆尹(ケイチョウイン)・左馮翊(サヒョウヨク)・右扶風のこと)」。
  5. 《日本語での特別な意味》すけ。四等官で、省の第二位。

字通

[形声]声符は甫(ほ)。甫に傅(つ)く・傅(たす)くの意がある。〔説文〕十四上に「人の頬車(けふしや)なり」とし、「つらがまち」の意とするが、字が車に従うことからいえば、車の部分名とすべく、車輪の輻を補強する木、あるいは車箱の両旁にそえる木とする説がある。面輔の字は䩉がその正字であろう。頬(ほお)の部分を輔車の関係にみたてて、輔と通用したものと思われる。

母(ボ・5画)

論語 母 金文
刀大母癸甗・殷代末期

学研漢和大字典

論語 母 解字
象形。乳首をつけた女性を描いたもので、子をうみ育てる意味を含む。錵(=毎。子をつぎつぎとうむ)・錢(=梅。安産を助けるうめ)・媒(男女の中だちをして子をうませる)・牧(家畜に子をうませる)などと同系。「姆」の代用字としても使う。「保母」▽付表では、「お母さん」を「おかあさん」「叔母・伯母」を「おば」「乳母」を「うば」「母屋・母家」を「おもや」と読む。▽草書体をかな「も」として使うこともある。

意味

  1. {名詞}はは。子どもをうみ育てる女親。《対語》⇒父。「老母」「生曰父曰母曰妻、死曰考曰妣曰嬪=生きては父と曰ひ母と曰ひ妻と曰ひ、死すれば考と曰ひ妣と曰ひ嬪と曰ふ」〔礼記・曲礼下〕
  2. {名詞}物をうみ出す根源。「酵母」「可以為天下母=以て天下の母と為すべし」〔老子・二五〕
  3. {名詞}実母になぞらえた女性。また、実母にかわる女性。《同義語》⇒姥(ボ)・(モ)・姆(ボ)・(モ)。「乳母(うば)」「漂母(洗濯するのが仕事の女)」。
  4. {形容詞}そこで育った。「母国」。

字通

[象形]女に両乳を加えた形。〔説文〕十二下に「牧(やしな)ふなり」と声の近い語によって訓し、「子を褱(いだ)く形に象る。一に曰く、子に乳するに象るなり」とするが、子をそえた字は乳である。金文に女子名を可母・魚母のようにいい、男子に白懋父(はくぼうほ)のようにいうのと同じく、尊称としての用法であろう。金文では母と「毋(なか)れ」とは、同じ字形を用いている。

莫(ボ/バク・11画)

論語 莫 金文
散氏盤・西周晚期

初出は甲骨文。カールグレン上古音は不明(入)。藤堂上古音はmag(去)・「暮」と同、mak(入)・「幕」と同。

学研漢和大字典

草原のくさむらに、日が隠れるさまを示す会意文字。暮の原字。隠れて見えない、ないの意。幕(見えなくする布)-墓-無-亡と同系のことば。
意味:くれる、くれ、おそい。ない。なかれ。ことわる、さからう、うけつけないこと(用例で里仁篇の章をこの義とする)。むなしい、はてしなく広い。莫莫とは、こんもり茂っておおいかくすさま。

語義

ボ(去)
  1. {動詞・名詞・形容詞}くれる(くる)。くれ。おそい(おそし)。日・年がくれる。日・年のくれ。時刻・時候がおそい。《同義語》⇒暮。「不夙則莫=夙からざれば則ちなし」〔詩経・斉風・東方未明〕
バク(入)
  1. {動詞}ない(なし)。否定をあらわす。まるでない。見あたらない。→語法「①」。
  2. {動詞}なかれ。→語法「②」。
  3. {動詞・名詞}ことわる。さからう。うけつけないこと。「君子之於天下也、無適也、無莫也=君子の天下におけるや、適も無く、莫も無し」〔論語・里仁〕
  4. {形容詞}むなしい。はてしなく広い。《類義語》茫(ボウ)。「寂莫(ジャクマク)・(セキバク)」「広莫之野(コウバクノヤ)」〔荘子・逍遥遊〕
  5. 「莫莫(バクバク)」とは、こんもり茂っておおいかくすさま。「維葉莫莫=維れ葉莫莫たり」〔詩経・周南・葛覃〕

語法

①「なし」とよみ、「~ない」と訳す。否定の意を示す。「吾楯之堅、莫能陥也=吾が楯の堅きこと、よく陥すもの莫(な)し」〈私の楯のがんじょうなことは、どんな物でも突き通せる物はない〉〔韓非子・難一〕

②「なかれ」とよみ、「~するな」と訳す。禁止・命令の意を示す。「酔臥沙場君莫笑=酔うて沙場に臥(ふ)すとも君笑ふこと莫(な)かれ」〈酔って砂漠の上に倒れ伏せても、君よ笑わないでおくれ〉〔王翰・涼州詞〕

③「莫不~」は、「~ざるはなし」とよみ、「~しないものはない」と訳す。二重否定。「天下莫不称君之賢=天下君の賢を称せざる莫(な)し」〈天下の誰一人として殿の賢明さをたたえぬ者はございません〉〔史記・刺客〕▽「無不~」も、「~ざるはなし」とよみ、意味・用法ともに同じ。

④「莫非~」は、「~(に)あらざるはなし」とよみ、「~でないものはない」と訳す。二重否定。「尺地莫非其有也、一民莫非其臣也=尺地もその有に非(あら)ざるは莫(な)く、一民もその臣に非ざるは莫し」〈一尺の土地でも紂王のものでないものはなく、一人の人民でも紂王の臣下でない者はない〉〔孟子・公上〕▽「無非~」も、「~(に)あらざるはなし」とよみ、意味・用法ともに同じ。

⑤「~莫如(若)…」は、「~、…(する)にしくはなし」とよみ、「~は、…(するの)がいちばんよい」と訳す。比較して優劣を判断する意を示す。「知臣莫如君=臣を知るは君に如(し)くは莫(な)し」〈臣下を知ること主君に優るものはない〉〔史記・斉太公〕

  1. 「~莫…焉」は、「~これより…なるはなし」とよみ、「~より…なものはない」と訳す。比較の意を示す。「晋国天下莫強焉=晋国は天下これより強きは莫(な)し」〈天下に晋より強い国はない〉〔孟子・梁上〕
  2. 「莫大(バクダイ)」は、「莫大焉=これより大なるはなし」がもともとの用例。「反身而誠、楽莫大焉=身に反して誠なれば、楽しみこれより大なるは莫(な)し」〈我が身にふり返ってみてうそがない心ならば、楽しみがこれより大きいことはない〉〔孟子・尽上〕

字通

茻(げう)+日。草間に日が沈むときの意で、(暮)の初文。莫が否定詞などに使われ、さらに日を加えて暮となった。〔説文〕一下に「日且(まさ)に冥(く)れんとするなり」とあり、莫・冥(めい)は双声。金文の〔晋公𥂴(しんこうてい)〕「來王せざる莫(な)し」のように、否定詞に用いる。否定詞の用法は、靡・末・無・(亡)・罔・(蔑)などと声近く、通用の義。金文には日暮の意の例がなく、亞(亜)字形中に莫をしるして、墓の意を示したかとみられる用例がある。

訓義

ひぐれ、くれかた、よる。くらい、おそい。むなしい、さびしい。漢と通じ、ひろい、しずか。ない、なかれ、打ち消しに用いる。

大漢和辞典

日暮れ。夜。遅い。若い。菜の名。あるいは暮に作る。なし。むなしい。さびしい、しづか。広い、大きい。つとめる。したふ。けずる、さる。ちる、しく。おそれる。さだまる。わるい(用例で里仁篇の章をこの義とする)。はかる。病む、やます、やまひ。うすかは。ひきまく、まくばり。諡。姓。徳が正しくて和にかなふをいふ。むなしい。

方(ホウ・4画)

論語 方 金文
不𡢁簋・西周末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はpi̯waŋ(平)。平声、陽-奉の音は不明。

学研漢和大字典

論語 方 篆書 論語 鋤
(篆書)

左右に柄の張り出たすきを描いた象形文字で、←→のように左右に直線上に伸びる意を含み、東←→西、南←→北のような方向の意となる。傍(両わき)-妨(左右に手を張り出してじゃまする)-防(左右に張り出た堤防)-房(左右に張り出たわき屋)などと同系のことば。並(左右にならぶ)とも縁が近い。また、方向や筋道のことから、方法の意を生じた。

語義

かた、起点の両側から←→のように伸びた直線の向き。行くさき。領域としてのくに、国土。ならべる。くらべる。いかだ。(きまりを)やぶる。しかた、やりかた。薬の調合のしかた。技術やわざ。不老長生の術。←→のように直線的に張り出ている。四角、四角い、四角い板。人として行うべきまっすぐな道。数学で二乗した積のこと。(ちょうどその時に)あたる。まさに。はじめて。当てもなく出歩く。〔国〕かた、人を直接にさすことをさけ、その人に近い方角でその人を指す敬語。ころ。

字通

論語 方
架屍かしの姿。横にわたした木に、人を架した形。これを境界の禁呪とするので、外方・辺境の意になる。〔説文〕八下に「併せたる船なり。兩舟の、頭をむすびたる形に象る」と舟の意とし、重文として汸を録する。卜辞に外邦を土方、馬方のようにいい、遠方・方位・外邦の意となる。放逐の儀礼は方(架屍)をつ形。𠌝(微)・徴(懲)・きょうなど、みな人を殴つ呪儀を示す字である。

論語 方 字解
訓義

かた、四方、方角。遠方に対する呪儀、さらしもの、祭梟さいきょう。とつくに、外方、異族のくに。みち、方法、手段、わざ、てだて。いかだ、もやい舟。ならぶ、くらべる、たぐう、しわける、ひとしい。旁と通じ、かたわら、あまねく。放と通じ、ほしいまま、はびこる。まさに、あたる、はじめて。

大漢和辞典

象形。省文の象形である。下反文は二つの舟を並べて一つとした形の省文、上半分は二つの舟の頭を一処に総べくくった形。説文に両舟の省にて頭を総ぶるの形に象ると解している所以である。並べた船。ならべる意。引伸して比方の方、方正・方円・方向の方に用い、又、仮借して防・旁・傍・甫・法・望・妨・房・横・当等に用い、転注・仮借の用法が多い。

意味

ならべる。もやい舟、ならんだ舟。いかだ、いかだする。くらべる。わける。たぐい。たぐえる。ひとしい。角。地。正しい。板、ふだ。かど。四方。かたわら。かた、方角。ところ。くに。祭りの名。のり、つね、みち、宜しいこと。てだて。わざ。薬の調合。向かう。帰するところ。出す。さからう。しばる。ほしいまま。はびこる。めばえ。よこ。行虫。ようす。つつみ。部屋、家。まさに。あたる。大きい。たもつ。はじめ。為す。ある数の自乗。さまよう。そしる。上代の地名。姓。

邦(ホウ・7画)

論語 邦 金文
大盂鼎・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はpŭŋ(平)。

→「」も参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。左側の字(音ホウ)は、△型の穂の形。邦は、それを音符とし、邑(領地)を加えた字。盛り土をした壇上で領有を宣言したその領地。また、国境に盛り土をして封じこめた領地のこと。
封(△型に土を盛ること)と同系。類義語のは、域(イキ)と同系で、区画して限った領域のこと。

意味

  1. {名詞}くに。もと、盛り土(封土)をして壇をつくり、その上で、天子や諸侯が神々に領有を宣言したその領域。天子から領有を認められた諸侯の領土。「邦国是有=邦国を是れ有つ」〔詩経・魯頌・罘宮〕
  2. {名詞}くに。転じて、大きな領土をもつくにのこと。▽もと、貴族の領地を「家」「邑(ユウ)」といったのに対する。また、秦が戦国時代に本国以外の国を呼んだ語。統一後に旧本国以外の地域を呼んだ語。《類義語》国。「友邦」「邦有道則仕=邦に道有れば則ち仕ふ」〔論語・衛霊公〕
  3. 《日本語での特別な意味》日本人が、自国に関する事柄を表すのに用いる。「邦字新聞」。

字通

形声、声符はほう。〔説文〕六下に「國(国)なり」とし、前条の邑字条にも「国なり」とあって同訓。金文の字形は土主(訳者注。神が宿る土盛)の上に若木を植えて社樹(訳者注。神の宿る木)を示し、旁らに邑を加える。すなわち封建の象で、建邦のことをいう。〔周礼、天官、大宰、注〕に大なるを邦、小なるを国というとするが、邦は封建、はもと或に作り、城郭と戈、すなわち武装都市をいう字である。〔説文〕古文の字は圃の初文であるらしく、〔魏石経、古文〕にみえない字である。

訓義

  1. くに、封建によるくに、その領域。
  2. みやこ、社稷のあるところ。
  3. 封と通じ、封ずる。

防(ホウ・7画)

初出は前漢の篆書。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はbʰi̯waŋ(平)。同音に、坊、魴”おしきうお”。「ボウ」は呉音。

学研漢和大字典

会意兼形声。方は、左右に柄のはり出たすきを描いた象形文字。防は「阜(積んだ土)+(音符)方」で、中心点から左右に土を長くつみ固めて、水流をおさえる堤防のこと。方向の方(左右にはり出す)・妨(ボウ)(左右に手をはり出して通さない)・房(ボウ)(母屋の左右にはり出たわき屋)・坊(本堂の左右に出た土べいや小室)などと同系。類義語の禦(ギョ)は、じゃまをしてふせぐこと。拒(キョ)は、間をあけて近よせないこと。「ふせぐ」「ふせぎ」は「禦ぐ」「禦ぎ」とも書く。

語義

  1. {動詞}ふせぐ。中心から両方にはり出して、来るものを左右にはり出した線でおさえふせぐ。《類義語》妨・禦(ギョ)・拒。「予防」「防之未然=これを未然に防ぐ」「防其邪物=其の邪物を防ぐ」〔礼記・祭統〕
  2. {名詞}ふせぎ。侵入や破壊をふせぐ備え。「辺防(国境の備え)」「河防策(黄河のはんらんをふせぐ策)」。
  3. {動詞・名詞}くらべる。ならぶ。匹敵するもの。▽委(ボウ)に当てた用法。「維此仲行、百夫之防=維れ此の仲行は、百夫之防」〔詩経・秦風・黄鳥〕
  4. {名詞}つつみ。左右に長くはり出して、水流をおさえるつつみ。《類義語》堤。「堤防」「防有鵲巣=防には鵲の巣有り」〔詩経・陳風・防有鵲巣〕
  5. {名詞}左右にはり出したついたてや、へい。《類義語》屏(ヘイ)。
  6. 《日本語での特別な意味》「周防(スオウ)」の略。「防州」。

字通

[形声]声符は方(ほう)。方は架屍の象、境界の呪鎮とする祭梟(さいきよう)(首祭)を示す。𨸏(ふ)は神の陟降する聖梯であるから、防とは聖域を呪鎭によって守護する意である。〔説文〕十四下に「隄(てい)(堤)なり」とし、〔周禮、地官、稻人〕に「防を以て水を止む」とあって、池隄をいう。〔説文〕重文の字は埅に作り、下に土を加える。土は社主の意であろう。次条に「隄は唐なり」とあり、〔爾雅、釈宮〕に「廟中の路、之れを唐と謂ふ」とあり、隄唐ともいう。〔逸周書、作雒解〕の大廟明堂の制に隄唐の名がみえ、聖域の施設に名づける。〔説文〕のいう隄も隄唐の意であろう。あるいはお土居(どい)のようなもので、都城の都は堵をめぐらし、堵は呪符の書を埋めたお土居である。

朋(ホウ・8画)

論語 朋 金文
中作且癸鼎・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はbʰəŋ(平)。

学研漢和大字典

象形文字。数個の貝をひもでつらぬいて二すじ並べたさまを描いたもの。同等のものが並んだ意を含み、のち肩を並べたとものこと。並や併(二つ並べ合わす)と縁が近い。また倍(二つ並ぶ→二ばい)と同系のことば。

語義

  1. {名詞}とも。対等の姿で肩を並べたともだち。《類義語》友。「朋友」「有朋自遠方来=朋有り遠方より来たる」〔論語・学而〕
  2. {名詞}なかま。いっしょに組んだなかま。《類義語》党。「朋党(ホウトウ)」「朋比為奸=朋比して奸を為す」「武王之臣三千人、為一大朋=武王の臣三千人、一大朋を為す」〔欧陽脩・朋党論〕
  3. 「無朋(ムホウ)・(ホウナシ)」とは、「無比」「無双」と同じで、比べる相手のないほど、けた違いに大きいこと。
  4. {名詞}古代、貝を宝や通貨として用いていたとき、一組五つずつつないで二組並べた貝のこと。「錫我百朋=我に百朋を錫ふ」〔詩経・小雅・菁菁者莪〕

朋 古文
(古文)

字通

[象形]貝を綴った形。一連二系。金文の図象にこれを荷う形のものがあり、一朋一荷の量で宝貨とされた。金文の賜与に「貝十朋」「貝三十朋」を賜う例があり、青銅彝器を作るのに十数朋を費やしたという器銘の例もあって、貝貨として通用した。

論語 風 甲骨文
「風」(甲骨文)

〔説文〕鳥部四上の鳳字条に「神鳥なり。天老曰く、鳳の象なり」、また朋の字形をあげて「古文鳳、象形。鳳飛びて群鳥従うこと万を以て数う。故に以て朋党の字と為す」という。卜文・金文において、朋は貝朋、鳳は風の初文、形義ともに全く異なる字である。金文の朋友の字は倗友に作る。貝の一連二系の関係を、人に及ぼした字形で、倗友とは同族間において年齢の相近いものをいう。

訓義

(1)貝のつづり、一連二朋。通貨に用いた。(2)朋友の字は倗友。倗と通じ、とも。同族の同輩行の者たち、ともだち、ともがら。(3)くみ、なかま、たぐい、むれ。(4)貝朋、貝貨。(5)鵬と通じ、鳳。

大漢和辞典

朋 大漢和辞典
朋 大漢和辞典

放(ホウ・8画)

放 金文
多友鼎・西周晚期

初出は西周末期の金文。カールグレン上古音はpi̯waŋ(上/去)。

学研漢和大字典

会意兼形声。方は、両側に柄の伸びたすきを描いた象形文字。放は「攴(動詞の記号)+(音符)方」で、両側に伸ばすこと。緊張や束縛を解いて、上下左右に自由に伸ばすこと。房(母屋(オモヤ)の左右に伸びたわきべや)・妨(両手を左右に伸ばして行く手をふさぐ)と同系。類義語に啓・肆。異字同訓に離。「抛」の代用字としても使う。「放棄・放物線」。

語義

  1. {動詞}はなす。はなつ。締めていたものを、解きはなす。束縛していたものをはなして自由にさせる。「解放」「放鷹(ホウヨウ)」。
  2. {動詞}はなつ。四方に広げる。上下左右に広がる。平らにのびる。《対語》⇒縮(ちぢむ)。「放散」「放踵=踵を放つ」。
  3. {動詞}はなつ。遠くへはなす。追いやる。「追放」。
  4. {動詞}いたる。四方に広がって、…まで届く。「放乎四海=四海に放る」〔孟子・離下〕
  5. {動詞}まかす。ほしいままにする(ほしいままにす)。したいほうだいにさせる。思いのままにまかせる。「放任」「放縦(かって気まま)」「放蕩(ホウトウ)(気ままに遊び歩く)」「放於利而行=利に放せて行ふ」〔論語・里仁〕
  6. {動詞}まとめてあった物を四方に散らす。持っているものを手ばなして出す。「放賑(ホウシン)(救済金を出す)」「放出」。
  7. {動詞}《俗語》おく。握っていた力を抜き、または、手をはなして、物をおく。下におく。「安放(おいてすえる)」「放念(安心する)」「沈吟放撥挿絃中=沈吟しつつ撥を放き絃中に挿む」〔白居易・琵琶行〕
  8. {動詞}ならべる(ならぶ)。中心線の左右に張り出してならべる。▽委・舫に当てた用法。平声に読む。「放舟=舟を放ぶ」。
  9. {動詞}ならう(ならふ)。まねる。また、みならう。▽上声に読む。倣(ホウ)に当てた用法。

字通

[会意]方+攴(ぼく)。方は架屍の形。これを殴(う)って邪霊を放逐する共感呪術的な呪儀。〔説文〕四下に「逐ふなり」と訓し、方(ほう)声とするが、方は殴撃を加える対象物である。その架屍に頭部の形を加えたものは敫(きよう)で、徼の初文。巫女を殴つものは微、長髪の人を殴つものは徴・傲。邪霊を微(な)くし、徼(もと)めるところを徴するもので、敵に傲る相似た呪法をいう。みな古代祭梟(さいきよう)(首祭)の俗を示す字である。

灋/法(ホウ・8画)

法 金文
大克鼎・西周末期

初出は西周早期の金文。カールグレン上古音はpi̯wăp(入)。論語における「法」も参照。

学研漢和大字典

音 pıuǎp – pıuʌp – fa – fa〔fǎ〕。「水+廌(しかと馬に似た珍しい獣)+去(ひっこめる)」の会意文字で、池の中の島に珍獣をおしこめて、外に出られなうようにしたさま。珍獣はそのわくのなかでは自由だが、そのわく外には出られない。ひろくそのような、生活にはめられたわくをいう。その語尾がmに転じたのが範(bıǎm)で、これもわくのこと。▽促音語尾のpがtに転じた場合は「ホッ」「ハッ」と読む。規はコンパスのことで、きまった標準。律は、即(くっつく)と同系のことばで、いつもそれにくっついて離れてはならないきまりのこと。

語義

  1. {名詞}のり。人々の生活を取り締まるために定めたわく。おきて。《類義語》律。「法律」「犯法=法を犯す」「与父老約法三章耳=父老と法三章を約するのみ」〔史記・高祖〕
  2. {名詞}のり。きまったやり方。「筆法」「文法」「用兵之法」。
  3. {名詞}刑罰の定め。「正法(死刑に処すること)」。
  4. {名詞}模範。手本。「法帖(ホウジョウ)(名人の書法を示す手本)」。
  5. {名詞}《仏教》仏教の真理。「説法」。
  6. {動詞}のっとる。手本としてのきまったわくに従う。▽訓の「のっとる」は「のり+取る」の音便により転じたことば。「文王不足法与=文王法に足らざる」〔孟子・公上〕
  7. {名詞}数学で、割り算の割るほうの数。除数。
  8. {単位詞}《俗語》フランスの貨幣の単位。フラン。
  9. 《俗語》「法国(ファクオ)」とは、フランスのこと。
  10. 《日本語での特別な意味》インド・ヨーロッパ語で、話し手の表現態度が動詞の語形にあらわれたもの。「直接法」。

字通

[会意]正字は灋に作り、水+たい+去。廌は神判に用いる神羊で解廌かいたい、また獬豸かいちと呼ばれる獣の形。去は大+𠙴きょの会意字で、大は人、𠙴は獄訟のとき自己詛盟した盟器の器の、蓋を取り去った形。敗訴者の盟誓は、虚偽として蓋を取り去って無効とされ、その人(大)と、また解廌もともに水に投棄され、全て廃される。金文に「が命をはい(廃)することなかれ」のように、灋を廃の意に用いる。法はその廌を省いた簡略字である。〔説文〕十上に「𠜚(刑)なり。之を平らかにすること水の如し。水に従ふ。廌は不直なる者に觸れて之れを去らしむる所以なり。廌去に従ふ」(段注本)とするが、去は敗訴者である。灋字の構造は、古代における神判の方法を示すもので、「大祓おおはらえ」の方法と似ている。春秋のとき、伍子胥ごししょが呉王夫差を諌めて、鴟夷しい(皮袋)に包んで海に投げ込まれた話、越王に仕えた范蠡はんれいが、亡命して海上に逃れるとき、自ら鴟夷子皮と名を改めた話、孔子が斉を去るとき、世話になった田常の門に鴟夷を立てて去った話などがあり、その鴟夷は法による廃棄、また自己投棄、すなわち亡命を示す方法であった。のち法は刑法・法制の意となり、法式・法術の意となる。

房(ホウ・8画)

初出は楚系戦国文字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はbʰi̯waŋ(平)。同音に坊、魴”おしきうお”、同音同調で定州竹簡論語に使用の「防」初出は前漢の篆書。論語の時代に存在しない。「ボウ」は呉音。

学研漢和大字典

会意兼形声。方とは、両側に柄の張り出たすきを描いた象形文字。房は「戸(いえ)+(音符)方」で、おもやの両側に張り出た小べやのこと。旁(ボウ)(両側に張り出したはし)・傍(わきに張り出た両側)などと同系。類義後に家。

語義

fáng

  1. {名詞}へや。おもやの両側に張り出した小べや。また、転じて広く、へやのこと。「東房」「洞房(ドウボウ)(新婚夫婦のへや)」。
  2. {名詞}ねや。ねま。夫婦の寝室。《類義語》閨(ケイ)。「閨房(ケイボウ)(ねま)」「宴専席、寝専房=宴には席を専らにし、寝には房を専らにす」〔陳鴻・長恨歌伝〕
  3. {名詞}いえ(いへ)。住居。「房屋」「山房(山の家)」。
  4. {名詞}大家族の中のわかれた家族。「次房(次男の一家)」。
  5. {名詞}全体の中が小さい部分にわかれたもの。「蜂房(ホウボウ)(はちの巣)」「蓮房(レンボウ)(はすの実)」「箭房(センボウ)(矢づつ)」。
  6. {名詞}二十八宿の一つ。規準星は今のさそり座にふくまれる。そい。
  7. {名詞}科挙(官吏登用試験)のさい受験者がひとりずつはいる小べや。「房官(科挙の試験官)」。

páng

  1. 「阿房宮(アボウキュウ)」とは、秦(シン)の始皇帝がたてた宮殿の名。今の陝西(センセイ)省咸陽(カンヨウ)市にあった。
  2. 「房皇(ボウコウ)」とは、右に左に行きつ戻りつする。さまよう。《同義語》蹴徨・彷徨。
  3. 《日本語での特別な意味》
    ①ふさ。両はし、または先の方にぶらりと垂れたもの。「ぶどうの房」「十手の房」。
    ②「安房(アワ)」の略。「房州」。

字通

[形声]声符は方(ほう)。方に区画されたものの意がある。〔説文〕十二上に「室、旁(かたは)らに在るなり」と旁の意を以て解する。堂房はもと儀礼を行うところであったが、のち房室の意となり、個室の意となり、独房のようにも用いる。大きな俎(まないた)の意に用いるのは、俎の下の跗足を房とよぶからである。

寶/宝(ホウ・8画)

宝 金文
『字通』所収金文

初出は甲骨文カールグレン上古音はp(上)論語語釈「葆」も参照。

学研漢和大字典

会意。「宀(かこう)+玉+缶(ほとぎ)+貝(かいのかね)」で、玉や土器や財貨などを屋根の下に入れてたいせつに保存する意を示す。▽ハウという字音仮名は誤り。保(ホ)・(ホウ)・包(たいせつにつつむ)と同系。類義語に財。旧字「寶」の草書体をひらがな「ほ」として使うこともある。

語義

  1. {名詞}たから。たいせつに保存する珍しい物。「爾以玉為宝=爾は玉を以て宝と為す」〔蒙求〕
  2. (ホウトス){動詞・形容詞}たいせつにする。宝物のように珍重する。たいせつな。《類義語》保。「宝珠玉者殃必及身=珠玉を宝とする者は殃必ず身に及ぶ」〔孟子・尽下〕
  3. {名詞}唐代以降、天子の印のこと。▽秦(シン)・漢代には印・璽という。「天子之宝(テンシノホウ)」。
  4. {名詞}通貨のこと。「元宝(大きい銀貨)」「通宝」。
  5. {形容詞}天子、また他人に関するものを尊んでいうことば。
  6. 《俗語》「宝貝(パオペイ)」とは、たいせつな子どもをいう。

字通

[形声]旧字は寶に作り、缶(ふ)声。宀(べん)は廟所。廟所に玉や貝を供薦する形。〔説文〕七下に「珍なり」と訓する。彝器の銘文に「寶ソン 外字 阝奠彝(はうそんい)を作る」というように、祭器をいう。のち財宝、また尊称として宝位・宝祚(ほうそ)のように用いる。字はまた宲に作り、〔説文〕上文の宲字条に〔書、顧命〕の「陳宲赤刀」の文を引く。今本は「陳寶」に作る。保・寶は通用、金文の〔倗生𣪘(ほうせいき)〕に「寶𣪘」を「保𣪘」に作る。また葆を「葆亀(ほうき)」のように用い、葆も通用の字である。

封(ホウ・9画)

論語 封 金文
六年召伯虎簋・西周末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はpi̯uŋ(平)。去声の音は不明。「フウ」は呉音。

学研漢和大字典

会意兼形声。原字は「土+(音符)丰(ホウ)」。丰はいねの穂先のように、△型にとがって上部のあわさったものを示す。のち、「土二つ+寸(て)」と書き、△型に土を集め盛った祭壇やつかを示す。四方から△型によせ集めて、頂点であわせる意味を含む。峰(△型のみね)・縫(寄せあわせてぬう)・豊(盛りあわせ)と同系。「密封する」の意味では「フウ」と読む。

語義

  1. (ホウズ){動詞}領土を与えて領主にする。▽もと、領主となった王が、もりつちをした祭壇の上で天地の神に領有を告げたことを「封禅(ホウゼン)」といったのに基づく。「封建」「世世為楚将封於項=世世楚の将と為り項に封ぜらる」〔史記・項羽〕
  2. {名詞}領地。《類義語》邦。「封域(ホウイキ)」「襲封(シュウホウ)(大名のあとつぎとして領地をもらう)」。
  3. {名詞}もりつち。天や泰山をまつるため四方の土を集めて盛った祭壇。また、つか。「蟻封(ギホウ)(ありづか)」。
  4. {名詞}つか。はか。土を盛ったはか。「塋封(エイホウ)(墓地)」。
  5. {形容詞}もりつちのようにふっくらとして大きい。《類義語》豊。「封狐(ホウコ)(大きな狐(キツネ))」。
  6. (フウズ){動詞}あわせとじて、中が見えないようにする。「密封」「封印」「封府庫=府庫を封ず」〔史記・項羽〕
  7. {名詞・単位詞}あわせとじた手紙。また、手紙を数えることば。「行人臨発又開封=行人発するに臨みて又封を開く」〔張籍・秋思〕
  8. {名詞}上奏文。「一封朝奏九重天=一封朝に奏す九重の天」〔韓愈・左遷至藍関〕
  9. 《日本語での特別な意味》
    ①「封度」とは、ヤード・ポンド法の重さの単位のポンド。一ポンドは約四五三グラム。▽英語poundの音訳語。
    ②野球で、「封殺」の略。「三封」。
    ③野球で、相手チームに得点をやらないこと。「完封」。

字通

[会意]丰(ほう)+土+寸。金文の字形には、上の部分を田に作るものがある。土は土地神たる社主の形で、社(社)の初文。そこに神霊の憑(よ)る木として社樹を植えた。封建のとき、その儀礼によって封ぜられる。〔説文〕十三下に「諸侯を爵するの土なり。之に從ひ、土に從ひ、寸に從ふ。(寸は)其の制度を守るなり。公侯は百里、伯は七十里、子男は五十里」という。字は社樹を封植する形である。〔周礼、地官、封人〕に「凡そ國を封ずるには、其の社稷(しやしよく)の壝(ゐ)(壇、お土居の類)を設け、其の四疆を封ず」とあり、〔逸周書、作雒解〕にその具体的な方法についての記述がある。すなわち封建のときには、国の中央に大社を建て、壝の四方に青・赤・白・驪(り)(くろ)の土をおき、中央の黄土と合わせて白茅に苴(つつ)み、これを土封する。五行配当の思想を含むが、なお古義を存するところがあろう。周初の〔宜侯夨𣪘(ぎこうそくき)〕は、虎侯夨を宜地に封建する儀礼をしるし、「王、宜の宗社に立ちて南郷(嚮)す。王、虎侯夨に命じて曰く、外字 ああ(ああ)、宜に侯となれ」と冊命(さくめい)し、礼器や土地・人民を賜与することをいう。その儀礼が、その地の宗社において行われていることが注意される。

風(ホウ・9画)

論語 風 甲骨文
(甲骨文)

初出は甲骨文。カールグレン上古音はpi̯ŭm(平)。「フウ」は呉音。

学研漢和大字典

会意兼形声。風の字は大鳥の姿、鳳の字は大鳥が羽ばたいてゆれ動くさまを示す。鳳(おおとり)と風の原字はまったく同じ。中国ではおおとりをかぜの使い(風師)と考えた。風はのち「虫(動物の代表)+(音符)凡(ハン)・(ボン)」。凡は広く張った帆の象形。はためきゆれる帆のようにゆれ動いて、動物に刺激を与えるかぜをあらわす。帆(かぜをうけてはためくほ)・嵐(ラン)(山かぜ)・鵬(ホウ)(おおとり)・鳳(ホウ)(おおとり)などと同系。「諷」の代用字としても使う。「風刺」▽付表では、「風邪」を「かぜ」と読む。▽「ふり」は「振り」とも書く。「人の振り」「振りの客」。

語義

  1. {名詞}かぜ。ゆれ動く空気の流れ。「清風」「八風(季節ごとのかぜ)」「風土」「風雨淒淒(セイセイ)」〔詩経・鄭風・風雨〕
  2. {名詞}ゆれる世の中の動き。ゆれ動いて変化する動き。「世風」「風潮」。
  3. {名詞}姿や人がらから発して人心を動かすもの。「風姿」「風格」。
  4. {名詞}そこはかとなくただようおもむき。けしき。ほのかなあじわい。「風光」「風格」。
  5. {名詞}ゆかしいおもむき。上品な遊び。道楽。「流風余韻」「風雅」。
  6. {名詞}大気の動き、気温・気圧などの急変によっておこる病気。「風疾」「風者百病之長邪」〔黄帝内経・風論〕
  7. {名詞・形容詞}ショックによって気のふれる病気。頭が変になったさま。《同義語》⇒瘋。「風莖(フウテン)(=瘋莖)」。
  8. {名詞}歌ごえ。民謡ふうの歌。転じて、おくにぶり。ある地方のならわし。▽「詩経」では風・雅・頌(ショウ)の三種に詩をわけ、各地の民謡を風という。「国風」「風俗」。
  9. (フウス){動詞}かぜに吹かれる。かぜにあてる。▽去声に読む。「風乎舞脛=舞脛に風す」〔論語・先進〕
  10. (フウス){動詞}かぜが物を動かすように、ことばで人の心をゆり動かす。それとなく人を教える。感化する。▽去声に読む。《同義語》⇒諷。「風刺(=諷刺)」「風教(教えや人格で他人を動かしてかえること)」。
  11. (フウス){動詞}動物が発情する。さかりがつく。▽春・秋の風や大気の変化によって生理も変動することから。「馬牛其風=馬牛其れ風す」〔書経・費誓〕
  12. 《日本語での特別な意味》ふり。習慣・ふるまい。

字通

[形声]声符は凡(はん)。卜文の風の字形は、鳳形の鳥の形。その右上に凡を声符として加えることがある。〔説文〕十三下に「八風なり」として方位の風名をあげ、「風動いて蟲生ず。故に蟲は八日にして化す。虫に從ひ、凡聲」とするが、卜文・金文に虫に従う形はない。卜辞に四方の方神と、その使者たる風名をしるすものがあり、これを祀る儀礼があった。〔山海経〕にもそのことがみえ、〔書、尭典〕にみえる羲・和(か)の牧民の説話は、その方神・風神の名から転訛したものである。〔説文〕にみえる鳥名にも、雉(きじ)の十四種、雇(こ)の九雇など、古い風神の伝承を残すものがある。風は風神として、鳥形の神とされた。風神がその地に風行して風気・風土をなし、人がその気を承けて風俗・気風・風格をなす。さらに風情・風教のように、その語義は幅広いものとなった。字はまた飌に作る。

袍(ホウ・10画)

初出は前漢の隷書。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音は声母のbʰ(平)のみ。藤堂上古音はbog。

学研漢和大字典

会意兼形声。「衣+(音符)包(すっぽり外からつつむ)」。抱(外からつつむ)と同系。「うえのきぬ」は「表衣」とも書く。

語義

  1. {名詞}わたいれ。ぬのこ。「褞袍(オンポウ)」。
  2. {名詞}からだ全体をすっぽりつつむ長い下着。
  3. {名詞}からだを外からすっぽりつつむ上着。外衣。外套(ガイトウ)。「戦袍(センポウ)(戦士が着る外衣)」。
  4. 《日本語での特別な意味》ほう。うえのきぬ(うへのきぬ)。昔、衣冠・束帯のときに着た上着。いろいろな模様をつけ、位階によって色が異なった。

字通

[形声]声符は包(ほう)。〔説文〕八上に「襺(わたいれ)なり」とあり、綿入れの服をいう。襺(けん)は繭(けん)に従い、絹わた。〔論語、子罕〕に「敝(やぶ)れたる縕袍(うんぱう)を衣(き)て、狐貉(こかく)(の裘(かわごろも))を衣たる者と立ちて恥ぢざる者は、其れ由(いう)(子路)なるか」とあり、縕袍とはどてらの類である。

崩(ホウ・11画)

初出は前漢の隷書。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音は不明(平)。王力上古音はpəŋ(平)。同音は存在しない。

学研漢和大字典

会意兼形声。朋(ホウ)は、二つ並んだ貝飾りの姿。二つ並んでくっつく意は、朋友の朋(仲よくくっついた友達)に残るが、二つに離れる意をも含む。崩は「山+(音符)朋」で、△型の山が両側にくずれ落ちること。背(ハイ)(そむく)・倍(二つになる)などと同系。類義語に死。付表では、「雪崩」を「なだれ」と読む。

語義

  1. {動詞}くずれる(くづる)。△型のものが、両側にくずれ落ちる。また、まとまったものがばらばらになる。《類義語》壊(カイ)。「崩壊」「三年不為楽、楽必崩=三年楽を為さざれば、楽必ず崩れん」〔論語・陽貨〕
  2. (ホウズ){動詞}天子が死ぬ。《類義語》薨(コウ)(諸侯や大臣が死ぬ)。「尭崩三年之喪畢=尭崩じて三年之喪畢はる」〔史記・五帝〕

字通

[形声]声符は朋(ほう)。〔説文〕九下に「山壞(やぶ)るるなり」とあり、山崩れをいう。そのとどろく音の擬声語。〔説文〕古文の字は𨸏(ふ)に従い、神の陟降するとされる聖地の土崩をいう語であろう。〔詩、小雅、天保〕「南山の壽の如く 騫(か)けず崩れず」は祝頌の辞。崩はまた天子の死去にもいう。

匏(ホウ・11画)

初出は後漢の説文解字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はbʰ(平)。同音無数。王力系統の同音に庖”台所”、咆”ほえる”、炮”あぶる”、炰”焼く”、鞄”皮革職人”(以上平)、鮑”塩漬け”、鞄(以上上)。『大漢和辞典』で音ホウ訓ひさごに瓟(初出・上古音不明)、苞p(平)があり、苞の初出は甲骨文。論語時代の置換候補となる。

苞 古文
「苞」(古文)

学研漢和大字典

会意兼形声。夸(カ)は、瓜(カ)に当てたもので、うりのこと。匏は「夸(うり)+(音符)包」で、ふっくらと包むような形をしたうりのこと。

語義

  1. {名詞}ひさご。ふくべ。うりの一種。食べられないが、かわかして酒の入れ物としたり、縦に二つに切ってひしゃくに用いたりする。ひょうたん。「吾豈匏瓜也哉、焉能壓而不食=吾(われ)あに匏瓜ならんや、焉(いづ)くんぞよく壓(かか)りて食らはれざらん」〔論語・陽貨〕
  2. {名詞}笛のたぐいの楽器。ひょうたんを台座に用いてつくる。

字通

[形声]声符は包(ほう)。〔説文〕九上に「瓠(ひさご)なり」とし、「其の、物を包藏すべきを取るなり」という。夸(こ)はものを刳(く)りぬく用具。瓜の中を刳りぬいて、匏壺とする意である。

彭(ホウ・12画)

初出は甲骨文。カールグレン上古音はbʰăŋ(平)。

学研漢和大字典

会意。「鼓(つづみ)の字の左がわ+彡(模様、しきりに)」で、太鼓の張った腹をしきりにたたいてぱんぱんと音をたてることを示す。膨張の膨と同系。

語義

ホウ(平péng)

{動詞}ふくれる(ふくる)。ぱんぱんに張りつめる。《類義語》膨(ボウ)。「彭張(ボウチョウ)(=膨張)」。
ま「彭彭(ホウホウ)」とは、張った太鼓や鼓をぽんぽんと鳴らす音の形容。

ホウ(平bāng)

「彭彭(ホウホウ)」とは、張り切って盛んなさま。また、数が多くて盛んなさま。「行人彭彭=行人は彭彭たり」〔詩経・斉風・載駆〕

字通

[会意]壴(こ)+彡(さん)。壴は鼓の形。彡は音や色彩、充実した状態などを示す記号で、彭は音、彤(とう)・彩は色、穆は穀実の熟して、穂先のひげのある形。ただし彭の卜文・金文の字形は振動音を示す断続の線記号であり、彡ではない。〔説文〕五上に「鼓の聲なり」とし、「壴壴に從ひ、彡に從ふ」とするが、初形は彡に従うものではない。

報(ホウ・12画)

報 金文
作冊夨令簋・西周早期

初出は西周早期の金文。カールグレン上古音はp(去)。

学研漢和大字典

会意。「手かせの形+ひざまずいた人+て」で、罪人を手でつかまえてすわらせ、手かせをはめて、罪に相当する仕返しを与える意をあらわす。転じて広く、し返す、お返しの意となる。褒美(ホウビ)の褒(善行に対するお返し)・復(かえる、かえす)と同系。また、復は報の入声(ニツショウ)(つまり音)に当たる。類義語の酬は、もと杯のやりとりをすること。

語義

  1. (ホウズ){動詞}むくいる(むくゆ)。仕返し・お返しをする。罪に対して罰を与え、うらみに対して相手を懲らしめる。また逆に恩返しをする。「報恩」「以徳報徳=徳を以て徳に報ゆ」〔論語・憲問〕
  2. {名詞}むくい。お返し。罪に対するさばき、恩に対する礼など。「因果応報」「豈望報乎=あに報いを望まんや」〔史記・淮陰侯〕
  3. (ホウズ){動詞}告げ知らせる。▽もと、受けた命令に対して返答する。「報告」「使者還報=使者還り報ず」〔史記・荊軻〕
  4. {名詞}しらせ。「吉報」「情報」。
  5. {名詞}《俗語》新聞。

字通

[会意]㚔(じょう)+𠬝(ふく)。㚔は手のかせ。㚔を加えることを執という。𠬝は人を抑える形で屈服の象。〔説文〕十下に「罪に當る人なり。㚔に從ひ、𠬝に從ふ。𠬝は罪に服するなり」とあり、罪に対する報復刑をいう。金文に応報・報賞の意に用い、先祖の文徳を「文報」という。〔礼記、郊特牲〕「社に丘乘粢盛(しせい)を供するは、本に報じ始に反する所以(ゆゑん)なり」とみえる。報徳より報知の意となり、報復より報仇の意となる。すべて応報の関係をいう。

葆(ホウ・12画)

初出は秦系戦国文字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はp(上)。同音多数。『大漢和辞典』に「寶に通ず」という。寶p(上)初出は甲骨文論語語釈「宝」も参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。「艸+(音符)保(中につつみこむ)」。

語義

  1. {形容詞}草木がこんもりと茂るさま。
  2. {動詞}うちに隠して表面にあらわさない。「葆光(ホウコウ)」。
  3. {名詞}ふさふさした羽飾り。「羽葆(ウホウ)」。
  4. {動詞}たいせつに守る。《同義語》⇒保。《類義語》宝。
  5. {動詞}ほめる。《同義語》褒。

字通

(条目無し)

中日大字典

bǎo

  1.  〈文〉群がり生ずる.
  2.  〈文〉隠す.包む.
  3.  〈文〉保持する.〔永yǒng葆〕永く保つ.
  4.  〈姓〉葆(ほ)

新漢語林

形声。艹(艸)+保。

  1. 草木の群がりしげるさま。
  2. もと。根もと。群がりしげる草木の根もと。
  3. 野菜。
  4. ひこばえ。切った木の根株から生え出た芽。
  5. 羽かざり。車のおおいや旗ざおの先または、鼓の上につける。
  6. もり役。うば。また、天子の補佐役。=保。
  7. まもる。たもつ(保)。
  8. かくす。つつむ。
  9. むつき。おむつ。うぶぎ。
  10. たから。また、宝とする。
  11. とりで。=堡。

新字源

形声。艹(艸)+保。

  1. しげる。むらがる。草木が群がりしげる。
  2. ひこばえ。草木の芽生え。
  3. はねかざり。車のおおいや旗ざおの先につける羽かざり。「翟葆(てきほう)」
  4. つつむ。かくす。「葆光」(類)包・蔵。
  5. まもる。たもつ。「葆真」(類)保。
  6. とりで。「葆塞」(同)堡。
  7. たから。(同)宝。
  8. うぶぎ。子供を包む衣。(同)褓(ほう)・緥(ほう)。
  9. うば。保母。

飽(ホウ・13画)

論語 飽 甲骨文 論語 飽 古文
(甲骨文・古文)

初出は後漢の『説文解字』。カールグレン上古音は子音のp(上)のみ。藤堂上古音はpǒg。

この文字は論語時代の書体である金文では未発掘だが、上掲の通り、それ以前の甲骨文の出土があることになっている。ただし出典や年代が特定できない上、甲骨文と言うには線形が丸すぎる。甲骨文は骨や甲羅に刃物で刻んで書くから、線は直線にならないはずが無い。

部品の「包」に”みちる”の意はあるが、初出は戦国文字。

日本語音で同音の「馮」(カ音bʰi̯əŋ、藤音bɪəŋ)には”みちる”の語釈があり、金文も確認できるが、音通しない。同じく㤣、恲、䮾は『説文解字』にも記載が無い。龐(カ音不明、藤音blǔŋ)は甲骨文から存在するが、”みちる”の意では音がロウまたはルであり、音通しない。

豐(豊)はカ音pʰのみ、藤音p’ɪoŋで、置換候補と言いたい所だが、音通と断定できない。ゆえにこの文字=言葉は、孔子在世当時に無かったと思われる。

おそらく当時”食べあきる”には「猒」(エン)が使われ、こちらは金文の発掘があるが、その語義は脂身などがしつこくて”いやになる”の意で、腹一杯になって飽きることでは無かった。

それはそうだろう。か細い生産力しか無かった春秋時代、満腹して飽きることは中国人には想像が難しかった。だから当時の主食のアワは、たった1リットルで現在換算して1万円もした(論語顔淵篇11語釈)。換算には2018年の平均年収を使ったが、同年の米1リットル買い取り価格は、JAしまねHPによると、最高でも168円に過ぎない(米1リットル=833.3gで計算)。

当時の各穀物の収穫率(yield rate)は調べきれなかったが、中国の特に華北では、最近になるまでコメは栽培できず、論語の時代には小麦がようやく普及したが、依然主力の穀物はアワやキビ、大麦で、生産性の高いコウリャンが中国に入るのは、唐と宋の間、10世紀半ばに下る。

穀物が貴重だったのは秦漢帝国時代でも同じで、漢の儒者官僚がせっせと捏造した古文書集『書経』には、「政治の要点は八つ。まず食糧、次にお金。まつりごとや治水工事はその後」と洪範篇に書いてある。ちなみに捏造と断言できるのは、一つにはここに「お金」と書いてあるからで、貨幣らしい貨幣が中国に登場するのは、戦国時代になってからだ。

なお『学研漢和大字典』の編者である藤堂博士の『漢文概説』によると、「既」の甲骨文が”お腹いっぱい”の象形であると言う。

藤堂明保 既 甲骨文
旡(キ)は、腹いっぱいになって、おくびの出るさま。既はもと「皀(ごちそう)+(音符)旡」で、ごちそうを食べて腹いっぱいになること。限度まで行ってしまう意から、「すでに」という意味を派生する。

学研漢和大字典

会意兼形声。「食+(音符)包(中に物をつつみこむ、まるくふくれる)」。抱(まるくだきこむ)・泡(空気をつつんでまるくふくれたあわ)と同系。類義語に懕。「あきる」「あく」「あかす」「あき」は「厭きる」「厭く」「厭かす」「厭き」とも書く。

意味

  1. {動詞}あきる(あく)。腹いっぱい食べる。腹に食物がつまって、まるくふくれる。
  2. {動詞}あきる(あく)。あかす。満足する。満足させる。「既飽以徳=既に飽くに徳を以てす」〔詩経・大雅・既酔〕
  3. {動詞}あきる(あく)。味わいすぎていやになる。《類義語》厭(エン)。
  4. {副詞}あくまで。あきるまで。じゅうぶんに。たっぷり。

字通

「食+包」で、包は懐妊の意で、満ちあふれること。犬のいけにえを捧げ、神がそれに満足することを猒(エン)と言い、『説文解字』によれば飽は猒(あきる)だといい、『広雅』には「満ちる」だという。飽は包に食をともない、酒食に猒きて満ち足りること。


論語 飽 篆書論語 飽
(篆書)

*ただし『字通』には甲骨文を載せず、篆書と古文のみ載せる。甲骨文を見ると、豆=飯を盛ったたかつきに、上から蓋をかぶせている形に見える。これでもう結構、ということだろうか。

鳳(ホウ・14画)

論語 鳳 金文
鳳作且癸簋・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はbʰi̯ŭm(去)。

学研漢和大字典

会意兼形声。風・鳳のもとの字は、大鳥が羽ばたきするさまを描いた象形文字。風と鳳は同字。のち「大鳥の姿+(音符)凡(風にはためく帆)」。▽殷(イン)の人たちが風神として鳳をまつったことから、のち、めでたいしるしとなった。「大形の鳥」の意味の「おおとり」は「鵬」「鴻」「大鳥」とも書く。

語義

  1. {名詞}おおとり(おほとり)。聖人が世に出たときに、めでたいしるしとしてあらわれるという想像上の鳥。鳳凰(ホウオウ)。▽雄を鳳(ホウ)、雌を凰(オウ)という。
  2. {名詞}天子の車や宮殿をあらわすことば。「鳳車(ホウシャ)」「鳳城(ホウジョウ)」。

字通

[形声]声符は凡(はん)。卜文の字形には凡を加えないものがあり、その字は〔説文〕にみえる古文の字形に似ている。もと風の意に用い、卜文は鳥形に凡の声符を加える。風はこの鳳の飛翔によって生じ、四方の方神に、天馳せ使いとして仕える風神があり、四方の風神にそれぞれの神名があった。鳳が神鳥とされるのは、その伝承による。〔説文〕四上に「神鳥なり。天老曰く、鳳の象なり」としてその異相を列挙し、東方君子の国より出て、四海の外に翺翔(こうしよう)し、崐崘(こんろん)より西して弱水に羽を濯(あら)い、莫(くれ)に風穴に宿るという。四方風神のことは〔山海経〕にもみえ、また〔書、尭典〕に四方羲和(ぎか)の治とされるもののうちに、風神の名が残されている。瑞鳥鳳凰のことは〔詩、大雅、巻阿(けんあ)〕に「鳳皇鳴きぬ 彼の高岡に 梧桐生ず 彼の朝陽に」と歌われている。〔巻阿〕は〔万葉〕の吉野遊幸のような性質の詩篇である。

亡(ボウ/ブ・3画)

論語 亡 金文
叔家父簠・春秋早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はmi̯waŋ(平)。

学研漢和大字典

会意文字で、L印(囲い)で隠すさまを示すもの。あったものが姿を隠す、見えなくなるの意を含む。忘(心中からなくなる→わすれる)・芒(ボウ)(見えにくい穂先)・茫(ボウ)(見えない)などに含まれる。

語義

ボウ
  1. {動詞}ほろびる(ほろぶ)。ほろぼす。なくなる。「滅亡」「此亦天、亡秦之時也=此れ亦た天、秦を亡ぼす時なり」〔史記・項羽〕
  2. {動詞・形容詞}ない(なし)。あったものが姿を消す。なくなる。また、そのさま。転じて、死ぬ。《対語》⇒有。「亡父」「今也則亡=今也則ち亡し」〔論語・雍也〕
  3. {動詞}にげる(にぐ)。にげて姿を隠す。見えなくする。「亡命」。
  1. {動詞・形容詞}ない(なし)。《同義語》⇒無。

字通

[象形]死者の屈肢の形。〔説文〕十二下に「逃るるなり」とし、入+乚(いん)の会意字で、僻処ににげ隠れる意とするが、乏・巟(こう)などと同じく死者の象。巟はなおその頭髪を存する形である。无(む)は亡の異体字。死去の意より亡失の意となる。亡命者を亡人といい、亡命のときには死葬の礼を用いた。否定詞に用いるのは無・莫などと同じく、仮借の義である。

亻亡 外字(ボウ〔仮〕・5画)(妄)

初出は遅くとも前漢宣帝期の『定州竹簡論語』。カールグレン上古音は不明。「妄」の異体字とするとmi̯waŋ(去)。「妄」の初出は西周末期の金文。「亻亡 外字」は2020年現在のunicodeに存在しない。中国の壮(チワン)族の古文字、古壮文字にあり、漢語に直せば「些」の意という。

人偏の漢字に偽・佯があり、偽は人の手でつくりごとをしていつわること、佯は人の手で羊=様子を取り繕うこと、と『学研漢和大字典』に言う。「亡」は”かくす・かくれる”ことと言う。『大漢和辞典』は「亡」の語釈に「なみする」と読んで”軽蔑する”を載せる。また人類の半分である女を加えた「妄」に、”いつわる”の語釈を載せる。

このことより「亻亡 外字」は「妄」の異体字で、人の手で存在するものを隠すこと、隠しだますこと、隠し嘲ること、と仮説を立てる。

『漢語大字典』『異體字字典』を引ける環境にある諸賢のご指正を待つ。

学研漢和大字典

会意兼形声。亡は「ない、くらい」などの意を含む。妄は「女+(音符)亡(モウ)」で、女性に心がまどわされ、われを忘れたふるまいをすることを示す。盲(目が見えない)・忘(心にしるしをとどめない)・茫(ボウ)(見えない、ぼんやりしている)などと同系。「盲」に書き換えることがある。「盲動」。

語義

  1. (モウナリ)(マウナリ){名詞・形容詞}みだり。うそ。でたらめなさま。「妄称(モウショウ)」「俗謂之荊門則妄也=俗にこれを荊門と謂ふは則ち妄なり」〔陸游・入蜀記〕
  2. {副詞}みだりに。いいかげんに。でたらめに。根拠もなく。「不知常妄作凶=常を知らずして妄に作るは凶なり」〔老子・一六〕

字通

[形声]声符は亡(ぼう)。〔説文〕十二下に「亂るるなり」とあり、妄誕の意。金文の〔毛公鼎〕に「女(なんぢ)敢て妄寧なること毋(なか)れ」とあり、〔書〕に「荒寧」というのと同義の語であろう。亡・荒はいずれも遺棄された屍体をいう字。妄はその呪霊へのおそれを含む語と思われる。

牟(ボウ・6画)

初出は戦国時代の金文。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はm(平)。同音多数。論語では孔子の弟子、仏肸が立てこもったまちの名「中牟」として現れる(論語陽貨篇7)。固有名詞のため、文字が無いことがまちの不在を意味しない。たとえば矛m(平、初出は西周中期の金文。韻母を含む王力系統でも同音でmǐu)などが置換候補になり得る。

学研漢和大字典

会意。「牛+モウと声が出るさま」。草書体をひらがな「む」として使うこともある。▽「牟」の初二画からカタカナの「ム」ができた。

語義

  1. {名詞}モウという牛の鳴き声。
  2. {動詞}もとめる(もとむ)。むさぼる。苦労してもとめる。むさぼり奪う。▽謀に当てた用法。
  3. {動詞}ます。ふえる。▽茂に当てた用法。
  4. {名詞}大麦。《同義語》⇒麰。
  5. {名詞}ひとみ。《同義語》⇒眸。

字通

[象形]牛に鼻箝(びかん)を加えている形。〔説文〕二上に「牛鳴くなり」とし、「其の聲氣の口より出づるに象る」と、厶(し)を声気の象とするが、牛の鼻に梏(こく)をつけて牽(ひ)くことをいう。厶は牽の字に含まれている玄(鼻綱)の半形である。その牽かれて鳴く声を牟という。擬声的な語である。

忘(ボウ・7画)

忘 金文
蔡侯紐鐘・春秋末期

初出は春秋末期の金文。カールグレン上古音はmi̯waŋ(平)。

学研漢和大字典

会意兼形声。亡(ボウ)とは、人が囲いに隠れて姿をみせなくなることを示す会意文字。忘は「心+(音符)亡」で、心中から姿を消してなくなる。つまり、わすれる意。類義語の遺は、忘れてあとに置いてくること。

語義

  1. {動詞}わすれる(わする)。記憶が心の中から消え去る。《対語》⇒記。「忘帰=帰るを忘る」「忘我=我を忘る」「発憤忘食=発憤して食を忘る」〔論語・述而〕
  2. {動詞}わすれる(わする)。わすれ物をする。《類義語》遺。「遺忘」。

字通

忘 外字

[形声]声符は亡(ぼう)。〔説文〕十下に「識らざるなり。心に從ひ、亡に從ふ。亡は亦聲なり」とあり、識とは記憶にあることをいう。忘は周初の金文に字を忘 外字に作り、望に従う。のち列国期の金文にはおおむね忘の字を用いる。〔儀礼、士冠礼〕に「壽考忘(や)まず」とあるものは、〔詩、小雅、蓼蕭〕に「其の德爽(たが)はず 壽考忘まず」とみえ、古いいい方なのであろう。忘 外字の字形から考えると、望気をして、災いをやめるように祈ることが、この語の原義であったようである。

罔(ボウ・8画)

罔 網 金文
戈□□□甗・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はmi̯waŋ(上)。原義は”あみ”。”くらい”を意味する同音の「亡」・「盲」măŋと音が通じたので、”くらい”を意味するようになった。論語の時代には「亡」を省いた「网」と書かれ、「網」と書き分けられていない。音も同音。現代中国語では網やネットを「网」と書く。論語語釈「網」も参照。

学研漢和大字典

論語 罔 金文大篆
「罔」(金文大篆)

会意兼形声文字で、「网(あみ)+〔音符〕亡(みえない)」で、かぶせて隠すあみ。また、おおいかぶせて見えなくすること。亡(隠れて見えない)・盲(見えない)などと同系のことば、という。

意味

  1. {名詞・動詞}あみ。あみする(あみす)。物にかぶせて隠すあみ。また、魚や鳥獣にかぶせて捕らえるあみ。あみでとらえる。《同義語》⇒網。「漁罔(ギョモウ)(=漁網)」「降罔(コウモウ)(法律のあみにかかる)」「罔民而可為也=民を罔することを為すべけんや」〔孟子・梁上〕
  2. (モウス)(マウス){動詞}しいる(しふ)。うむをいわせず、おしかぶせる。人の目をくらませる。「誣罔(ブモウ)(罪をむりにおしつける)」「不可罔也=罔すべからざるなり」〔論語・雍也〕
  3. {形容詞}くらい(くらし)。あみをかぶせたように見えない。道理に通じていない。また、無知なさま。《類義語》盲。「学而不思則罔=学んで思はざれば則ち罔し」〔論語・為政〕
  4. {動詞}ない(なし)。なかれ。《同義語》無・莫。「方今世俗奢僭罔極=方今世俗奢僭極まり罔し」〔漢書・成帝〕

字通

[象形]網の形で、罔・網(もう)の初文。〔説文〕七下に「庖犧(はうぎ)氏、繩を結びて以て田(かり)し、以て漁する所なり。冂(けい)に從ふ。下は网の交文に象る」(段注本)とし、重文四を列する。庖犠が網を作ったとする説は、〔易、繫辞伝下〕にみえる。字は綱から網糸を垂れる形で、境界を示す冂に従うものではない。のち声符の亡(ぼう)を加える。

某(ボウ・9画)

論語 謀 金文
(禽簋・西周早期)

初出は西周早期の金文。カールグレン上古音はməɡ(上)。

学研漢和大字典

会意。「木+甘(口の中に含む)」で、梅の本字。なにがしの意味に用いるのは当て字で、明確でないの意味を含む。黙(だまっている)・晦(カイ)(くらい)・媒(バイ)(知らぬ人どうしの縁をつける)と同系。

語義

  1. {名詞}それがし。なにがし。人・物・時・所など、はっきりわからないときに用いることば。また、わかっていても、わざとぼかしていうときに用いることば。「某日」「某在斯=某は斯に在り」〔論語・衛霊公〕
  2. {代名詞}それがし。自分のことを謙そんしていうことば。

字通

[会意]曰(えつ)+木。曰は神に祝禱する祝詞を入れる器。それを木の枝に著けて神にささげ、神意を問い謀(はか)る意で、謀の初文。金文にこの字を「某(はか)る」と用いる例がある。〔説文〕六上に「酸果なり。木に從ひ、甘に從ふ。闕」とする。酸果は梅。字を梅の初文とするものであるが、その形義を説きえないので「闕」という。〔詩、周頌、訪落〕の〔序〕に「嗣王、廟に謀るなり」とあり、謀とは神意に謀ること、某がその初文。のち何某の意に用いる。〔儀礼〕に多くみえるが、それは神霊に対していう語で、〔礼記、曲礼下〕に「使者自ら稱して某と曰ふ」とあるのは、その名残であろう。

畝(ボウ・10画)

畝 金文
賢簋・西周中期

初出は西周中期の金文。カールグレン上古音は不明。「ホ」は慣用音。呉音は「ム・モ」。

学研漢和大字典

会意。「田+十(十歩あるいてはかる)+久(人が背をかがめて歩くさま)」で、農夫が十歩あるいて、十歩平方の田畑を区切るさまを示す。作物をうみ出す畑地のうね、またいくつも並んで生じたうねを意味する。母(ボ)・(モ)(うみ出す)・毎(どんどんうみ出す)と同系。

語義

  1. {名詞}うね。田畑のうね。「南畝」「南東其畝=其の畝を南東にす」〔詩経・小雅・信南山〕
  2. {単位詞}耕地・宅地の面積の単位。つ周代、一畝は百歩(一歩は六尺四方)で、約一・八アール。づ秦(シン)・漢代以後、一畝は二四〇歩。▽以後、大小の変化はあるが、ほぼ五~六アール。今の中国では、六・六アール。
  3. 《日本語での特別な意味》せ。一畝は、一反の十分の一で、三十歩。約一アール。

字通

[形声]声符は毎(まい)。毎に母(ぼ)の声がある。〔説文〕十三下に「六尺を歩と爲し、歩百を畮と爲す」とあって、百歩の地をいう。周初の金文の〔賢𣪘(けんき)〕に「百畮」という語があり、一夫の耕すところの地であろう。後期の金文に、淮夷が「■(上下に白+貝)畮(はくほ)」を賦貢として収めたことがみえるが、■はおそらく貝錦などとよばれる織物、畮は農作物であろう。

望(ボウ・11画)

論語 望 金文
無鼎・西周晚期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はmi̯waŋ(去)。平声の音は不明。

学研漢和大字典

会意兼形声。望の原字は「臣(目の形)+人が伸びあがって立つさま」の会意文字。望は、それに月と音符亡(ボウ)(モウ)を加えたもので、遠くの月を待ちのぞむさまを示す。ない物を求め、見えない所を見ようとする意を含む。亡(ない)・茫(ボウ)(見えない)と同系。慕(ない物をほしがる)や募(ない物を求める)とも縁が近い。類義語に視・希。

語義

  1. {動詞}のぞむ。見えにくい遠方を見ようとする。また、遠くからながめる。「眺望」。
  2. {動詞}のぞむ。まだかまだかと待ちわびる。得がたい物を得たがる。ほしがる。「希望」「既平隴復望蜀=既に隴を平して復た蜀を望む」〔後漢書・岑彭〕
  3. {動詞}のぞむ。現状を不満に思い、こうあってほしいと思う。「責望」。
  4. {名詞}のぞみ。「失望=望を失ふ」。
  5. {名詞・形容詞}よい評判によって得た信用。人々にしたわれている。「人望」「信望」「望族(人々の信望を得ている一族)」。
  6. {名詞}もち。満月。また、陰暦の十五日。「望月(ボウゲツ)(満月)」「既望(満月の次の夜。十六夜)」。
  7. (ボウス)(バウス){動詞・名詞}遠くの山川をのぞんで、柴(シバ)をたき煙をあげて山川の神をまつる。また、その祭り。「望祭」「望于山川=山川を望す」〔書経・舜典〕
  8. 「望望(ボウボウ)」とは、恥じいったさま。また、どうしてよいかわからなくなって困るさま。「望望然去之=望望然としてこれを去る」〔孟子・公上〕

字通

[形声]声符は亡(ぼう)。卜文は、大きな目をあげて遠くを望み、挺立する人の形で、象形。聞の初文が、大きな耳の下に挺立する人の形であるのと同じく、特定の行為を示す字である。のち金文の字形には月を加えて月相の関係の字となり、また目の形(臣)が亡の形にかかれて形声となる。〔説文〕十二下に「出亡して外に在り、其の還るを望むなり」とあって、亡を亡去の意に解する。また別に𡈼(てい)部八上に朢を収め、「月滿ちて日と相ひ朢む。以て君に朝するなり。月に從ひ、臣に從ひ、𡈼(てい)に從ふ。𡈼は朝廷なり」とする。その重文として𦣠を録し、「古文。朢の省なり」というが、その𦣠が卜文にみえる望で、望の初文である。𦣠は人が挺立して遠く望む形で、眼の呪力によって敵を圧服し、あるいは望気を行う意の字であった。卜辞に「媚人(びじん)三千をして、苦方を𦣠ましむること勿(なか)らんか」のように卜するものがあり、媚飾を加えた三千の巫女が、一斉に山西北方の異族である苦方に、その呪儀を行った。望はまた山川祭祀の名となる。のち日月相望む意によって月を加え、朔望の望となり、望より一週の月相を既望という。

夢(ボウ・13画)

夢 金文
卯簋蓋・西周中期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はmuŋ(平)。去声の音は不明。「ム」は呉音。

学研漢和大字典

会意。上部は、蔑(ベツ)(細目)の字の上部と同じで、羊の赤くただれた目。よく見えないことをあらわす。夢は、それと冖(おおい)および夕(つき)を合わせた字で、夜のやみにおおわれて、物が見えないこと。

語義

  1. {名詞}ゆめ。はかないもの、はっきりしないものにたとえる。《対語》⇒現(ウツツ)。「浮生若夢=浮生は夢のごとし」〔李白・春夜宴桃李園序〕
  2. {動詞}ゆめみる。ゆめを見る。「夜深忽夢少年事=夜深くして忽ち夢みる少年の事」〔白居易・琵琶行〕
  3. {形容詞}くらい(くらし)。はっきりと見えないさま。▽平声に読む。《類義語》瞢(ボウ)。「夢夢(ボウボウ)(ぼんやり)」。
  4. 《日本語での特別な意味》ゆめ。実現は不可能だが、実現させたい願い。

字通

[会意]萈(かん)+夕(せき)。萈は媚蠱(びこ)などの呪儀を行う巫女の形。目の上に媚飾を施している。その呪霊は、人の睡眠中に夢魔となって心をみだすもので、夢はそのような呪霊のなすわざとされた。〔説文〕は夕部七上に夢を録して「明らかならざるなり」と夢夢の意を以て解し、また㝱部七下に㝱を録して「寐(い)ねて覺むること有るなり」という。夢夢の義は瞢(ぼう)、〔説文〕四上に「目明らかならざるなり」とあるものがその字義にあたる。〔周礼〕に夢に㝱の字を用い、〔春官、占夢〕に「六㝱の吉凶を占ふ」として、その法をしるしている。㝱は神霊の啓示として睡眠中にあらわれるもので、媚女がその呪霊を駆使した。それで字は瞢に従う。瞢の廟中にある姿を寛という。しどけなき姿をしていたのであろう。歳終に堂贈(どうそう)という大儺(たいだ)の礼を行い、夢送りの行事をして年間の悪夢を祓(はら)った。夢魔に逢って、にわかに没することを薨(こう)という。貴人にその死にざまが多かったのであろう

貌(ボウ・14画)

貌 金文
皃斝・殷代末期

初出は殷代末期の金文。ただし字形は豸(むじなへん)を欠き、つくりの皃のみ。カールグレン上古音はmŏɡ(去)。同音に貓”ねこ”。

学研漢和大字典

会意兼形声。「豸(けもの)+(音符)皃(ボウ)(あたまと足のある人の姿)」で、人や動物のあらましの姿をあらわす。

語義

ボウ
  1. {名詞}かたち。顔のかたちや姿。また、おぼろげにつかめたありさま。外にあらわれたようす。「容貌(ヨウボウ)」「外貌(ガイボウ)」「以貌取人=貌を以て人を取る」〔史記・仲尼弟子〕
  2. {動詞}かたどる。かたちを似せて書き写す。
  3. {名詞}みたまや。国家の主神、祖先などをまつる所。▽廟(ビョウ)に当てた用法。
バク

{形容詞}はるか遠くおぼろげなさま。▽邈(バク)に当てた用法。

字通

[象形]本字は皃(ぼう)。白は人の頭顱(とうろ)の形。〔説文〕八下に「頌儀なり。儿(じん)に從ふ。白は人面の形に象る」とし、重文二を録する。一は貌、一は■(豸+頁)に作る。頁(けつ)は礼貌を備える形。公廟に見えることを頌という。「頌儀」とはその際の儀容をいう。形の似たものを貌似という。〔逸周書、芮良夫(ぜいりようふ)解〕「王、貌して之れを受く」とは、外面だけの挨拶で、実意の伴わない意である。

網(ボウ・14画)

罔 網 金文
戈□□□甗・西周早期

初出は甲骨文。罔・网と書き分けられていない。カールグレン上古音はmi̯waŋ(上)。「モウ」は呉音。論語語釈「罔」も参照。

学研漢和大字典

会意兼形声文字で、罔はもと、あみを描いた象形文字。網は「糸+(音符)罔(モウ)」で、かぶせて見えなくするあみ。または、目に見えにくくてかぶさるあみ。罔と同じ。亡(見えない)・茫(ボウ)(見えない)などと同系のことば。

語義

  1. {名詞}あみ。魚や鳥獣をとりこめ、または隠して見えなくするあみ。また、転じて広くあみの目状をなしたもの。《同義語》⇒罔(モウ)・(ボウ)。《類義語》罟(コ)(しかけあみ)・羅(ラ)。「網罟(モウコ)」「蛛網(チュウモウ)(くものあみ)」。
  2. {動詞}あみする(あみす)。あみをうつ。あみにかけてとらえる。《同義語》罔。「網民=民を網す」。
  3. {名詞}あみ。人間をひっかけてとりこにするもの。法律・義理・人情など。「世網(セモウ)(世の義理人情)」「法網」「天網恢恢、疎而不失=天網恢恢、疎なれども失はず」〔老子・七三〕
  4. 《日本語での特別な意味》あみの目のような組織をもって、広くひろがるもの。「鉄道網」。

字通

[象形]網の形で、罔・網(もう)の初文。〔説文〕七下に「庖犧(はうぎ)氏、繩を結びて以て田(かり)し、以て漁する所なり。冂(けい)に從ふ。下は网の交文に象る」(段注本)とし、重文四を列する。庖犠が網を作ったとする説は、〔易、繫辞伝下〕にみえる。字は綱から網糸を垂れる形で、境界を示す冂に従うものではない。のち声符の亡(ぼう)を加える。

暴(ボウ・15画)

暴 金文 論語 暴
虎父癸爵・西周早期

初出は甲骨文。ただし字形が大幅に異なる。カールグレン上古音はbʰog(去)またはbʰuk(入)。

学研漢和大字典

会意。金文では、もと「日+動物の体骨+両手」で、動物のからだを手で天日にさらすさま。篆文(テンブン)からのち、その中の部分が「出+米」のように誤って伝えられた。表(外に出す)と同系で、曝(バク)(むき出してさらす)の原字。のち、叶(ヒョウ)(手あらい)・豹(ヒョウ)(あらく身軽なひょう)・爆(バク)(火の粉があらくはじける)・瀑(バク)(しぶきがあらあらしく散る)などの系列の語と通じて、手あらい意に用いる。類義語に荒。「曝」の代用字としても使う。「暴露」。

語義

ホウbʰog(去)
  1. (ボウナリ){形容詞}あらい(あらし)。軽はずみで手あらい。「暴君」「性行暴如雷=性行暴きこと雷のごとし」〔古楽府・焦仲卿妻〕
  2. {名詞}あらあらしさ。手あらいやり方。「以暴易暴兮=暴を以て暴に易ふ」〔史記・伯夷〕
  3. {名詞}あばれ者。「凶歳子弟多暴=凶歳には子弟に暴多し」〔孟子・告上〕
  4. {形容詞・副詞}にわか(にはかなり)。にわかに(にはかに)。だしぬけに。急に手あらく。「暴発」「暴風」。
  5. {動詞}だしぬけに打ちかかる。手あらくぶちこわす。「自暴自棄」「暴虎(ボウコ)(虎(トラ)に素手でたちむかう)」。
ホクbʰuk(入)
  1. {動詞}さらす。むき出して日にさらす。《同義語》⇒曝(バク)。「骨暴沙礫=骨を沙礫に暴す」〔李華・弔古戦場文〕
  2. {動詞}あらわす(あらはす)。むき出しにして見せる。《類義語》曝(バク)。「暴露」「暴之於民而民受之=これを民に暴して民もこれを受けたり」〔孟子・万上〕

字通

[会意]日+獣屍の形、すなわち曝屍の象。〔説文〕の日部七上に「晞(かわ)くなり。日に從ひ、出に從ひ、𠬞(きよう)に從ひ、米に從ふ」とし、また麃(ひよう)に従う古文の形を録して、字を麃声とする。また別に夲(とう)部十下にも相似た字があり、「疾(すみ)やかにして趣(おもむ)く所有るなり」とあって、この字を暴疾の意とする。しかし暴露と暴疾の字はもと一字、〔説文〕は誤って両形二字とし、別解を施したものであろう。同じく獣屍の象をとるものに皋(こう)・睪(えき)があり、皋はその色の皋白をとり、睪は斁敗(とはい)(ぼろぼろになる)繹解(えきかい)(組織が解ける)の意をとる。骨を原野に暴(さら)すというのが字の原義。強烈な風雨日射で忽ち暴露し、繹解する、ゆえに暴疾の意となる。暴(ばく)の音は卜と同じく、熱して裂ける音を示す擬声語である。

謀(ボウ・16画)

論語 謀 金文
禽簋・西周早期

現行書体の初出は戦国時代の陶片同義部品「某」の初出は西周早期の金文。カールグレン上古音はmi̯ŭɡ(平)。

学研漢和大字典

会意兼形声文字で、某(ボウ)は、楳(=梅)の原字で、もと、うめのことであるが、暗くてよくわからない、の意に転用される。謀は「言+〔音符〕某」で、よくわからない先のことをことばで相談すること。

煤(バイ)(黒くてよく見えないすす)・媒(バイ)(よく知らない相手どうしをもとめる)などと同系のことば、という。

語義

  1. {動詞・名詞}はかる。はかりごと。わからない先のことをどうするか考える。うつ手をさぐる。また、その計画。「共謀」「謀議」「謀於長者=長者に謀る」〔礼記・曲礼上〕
  2. {動詞・名詞}はかる。はかりごと。悪事をたくらむ。また、害しようとたくらむ。たくらみ。「謀害」「謀反(ボウハン)」「陰謀」「謀晋故也=晋を謀るが故なり」〔春秋左氏伝・宣一四〕
  3. {動詞}もとめる(もとむ)。さぐりもとめる。「謀生=生を謀む」「謀面(いちど会いたいと望むこと)」。

論語 謀 金文大篆
(金文大篆)

字通

[形声]声符は某。某は謀の初文。木の枝の先に祝詞の器(えつ)を着けて祈り、神意に謀ることをいう。〔説文〕三上に「難をおもんぱかるを謀と曰ふ」とあり、〔左伝、襄公四年〕「難をはかるを謀と爲す」の文による。〔国語、魯語下〕に「事を咨るを謀と爲す」とあり、もと神に諮謀することをいう。諮は咨に従い、咨は神になげき訴え申す意である。謀を策謀・謀略のように用いるのは、本来の字義ではない。

訓義

はかる、神にはかる、ことを問いはかる。相談する、相ともにはかる。はかりごと、てだて、くわだて、たくらみ、計画、企画。

大漢和辞典

はかる:難儀なことをおもんぱかる、ことを問いはかる、まつりごとをはかる、おもいはかる、相談する、おしはかる、つまびらかに考える、数える、計算する、かまえる、はかりごとに落とし入れる。はかりごと:てだて、くわだて、めあて、たくらみ。鬼谷子の篇名。姓。

論語 某 謀 梅 字解

北(ホク・5画)

論語 北 金文 北 解字
㝨盤・西周晚期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はpək(入)。

学研漢和大字典

会意。左と右の両人が、背を向けてそむいたさまを示すもので、背を向けてそむくの意。また、背を向けてにげる、背を向ける寒い方角(北)などの意を含む。背(せを向ける)・倍(そむく)と同系。

意味

  1. {名詞}きた。寒くていつも背を向ける方角。《対語》⇒南。「南面而征北狄怨=南面して而征すれば北狄怨む」〔孟子・梁下〕
  2. {動詞}きたする(きたす)。北のほうへ行く。「候鴈北=候鴈北す」〔呂氏春秋・孟春〕
  3. {副詞}きたのかた。北の方角では。北に進んで。「北面」「北定中原=北のかた中原を定む」〔諸葛亮・出師表〕
  4. {動詞}にげる(にぐ)。敵に背を向けてにげる。「敗北」「三戦三北、而亡地五百里=三たび戦ひ三たび北げて、地を亡ふこと五百里」〔史記・魯仲連〕
  5. {動詞}そむく。そむける(そむく)。相手に背を向ける。《類義語》背・倍。

字通

[会意]二人相背く形に従い、もと背を意味する字。〔説文〕八上に「乖(そむ)くなり。二人相ひ背くに從ふ」とあり、また日に向かって背く方向の意より北方をいい、背を向けて逃げることを敗北という。南は陽にして北は陰。墓地は多く北郊に営まれ、洛陽ではその地を北邙(ほくぼう)といった。

僕(ホク・14画)

僕 金文
琱生簋・西周末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はbʰuk(入)。「ボク」は呉音。

学研漢和大字典

菐 甲骨文
「菐」(甲骨文)

会意兼形声。菐の甲骨文字は、どれいが供え物をささげるさまに、そのどれいの頭に入れ墨をする辛を加え、下部にしっぽを添えた姿を描いた象形文字で、獣に近いさまを示す。金文は二人の子を含み、年少の従者を示す。僕は「人+(音符)菐(ボク)」。荒けずりで作法を知らない下賤(ゲセン)の者の意を含む。転じて、謙そんするときの一人称代名詞ともなった。素樸の樸と同系。類義語に童。

語義

  1. {名詞}しもべ。召使や雑用をする人のこと。▽荒けずりな人の意から。「下僕」「遂命僕人過湘江=遂に僕人に命じて湘江を過ぐ」〔柳宗元・始得西山宴游記〕
  2. {名詞}御者。▽中国の戦国時代、御者には、力の強い腹心の部下を用いた。「僕夫」「冉有僕=冉有僕たり」〔論語・子路〕
  3. {代名詞}謙そんしていうときの一人称代名詞。「僕所以留者=僕の留まるゆゑんは」〔史記・荊軻〕
  4. 「僕僕爾(ボクボクジ)」とは、召使のように、動き回ったりぺこぺこしたりするさま。「子思以為、鼎肉使己僕僕爾亟拝也=子思以為へらく、鼎の肉己をして僕僕爾としてしばしば拝せしむ」〔孟子・万下〕
  5. 《日本語での特別な意味》ぼく。男が、同等または下位の者に対して、自分をさしていうときのことば。

字通

僕 古文
(古文)

[形声]声符は菐(ほく)。〔説文〕三上に「給事する者なり。人菐に從ふ。菐は亦聲なり」と会意に解し、古文■(臣+菐)を録する。〔説文〕は菐を瀆菐(とくほく)にして卑賤の意とし、そのことに従う者と解するのであろう。僕の初形は卜文では礼冠を頂き、儀礼に従う者の形に作り、その奉ずる器は辛の形に似ており、宰牲のことに当たるものかと思われる。古文は臣に従い、臣は神に事(つか)えるものであった。西周中期の金文〔■(走+豈)𣪘(がいき)〕に「僕射(ぼくや)・士訊(しじん)・小大の右隣」のように官職名を列し、後期の〔師キ 外字(上下に臼言+犬)𣪘(しきき)〕に「僕ギョ 外字(ぼくぎよ)・百工・牧・臣妾」とあり、僕は必ずしも下僕の意ではない。のち卑賤の称となり、司馬遷が任安に与えた書中には自称として用いている。

卜(ボク・2画)

卜 金文 論語 甲骨文 帝不我又
曶鼎・西周中期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はpuk(入)。

学研漢和大字典

象形。亀の甲を焼いてうらなった際、その表面に生じた割れめの形を描いたもの。ぽくっと急に割れる意を含む。撲・森(ボク)(ぽかっと急にたたく)・朴(ボク)(ぽくりと折ったままの木)と同系。「うらなう」「うらない」は「占う」「占い」とも書く。

意味

  1. (ボクス){動詞・名詞}うらなう(うらなふ)。うらない(うらなひ)。物のきざしで人事の吉凶を考える。また、うらないごと。▽昔は亀(カメ)の腹甲や獣の骨を焼いてその割れめの形を見て吉凶をうらなった。のち、あらゆるうらないを卜という。《類義語》占(セン)。「占卜(センボク)」「亀卜(キボク)」。
  2. (ボクス){動詞}表面に出た何かの兆候を手がかりにして事態を察する。うかがう。「卜居=居を卜す」「可卜所学之深浅=学ぶ所の深浅を卜すべし」〔近思録〕
  3. (ボクス){動詞}事前に予知する。「定卜(テイボク)」「未卜=いまだ卜せず」。

字通

[象形]獣骨や亀版を灼(や)いて、そのひびわれによって吉凶を卜うことをいう。卜はそのひびわれの形。〔説文〕三下に「龜を灼いて剝ぐなり。龜を灸(や)くの形に象る。一に曰く、龜兆の從横なるに象るなり」という。卜するとき、まず縦長に鑽(さん)とよばれる穴を掘り、横に円形の穴を作って、その部分を灼くと、鑽の部分には縦、灼いた部分には横に走る線が、その表面にあらわれる。その横の線が卜兆、縦横合わせて卜の形となる。殷虚小屯出土の大版には、百鑽前後にも卜迹を存するものがある。わが国の対馬に伝えられている古法については、伴信友の〔正卜考〕に詳しい記述がある。卜の音は、卜兆を生ずるとき、破裂する音をとるものであろう。

木(ボク・4画)

論語 木 金文
木父丁爵・殷代末期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はmuk(入)。「モク」は呉音。

学研漢和大字典

象形。立ち木の形を描いたもの。上に葉や花をかぶった木。沐(モク)(頭から水をかぶる)と同系。類義語の樹は、じっとたっている木。材は、切りたおして物をつくるのに使う木。付表では、「木綿」を「もめん」と読む。

語義

  1. {名詞}き。葉や花をかぶったたちき。また広く、たちき。《類義語》樹。「樹木」。
  2. {名詞}き。物をつくる材料としての、き。また、きでつくったもの。「材木」「三木(サンボク)(手かせ・足かせ・首かせの三つ)」「就木=木に就く」「朽木不可雕也=朽ちたる木は雕るべからざるなり」〔論語・公冶長〕
  3. {名詞}五行の一つ。方角では東、色では青、時節では春、十干では甲と乙、五音では角に当てる。
  4. {名詞}八音(八種の楽器)の一つ。木製のもの。
  5. {名詞}星の名。木星。歳星。
  6. {名詞・形容詞}生き生きした感覚がない。また、そのもの。「木石」。
  7. {形容詞}かざりけがない。質朴(シツボク)。《同義語》朴・樸。「木訥(ボクトツ)」。
  8. 《日本語での特別な意味》もく。七曜の一つ。「木曜日」の略。

字通

[象形]枝のある木の形。〔説文〕六上に「冒(おほ)ふなり。地を冒ひて生ず。東方の行なり」という。〔釈名、釈天〕に「木は冒ふなり」とあり、当時の音義説である。卯字条十四下にも「冒ふなり」とあり、いずれも字義に関しない説で、字はむしろ朴の字義に近く、木訥(ぼくとつ)・木強のように用い、素材としての木をいう。植樹したものは樹という。

目(ボク・5画)

目 金文
屰目父癸爵・西周早期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はm(入)。藤堂上古音はmɪuk。「モク」は呉音。

学研漢和大字典

象形。めを描いたもので、まぶたにおおわれているめのこと。モクとは木(葉をかぶった立ちき)・沐(モク)(水をかぶる)・冒(モウ)・(ボウ)(かぶる)などと同系。類義語の眼は、根や痕(コン)と同系で、頭骨に穴があいていて一定の場所を占めた眼窩(ガンカ)(めのあな)に着目したことば。

語義

  1. {名詞}め。まぶたにおおわれため。《類義語》眼。「耳目」「目之於色也=目の色におけるや」〔孟子・告上〕
  2. {名詞}め。めくばせ。めつき。「道路以目=道路目を以てす」。
  3. (モクス){動詞}見なす。見て品定めする。また、めくばせをする。「目之為神品=これを目して神品と為す」「范増数目項王=范増数項王に目す」〔史記・項羽〕
  4. {名詞}めじるし。めじるしをつけた条項。また、そのグループ。「題目」「目録」「請問其目=請ふその目を問はん」〔論語・顔淵〕
  5. {名詞}め。網や、格子のめ。
  6. {単位詞}項目や格子のめを数える単位。「第二目」。
  7. {名詞}目のようにたいせつなところ。要点。「眼目」。
  8. {名詞}人の主となる者。かしら。「頭目」。
  9. 《日本語での特別な意味》
    ①さかん(さくわん)。四等官で、国司の第四位。
    ②め。材木の表面にあらわれたすじめ。また、物を折ったすじめ。「木目(モクメ)が細かい」「すじ目の通ったズボン」。
    ③め。ものを見とおす力。「目がきく」。
    ④碁盤(ゴバン)のめ。また、碁石を数える単位。もく。「三目の勝ち」。
    ⑤め。量をあらわす目じるしのきざみ。めもり。
    ⑥め。「もんめ(=匁。文目(モンメ))」の略。重さをあらわすことば。「百目(ヒャクメ)(ふつうは百匁と書く)」。

字通

[象形]めの形。〔説文〕四上に「人の眼なり。象形」とし、「童子(瞳)を重ぬるなり」、すなわち重瞳子(ちようどうし)であるという。〔尚書大伝〕に古の聖人舜を重瞳子とし、〔史記、項羽紀〕に項羽も重瞳子で、その苗裔であろうかという。瞳子を大きく写した字は臣、望・監の字などがその形に従う。古くは目は横長の形にしるした。目を動詞にして、目撃・目送のように用いる。また眉目は最もめだつところであるから、標目・要目のようにいう。

沐(ボク・7画)

沐 甲骨文
(甲骨文)

初出は甲骨文。ただし金文は未発掘。カールグレン上古音はmuk(入)。「モク」は呉音。

学研漢和大字典

会意兼形声。木(モク)・(ボク)は、葉や小枝をかぶった木。上からすっぽりとかぶる意を含む。沐は「水+(音符)木」で、水を頭からかぶること。類義語の浴は、容(中に入れる)と同系で、からだを湯や水の中に入れること。沐と浴をあわせて、ゆあみするすべての動作を含むこととなる。

語義

  1. (モクス){動詞}ゆあみする(ゆあみす)。あらう(あらふ)。頭から水や湯をかぶる。また、水を頭からかけて髪をあらう。《類義語》浴。「沐浴(モクヨク)」「休沐(キュウモク)」「薄言帰沐=薄に言帰りて沐せん」〔詩経・小雅・采緑〕
  2. (モクス){動詞}こうむる(かうむる)。頭から水をかぶるように、恩や恵みを受ける。「沐恩=恩に沐す」。

字通

[形声]声符は木(もく)。〔説文〕十一上に「髮を濯(あら)ふなり」とあり、身を洗うことを浴という。〔孟子、離婁下〕「齋戒沐浴せば、卽ち以て上帝を祀るべし」とあり、祭事に従うときには沐浴をした。

默/黙(ボク・15画)

初出は後漢の『説文解字』。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はmək(入)で、同音に墨、纆”なわ”。墨の字に”だまる”の語義があるが、初出は戦国時代早期の金文で、論語の時代に存在したと断定できない。「毎」”暗い”wəɡと近音。「モク」は呉音。論語語釈「黒」も参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。「犬+(音符)黑(くらい、わからない)」。黑(=黒。くろい)・晦(暗い、よくわからない)・謀(どうしたらよいかわからない→さぐり求める)と同系。旧字「默」は人名漢字として使える。

語義

(モクス){動詞}もだす。だまる。口をきかないので、意向がわからない。声をたてない。「沈黙」「黙而識之=黙してこれを識す」〔論語・述而〕

字通

[形声]声符は黒(こく)。黒に墨(ぼく)の声があり、その古音であったらしい。〔説文〕十上に「犬、暫く人を逐ふなり」とあり、〔唐本説文〕に「犬、潛(ひそ)かに人を逐ふなり」に作る。犬が黙って人を追うことから、その字を作るとするのは疑問とすべく、この字は喪事に犬牲を用いることを示す字であろう。〔国語、楚語上〕「三年默して以て道を思ふ」とは諒闇(りようあん)三年の服喪をいう。〔論語、憲問〕「高宗(殷の武丁)諒陰(りやうあん)、三年言(ものい)はず」とあり、服喪の三年間、ものいうことはタブーであった。犬牲はその修祓のために用いたものであろう。

穆(ボク・16画)

論語 穆 金文
遹簋・西周中期

初出は甲骨文。カールグレン上古音はm(入)のみ。藤堂上古音はmɪok。”安らか・にこやか”。『大漢和辞典』には第一義として”うるはしく立派なさま”を載せる。慎ましいとも、にこやかとも訳せる。

学研漢和大字典

会意兼形声文字で、右側の(音ボク)は、細かくて見えにくい模様。穆はそれを音符とし、禾(いね)を加えた字で、稲の穂のように細くて見えにくいさま。

語義

  1. (ボクタリ){形容詞}ほんのりと暗く、見えにくくて、静まりかえったさま。「於穆清廟=於穆たる清廟」〔詩経・周頌・清廟〕
  2. {動詞・形容詞}ほんのりとやわらぐ。ふんわりと一体をなしているさま。《同義語》⇒睦。
  3. {形容詞}おだやかで、つつしみ深い。
  4. 「昭穆(ショウボク)」とは、中国古代の、祖先をまつるみたまやの順位をあらわすことば。太祖(タイソ)の廟は中央に置き、左側に二世・四世・六世と並べて昭といい、右側に、三世・五世・七世と並べて穆(ボク)という。▽昭(はっきり)と穆(あいまい)とは、もともとあい対することばである。

字通

[象形]禾(か)が実って穂を垂れ、その実がはじけようとする形。〔説文〕七上に「禾(くわ)なり」とし、㣎(ぼく)声とする。また㣎字条九上に「細文なり」とするが、その用義例はない。卜文・金文の字形は、禾穂の実がはじけるほど熟している形で、全体象形とみるべき字。内に充実して、外にあらわれようとするさまで、それを徳性の上に及ぼして穆実の意とする。金文に穆穆・淑穆のような語がある。

勃(ホツ・9画)

孛 金文
「孛」大𤔲馬簠・春秋早期

初出は前漢の篆書。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はbʰwət(入)。同音に孛”顔色が変わる”とそれを部品とした悖、浡”起こる”、誖”乱す”、それに艴”気色ばむ”。孛の字は甲骨文から存在し、論語時代の置換候補。「ボツ」は慣用音。呉音は「ボチ」。孛も参照

学研漢和大字典

会意兼形声。孛(ボツ)は、「屮(草の芽)+八印(両方に押し開く)+子」で、芽や子どもがむっくりと障害を押し開いて頭を出す意を示す会意文字。勃は「力+(音符)孛」で、力をこめておこる意。

語義

  1. {動詞}おこる。ぱっと押しのけて頭を出す。急におこる。「勃起(ボッキ)」「勃興(ボッコウ)」。
  2. {形容詞}盛んなさま。「鬱勃(ウツボツ)(力をたくわえて、はけ口を求め頭をもたげるさま)」「勇心勃勃(ボツボツ)」。

字通

[形声]声符は孛(ぼつ)。〔説文〕十三下に「排するなり」とあり、中からおしひらく意であろう。勃然・勃興のように、中からの勢いが外に発することをいう。孛は花が終わって実をふくみかけた形。否・咅(ほう)はその成熟の過程、ついに剖判(ほうはん)するに至る。その旺盛な生成力を勃という。

沒/没(ボツ・7画)

論語 没 金文大篆 没 解字
(金文大篆)

初出は戦国末期の金文。カールグレン上古音はmwət(入)。『学研漢和大字典』『字通』「漢字古今字資料庫」の甲骨文・金文には見られない。論語時代の置換候補は「」mi̯wət(入)。論語語釈「歿」も参照。

「国学大師」は下掲金文を載せるが、出典は戦国末期の「中山王鼎」。ただし釋文は「溺」とされる。
没 金文

旁について『学研漢和大字典』は「うずまく水中にからだをもぐらせて潜水することを示す」というが、それは新字体の殳(音シュ・訓ほこ。甲骨文・金文にあり)ではなく、旧字体の旁、𠬛を指すようである。
殳 金文 没 篆書
「殳」(金文)・「没」(「説文解字」篆書)

仮に『学研漢和大字典』の曰く「沒は、その〔旁の〕原義をより明らかにあらわすため水をそえた字」を受け入れるとすると、没の古書体としての𠬛を復元文字として提示できる。
没 復元金文 𠬛 説文解字
『説文解字』にも記載があるようだ。ただし篆書としてである。甲骨文・金文・戦国文字・古文全てで見られない。この字について『字通』は以下のように解字を説く。

𠬛:会意。はんゆう。㔾は氾の従うところで、氾は水に浮遊する者、水没者。又はこれに手うぃ加える形。〔説文〕三下に字の上部を囘に作り、「水に入りて取る所有るなり。又の囘下に在るに従う。囘は古文回、回は淵水なり」という。頁部九上に「𩑦ぼつは頭を水中にるるなり」とあり、𠬛は水没を示す形。𠬛は没の初文と見てよく、人の没するを歿という。

日本語で音通する同訓として「歿」「歾」(ボツ・しぬ)があるが、甲骨文・金文共に存在しない。「𣨞」(ホウ/ブ・しぬ)も同様。「物」(ブツ・しぬ)は甲骨文に例があるが、「しぬ」の訓は『大漢和辞典』によると「歾」の音通とされるているので採用しがたい。
物 大漢和辞典(クリックで拡大)

カールグレン上古音はmwət、同音は𠬛、歿、𤣻”玉の一種”。𠬛(ボツ)には”くぐる・しずむ”の語釈が『大漢和辞典』にあり、没と通じるとも言うが、甲骨文・金文共に存在せず、初出は後漢の『説文解字』になる。

結論として、この文字は早くとも秦帝国、ほぼ『説文解字』の出た漢帝国になってから表れた文字で、論語の時代には存在しなかったと言うしかない。ただし「勿」mi̯wətが甲骨文からあり、「没」mwətと音が近い。よって置換候補は「勿」。

学研漢和大字典

会意兼形声。沒の右側は「うずまく水+又(手)」の会意文字で、うずまく水中にからだをもぐらせて潜水することを示す。沒は、その原義をより明らかにあらわすため水をそえた字。勿(ブツ)・(モチ)(ない、見えない)と同系。また、物故(死ぬ)の物(見えなくなる)とも同系。「歿」の代用字としても使う。「没・戦没・死没・病没」。

意味

  1. (ボッス){動詞}しずむ(しづむ)。隠れて見えなくなる。入りびたりになる。《対語》⇒出。「沈没」「日没」「寧知暁向雲間没=寧ぞ知らん暁に雲間に向かつて没するを」〔李白・把酒問月〕
  2. (ボッス){動詞}隠す。また、なくする。「籍没(財産を根こそぎ没収する)」「積雪没脛=積雪脛を没す」〔李華・弔古戦場文〕
  3. (ボッス){動詞}しぬ。この世から姿が見えなくなる。死去する。《同義語》⇒歿。《対語》⇒存・生。「没身=身を没す」「没歯」「父没観其行=父没すれば其の行ひを観る」〔論語・学而〕
  4. {動詞}《俗語》ない(なし)。存在しない。なくなる。また、まだ…していない。▽この場合はméiと読む。《対語》⇒有。「没有(メイヨウ)(ない)」「没字碑(メイツーペイ)(一文字も知らない人)」。
  5. 《日本語での特別な意味》ぼつ。「没書」の略。

字通

[形声]旧字は沒に作り、声符は𠬛(ぼつ)。沒は人が水没すること。沒は〔説文〕十一上に「沈むなり」とあり、人が水中に没することをいう。溺没の意よりして水死をいい、一生を終わることを没世・没歯のようにいう。人の死にはまた歿(ぼつ)を用いる。

語系

沒・𠬛・歿・𩑦muətは同声。みな𠬛の声義を承ける字である。

歿(ボツ・8画)

初出は後漢の説文解字。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はmwət(入)。同音に沒、𤣻”たま”、𠬛”くぐる・しずむ”。𠬛の初出は後漢の説文解字。論語時代の置換候補は「」mi̯wət(入)。論語語釈「没」も参照。

学研漢和大字典

会意兼形声。右側の字は「うずまき+又」の会意文字で、水のうずまきの中にもぐって手で物をさぐるさま。見えない、姿をかくすなどの意を含む。沒(=没。水中に姿をかくす)の原字。歿はそれを音符とし、歹(ほね)を加えた字で、しんで骨と化し、この世に姿が見えなくなること。勿(ブツ)(ない)と同系。類義語に死。「没」に書き換えることがある。「没・戦没・死没・病没」。

語義

  1. (ボッス){動詞}しぬ。しんでこの世から姿が見えなくなる。《同義語》⇒没。「戦歿(センボツ)(=戦没)」「伯楽既歿兮=伯楽既に歿す兮」〔史記・屈原〕

字通

[形声]声符は𠬛(ぼつ)。𠬛は〔説文〕三下に「水に入りて取る所有るなり」とするが、水没の意。歿の正字は歾四下で勿(ふつ)声。「終わるなり」と訓し、その或(ある)体を歿に作る。𠬛は水没、歿とは水没死をいう。

本(ホン・5画)

論語 本 金文
本鼎・西周中期

初出は西周中期の金文。カールグレン上古音はpwən(上)。

学研漢和大字典

指事。木の根の太い部分に━印や・印をつけて、その部分を示したもので、太い根もとのこと。笨(ホン)(太い竹)・墳(フン)(下ぶくれのした土盛り)などと同系。類義語に基。異字同訓にもと⇒下。草書体をひらがな「ほ」として使うこともある。

語義

  1. {名詞}もと。ふとい木の根。転じて、物事の中心。《対語》⇒末・支(えだわかれ)。「根本」「本草」「本立而道生=本立ちて而道生ず」〔論語・学而〕
  2. {名詞}もと。はじめ。物事のはじめ。おこりはじめ。また、もとで。《類義語》元。「報本=本に報ゆ」「資本」。
  3. {名詞}農業のこと。▽商・工業を末というのに対する。「本務」「本事」。
  4. {形容詞}もとの。ほんとうの。「本意」「本旨」。
  5. {形容詞}それ自体の。自分の。「本国」「本領」。
  6. {副詞}もと。もともと。▽「本来」を略して「本」ともいう。「本無他意=本他意無し」。
  7. {単位詞}草木や棒状のものを数えるときのことば。のち、書物を数えることば。
  8. {名詞}上奏文。「題本(上奏文)」。
  9. {名詞}書物。「善本」。
  10. 《日本語での特別な意味》
    ①勝負を数えることば。「三本勝負」。
    ②野球で、「本塁」の略。「三本間」。

字通

[指事]木の下部に肥点を加えて、木の根もとを示す。〔説文〕六上に「木下を本と曰ふ」とあり、末に「木上を末と曰ふ」とあるのと相対する。本末・本支のように、場所や位置を指示する。

奔(ホン・8画)

初出は西周早期の金文。論語の時代に存在しない。カールグレン上古音はpwən(平)。定州論語では「賁」と書くが、その音の一つにpwən(平)が有り、意味は”はしる”。

学研漢和大字典

会意。「大(ひと)+三つの止(あし)」。また上部を走の字と解し「走+二つの止(あし)」とみてもよい。ぱたぱたと急いではしるさまを示す。噴(ぷっとふき出す)と同系。勃(ボツ)(ぱっとおこる)・飛(ぱっととび出す)とも縁が近い。類義後の趨(スウ)・走は、急ぎ足に進むこと。現代中国語では、走は、歩くこと。馳(チ)は、横に飛ぶようにはしること。

語義

  1. {動詞}はしる。ぱっと勢いよく駆ける。また、向こう見ずにどんどん駆ける。《同義語》⇒犇。「狂奔」「自由奔放」。
  2. {動詞}はしる。はしって逃げる。「奔而殿=奔りて而殿す」〔論語・雍也〕
  3. {動詞・名詞}はしる。礼儀どおりにしないでかってに夫婦になる。かけおち。

字通

[会意]夭(よう)+歮(しゆう)。夭は人の走る形で、歮は三止(趾(あし))。足早に奔る意を示すために、三止を加えた。〔説文〕十下に「走るなり」と訓し、「賁(ほん)の省聲なり。走と同意。倶に夭に從ふ」とするが、賁の従うところは賁飾(ひしょく)の形で、奔の従うところとその意象が異なる。金文に、祭事に従うことを「夙夜(しゆくや)奔走せよ」というのが例であり、奔走とはその際の足早な歩きかたをいう。女子には敏捷といい、敏・捷はいずれも髪飾りをした夫人が、祭事にいそしむ姿である。わが国では、祭事のときの歩きかたを「わしる」という。

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